吉良吉影が雛見沢にやってきたようです

247: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/17(日) 20:33:22.51 ID:s1J4wEtl0
次の日―
いつものように梨花ちゃんが登校する。しかし横には―沙都子の姿は無かった

圭一「沙都子はどうした?風邪か?」

圭一はやはり聞いてくる。
もう私には迷う必要が無かった。

梨花「悪い叔父に…さらわれてしまったのです」

魅音「そ、それって…」

梨花「……」

圭一「そ、それ聞いたことあるぜ…確か変な叔父がいて、昔出て行ったとか…」

魅音「な、何で知ってるの?圭ちゃん」

梨花「(記憶も随分とハッキリしているようね。これは随分と運が良かったわ)」



249: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/17(日) 20:36:32.12 ID:s1J4wEtl0
早人「それで…どうやったら、沙都子を救えるんだ?」

梨花「(早人?予想外に食いついてくるわね)」

梨花「とりあえず児童福祉相談所に行って様子を見てもらうわ。そこで沙都子が虐待を認める…それでいいでしょう?」

早人「無理だよ…」

梨花「え?」

早人「そういう時、叔父のプレッシャーに負けて、口聞かぬ人形になっちゃう時だってあるよ」

梨花「そ、それはそうだけど。でも」

早人「僕に任せて。絶対に助けられる方法。今なら考えられる気がする…」



255: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/17(日) 20:45:06.93 ID:s1J4wEtl0
早人の頭の中には、既に叔父を捕まえるだけの作戦が出来上がっていた
その作戦は一つ、早人が杜王町で酷使した一つの特技、『盗撮』である…ッ!

何とかして沙都子の家にビデオカメラを仕掛ける、そうすれば
虐待を行う叔父の姿は目に見える

盗聴器を仕掛けてもいい。
怯えきった沙都子の声、怒鳴り狂う叔父の声、それらを拾うことが出来る…ッ!

しかし、早人にはそれを言い出せない一つの杞憂…
それは単純な一つ…。

それは、『それが犯罪だ』ということである。犯罪の片棒を仲間に担がせる。
その事実は彼が初めて作ることの出来た仲間への、明確な侮辱だとさえ彼は感じえたのだった

梨花「(何を考えているかわからないけど…確かに。沙都子を救うための方法を選ぶには無策過ぎたわね
   早人を待つ…この子…何か出来るような気がする…)」



259: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/17(日) 20:50:10.22 ID:s1J4wEtl0
放課後

早人「…」

圭一「わかったのか?早人…」

早人「いや、ごめん…、何も無いよ。電話しよう。いや、電話してもらう。知恵先生に…ッ」

圭一「…そうだな。いや、確かに、虐待が認められない可能性もあり、それにより虐待が加速する場合もある
   少し待つのは、充分いい策だったと思うぜ」

早人「ごめん…」

圭一「謝るなよ。それに謝るなら、仲間と一緒に考えず自分一人で考えたってことだぜ」

早人は躊躇した
早人はまだ、それを決断するには若すぎたのだろうか

早人「(いや、自分一人で仕掛ける、やっぱり、犯罪を犯させるだなんて…出来ない…
   やるッ…僕一人でやってみせるッ…)」

いや、早人は決断していた!自分一人で、かの沙都子を勇敢にも救うと決断した!
一目見るならば、なんと勇敢な決断だろうか…しかし、彼は知らなかった、その決断が、雛見沢の無言のルールに逆らう決断だということを…



261: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/17(日) 20:55:14.71 ID:s1J4wEtl0
知恵「そ、そんな…」

知恵先生は躊躇した。信じられない、いや信じたくないといった風な顔だった

知恵「連絡します。先生が北条さんに対する虐待、絶対にやめさせます」

梨花「(知恵がここまで言い切るのは初めてね、大丈夫…やっぱり、記憶は残っているわ
   サブリミナルのように、全員の深層心理に…)」

しかし、僕はその次の作戦を実行しなくてはならない

早人「じゃあ、僕はもう帰るよ」

圭一「そうか…、よし、じゃあ魅音!梨花ちゃん!
   今からこれが失敗した時の策を考えるぜ!早人、お前にも宿題だ!」

早人「…うん」

梨花「早人…」

早人「な、何?」

梨花「何か僕に隠し事はありますですか?」

早人「!……無いよ」



281: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/17(日) 22:46:16.58 ID:AOlHaVxi0
恐らく児童福祉相談所の人が来るまでは、少し時間がある
興宮から車で来る、おおよそ20分と考える
ここから家まで20分、走れば…10分!

僕は学校を出、全速力で家までの道を飛び出した。

理想はこうだ。
児童福祉委員の人が家に上がりこむ、
当然その時、玄関に鍵はされていないし、沙都子も叔父も委員の人の話に集中するだろう

僕はその間に、渇いた息を殺し、廊下に盗聴器をしかける。出来ればビデオだが…これはさすがに無理だ。
僕は背も小さいし、何より廊下に仕掛けた所で意味は無い

盗聴器を仕掛ければ、とりあえずそこから脱出する。
そして後は福祉委員の人が帰った後、盗聴器の音を拾う道具で、ひたすら虐待の瞬間を待つ…

虐待の瞬間の音を拾えたことを確認すれば、直ぐに家に帰り福祉委員に電話をかける…
これで救える…沙都子を…初めての仲間を…



282: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/17(日) 22:51:14.32 ID:AOlHaVxi0
家に帰り時計を見る、2時43分…。まだ10分しか立っていない、これは随分と調子よく行きそうだ
走る最中にシュミレートした通り、最短の手順で準備をする。
盗聴器と…音を拾う機械。そのたった二つ。両方ともかなりの小ささで、ポケットに入れて持ち運べそうだ

「…ん?」

ふとその時、盗聴器に書いてある妙な落書きに気付いた
注意深くその文字を読み取る

違う、落書きだが、これは文字。書いてある文字は―

『川尻早人』

僕の名前だ、そうかこれ…元は電子紙電話みたいな遊具だったっけ
さすがにこれはマズい、僕は近くのマジックを取り、名前が見えないようにその文字を完璧に消す



286: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/17(日) 23:10:35.95 ID:AOlHaVxi0
僕、川尻早人は、全ての盗撮器具を買って集めた訳じゃないし、そもそも小学生にそんな金は無い
だから、ディスプレイを使っていないものの一部には、自分で、何かしらの遊具を改造し作った盗撮器具もある

改造元の遊具があるとしたら、当然中にはこういうイレギュラーもあるわけで

「よし…」

僕はマジックを机の上に置く
行こう。もう家の中で2分も使ってしまった。

行ってきますの一言と共に玄関を出、僕は力強く自転車のペダルを漕ぎ出した



287: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/17(日) 23:13:09.21 ID:AOlHaVxi0
沙都子の家、いやここは北条家と名づけさせてもらおう。僕は北条家に到着した
玄関には、自動車が一台。間違い無い―児童福祉委員会の車だ

僕は恐る恐る玄関に近づく。

初めて女の子の家に入るんだったら、もっとロマンチックな入り方が良かったな
そんなくだらないことを考えながら、玄関を開ける。そーっと、音は出ない―



289: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/17(日) 23:16:03.45 ID:AOlHaVxi0
沙都子「はい、はいですわ」

鉄平「いやいや、仲良し家族ですよ、ねー」

沙都子「そうですわ…私と鉄平さんは…とっても仲良しなんですわ…」

2分前
鉄平『あれは間違いねえ、福祉委員会じゃ』

沙都子『…福祉?』

鉄平『(ギョロッ)』

沙都子『ち、違うのですわ!沙、沙都子はそんなもの、呼んでないですわ!信じて…』

鉄平『(ニカーッ)』

沙都子『!!』

鉄平『ワシら、仲良し親子じゃ。なー……』



291: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/17(日) 23:19:36.06 ID:AOlHaVxi0
沙都子「はいですわ…、はい…、わかってましてよ…、はい…」

鉄平「確かに誤解される要素はあったかもしれませんなぁ」

くじけてはいけない。
これはにーにーが帰ってくるまでの試練…助けを求めることなんて、許されない…
にーにーが帰ってくるまでに、強くなる、その試練…

『悟史は戦ったわ!』

えっ…誰の声…?
どこか聞き覚えのある…

「ということは、虐待は無いんですね」

鉄平「ああ、そうですよ、とっても仲良しなんですわ」

何か…大切なことを…
いや…



293: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/17(日) 23:22:50.72 ID:AOlHaVxi0
沙都子「私は…!!」

鉄平「!!」

「どうか……なさいましたか……?」

何で…こんなところに…

「どうされましたか?」

沙都子「(早人ッ!!)いや、何でもありませんことよ…」

早人「(…沙都子に見つかった…いや、他の人達は気付いていない…)」

早人「(盗聴器は仕掛けた。これで、もう後は聞くだけ…)」


「今日は、話を聞かせてもらえて、ありがとうございます」

鉄平「いやいや、こちらこそ!」



296: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/17(日) 23:26:06.67 ID:AOlHaVxi0
鉄平「沙都子…おどれ途中…」

沙都子「(ビクッ)」

鉄平「(いやいや…飴と鞭飴と鞭…)今日は、よう頑張ったのう、沙都子…」

沙都子「……当然でしてよ…」

沙都子をその時支配していたものは、暴力とは違う、また別の恐怖だった。


早人「やった…やったぞ…。あとは…」

『ガーガーガー、三連戦も今日で終了し…』

早人「よし、聞こえる…これはテレビの音だな…」

後は待つ…ひたすら…



298: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/17(日) 23:29:47.24 ID:AOlHaVxi0
鉄平「むぅ…(何かよくわからんがムカつくのぉ…、通帳を探せないからか、
   それともあのガキを殴れない状況だからかのぉ…)」

鉄平は既に、沙都子をストレス解消用のサンドバッグのように感じていた
殴る必要が無くても、殴らなければそれはやはりムカつくのだ

麻雀でもするか…いや、そんな気も起こらない
夕方に沙都子を買い物に行かせて、その隙にでも通帳を探すか
いや、あんなことがあった手前、酒や煙草は買わせられないし、そもそも重い荷物が持たせられない

鉄平「(ムカつくのぉ…いっちょあのガキ脅してくるか…)」



300: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/17(日) 23:32:13.42 ID:AOlHaVxi0
そう重いながら鉄平は立ち上がるが、その時、地面に一つのビデオを発見する

「ロッキー」

鉄平「たまには、映画もいいかもしれんのぉ…」


早人「(くっ…さっきからちんたらちんたら映画を見て…
   何も無いのが一番いいんだけど、それでもやっぱりじれったい…)」



304: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/17(日) 23:35:46.68 ID:AOlHaVxi0
午後5時半

圭一「う〜ん、やっぱり児童相談所に直談判の方向かぁ」

魅音「そうだね、とりあえずはその方向で」

梨花「僕も頑張るのです」

圭一「それにしてもすごいなぁ、梨花ちゃん。俺達が悩んでいるところに、様々な案を飛び立たせて」

梨花「みー。圭一も考えれば出てたと思う策ですよ」

圭一「この、嬉しいこといってくれるじゃねーか」

圭一が梨花の髪の毛をわしわしと撫でた

魅音「それじゃあ帰ろうか。とりあえず、明日。……明日もする必要が無いのが一番いいんだけど…」

圭一「…そうだな」

梨花「きっと明日は普通に部活出来るのです」

圭一「そうだよな。大丈夫さ。梨花ちゃんには予言じみたところがあるから
   この予言もきっと当たる!」



305: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/17(日) 23:40:10.13 ID:AOlHaVxi0
羽入「梨ぃー花ぁー」

梨花「どうしたの?」

羽入「これからどうするのですか?吉良に加え、鉄平まで…」

梨花「今日は兵隊を増やすわ。もしかしたら、一番の兵隊になるかも…」

羽入「だ、誰ですか?」

梨花「入江京介よ」

羽入「入江…ですかぁ…」

梨花「スタンドの強さは精神の強さよ。…彼の精神に宿る、深い悔恨と決意…!
   きっと強くなってくれるわ」

羽入「僕は絶対に無いと思うのです」

梨花「それに…最低限スタンドのことは教えないと、一番火中なのになんだか可哀想でしょう?」



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