吉良吉影が雛見沢にやってきたようです
- 525: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/18(月) 23:55:22.14 ID:m40OG0rP0
- 朝だ
しかし、眩しい日差しには心地よさは感じない
昨日の夜は寝つきが悪くて、何度も寝返りばかり打っていた気がする
目を閉じれば、何処からか警官の足音が聞こえてくるような被害妄想を胸に抱いて
そして…途中で…結局の所警戒しても同じことだと悟り、寝た
しのぶのお見舞いなんて行く気にすらならなかった
今日は会社に行くか行くまいか
行く意味なんて今さら無い…しかし、「平穏」を維持したい私の中の感情がサボることを拒否する
「平穏」は…もう戻ってくることなど…ありはしないのに…
- 527: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/18(月) 23:58:13.90 ID:m40OG0rP0
- とりあえずパンを一枚焼く
児童への脅迫が確定すれば、しのぶは恐らくこの家から出て行くだろう
ただでさえも、冷え切ったこの一家なのに
プルルルルル、プルルルルル
吉良「電話…」
ガチャ
吉良「もしもし、川尻だ」
小此木「小此木造園と言うんじゃが、『吉良吉影』さんはおりますかぁ?」
吉良「……誰だ」
- 529: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/19(火) 00:03:22.68 ID:UnbKHVxN0
- 小此木「失礼しました、小此木造園、社長の小此木と申します
俺からのメッセージは受け取ってくれたか?」
訛り、敬語、そして普通の喋り方…
吉良「ころころと口調を変えるのは、好きでやっているのか?」
小此木「フフ、正直な所…気に入ってやってるような所もあってねぇ」
吉良「『メッセージ』と言ったな…私はそんなものを受け取ってはいない
それとも朝の郵便受けにでも入っていたか?」
小此木「川尻しのぶさんへの見舞いは行かなかった…?」
吉良「『吉良吉影』の名前を知っている君なら、私が行かない理由なんて直ぐにわかるだろう?」
- 530: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/19(火) 00:06:49.64 ID:UnbKHVxN0
- 小此木「それもそうだな、突然だが…
川尻の奥さんは、人質としてこちらで預かっている」
吉良「彼女が私にとって、人質的価値があるとは思ってはいまい」
小此木「ああ、本当の人質はもう一つ『ある』ッ…
あんたが欲しがってたテープってのはどうだ?」
吉良「……」
こいつ…何者…
小此木「つまり、あのテープはまだ警察には渡っていないんだぜ」
吉良「……要求は?」
小此木「…まあそう焦りなさんなや、どちらにしても今日、会社は休むつもりだっただろ?」
- 532: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/19(火) 00:09:33.44 ID:UnbKHVxN0
- 小此木「まずは俺達のことをもっとよく知ってもらおうか
お前にとっても願ってもないだろう?」
吉良「信憑性は?」
小此木「ブルーベリージャム」
吉良「?」
小此木「お前が今日、パンにつけようとテーブルに出したジャムだ」
吉良「(……ッ…見られている…)まさかお前が伝えたいのは…聞くしか無いということッ…」
小此木「どちらにしても人質はこちらにあるんだ。まずはこちらの言い分を、ミルクでも飲みながらゆっくりと聞いてもらうぜ」
- 533: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/19(火) 00:17:44.00 ID:UnbKHVxN0
- 小此木「…っ、…。……。…!」
小此木という男は、先ほどから、妄想とも真実とも取れる話を延々とくっちゃべっていた
しかし…妙な話だ
人質を捕まえた犯人が、自分の所属する組織についての話を取られた側に延々と話す
何が狙いだ?この男、いやこの組織は
小此木「…しかし、この季節に、小泉の死んだこの季節に今回、予想外のことが起こった
古手梨花」
吉良「(アイツか…)奴がどうした」
小此木「奴が最も簡単な方法で。何故か鷹野三佐と富竹二尉にスタンドの存在を明かした
このことで、予算が切られる寸前だったスタンド研究科はあっという間に組織の注目の的へ
次は、スタンド使いの捜索面の強化、更にはスタンド使いによる特殊部隊を作ろうとまでの動きも出来た
敵国と戦争になった時、敵国がスタンド使いを使ってきたらどうする
大抵の場合、こちらもスタンド使いを使わないと話にならない」
吉良「そのスタンドを証明した方法とは?」
小此木「随分と話を戻すな……
古手梨花は、刺したものをスタンド使いにする矢を持っている
昔スタンド使いの集まりとして恐れられた、鬼ヶ淵村の、御三家だった名残なのか…」
- 535: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/19(火) 00:22:11.60 ID:UnbKHVxN0
- 鬼ヶ淵村
そこは、鬼が住むとして恐れられていた村だった
鬼ヶ淵沼から出てきたウイルスとは、使い主のいないスタンドのビジョンこと
今となってはスタンド使いしか見えないビジョンだが、当時はそれはずっとよく見えたものだったらしい
彼ら(スタンド)が人間を喰らうと表現されているのは、スタンドに憑かれスタンド使いとなった人間が、
大抵スタンドのビジョンに対して何の畏怖も示さなくなるためである
そんな、人間とスタンドのビジョンの間を取り持った存在、それがオヤシロ様だった
その正体は、人間とスタンドの間を取り持つ聖なる矢だったッ!
また、当時の鬼隠しというのは、下界からスタンドの素養のあるものをさらってきた名残であるという
- 536: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/19(火) 00:26:12.44 ID:UnbKHVxN0
- 小此木「そして、俺達は今世界中から、血眼になってスタンド使いを探している、
どこかの敵国が既にスタンド使いの部隊を作っていることッ…その可能性は、高いからなッ…」
吉良「それで、人質をとってまで…私を仲間に入れようと」
小此木「そうだ。
もしも断れば、このテープを警察に渡し、お前を前科者にすることだって出来るんだ
逆にここで了承すれば、俺達の力でお前の罪を無かったことに出来る
圧力をかけて竜宮礼奈の捜査を打ち切らせることだって…」
吉良「断る」
小此木「……そうか」
- 537: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/19(火) 00:29:28.10 ID:UnbKHVxN0
- 小此木「ゆっくりと考えるがいい。今からなら、綿流しの三日前である、その日まで待とう
…つってももう明日か。明日の12時、日付が変わるまで、回答を待ってあげても」
吉良「断る」
上司の命令に服従することが絶対とされ、命の危険もある部隊へのエスコートか
そんな部隊…死んだってごめんだ。私は自分のやりたいようにやる
小此木「じゃ…お縄だな。俺は構わないぜ」
吉良「………ああ」
- 539: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/19(火) 00:32:49.11 ID:UnbKHVxN0
- プツン…ツー…ツー…
吉良「うぅ…くっ…くそォ…ふざけんな、クソ虫共が…」
ガブリ、もう私は、自分の爪を噛まずにはいれれなかった
どうする、私は一体どうすればいい?
捕まって…前科者
それとも了承して…特殊部隊に入るのか?恐らく事件が時効になるまで…永遠にやめることは出来ないだろう
吉良「クソ…クソクソクソ…」
私は家を飛び出、車に乗る
少し風を切れば、このジットリとした気分も変わるかもしれない
- 541: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/19(火) 00:36:59.64 ID:UnbKHVxN0
- 数分後、入江診療所
梨花「そんな…」
小此木「スマンねぇ…梨花ちゃま。こちらも命令でやってるような所があってねぇ」
梨花「酷い…酷すぎるわ。復讐を…
私は沙都子と圭一と早人の復讐をしなければならないのに、
何それ、奴は強制労働させられるってだけ?そんなのォ…嫌よ」
入江「梨花ちゃん…」
梨花「入江、どうかした?…………のですか?にぱー☆」
入江「くれぐれも、一人で仇を取ろうとは思わないように…」
梨花「……………うん」
- 542: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/19(火) 00:41:26.05 ID:UnbKHVxN0
- 一人では取りに行かない
梨花「(小此木の言うには、奴が決めるのは明後日までの時間…
それまでに奴を殺すわ。…完膚無きまでに……ッ)」
吉良「……よし」
街につくと、少し気分は落ち着いたようだった
もう私には選択肢は無い。それならば、せめて最後の自由な時間だけでも、有意義に使いたい
道行く人に聞きCDショップがある場所を探す
結局探し当てられたのは、それなりに大きいCDショップ
もしかしたら外国にも持って行くCDかもしれない。是非とも一番のお気に入りを持って行きたいものだ
- 554: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/19(火) 01:06:22.02 ID:UnbKHVxN0
- 吉良「She's a killer queen♪」
CDを探す、一枚一枚を探していくごとに、その一枚一枚への記憶が蘇える
この曲、この時に好きだったなあ、とか、よく聞いてたなあとか、そういった記憶だ
いつのまにか、私の両手はCDで埋まっていた。店頭まで行き、カゴを探す
カゴを取り、中にCDをバサバサと入れると、内ポケットの中の彼女が寂しそうにこちらを見ていることに気付いた
吉良「(ごめん…忘れてたよ。君の好きなCDも、一枚だけ買ってあげる…)」
しかし実際問題、部隊では彼女と一緒にいられるのだろうか
もしかしてあのシェイクスピアのロミオとジュリエットのように引き離されてしまうんじゃないだろうか
そうなれば、もういけない。ロミオもジュリエットも腐らないが、彼女は腐ってしまうかもしれないのだ
そうなれば…大事…
私は密かに永遠の愛を誓うのであった
- 555: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/19(火) 01:08:35.36 ID:UnbKHVxN0
- 魅音「そ、そんなことが…いや、信じるけど、それは…」
梨花「全て、本当なのです」
岡村「そんな、梨花ちゃんがそんな巨悪と…」
富田「それも一人で…か…」
梨花「(富田岡村コンビ役に立つかしら)四の五の言ってる場合じゃないわ
今から……考えてっ、奴に勝つ方法!」
魅音「…正直な所……」
梨花「何?」
魅音「どうして梨花ちゃんがそんなに絶望的に考えているのかわからないよ
それこそ復讐というのなら」
梨花「……何?」
魅音「地上戦最強の攻撃。狙撃があるんだから」
- 557: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/19(火) 01:10:15.57 ID:UnbKHVxN0
- 梨花「狙撃…」
魅音「それじゃあ学校は早退して、もう行くよ、富田岡村も」
富田「行くって…何処に…」
魅音「知り合いのスナイパーの家。興宮だけどね」
- 562: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/19(火) 01:12:36.26 ID:UnbKHVxN0
- 吉良「……CDショップは中々楽しかったよ、どうしようか、次に行くところ」
「……」
吉良「ふふふ、そうやっていつも僕を困らせる」
「……」
吉良「それじゃあ、映画でも見に行こうか。
思いっきりカルトなラブロマンス、僕が紹介してあげる」
- 564: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/19(火) 01:14:24.46 ID:UnbKHVxN0
- 詩音「……」
魅音「どう?詩音」
詩音「許せないですね、自分のエゴに任せて、人を殺しまわる、そんな男…」
梨花「(くすくす…あんたのそんな姿、何回も見てるけど)」
詩音「葛西」
葛西「街中で銃とは、流石に無茶し過ぎです」
詩音「四の五の言ってる場合じゃないですよ!もうデストロイアンドデストロイです!」
葛西「二回もデストロイする必要はありませんよ、フフフ…」
詩音「ぐう…」
- 568: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/19(火) 01:17:20.21 ID:UnbKHVxN0
- 葛西「危険ですが、狙撃…やってみましょうか。何とかなるかもしれません。
しかし、やるとしても明日。万全の状況でやりましょう。今この時間、奴が何処にいるかすらわからないのでは」
梨花「大石に電話電話です。きっと明日なら尾行して居場所を教えてくれるのですよ♪」
―
魅音「これで…やるべきことはやった…」
梨花「それじゃあ、このメンバーで最後に一つ…」
魅音「どうしたの?」
梨花「『超能力』を、信じますですか?」
羽入「……」
梨花「これで、雛見沢の秘密は、一応全て終了なのです」
魅音「……私の体にも、そんな能力が…今…」
詩音「お姉より私の方がきっと強いですよ」
魅音「ぐう…詩音…なんだか言い返せない…」
- 569: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/19(火) 01:21:01.39 ID:UnbKHVxN0
- 驚く程簡単に事が進んでいく
そう、それは、吉良吉影殺人計画。
その計画に、何人もの人が絡まりあい、自分の役割を全うしようとしている
夜だ。
今日は随分といい月が出ている
もう、この世界が救われるは無いけれど…
もう、この世界が理想の世界となることは無いけれど…
もしかしたら、世界のためなら私は吉良を黙認するべきだったかもしれないけれど
私は手にもったコーラをグビグビと飲み込む
- 570: ◆0y9Us4tj3E :2008/02/19(火) 01:24:05.51 ID:UnbKHVxN0
- 月光が窓枠を照らし、暖かく私を包んだ
けど…それでも、
絶対に許せない人間が私の前に立ちはだかる
今日全員で考えた計画、プランAからプランG
どのような状況にも対応できる策が練ってある。
後はそれを行使するだけ
待っていやがれ…吉良…吉影…
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