( ^ω^)季節を旅する文猫冒険記のようです
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 22:20:16.27 ID:MyJtiV6Y0
- モウ マチガエネーオ
∧,,∧ 【 季節を旅する文猫冒険記のようです 】 ∧ ,,∧
(´・ω・) ('(^ω^ )
/ │ │ ヽ
〜ο UUο と U O〜
- 6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 22:20:59.50 ID:MyJtiV6Y0
- 【 紅季 19節 】
近くに見えるのは、石を積みあげて造られた家々。
遠くに見えるのも、石を積みあげて造られた家々。
とにかく同じような形をした、ものすごい数の建物が敷き詰められて。
その隙間をなぞるように、ここからだと小さく見える川がながれている。
はるか先に見えるのは、空をつくような、どでかい山。
建物の群れはその山をぐるりと回って、さらにその奥までつづいている。
仮に、とても高い場所からこの街を見下ろしたならば、
とある形をあらわしている事がわかるそうだ。
"α"
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 22:23:43.11 ID:MyJtiV6Y0
- 果たして、どこの誰がそんなことを確かめたのだろう、
ショボに訪ねると、困ったようすで黙ってしまった。
(;´・ω・`)「あ、あとで……調べてみるよ」
(゚听)シラネ とでも言えばいいのに、律儀な子である。
(´・ω・`)「あ…でもね」
大きすぎるこの街は、それぞれ区分けされているのだと聞く。
要するに、A区、B区、といった感じで分けられ、それがZまで続いている、
そうすることで目印になったり、管理が楽になったりするらしい。
ちなみに、僕らが向かうべき文猫協会は、P区にあるそうだ。
(*゚∀゚)「ってーと、どのへんだ?」
(´・ω・`)「ちょうどあの山の反対側くらいかな…」
- 9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 22:25:27.40 ID:MyJtiV6Y0
- ミ;-Д-彡「……遠いなー」タイヘンソウダカラ
ノパ听)「そうでもないぞ! ベルトがあるからな!」
ミ,,゚Д゚彡「…ベルト?」
ベルトとは、あの街中にそって流れる川のことだ。
正しくはヤマノテ・ベルト。
街を一周してながれている為、水路として使われているそうな、
そしてカヌーを利用すれば、歩くよりもずっと早く移動できるとか。
(;*゚∀゚)「にしても……圧倒されるな、あれは」
山のうえの下り坂、その先にある丘に立って、かぜに吹かれれば。
ひろがる景観をながめて、ぼくらは感嘆のいきを吐く。
- 11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 22:28:27.92 ID:MyJtiV6Y0
- どこまでも続く街並み、ちらほら見える煙突からのぼる煙。
この全てに、そこら中に人が住んでる、というのだからたまげたもんだ。
ミ;゚Д゚彡「だねぇ」
(*´・ω・`)「でも、まだ見える部分はほんの一部なんだよ」
ミ;゚Д゚彡「…くらくらしてきた」
ノパ听)「ちゃんと足みて歩かないと転んじゃうんだぞ!」
まあそんな言葉は、どう考えてもフラグなわけで。
「わっ」と小さく声をもらし、フサは前のめりに倒れた。
<ぐえっ!
いったい何につまづいたんだと足元をみれば、
ピンポイントに小さな穴ぼこがある。
もう、ここまで来るとお約束とかじゃなくて、
単に呪われてるんじゃないかと疑ってしまう。
- 15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 22:32:02.40 ID:MyJtiV6Y0
- ミ;゚Д-彡「いてて……」
すると、フサは鼻をおさえながら身を起こした。
どうやら顔面からつっこんだらしい。
ノハ*゚听)「ほら! 言ったとおりじゃないか!」
ヒートはどこか楽しそうに言うと、しっぽをふってフサへと駆け寄った。
そして、そんなヒートの足元にもまた、穴ぼこがある。
(;´・ω・`)「あ」
ノハ;゚听)「わあっ!?」
両手をまえに突き出しながら、これまたコテコテに転ぶヒート。
(*゚∀゚)(;^ω^)「「……なにやってんだ(お)こいつら」」
思わずハモってしまい、ハッと僕らは顔を見合わせ。
ショボはこの一連のながれに、吹きだしている。
(*´・ω・`)「……ぷっ」
ノハ*゚听)「……てへっ」
そしてヒートは倒れこんだまま、照れくさそうに笑っていた。
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 22:33:00.36 ID:MyJtiV6Y0
- 。。
゜●゜
。。
゜●゜
。。
゜●゜
。。
゜●゜
第4章 凪がれる時に、忘れ者をサガシテ
其の一 「今は亡き、始祖猫さま」
。。
゜●゜
。。
゜●゜
。。
゜●゜
。。
゜●゜
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 22:35:13.16 ID:MyJtiV6Y0
- 三角屋根がついた、塔のような家がならぶ道をぬけて、
僕らはD区にある大通りへとやってきた。
この辺りは居住区であるらしく、人通りこそ多くはないが、
ログハウスのような家の前で、数人がつどって談笑していたり、
虹がみえそうな噴水広場では、子供たちが走り回っている。
平和な村をそのまま大きくしたような印象だった。
道はどこまでも続いていて、とおい山の中腹まで伸びている。
ここだけでも、僕らがもと居た村の何倍もありそうだ。
見れば見るほどに、なんだか気が遠くなってくる。
- 19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 22:37:27.04 ID:MyJtiV6Y0
- モクモクとふきだす煙突を横目に、
いくつもの十字にわかれた道をぬけると、
やがて、ゆるやかにアーチを描く橋があらわれた。
(´・ω・`)「あれを越えたら、川沿いにいけば乗り場があるんだ」
橋がかけられた川は、横幅はそうないが、随分と深そうだ。
ゆるやかに流れる水中には、鮮やかな赤い色をした魚が見える。
ミ;゚Д゚彡「なんか近寄ってきたんだけど……」
(´・ω・`)「えさをくれると思ってるからね」
たしかに覗き込むと、いろんな色をした魚が寄ってくる。
なんという警戒心のなさ。
これでは釣りほうだいの、捕りほうだいじゃないか。
ミ*゚Д゚彡「よし、記念に一匹つかまえよう!」
(;´・ω・`)「ちょ、駄目だよ!!」
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 22:41:07.90 ID:MyJtiV6Y0
- (*゚∀゚)+「よし…」
(;´・ω・`)「わわわ!? まって! 包丁しまって!!」
ミ;゚Д゚彡「えー…いいじゃん、一匹くらい」
(;´・ω・`)「駄目だよ……ここで飼ってるんだから」
ミ*゚Д゚彡「なるほど…養殖ってやつか、太らせて食うんだな?」
(;´・ω・`)「食べないよ!」
ミ,,゚д゚彡「……じゃあなんで飼ってるんだ?」
(;´・ω・`)「なんでって……みるため…じゃ、ないかなぁ」
(;^ω^)「なん……だ…と…」
それはつまり、見ることしか許されないというのか。
どんなにお腹を減らしても、見るだけ。
( ^ω^)「ひどい話だお……」
(;´・ω・`)「まず食べることから離れようよ……」
- 24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 22:42:08.90 ID:MyJtiV6Y0
- そんなこんなで、辿り着いたボート乗り場。
川沿いに建てられた桟橋には、まばらに小船が着けられていた。
見れば、すでに幾つものボートが、水上をすいすい波紋疾走して、
座席になった部分が4つ並ぶ、縦長の船上には長い棒を持った人が居る。
(=゚ω゚)ノ「いらっしゃいだよぅ、どこまでだよぅ?」
どうやら、この人が船を漕いでくれるようだ。
ここでゴンドラとか言うと、色々あれなので、あくまでもボートである。
(´・ω・`)「P区までお願いします」
(=゚ω゚)ノ「おk、文猫協会だねぃ?」
彼は、目的地を聞いた、というより、ショボを見て、そう答えた。
間もなく、ロープが外され、ボートはゆっくりと岸から離れていく。
- 26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 22:45:32.86 ID:MyJtiV6Y0
- (=゚ω゚)ノ「さて、お客さん、ここで小話だよぅ」
( ^ω^)「なんだお?」
(=゚ω゚)ノ「今でこそ、この辺りは〜区、って呼ばれてるけど
もとは〜地区って呼ばれてたんだよぅ」
(=゚ω゚)ノ「じゃあ、何故、〜区だけで呼ばれるようになったでしよぅ?」
ミ,,゚Д゚彡「えー…語呂てきに?」
(=゚ω゚)ノ「せーかい! じゃあ……そこのかわいい子に検証してもらうよぅ!」
(;*゚∀゚)「………あ? お、俺?」
(=゚ω゚)ノ「Aから順に地区をつけて言ってくれればわかるよぅ! さあ!」
(*゚∀゚)「ぁー……えーちく、びーちく、しぃ……」
(*-∀-)「……」
ノハ;゚听)「!」
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 22:47:48.96 ID:MyJtiV6Y0
- (=゚ω゚)ノ「やーいやーい! ひっかかったよぅwwwビーチクだってよぅwwwww」
(*-∀-)「……」
(((;´;ω;`)))「…」チンモクガガガガ
(=゚ω゚)ノ「いかれてやがるぜこのメス猫ちゃんはよぅwwwww」
ミ,,゚д゚彡(メス……メス、でいいのか?)
(*゚∀゚)「……」
(=゚ω゚)ノ「ヘイwwwwベイベーwww俺のマグナムでwwwww
あんたのケツの穴をノーフューチャーwwwwノーヒューチャーwwwww」
( ^ω^)(とっても、うぜえお)
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 22:50:15.62 ID:MyJtiV6Y0
- <あふん!!
<あ! あのボートから誰か落ちたぞ!?
<うわあ!? しかも包丁投げられてる!
<なんてこと!? まるで無法地帯だわ!?
こうして、ちょっとしたトラブルもあったけど。
ボートはゆらりゆらり、と揺れながら、ゆったりと進んでいく。
僕らはすれ違うボートや、街並みをながめ、マターリしていた。
( ^ω^)「平和なとこだおー」
ミ,,゚Д゚彡「だなぁー」
だが、ふと横をみれば、川から身をのりだし、船にしがみつく人と、
そんな彼を、なんども足蹴にするつーちゃんの姿がある。
とりあえず僕らは、関わっちゃいけないのだと判断した。
- 35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 22:51:47.67 ID:MyJtiV6Y0
- (*="ω")ノ「ぜぇ、ぜぇ……も、もっと…つよく踏んでくれよぅ…」ハァハァ
(;*゚∀゚)「ええい、この変態さんめ!!」
(*#)ω")ノ「ああああっ!? いいYOぅ! これぞマイリトルラバァー!!!」ハムッ ハフハフッ
(li*゚∀゚)「ニ゛ヤァァッ!?」ゾワワッ
(*="ω")ノ「イエエエエス!!汚れた御身足は、僕が責任もって綺麗にしますよぅ!!」
(#*゚∀゚)「舐めてんじゃねええええええええええ」
ノハ;゚听)「この人、なんで嬉しそうなんだ…?」
(*="ω")ノ「ふふ……いいか譲ちゃん、僕がその気になれば既に3回は賢者になっている……
だが、だが、未だに勃起している……この意味がわかるかよぅ?」
- 37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 22:53:05.71 ID:MyJtiV6Y0
- ノハ#゚听)б「むむっ! 卑猥なのはいけないんだぞ!! めっ!」
(;="ω")ノ「めっ!? これは、新たな刺激!? こんなオプションまであるなんて!
ここはまるで船上の楽園パラダイスだよぅ!!」
(;*゚∀゚)「なにいってんだ!」
果たして、この場合もそう呼ぶのかは知らないが。
船員っていうのは、こんな奴しか居ないのだろうか?
ぼくは彼をみるうちに、いつかの船長さんを思い出していた。
実際、どうやら彼らは兄弟だったのだが、それはまた別のお話。
- 41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 22:56:54.39 ID:MyJtiV6Y0
- .
∧∧
ミ;゚∀゚彡 < ヘンタイヒャン…イパーイ
ミ,,,,,,,,,,ミ
紅季 19節
- 42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 22:58:14.49 ID:MyJtiV6Y0
- それからしばらくして、僕らはようやくP区にやってきた。
先の変態さんは、船をつけた後、ショボが代金を支払おうとしたところ、
「とんでもない僕が払うがわです」の一点張りで、けっきょく無料になった。
別れ際、僕らにむかって、必死にあたまを下げては、
しきりにありがとうを繰りかえし。
(*=゚ω゚)ノ「また! またお願いしますよぅ!!」
(#*゚∀゚)「二度とごめんだ!!」シネ!!
(*=゚ω゚)ノ「はあっ…はあ……」ウッ
否定されるたび、罵声をあびせられるたびに、
ほんとうに嬉しそうに、口元をつりあげる彼の姿は。
ノハ;凵G)「……」メッ ナノニ・・・
彼女に一生わすれられないキズを残した、とか何とか。
- 44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 23:00:44.32 ID:MyJtiV6Y0
- ……気をとりなおして。
目的地はいがいにも、乗り場からそう遠くない場所にあった。
というか、すごい目立つめじるしがあって、すぐわかった。
赤レンガを積み上げてつくられた、三階建ての立派なおうち。
三角形のやねの両端には、猫の手のかたちをした金色の像がおかれ、
その間には、とても大きな看板がかけられていた。
看板には、大きな文字で。
【 ↓猫さんこちら↓ 文猫協会 本部 ↓ようです↓ 】
と、書かれている。
ミ,,゚Д゚彡「わっかりいーなー」
( ^ω^)「ちゃんとようです検索ができるようになってるのが憎いお」
(;´・ω・`)「うん、うん……?」ケンサク?
- 45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 23:03:18.39 ID:MyJtiV6Y0
- 入り口であろう場所をみれば、扉らしきものは存在せず。
のれんが掛けられているばかりだった。
猫への配慮なのだろうけど、でも物書きができるんだから、ドアくらい……。
(´・ωメ)「おっと、まちな兄ちゃん、それは禁句だぜぃ?」
(;^ω^)「お!?」
いきなり真横から返事をされ、僕は驚きにとびあがった。
どうやら、気付かぬうちに声にだしていたらしい。
(;´・ω・`)「あっ! メョボソさん!!」
(´・ωメ)「おうショボ、久しぶりじゃねえか」
そこに居たのは、ショボによく似たおおきな猫。
おなじ書本猫であり、ついでに顔見知りのようだ。
- 48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 23:05:12.35 ID:MyJtiV6Y0
- そして二匹は、僕らそっちのけで会話を弾ませた。
(´・ωメ)「そうか……お前が旅立ってから、もう結構経つからなぁ」
(´・ω・`)「はい、メョボソさんは今は…?」
(´・ωメ)「おれぁ…相変わらず、根無しの風来坊さ」
(*´・ω・`)「お変わりないようで、安心しました」
(´・ωメ)「ショボ、お前もな」
(;´・ω・`)「え……そうですか………?」
(´・ωメ)「ぶわはははっ! 嘘だよ! ちったぁ良いツラになったぜ!」
("・ω・")「あんれま、ショボさんじゃなかとね!」
(;´・ω・`)「ヘィボンさん、お久しぶりです」
と、見ていれば、なにやら続々とあつまってくる。
しかも、みんなショボそっくりで、なんだか見分けつかなくなりそうだ。
- 49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 23:07:03.95 ID:MyJtiV6Y0
- (;^ω^)(め…みょ…めょぼ……へぇ…へぃぼ?)
でも一番にきになるのは、この、発音のわからない名前だった。
(;´・ω・`)「あ、じゃあ……そろそろ」
このままではキリが無いと察したのか、ショボが切りだした。
ちなみに頭がこんがらがりつつ、入り口へと向かう際。
フサが、ショボとザーボンさんを間違えたのは余談である。
そして、のれんをくぐった先で、迎えてくれたのもまた、
ショボによく似た大きな猫だった。
(´◎ω◎`)「案内するのは…」
(´●ω●`)「この」
(*゚∀゚)「はいはい、行こうか」
- 51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 23:10:04.73 ID:MyJtiV6Y0
- 内装は、これまた豪勢なものだった。
テカテカした、石のゆかに敷かれたレッドカーペット。
左右の壁にぽっかり開いた窓からは、陽光がやわらかくさしこんでいる。
ついでに柱のいたる所に、爪研ぎ木がおかれているのは愛嬌か。
そして、くすんだ色をした階段をのぼり、短い通路をぬけて。
「失礼します」なんて言葉とノックの音がひびき。
「ああ、入ってくれ」
遅れてかえってきた返事に頷き、僕らが通されたのは、
たくさんの本が壁をうめつくす、とても大きな部屋。
- 53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 23:12:57.28 ID:MyJtiV6Y0
- 最奥には大きな窓があって、その下にはソファーに座るだれかの姿。
「やあ、ようこそ」
窓からさしこむ白光にめがくらみ、目を細める、
影になってよく見えないが、そこに居るのも、やはり書本猫のようだ。
「っと、失礼」
そんな僕のようすに気付いたのか、ふいに影がうごくと、
シャッ、と音をたてて大きな布がスライドして、窓を覆った。
( ^ω^)「お…」
(*´・ω・`)「あちら、シャキンさん、僕ら協会の……会長さんだよ」
(`・ω・´)「む、私の台詞をとらないでほしいものだな」
その影だった猫は、わざとすねるように言った。
部屋にかげが落ちて、はっきりと見えたその姿はショボに似てはいるが、
目つきはキリリ、雰囲気も大人びているように感じた。
- 56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 23:15:16.75 ID:MyJtiV6Y0
- (;´・ω・`)「す、すすすいません!!!」
それは、ショボに限ったことではなく。
さっき外で出会った、どの猫と比べても同じことが言えた。
(`・ω・´)「冗談だ、きにするな、それよりショボ、どうしたんだ?
いままでの季録を保管するのか?」
(*´・ω・`)「あっ……名前、覚えててくれたんですね」
(`・ω・´)「そんな事は当然だ、この協会にたずさわる猫たちは……
すべて、この心に刻み付けているからな」
(*´・ω・`)「あ、ありがとうございます! そ、それでですね?」
(`・ω・´)「ふむ、そちらの者たちのことか?」
シャキンさん、とやらは僕らを見ながら言った。
しかし、その視線がいどうしていく際。
- 57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 23:17:41.04 ID:MyJtiV6Y0
- (;^ω^)(…お?)
というか、ぼくを見たときだ。
わずかに表情がけわしくなったように見えたのは、気のせいだろうか。
(´・ω・`)「僕の……友達です、一緒に旅をしています」
(`・ω・´)「ふむ……名前を聞いてもいいだろうか?」
ノハ*゚听)「私はヒート! なんか凄いとこ住んでるんだな!」カコイイ!
(*゚∀゚)「落ち着け、俺はつーだ」
ミ;゚Д゚彡「あー…と、フッサールだから」
(`-ω-´)「……」
( ^ω^)「僕はブーン、文猫のブーンだお」
何処か、なっとくするように、頷きながら聞いていたシャキンさん。
けれど僕の挨拶をきくなり、おどろきに目をみ開いて、空気が止まった。
- 58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 23:19:52.54 ID:MyJtiV6Y0
- (`・ω・´)「文猫……だと?」
続いて飛びだしたのは、低く、威圧感のある声。
うまれたのは、ガラスにひびが走るような、ピリッとした空気。
(;^ω^)「お…?」
僕は、何かまずい事を言ってしまったのだろうか。
まで考えて、まえにショボに言われたことを思いだした。
(;^ω^)(し、しまったお…! つい癖で!!)
文猫、というのは固体をしめす名称ではない。
言えば恥をかくのだと、思い知ったはずなのに。
視線がいっせいに僕へとむかう。
シャキンさんも、こっちも訝しげに睨んでいる。
- 60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 23:22:15.27 ID:MyJtiV6Y0
- 流れで言ってしまった言葉を思い、あうあうしていると。
ショボが慌ててフォローをいれてくれた。
(;´・ω・`)「あ、あの! すいません! ブーンはその、房津出身で
世間のこととかよく知らなくて! だから!」
(;`・ω・´)「…………たし……、見たと……ん…とは…」
(;´・ω・`)「え…?」
すると、今度は視線をしたにむけて、俯いたままブツブツと呟き。
やがてゆっくりと顔をあげると、わずかに表情をやわらげ、こう言った。
(`・ω・´)「……その様子では、文猫というものが何なのか、知らないようだな」
思わぬ言葉に、僕らはそろって首をかしげた。
どういう意味なんだろう、文猫はこの場所をしめす事じゃないのだろうか?
- 61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 23:24:12.85 ID:MyJtiV6Y0
- (`・ω・´)「クラムボン! 居るか!!」
すっかり黙りこんでしまった僕らを他所に、
シャキンさんは誰かの名をよんだ。
(´зωз`)「へぇへ、ここにおりますじゃ…」
すると、すぐに老いた猫があらわれ、シャキンはその猫へと何かを投げわたし、
老猫はその渡されたものを見るなり、驚きに声を荒げた。
(;´зωз`)「こ、これは……古文の鍵…? これはどういう」
(`・ω・´)「すまないが、旧史書をここに持ってきてくれないか?」
(;´зωз`)「旧書を!? な、何を仰るのじゃ!? 」
(`・ω・´)「あまり客人を待たせてはいかん、至急頼む」
(;´зωз`)「お待ちくだされ! いけませんぞ、あれは協会の極秘資料じゃ!
それを一般の者、それも、何処の輩かも知れぬ者に見せるなぞ!」
- 64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 23:27:18.41 ID:MyJtiV6Y0
(`・ω・´)「いいのだ」
(;´зωз`)「なりませぬ!」
(`・ω・´)「……頼む、この願い、聞いてくれ」
シャキンさんの真剣な眼差しと、懇願するような言葉。
緊張した空気がながれ。
やがて老猫も折れたようすで「わかりました」と残し、部屋をでた。
ノハ;゚听)「あーーーもう!! なんなんだああああああ!?」
やがて、沈黙にたえきれなくなったのか、ヒートが叫び。
フサは慌ててヒートの口をふさぎ、じたばたと二人で暴れはじめた。
- 65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 23:30:04.39 ID:MyJtiV6Y0
- <むぐーーーーー!! んんーーーー!!!
<うわ、ちょ! 大人しく!!
ノハ*゚听)б「お兄ちゃん! めっ!」
ミ;゚Д゚彡「わけわかんないから!!」ドコデ 覚エタノ?
ノパ听)「本に載ってた!」
(;*゚∀゚)「おいそこの馬鹿ども、静かにしろ」
あちゃー、と盗み見るように視線をむければ、
シャキンさんは、そんな様子をながめながら、微笑んでいた。
- 67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 23:31:16.34 ID:MyJtiV6Y0
- .
∧∧
ミ*゚∀゚彡 < ヨウヤク プロローグニ イミガ
ミ,,,,,,,,,,ミ
紅季 19節
- 69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 23:32:50.04 ID:MyJtiV6Y0
それからしばらくして。
(´зωз`)「こちらでよろしいですかの」
先の老猫が、ボロボロの古ぼけた本を背にのせ、戻ってきた。
シャキンさんはそれを確認すると、僕らへ渡すよう促した。
老猫はしばし迷った素振りをみせると、渋々ぼくらへさしだした。
それは近くでみれば見るほど、古臭い本だった。
表紙もページもよれよれで、やぶけた跡もたくさんある。
けど、なんとなく貴重なものなんだ、というのは分かった。
- 70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 23:33:47.79 ID:MyJtiV6Y0
- そしてタイトルにはこう書かれている。
( ^ω^)「協会の歴史……かお?」
(`・ω・´)「その、5ページ目をひらいてほしい」
言われるままに、破ったりしないよう慎重にページをめくり。
数枚にわたって続くもくじを越えると。
ミ;゚Д゚彡「んーと、なになに? ケット……」
(;^ω^)「シー?」
そこに書かれていたのは、要約すればこんな所である。
- 72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 23:34:42.24 ID:MyJtiV6Y0
- 【 ケット・シー 】
ケット・シーとは、なる獣の一種であるとされた、言語を解する猫である。
あまり群れを作らず、人目のつかない場所で、ひっそりと生活をしていた。
精霊などとも意思疎通が可能だといわれているが、真偽のほどは確かではない。
非常に頭が良いはんめん、からだが弱く、運動は苦手であった模様。
そして、病気にも耐性がなく、種族的に弱い血族であった為。
遥か昔、すでに絶滅がかくにんされている。
- 74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 23:35:45.58 ID:MyJtiV6Y0
- 【 文猫 】
ケット・シーと、大型の猫科の動物の血をひく、さいしょの混血猫である。
ケット・シーとの最大の違いは、群れをなし、生活の場を里へと移した事だ。
争いを好まず、本を好み、よく学び、人々と共に暮らすことを望んだ。
彼等は言葉と、そして【 心 】を以って人と文化を解した。
そんな彼等は、やがて【 文猫 】と呼ばれるに至った。
だが、文猫たちは遺伝的な身体のよわさに苦しみ。
より濃い血をもっていた為、遥か昔、やはりこちらも絶滅が確認されている。
- 77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 23:38:19.79 ID:MyJtiV6Y0
- 【 書本猫 】
文猫たちが、長い季節をこえて血を混じらせて生まれた、雑種である。
ケット・シーや、文猫の、虚弱な遺伝子をこくふくする事に成功した。
そして、彼等は人との交流を作り、今の自分達の生活をつくった文猫を崇拝し。
とおい先祖にあたる文猫を始祖とし。ながい季節の記録をはじめた。
そんな者達が集い、できたのが、崇拝する彼等の名を冠する。
【 文猫協会 】である。
- 78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 23:39:37.11 ID:MyJtiV6Y0
- (`・ω・´)「わかったかね?」
静まり返ったなか、シャキンさんが問いかけた。
ぼくらは息をのんで、顔をあげた。
(;´・ω・`)「し…知らなかった……こんな由来が…」
(;^ω^)「……よく、わかりましたお」
僕が「文猫」だと名乗った時に、
あれほど妙な反応をされた理由が、よくわかった。
当然の反応だったんだ、文猫は……とうに絶滅した生物だったんだから。
ミ;゚Д゚彡「それに……ケット・シーって…」
そうだ、この話がほんとうだとしたら、僕らの先祖というのは。
今は亡き、伝説の生物とまで呼ばれた【なる獣】という事になる。
- 79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 23:41:19.72 ID:MyJtiV6Y0
- ノハ*゚听)「すご…なんかすごい!」
(*゚∀゚)「でも……会長さんよ、いいのか、これ…?
見ておいてなんだが、機密なんだろ?」
(`・ω・´)「なに、構わないさ……なんなら、もっと色々みていくといい
とくべつに書庫の鍵はかいほうしておこう」
(*^ω^)「お、ほんとかお!?」
好奇心が止まらなくなった僕は、そんな話にすぐさま食いついた。
どうやら、他のみんなも同じ気持ちでいるらしく、目を輝かせていた。
しかしつーちゃんは、シャキンさんをしばし見つめると、
明らかに疑いのまなざしを向けて、言った。
(*゚∀゚)「……何故だ? なぜ俺たちにそうまでする?」
- 82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 23:43:09.41 ID:MyJtiV6Y0
- それは今にも「何たくらんでやがる?」なんて言葉が出そうな勢いだった。
確かに冷静にかんがえれば、怪しい事このうえないのだが。
今のうかれた僕らには、そこまでのことは考えつかなかった。
ミ;゚Д゚彡「ちょ…つーちゃん、失礼だから!」
(`・ω・´)「ふむ、言われて見れば、何か裏があると思われるのは当然か…」
(*゚∀゚)「……」
(`・ω・´)「しかし悪いが、あまり理由になるような答えは持っていない
ただ……そこのブーン君がいった言葉…
自分を文猫だ、なんて初めて聞いたせいだろうな」
(`・ω・´)「私は、君等のことを気に入ってしまったようだ」
- 83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 23:44:43.96 ID:MyJtiV6Y0
- (*゚∀゚)「…それが理由か?」
(`・ω・´)「そうだ」
二人、いや。
一人と一匹は、牽制しあうかのように見つめ合う。
まさに緊張の沈黙。だがそこで、またしても。
ノハ;゚听)「どうしたんだ!! なぜ見つめあうんだ!?」
緊張感に耐えきれなくなったのか、ヒートが叫んだ。
なんとなく、ツィールが手紙にのこした、連れて行けない理由がわかった気がする。
よもや、ショボより空気よめないとは恐れいった。
- 84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 23:45:34.19 ID:MyJtiV6Y0
- ( ^ω^)「ショボのアイデンテティーがクライシスかお?」
(;´・ω・`)「あいでんてぃーが……喰らい死す?」
(´・ω・`)「紅茶の味が死んじゃうってこと……?」
(;^ω^)「いや、もういいですお」
とか何とかやってると、不意につーちゃんが笑った。
そして釣られる様に、シャキンさんも。
(`・ω・´)「やはり、君等はおもしろい」
(*゚∀゚)「……悪かったな、わざわざ見せてくれるってのに」
(`・ω・´)「いいさ」
それから、僕らはさっきの老猫、クラムボンさんに連れられ、
書庫とやらに案内してもらうことになった。
其の一 → 其の二 へつづく。
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