( ^ω^)季節を旅する文猫冒険記のようです

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/31(日) 16:07:09.00 ID:7z3ARQ0I0

「おい! そこで何を……」

やがて現れたのは、長い棒を持ち、金属質な服を着た人間さんたちだった。
彼らは僕らを見るなり、驚いた様子で駆け寄ると心配そうに声をかけてきた。
そして倒れるみんなの体を揺すったり、手を掴んでみたりしている。

息はある、みたいな事を言っていたと思う。多分、生きているって事だろう。
そんな様子を、僕はどこか他人事のように眺めていた。

「な……なんだこれは」

「これは、お前がやったのか?」

人間のうちの一匹が、手にした棒をふりかざしながらそう言った。
よく見れば、二つの小さな黒い月がこっちを向いている。

僕はただ、ぼんやりとそれを見つめていた。
返す言葉も送る言葉もなにも思い浮かばないから。



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/31(日) 16:08:07.58 ID:7z3ARQ0I0

ふと気付けば頭が痛い、そう自覚するのとめまいを感じたのは同時だった。
深く目をつぶると頬を何かがすべり落ちて、何かの思い出が見えた。人間たちの姿だった。
だれもかれも地面についちゃいそうなくらい長くて、まっしろい布を羽織っている

「馬鹿、んなわけねーだろ」

「で、でもよ! こいつの下にあるのって、ここいらを荒らしてたあの山犬じゃねーか!」

目をあけると、僕につきつけられていた長い棒が、隣にいるもう一人によって退けられていた。
ふと、ぼんやりしていた意識が更に遠くなった、それでついでに気付いた事がある。

頭があまりに痛くて気付かなかったけど、体が痺れて動けないくらい、僕の背中を激痛が襲っていた。







7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/31(日) 16:09:43.58 ID:7z3ARQ0I0


                  。。
                 ゜●゜


         終結章  蘇る季節

       「そして終わる冒険の記録」


                。。
               ゜●゜

                      。。
                     ゜●゜

                  。。
                 ゜●゜

                        。。
                       ゜●゜



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/31(日) 16:11:37.11 ID:7z3ARQ0I0

目を覚ますと、そこはカーテンに区切られた密室だった。
なんだか、ここの所このパターンが多い気がする。

けれど、今回は少しばかり勝手が違う。

僕は得体のしれない恐怖からか、全身を走る悪寒をこらえるべく身を縮めた。
今でも鮮明に思い出せる、なのに、自分でも何が起きたのかわからない。

ただ、気付いた時にはグロテスクな光景が広がっていて、痺れるような痛みが全身に走っていた。
思い返すうちに、あの空気が脳内によみがえってくる、気付けば僕は嘔吐していた。

胸の鼓動がやけに頭に響く、吐いたせいですっぱい喉がむせかえるが、咳をすることすら億劫だった。

それにしても、体が熱い、布団が熱い、おかしいな、今はもう透季ではなかったか。
ずるりとベッドの下に身を転がすと、ひんやりした床がとても気持ちいい。

ふと見ると、カーテンの外に誰かの足が見えた。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/31(日) 16:14:18.48 ID:7z3ARQ0I0

(*゚ー゚)「わあ、寝ぼけてベッドから落ちるのって、始めて見ましたよ!!」

(;^ω^)「……しぃ?」

(*゚ー゚)「ええ、しぃでございますよ」

( ^ω^)「他の…皆は…?」

(*゚ー゚)「ショボ君はまだ寝てます、あとの二人は……」

そう言って、入り口のほうを見やるしぃ。すると、ちょうど戻ってきたのか、
扉のガラスにうつりこむ二人分の影、案の定、フサとつーちゃんだった。

二人は僕を見るなり表情を明るめたけれど、
その際、つーちゃんがやけに沈んでいるように見えた。

(;*。。)「ごめんな……俺があんな情けないミスやらかしたせいで、こんな事に…」

そして、ついには申し訳なさそうにそう言った。
気にしないで、何度言っても、つーちゃん表情にかかった影は晴れなかった。

よくよく見れば、みんな傷だらけだった。
どうやら、その原因は自分にあると考えているようだ。



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/31(日) 16:16:02.95 ID:7z3ARQ0I0

話を聞けばここはコンビニの街にある医療施設。
どうやらあの後、倒れた僕らは見回りにきた警備員さんに発見され、
この場所にまで運ばれてきたらしい。

ミ;゚Д゚彡「まあ、みんな無事でよかったから!」

(:*。。)「……無事だったのが、不思議なくらいだ……俺が、俺がもっとしっかりしてれば……」

無理に明るく振舞ってみても、焼け石に水、いちど沈んだ空気はそう簡単には浮上せず。
なんとなく、うな垂れるような空気の中、僕らはいちように黙り込んでしまった。


その時、ドアをノックする音が数度、響いた。
しかし誰も返事はしなかった。

しばしの間を置いて、ドアは静かに開いた。

从 ゚∀从「失礼するよ」

現れたのは、紫がかった銀髪に、少しだけ尖った耳を持つ人間。
その髪色のせいだろうか、あの森で会った彼女の面影が垣間見えた気がした。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/31(日) 16:18:23.60 ID:7z3ARQ0I0

まじまじと見ていると、不審に思われたのだろうか、困った風に身をすくめている。

从;゚∀从「おっと、怪しい者じゃないよ、私はハインリッヒ…この施設の責任者だ
     あのタテガミに襲われて、しかもそれを撃退してくれたと聞いてね……
     是非、そのお礼がしたいと思ってここに来たのだよ」

ミ;゚Д゚彡「お礼…って、なんでまた…?」

从 ゚∀从「あのタテガミにはね、私等にとっても困った存在で…いやもうだった、か」

从 ゚∀从「何にせよ、いつ頃だったかな、あの遺跡周辺によく出没するようになってからというもの…
     住人にも被害にあった者が多発していて、ほとほと困りものでね」

从 ゚∀从「大人しく山へ帰ってくれることを願っていたんだが…
     そろそろハンターを雇って退治するべきかと思案していた所だったんだ」

君らは災難だったかもしれないが、こちらとしては本当に感謝している。
ハインリッヒと名乗る女性は、朗らかに笑いながら話を続けた。



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/31(日) 16:20:09.91 ID:7z3ARQ0I0

最初は適当に相槌をうっていた僕らだったけど、気付けば、いつしか色々な話をしていた。
これまでの旅の経緯、僕らの素性、思い出してみれば質問ばかりをされたような気もする。


从 ゚∀从「ふーむ……君らを見て、もしや…とは思ったが」

と、不意にハインリッヒは顎に手をあて、何やら意味深な言葉を呟いた。
楽しげに話す彼女の雰囲気に、すっかり気を許し始めていた僕らはすぐにその反応に食いついた。


いや、正しくは、僕以外、なのだが。


ミ;゚Д゚彡「なんだ? 俺の顔になんか…?」

从 ゚∀从「……やはり、似ているな…」

ミ;゚Д゚彡「へ? 誰に?」


僕はなんだか、この人に対して、異様なまでの恐怖を覚えていた。
何故だろう、こんなのも優しげで、明るく真面目そうな人なのに。



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/31(日) 16:23:06.94 ID:7z3ARQ0I0

从 ゚∀从「それに、そっちの猫くんも」

彼女の目が僕を捉えた瞬間、身体が跳ね上がりそうになった。
ハインリッヒはそんな僕を一笑し、更に考えるような仕草を見せてから。


从 ゚∀从「……失礼を承知でお聞きしたい」


含み笑いを貼り付けた表情で。


从 ゚∀从「君と、そこの猫君は……あの忌まわしき風の吹いた節に、誰かに拾われた、
     なんて事はないかい?」

(;*゚∀゚)「っっ!!」

意外にも、その言葉に誰よりも早く反応したのはつーちゃんだった。
それもその場で立ち上がり、今にも食って掛かる勢いで睨んでいる。

だが、まるで気にしない様子でハインリッヒが続けた。


从 ゚∀从「……驚いたな、となると本当に君らは………」

从 ゚∀从「あの、ホライゾンとフサ助なのかい?」



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/31(日) 16:25:16.89 ID:7z3ARQ0I0


この人は、僕らの事を知っている?

知らず僕は喉をならして、緊張しきった胸の鼓動に意識すらものまれて。
フサは絶句した風に唇を震わせ、棒立ちのままたちすくんでいた。


从 ゚∀从「……もしよければ、一緒に来てくれないかな、そうすれば色々わかると思うのだけど」

从 ゚∀从「たとえば……ブーン君、きみの頭痛と、背中の痛みもきっと治せるだろうね」

(;゚ω゚)「!!」

直接口には出さないが分かる、ハインリッヒはこう言っている。
自分は僕らの過去を知っている、知りたければ一緒に来い、と。

あまりの事に言葉を失くし、僕は半開きの口で言葉をどもらせた。

だが、いいのか、そんな言葉を簡単に信じてしまって。
先ほどまで僕が彼女に対して感じていた畏怖を、もう忘れてしまったのか。

けど、それも全ては何となく、という話に過ぎない。
なんとなく怪しいから、それを拒否するべきなのか?



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/31(日) 16:28:04.52 ID:7z3ARQ0I0

本当に拒否していいのか?

もしかしたら、ここが、僕らの生まれ故郷なのかもしれないのに?

「だ、」

そんな迷いを断ち切るように叫ぶ声があった。


ミ;゚Д゚彡「駄目だ!! 行かなくていい!!」

今度もまた意外なことに、反対したのはフサだった。


从 ゚∀从「ふむ? どうしてかな? よければ理由を聞かせて欲しい」

ミ;゚Д゚彡「理由は……その、ないけど…」

ミ;゚Д゚彡「じゃなくて、ええと……」

何故かフサはひどくうろたえていた。
やがて僕をちら見すると、乾いた笑顔で、誰かに言い聞かすように言う。


ミ;゚∀゚彡「い、いいじゃん、覚えてもいない昔のことなんかさ……どうでも」



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/31(日) 16:30:49.25 ID:7z3ARQ0I0

ミ;゚∀゚彡「んなどうでもいい事より……今は怪我をはやく治してさ…」

从 ゚∀从「怪我……か、そういえばフサ君、きみは本当に丈夫みたいだね」

从 ゚∀从「確か運び込まれたとき……一番重症だったのh」

理解したくも無いのに、頭が瞬時にその言葉を理解してしまった。
あの映像が脳裏をかすめ、ドクン、と身体が脈打つのがわかった。


あの大きな山犬が、つーちゃんを殴り飛ばした直後のこと。

崩れ落ちるつーちゃんの姿を見て、フサは怒声をあげて――――。

そして、それからどうなった?



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/31(日) 16:32:21.80 ID:7z3ARQ0I0


血が、おびただしい量の血しぶきが、が、がgggggggg。



(;゚ω゚)「うっ、う、あああああああああああ……
      あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」



(;゚ω゚)「そうだお、教えてくれお!! 僕は…僕はいったい何なんだお!!??
      なんで僕らはあの節にあんな場所に居たんだお!!
      それにあの空の夢は!? 僕は空で!? え!? いや、違う!!
      あの血溜りは!? あれはどの時だったんだお!? え、どの時!?
      ちがう、ちがうちがう、ちがうんだってば、そうじゃない!!
      だいたいあの狼だって、本当は僕が!! ぼく…僕え、僕、なのか…? じゃあ……」

僕は半ば錯乱状態でハインリッヒへ駆け寄り、すがるように言葉を紡いでいた。
だがやがて、僕は見た。見下すような目つきで僕を見るその表情が、愉悦に歪むのを。



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/31(日) 16:33:34.73 ID:7z3ARQ0I0

(;゚ω゚)「ひっ!!?!??」

从*゚∀从「ああ、大丈夫、ちゃんと教えてあげるからね、ぜんぶ」

从 ∀从「何もかも、ね」

そう言うなり、ハインリッヒが器用に指を鳴らした。
同時に、ドアが激しく開かれ、集団が一気になだれこんできた。

(;*゚∀゚)「なっ、なんだてめえr!!」
爪゚∀゚)「っと、動かないでもらおうかあ!!」

(*゚A゚)「すみまへんなあ二人がかりなんか、でもま、同じつー族としては、
    これくらいはせえへんと危険やさかいなぁ……」

更には、つーちゃんが反応するよりも先に、つー族らしき二人組みが武器をつきつけ動きを封じていた。
うち一人は少し変わったナイフを手に、そしてもう一人はT字に曲がった奇妙な物体を構えている。



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/31(日) 16:35:35.31 ID:7z3ARQ0I0

爪゚∀゚)「ひゃーーーっひゃひゃひゃ、言っておくが、こいつから飛び出すのは鉛玉だ、
    あたりゃあ死んじゃうので、注意してくれよ!?」

(* ∀ )「……っ」

(;*゚ -゚)「えっ、えっ、なんですかこれ!? 何事変!?」

从 ∀从「―――――クッ」

从 ゚∀从「ハハッ、あははははははははは!!!」

从 ゚∀从「ついに見つけた……なかば諦めかけていたが、まさか自ら転がり込んできてくれるとはなぁ!!」

从+゚∀从「やった……やったぞ、これでとうとう完成する……待っていてくれよ皆、もうじきまた会えるぞ!!」

真っ黒い服をきこんだ人間が、僕とフサを羽交い絞めにして捕らえた。
どうにか抵抗しようと試みるが、何故か体に力が入らない。

いや、それどころか……熱い、身体が、頭が、熱い。

从 ゚∀从「やはりな……あの時と同じ症状だ、原因はやはり過度のストレス、かな?」

从 ゚∀从「連れて行け」



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/31(日) 16:37:18.82 ID:7z3ARQ0I0

僕を捕まえた人たちが、僕をそのまま病室の外へと引きずっていく。

身体の熱は、どんどん上がっていくような気がして、
頭がやけにぼうっとして、抵抗する意思さえも、すでに無くなっていた。

ミ;゚Д゚彡「ブーン!! おい、待て!! どこ連れてくんだよ!!」

从 ゚∀从「安心していい、フサ助君、君も一緒だ」

ミ;゚Д゚彡「なに、い、うわっ、ちょ、離せよ!! なんなんだお前ら!!」


ややあって、僕の視界は闇につつまれた。何かで目隠しをされているらしい。
それから何かに乗せられ、運ばれていくのが分かる。

だけど今は、なぜだろう、恐怖よりも、不安よりも。
この身体の熱さと、さっきから皮膚がひっぱられるような違和感が収まらず、
ただただ、気持ち悪いこの感覚に耐えるので、精一杯だった。








43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/31(日) 16:38:06.88 ID:7z3ARQ0I0








             ∧∧ 
            ミ   彡
             ミ,,,,,,,,,,ミ

           紅季 74節








46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/31(日) 16:40:03.22 ID:7z3ARQ0I0

今まで単に目を閉じていて、それを今開いた、そう感じる程、はっきりとした目覚めだった。
僕が居るのは、透明な壁があたりを囲む、巨大な密室のようだ。


辺りは暗く、僕の居る場所を中心に明かりが広がるだけで、他に何も見えやしない。
人は居るのに、なんだか寂しい場所だと、漠然と思った。

ふと、すぐ目の前に、こちらを見つめる人影があった。
フサだった、この壁が邪魔してなにを言っているのか聞き取れないけど、
僕に向かって必死になにかを叫んでいるのはわかった。


しばらくすると、ハインリッヒが現れた。

見れば、何やら分厚い本みたいになってる紙の束を手渡しているようだ。
怪しんでいるのか、フサはそれを払いのける様な仕草をとる。

それでも、ハインリッヒは物怖じする事も、無理強いさせる風でもなく、
ただ黙ったまま、それを受け取り、そして読むように促していた。



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/31(日) 16:42:34.96 ID:7z3ARQ0I0

ミ;゚Д゚彡「……」

从 ゚∀从「………」

やがて受け取った紙の束を怪しげに見比べてから、フサはゆっくりと紐を解き、
ぶ厚い本みたいに重なった紙面を、ぱらぱらと流し読むようにめくっていく。
けど、それも最初だけで、だんだんとそのペースは目に見えて落ちていった。


ページがめくられていく。


気付けば、あたりを押しつぶすような沈黙が支配していた。
聞こえるはずが無いのに、ページをめくる紙擦れの音がなぜか聞こえてくる。

その妙な緊張感のでいだろうか、胸がやけにざわつく。


(; ω )「……」

ミ,, Д 彡「…………」

ただただ静かに、一枚一枚たしかめるように、フサは紙束をめくっていく。
始めは、わけもわからない様子で、困ったふうに。

やがて目を伏せかたまった。



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/31(日) 16:44:17.40 ID:7z3ARQ0I0

ちょっとだけ見えたのは、どこを見ているのかもわからない、泣き笑いのような表情だった。


(;゚ω゚)「フサ…?」

フサの手からこぼれるように、紙面の束がばさばさと落ちる。
はらり、ひらり、左右に揺れながらやけにゆっくりと落ちていく沢山の手紙。
それにともなって、やがて崩れるようにフサは膝をつくと、その表情をさらに歪めていく。

耳をすますと、小さく、微かにではあるが、話し声が聞こえてきた。


ミ,,゚Д;彡「あ……れ?」

ミ,,;Д;彡「あれ、俺……なんで泣いてんだ……?」

从 ゚∀从「わかるかフサ助、その手紙は……」

ミつд;,,彡「……くそ、止まらん、んだよ、これ……ぅ、く」

フサは声を震えさせ、次から次へとあふれる涙を拭っていた。
けれど、それも長くは持たなくて、だんだんと声が出せなくなっていき、
やがてとうとう誤魔化す言葉もだせなくなり、呻きながらうずくまってしまった。



55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/31(日) 16:46:19.05 ID:7z3ARQ0I0

不意に、耳を塞ぎたくなった。

あの人が口をつりあげて、何かを言おうとしているから。

言わないで、僕はこれ以上この話がつづいてしまうことが怖かった。
やめてと願う心が、声の代わりに涙になってあふれ出す、他ならぬ僕のために。
けれど時は無情にも、聞きたくなかった言葉をもって、記憶の蓋をあけてしまう。


从 ゚∀从「お前の母親が、お前宛に書いた手紙だよ」

ミ,,;Д;彡「………」


从 ゚∀从「フー、それが君の本当の名前だよ、ああ、病院で見た君の笑顔はあのころの生き写しだったさ、
     懐かしいなぁ……そういえば、フッサール…父親の名を名乗っているのは、思うにあれか
     自分が当時に置かれた環境を前にして、無意識のうちに、そこに足りない物を自分に重ねたのかな?」



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/31(日) 16:48:26.77 ID:7z3ARQ0I0

(; ω )「…………」

視界がものすごい勢いでぶれはじめ、ひどい鈍痛が目の奥をぐりぐり抉る。
目が回るような痛みのなか、うずくまって堪える僕の脳裏に、なにかの映像が三度めぐる。

一面の空と眼下に広がる雲のじゅうたん。
ふかい森と、そこに生きる彼女の姿。
前をいく白衣と、怪しい棒と針。

ぜんしんから ちのけがひいていく あのまどろみのようなかんかく。

きづけば。
ぼくはひとりで なにかを もとめて ここにいて。
はじめて の ともだちが。
くずれるかべ。
よるの そら    かぜが    ふいて た。
そしてうごかない  の すがた。

視界が反転。



60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/31(日) 16:50:13.84 ID:7z3ARQ0I0

ばづん、と音を立て、頭の中でなにかが弾けた。
忘れたはずの出来事が、次から次へとあふれ出ては形になっていく。

僕は知っている。
その名を知っている。
だって、その子は。

『……ヒャン』

『ソウ、コノ大キナ猫サンハネ、 猫テイウンダ』

『ブ ヒャン?』

『チガウチガウ、文猫ダヨ』

『ブ、ブー・・・?』

『 チャンノ、オ友達ダヨ』


ミ*゚∀゚彡『ブーンヒャン!!』
僕に、名前をくれた、大事なともだちだから。



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