( ^ω^)ブーン系で読みとくおとぎ話のようです

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/03(日) 02:16:54.82 ID:OxQ1FTtzO
むかし、むかし、ある夫婦の間に、それはそれは可愛い女の子が産まれたそうな。
女の子はハインと名付けられ、夫婦の愛を受け、スクスクと育って行きました。
少し男の子っぽいところがありましたが、元気なのは良い事だ、
と両親は気にも止めませんでした。

『おれ、おっきくなったらパパのお嫁さんになるんだー』

小さな頃、そんな夢を見ていたハインも今年で十六歳です。

从#゚∀从「死ねよ。クソ親父が!」

少女は立派な大人になりました。
学校にも通わず、毎日悪い仲間達と遊び放題。
今では暴走族グループ、『赤頭禁』を束ねるリーダーです。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/03(日) 02:18:03.74 ID:OxQ1FTtzO
――赤ずきん。

それは暴走族グループの名称、そしてハインの二つ名でもある。
彼女一人で敵対グループを壊滅に追いやったのはまだ記憶に新しい。
一人対数十人の圧倒的な力の差の中。
彼女は恐れを知らず、木刀一本で全員を病院送りにした。
遅れて応援へと駆け付けた仲間達が見た物、それは。

全身を返り血で真赤に染めた、ハインの後ろ姿であった。
余りに凄惨な光景に沈黙する仲間達へと、ハインは振り向いた。

血にまみれた、笑顔。
状況に堪り兼ねた仲間の一人が、震えながら呟いた。

「あ……赤ずきんだ……」

と。

――赤ずきんが誕生したのだ。



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/03(日) 02:19:18.28 ID:OxQ1FTtzO
さて、そんなどうでも良い話はおいときましょう。
ハインは自室のベッドに寝転んで本を読んでいます。
本のタイトルは愛空。人気沸騰中の恋愛小説です。

从 ゚∀从「くだらねぇな」

舎弟のW-Tanabeから強引に借りたそれを、ハインは投げ飛ばしました。
ごろりと寝返りをうって白い壁を見つめます。

从 ゚∀从「愛だと? 馬鹿馬鹿しい」

独り言を一つ呟いて目を閉じました。
世界が真っ暗になります。
そこにはハインが密かに求めている風景が映りました。

从 - 从「…………………」

バタン。

川 ゚ -゚)「やべえ、まじやべえ」



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/03(日) 02:20:30.50 ID:OxQ1FTtzO
部屋に血相を変えた母親のクーが、突然入ってきました。
ハインは身を起こして、勝手に入って来たクーに怒りを向けます。
近くにあった枕を掴んで、力の限り投げつけました。

川 ゚ -゚)「ふ、遅い」

その枕をクーは軽く裏拳で払いのけようとします。
クーの手に触れた途端、枕が破裂し、羽毛が部屋に舞いました。
この親にしてこの娘あり、というやつですね。

从 ゚∀从「…………何がやべえんだよ」

問うハインに、クーはしれっと答えました。

川 ゚ -゚)「まじやべえ、お婆ちゃんが死にそうだ」

从;゚∀从「Maji、Yabeeeeeeeeeeeeeeeeeee!!!!!」

ハインはお婆ちゃんの事が大好きでした。
不良のハインに昔からかわらず、優しくしてくれるからです。
そのお婆ちゃんが死にそう。姉さん、一大事です。



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/03(日) 02:21:47.41 ID:OxQ1FTtzO
川 ゚ -゚)「私は忙しいからな。こいつを届けてやってくれ」

そう言うとクーはお菓子とぶどう酒を渡しました。
酒は百薬の長。大丈夫、どんな病気でも治ります。
ハインは真っ赤な特攻服に着替え、外へと走って行きました。

从#゚ー゚从「総長! 気合い入ってますねぇー! どこかに攻めるのですかぁー!?」

外で待機していた舎弟のW-Tanabeが優しい声で喋りかけました。
彼女は月兎の娘です。本名は渡辺兎子と言います。
W-Tanabeはグループ内でのコードネームです。
頭からぴょこんと伸びた兎耳が、彼女の魅力を一層引き出していました。

从 ゚∀从「ちとヤボ用で隣町まで行くぜ!」

从#゚ー゚从「隣町……、とうとうあのノロマな亀共を潰すのですねぇー!?」

渡辺は颯爽とハーレーに跨がり、エンジンをイグニッションさせました。
それに続いてハインも後部座席へと座ります。

ハーレー「ドゥルンドゥルン!」



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/03(日) 02:22:53.90 ID:OxQ1FTtzO
心地好い振動がハインの体を通っていきます。
ゆっくりとハーレーが動き出しました。
アリス峠最速の渡辺は法定速度を遵守して走ります。

从#゚ー゚从「ヒャッホーイー! 今日もご機嫌だよぉー!?」

気持ち良い風を受け、渡辺はおっとりとした声をあげました。
それに対してハインは苛立ちを隠せません。
余りにもスピードが遅すぎるからです。
ハインは気を紛らわせようと煙草をくわえました。
ジッポで火をつけようとした瞬間、小さな声が聞こえました。

从  从「総長、私の親父はそいつのせいで死んじまったんだよ」

从;゚∀从y-「………………………」

小さな渡辺の背中。
それが物語ることは。
どんな難しい書物より重かったのでした。

――重量的にも内容的にも。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/03(日) 02:24:00.88 ID:OxQ1FTtzO
ハインは煙草をポケットにそっとしまいます。
そうこうしている内に隣町へとたどり着きました。
親猫がたくさんの子猫達を連れて、道路を横断しています。
長い信号に捕まってしまいました。
時間を無駄にしたくないハインは、座席から降りて走り出します。

从 ゚∀从ノ「サンキュー! 渡辺!」

从#゚ー゚从(一人で充分って事ですね。流石……)

森の中へとハインは入って行きます。
お婆ちゃんの家はこの森の奥深くにあります。
不便な立地条件ですが、価格に妥協した結果でした。

从 ゚∀从「待っててくれよ……お婆ちゃん……」

草木をかき分け、必死にハインは駆け抜けます。
お婆ちゃんの家まであと少し、というところでハインの前に狼が現れました。



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/03(日) 02:25:38.80 ID:OxQ1FTtzO
从 ゚∀从「長岡……」
  _
( ゚∀゚)「ハイン」

全身茶色い毛に覆われた、大きな狼はハインへと近よります。
ハインと狼の長岡は中学生の時、恋人同士でした。
しかし、運命という物は上手く行きません。行かせてくれません。
ある出来事を切っ掛けに、二人の仲はこじれ、別れたのです。
それがハインがグレてしまった原因となったのでした。
  _
( ゚∀゚)「聞いてくれ、ハイン。俺はまだお前を……」

从#゚∀从「近付くんじゃねえ!」

ジリジリと近寄ってくる長岡に対し、ハインは怒鳴りました。
木の枝に止まっていた鳥達が驚き、一斉に羽ばたいて行きます。

从#゚∀从「俺は急いでるんだ! てめえに構ってる暇なんてねーんだよ!」

叫び、ハインは長岡のお腹に一発蹴りを入れ、再び走り出します。
長岡の側を横切ろうとしたその時、大きな手がハインの手を掴みました。



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/03(日) 02:26:46.71 ID:OxQ1FTtzO
从 ゚∀从「てめえ……まだ痛い目に会いたいのか」

鬼のような目でハインは長岡を睨みます。
しかし、長岡は臆せずにお腹を押さえて静かに言いました。
  _
(  ∀ )「この大きな手はお前を離さない為にある」
  _
(  ∀ )「大きな目はお前をしっかりと見る為にある」
  _
(  ∀ )「大きな耳はお前の声がちゃんと聞こえる為に」
  _
( ゚∀゚)「そんでよ、この大きな口は、口は……」



  _
( ;∀;)「お前に想いを伝える為にあるんだよっっっ!!!!!」

从 ;∀从「ッッ!!」

長岡は涙を流しながら、ハインを優しく抱きしめます。
そして同じように、いいえ、それ以上に優しくキスをしました。
乙女の恋心はいつだってWelcome。



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/03(日) 02:27:51.29 ID:OxQ1FTtzO
ノパ听)「遅かったな! 死ぬかと思ったぞ!!」

从 ゚∀从「ごめんよ。婆ちゃん」

お婆ちゃんのヒートは、ボクシンググローブをつけてサンドバッグを殴っています。
たまにローキックを挟む事も勿論、忘れません。

ノパ听)「まぁ、吸血鬼の私が死ぬ訳ないんだけどな!!」

从;゚∀从「あ?」

そうです。ヒートは永遠の若さを保つヴァンピレスなのです。
それにも関わらず、クーはヒートが死にそうだと言ったのでした。

ノハ*゚听)「首筋のそれ隠した方が良いぞ!」

从 ゚∀从「?」

ハインの首筋には赤く染まったキスマークが刻まれていました。
二人が森の中で深く愛し合った証です。

――てへへ。



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/03(日) 02:29:00.04 ID:OxQ1FTtzO
――――

「仲直り出来て良かったな」

「すみません。無理を言ってしまって」

「それは良いけど喧嘩の原因って何だったの」

「それは…………」

「眉毛が鬱陶しいから剃れと。
 これは俺の存在理由なんです」





「馬鹿な娘で、正直すまんかった」

――――



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/03(日) 02:30:04.92 ID:OxQ1FTtzO


第二話「赤ずきんさん」



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