( ・∀・)見つめているようです

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 01:35:31.70 ID:6qgF1rcw0
ケース・1


ξ゚听)ξ 「近寄らないで」

( ゚∀゚)「なんでー、いいじゃん。俺、こうみえて運転うまいんだよ?」

ξ゚听)ξ 「警察呼ぶわよ」

( ゚∀゚)「またまたー、冗談はいいからさ、車乗ってよ。キミの家まで送ってくよ?どこ住んでんの?」

ξ゚听)ξ 「・・・」

時刻は午後十時。大きな街、ある暗い路地での光景だ。

自動車の窓から身を乗り出し、少女に話しかける若い男。
少女の歩くスピードにあわせて、車を前進させている。



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 01:36:44.86 ID:6qgF1rcw0
( ゚∀゚)「俺さー、キミが気に入ったんだよ。一目惚れってやつ?」

ξ゚听)ξ 「・・・」

( ゚∀゚)「いや、ほんと。俺あんまりこういうことって無いんだけどさ、キミを見たとき、ビビッときちゃってー」

ξ゚听)ξ 「・・・」

( ゚∀゚)「ほんと可愛いよねー。高校生?学校でモテるっしょー?ねえ、おしえてよー。ケータイ番号でいいからさー」

ξ゚听)ξ 「・・・」



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 01:37:47.58 ID:6qgF1rcw0
彼女は学校からの帰り道だった。仲の良い友達と二人で、ゲームセンターに立ち寄った。
やかましい店内で、UFOキャッチャーのぬいぐるみを取ったり、占いをしたり、プリクラを撮ったりした。
そのプリクラは、さっそく一枚、携帯電話に貼った。
残りは他の友達にあげたり、家に帰って手帳に貼るつもりだ。

友達と別れたあとも、なんとなく家には帰りたくなくて、あてもなく街を歩いた。
声をかけてくる男は何人もいたが、適当にあしらった。

そんなことをしていたら、すでに日も沈み、仕方なく家に帰ろうとした。
そして人気の無い道を選んで歩いていたら、この男に付きまとわれることになってしまったのだ。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 01:38:53.30 ID:6qgF1rcw0
ξ゚听)ξ 「・・・ウザい」

( ゚∀゚)「え?」

少女が急に足を止め、男性はあわててブレーキを踏む。
少女は言った。

ξ゚听)ξ 「ウザいって言ってんの。なんなの?さっきから。馬鹿なんじゃないの?」

( ゚∀゚)「・・・」

ξ゚听)ξ 「一人でベラベラしゃべって、内心焦ってるくせに無理矢理笑顔つくって。
傍から見たらアンタ相当キモイよ?分かってる?」

( ゚∀゚)「・・・」

ξ゚听)ξ 「分かったんなら、私の半径百キロ以内に入ってこないで。臭いから。じゃあね、人間の屑」

(#゚∀゚)「・・・てめえ」

男性が車から降りようとする前に、少女はすでに駆け出していた。
彼はすぐさまハンドルに手をやり、アクセルに足をかけ、車を猛スピードで発進させた。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 01:40:12.10 ID:6qgF1rcw0
(#゚∀゚)「くそが・・・」

ちょっと下手に出ただけで、調子に乗りやがって。こっちはただヤリたいだけだ。
てめえなんか、ただの肉便器なんだよ。

だいたい、こんな時間まで高校生がここをうろついているのもおかしいだろ。
それじゃまるで「犯してくれ」と言っているのと同じだ。

それになんだあの金髪。高校生だろ?頭おかしいんじゃねえのか。
似合ってねえんだよ、バーカ。

ほら、もう追いつく。車から走って逃げようなんて、無理に決まってんだろ。
大きな道に出れば大丈夫とでも思ってんのかもしれねえが、そうはさせねえ。
俺を馬鹿にした罰だ。もう、てめえは逃げられねえぞ―――――




( ゚∀゚)「・・・あ」



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 01:41:17.16 ID:6qgF1rcw0
ξ゚听)ξ 「え?」

少女の身体が、いきなり宙を舞った。
身体がくの字に曲がり、肩に掛けていた鞄や、靴やいくつかの小物が、夜空に放り出された。

わき道から飛び出した自動車にはね飛ばされた女子高生は、数秒間、何が起こったのか分からずに、ただ空中に浮かんでいた。

ξ゚听)ξ 「――――」

少女は考える。

なぜ、地面が頭の上にあるのだろう。
分からない。

漆黒の空。星は見えない。
他に見えるのは、あの運転手。しつこく付きまとって来た、軽そうな男。
今、彼は口を大きく開けて、驚いた顔をしている。
なぜだろう。



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 01:42:14.14 ID:6qgF1rcw0
ところで、身体が凄く痛い気がする。
脳が、揺れている。
あの運転手。とても驚いている。
なぜだろう。

今日のお弁当。友達。学校。誰もいない家。赤い靴。折れたクレヨン。
なぜだろう。

振り向かない人。振り向く人。笑っている人。実は笑ってない人。
なぜだろう。

揺れるブランコ。壊された砂のお城。水溜り。お母さんの、包丁。
なぜだろう。

何も分からない。



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 01:43:22.67 ID:6qgF1rcw0
ξ )ξ 「なにも―――――」

少女の頭部が、コンクリートに叩きつけられた。
一度だけ弾み、再び地面とぶつかる。

頭皮が千切れ、頭蓋が砕け、脳がつぶれる。
傷口から、真っ赤な液体と固体がこぼれ出る。

肋骨と左腕も折れている。臓器もいくつか、破裂している。

痙攣を繰り返す彼女を尻目に、二台の自動車は急いでUターンし、その場から離れた。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 01:44:23.98 ID:6qgF1rcw0
事故の目撃者は、多くても一人。
轢き逃げ犯も、捕まりはしない。

空は黒い。何も見えない。だが確かに、何かがいる。何かが見ている。
この街を、上空から見つめている。

血はやがて固まり、少女の痙攣もいつしか、おさまっていた。
プリクラに写った少女の顔は、血で汚れていた。

何かが見ている。
この街を、上空から見つめている。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 01:54:06.32 ID:6qgF1rcw0


( ・∀・)「・・・」

ある、部屋の中。さっきの、白い部屋。

ソファーに座ってテレビ画面を見ていた男性は、ふう、と息をついた。
コーヒーを一口すすり、腕時計を見る。

( ・∀・)「・・・まだまだ」

彼は視線をテレビに移し、カップをテーブルに戻した。
画面は、先ほどとはうって変わって、昼間の田舎町を映し出している。

( ・∀・)「・・・ふうーむ」



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 01:56:57.02 ID:6qgF1rcw0
木が多く、綺麗な川が流れている。
小鳥がさえずり、虫が鳴いている。
軽トラックが一台、二人の青年を乗せて走っていた。

( ・∀・)「・・・そうだな」

男はつぶやき、まばたきをなるべくしないよう心がけながら、テレビ画面に見入った。



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