( ・∀・)見つめているようです
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/15(金) 01:48:56.45 ID:a4Q0WM4A0
- ケース・4
ζ(;−;*ζ「・・・ツン!どうして・・・どうして・・・!」
三十代の女性が、遺影を抱えて泣き叫んでいる。
その夫らしき人物もまた、涙をこらえながら彼女の肩に手をやっている。
どちらも、喪服を着ている。
(`・ω・´) 「・・・デレ・・・」
おそらく、遺影の中で笑っている女の子は、彼らの娘なのだろう。
いや、娘だったのだろう。
ζ(;−;*ζ「ツンを、かえしてよ・・・」
(`・ω・´)「どんなに泣いたって、ツンは・・・もう、帰ってこないんだよ・・・」
- 34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/15(金) 01:50:14.66 ID:a4Q0WM4A0
- 轢き逃げ。
夜遅くに道を歩いていたら、飛び出してきた自動車に撥ねられ、頭を強く打ってほぼ即死。
犯人は逃げ、警察が捜索中だ。
だが、決して捕まりはしない。
捕まりはしない。
彼らの娘は、肉体的にも、精神的にも、社会的にも、完全に死んだ。
死んだら何も、残りはしない。
(`・ω・´)「・・・久しぶりに」
ζ(;−;*ζ「・・・」
(`・ω・´)「ツンの顔を、よく見た気がする・・・仕事ばかりで、昔から全然かまってやれなかった
・・・・・ごめんな、ツン」
- 36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/15(金) 01:51:04.87 ID:a4Q0WM4A0
- ζ(;−;*ζ「・・・そうね、あの子は寂しがっていたわ」
(`・ω・´)「きっと、恨んでいるだろうな・・・俺達のこと」
沈黙。女性は泣いている。男性は泣いていない。
そう、男性は、泣いてはいない。
ζ(;−;*ζ「犯人・・・捕まると思う?」
(`・ω・´)「・・・どうだろうな・・・難しいと思う」
ζ(;−;*ζ「なぜ?」
(`・ω・´)「なぜって・・・事故の目撃者が・・・いないからかな」
ζ( − *ζ「ねえ、あなた」
- 37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/15(金) 01:52:48.35 ID:a4Q0WM4A0
- 先ほどとは、部屋の空気が違っている。
酸素や水素、二酸化炭素や窒素の含有量が違う、という意味ではない。
何かもっと、精神的なものの違いだ。
(`・ω・´)「・・・なんだ」
ζ( − *ζ「この間、ツンが死んだ日よ。あなた、その日の夜、車でどこに行ってたの?」
(`・ω・´)「・・・仕事だよ」
ζ( − *ζ「あんな時間に?」
(`・ω・´)「ああ」
ζ( − *ζ「本当に?」
- 39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/15(金) 01:53:27.38 ID:a4Q0WM4A0
- (`・ω・´)「お前こそ、昨日の夜、どこに行ってたんだよ」
ζ( − *ζ「・・・人と、会ってたの」
(;`・ω・´)「なに・・・?」
ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、あなた」
女性が抱きしめている遺影の中の少女は、笑っている。
その表情が曇ることはない。
彼女は続ける。
ζ(゚ー゚*ζ「車庫に停めてある車が一台、足りないの」
- 41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/15(金) 01:54:08.89 ID:a4Q0WM4A0
- (;`・ω・´)「・・・」
ζ(゚ー゚*ζ「これがどういうことか、分かる?」
(;`・ω・´)「・・・わか、らない」
ζ(゚ー゚*ζ「あなた、昔からツンのこと、煙たがっていたわ」
(;`・ω・´)「わからない・・・」
ζ(゚ー゚*ζ「死ねばいい、とまで思っていた」
(;`・ω・´)「わからない」
ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、あなた」
(;`・ω・´)「わからない!」
- 42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/15(金) 01:55:16.49 ID:a4Q0WM4A0
- 女性は遺影を置き、男性の手を引いて歩き出す。
ζ(゚ー゚*ζ「・・・・・ついてきて」
車に乗っている。女性が運転している。
暗い。当然のことだ。
(;`・ω・´)「・・・わからない・・・わからない・・・」
ζ(゚ー゚*ζ「ふふっ・・・」
(;`・ω・´)「ち、ちがう・・・俺はやってない・・・ツンは、確かに邪魔だった
・・・けど」
ζ(゚ー゚*ζ「けど?」
(;`・ω・´)「殺そうとまでは、思わない!俺は殺してない!」
- 44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/15(金) 01:56:58.95 ID:a4Q0WM4A0
- もう、深夜だ。外には誰もいない。
見つめているものは、やはりいる。
ζ(゚ー゚*ζ「知ってる」
(;`・ω・´)「・・・え?」
ζ(゚ー゚*ζ「知ってるよ。あなたは、殺してない。ツンが死んだ夜、あなたは、人と会ってた」
(;`・ω・´)「・・・」
ζ(゚ー゚*ζ「そう、浮気ってやつ」
(;`・ω・´)「・・・お、お前こそ、昨日の夜」
ζ(゚ー゚*ζ「私は浮気じゃない」
- 45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/15(金) 01:58:22.68 ID:a4Q0WM4A0
- ライトを消して、車をとめる。
車から降りた二人は、後ろへまわった。
ζ(゚ー゚*ζ「・・・この人と」
ボンネットを開ける。
男性も恐る恐る、ボンネットの中の物を見た。
(;`・ω・´)「・・・?」
ζ(゚ー゚*ζ「会ってたの」
暗くてよく分からないけど、なんとなく、臭いで分かる、気がする。
(;`・ω・´)「・・・ひっ」
女性が、懐中電灯で照らしたそれは、間違いなく死体だ。
顔はあまり傷ついていない。
- 46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/15(金) 02:00:02.67 ID:a4Q0WM4A0
- (;`・ω・´)「ひ・・・・ひ・・・」
ζ(゚ー゚*ζ「殺した」
若い男の顔。恐怖の表情が張りついている。
首から下は、人間の形をしていなかった。
とにかく、赤黒かった。
ζ(゚ー゚*ζ「目撃者、いたんだよ。だから、殺さなくちゃいけなかったの」
(;`;ω;´)「う・・・・・おえぇ・・・」
ζ(゚ー゚*ζ「・・・さっき、言ったよね?」
(;`;ω;´)「ぐ・・・」
- 48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/15(金) 02:00:49.41 ID:a4Q0WM4A0
- ζ(゚ー゚*ζ「ツンの顔をよく見るの、久しぶりだって。私は最近、見たよ」
(;`;ω;´)「・・・ひ」
ζ(゚ー゚*ζ「ツン、逆さまに浮いてた。何が起きてるのか分からない、って顔で」
ζ(゚ー゚*ζ「私の車に轢かれた。いや」
ζ(゚ー゚*ζ「私が轢いた。そしてツンは・・・」
ζ(゚ー゚*ζ「死んだの・・・・ふふっ」
男性はすでに、自動車の運転席に戻っていた。
胃の中の物をぶちまけながら、必死にキーを回した。
- 50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/15(金) 02:01:59.46 ID:a4Q0WM4A0
- ζ(゚ー゚*ζ「この車で轢いたんだ。帰ってからちゃんと証拠は消したし、念のため隠しておいた」
(;`;ω;´)「狂ってる!狂ってる!お前は!」
ζ(゚∀゚*ζ「ククッ」
分からない。
(;`;ω;´)「クソッ、クソッ、狂ってる!」
分からない。
(;`;ω;´)「はっ」
分からない。
何も見えない。
- 51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/15(金) 02:03:26.63 ID:a4Q0WM4A0
- ζ(゚−゚;ζ「うっ!?」
男性は、窓越しに女性の手を握った。
強く、強く、握り締めた。
(;`;ω;´)「わからない・・・わからない・・・」
ζ(゚−゚;ζ「なにすんの・・・!離して!離してよ!」
車が急発進した。ライトは点いていない。
前方は、暗闇だ。
(;`;ω;´)「わからない・・・見つめている・・・?違うのか?」
ζ(゚−゚;ζ「はなして・・・はなせ・・・はなせ!」
- 53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/15(金) 02:05:00.63 ID:a4Q0WM4A0
- (;`;ω;´)「見つめているのか・・・?そうなのか・・・?」
ζ(゚Д゚#ζ「離せよ!てめえ!このきたねえ手を、離せよ!クソが!」
女性は機械の力で、砂利の上を引きずられていく。
服が裂け、髪がもつれる。
(;`;ω;´)「見つめている・・・見つめているんだ・・・」
ζ(゚Д゚#ζ「グッ・・・離せって、言ってんだろ!殺すぞ!てめえもあのガキみてえに、殺すぞ!」
女性の腕が折れ、皮膚を突き破って骨が飛び出す。
顔が地面に擦れ、肌が裂けて骨が剥き出した。
- 54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/15(金) 02:07:23.41 ID:a4Q0WM4A0
- (`;ω;´)「そうか・・・はは、見ているんだな?やっと、やっと分かった・・・やっと」
ζ( Д ζ「ギャアアアアァァァ!!!」
車は止まらない。
止まらずに、加速する。
加速していく。
(`;ω;´)「見ているんだろう?そこで、くつろぎながら、見ているんだろう?
知ってるぞ・・・」
ζ( Д ζ「・・・」
車が、宙を舞った。
崖だ。何もない、下に海と岩だけが待ち構える、真っ黒な世界。
- 57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/15(金) 02:08:26.86 ID:a4Q0WM4A0
『見つめているんだろう?』
- 58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/15(金) 02:09:34.51 ID:a4Q0WM4A0
- 硬質の岩に叩きつけられた自動車と人間が、いろいろな物を撒き散らしながら砕け散った。
一瞬見えた肉の塊は、果たして男性と女性、どちらの物だったのだろうか。
何もない。そう、何もないのだ。
だが、何かが見ている。
この光景を、上空から何かが見つめている。
何かが、見つめている。
- 59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/15(金) 02:11:00.61 ID:a4Q0WM4A0
( ・∀・)「・・・これはこれは」
白い部屋。テレビ。テーブル。冷めたコーヒー。吸殻と灰皿。ソファー。それ座る男性。
( ・∀・)「ふうーむ・・・まあ、いいか」
出入り口はない。窓もない。
腕時計はある。男性の腕に、巻いてある。
( ・∀・)「次で・・・・・最後だな」
腕を組み、テレビ画面を見る。
そこには、ある部屋が映っている。
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