( ^ω^)ブーンが心を開くようです

  
94: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/25(土) 00:04:54.20 ID:jKdbHlH10
  
第18話 後編


  _
( ゚∀゚)「『アンノウン』が少なくなってきてる……?」

(*゚∀゚)「うん、どうも最近は仕事の数が減ったと思ったら、全国的に『アンノウン』が出なくなってるみたい」

(*゚ー゚)「原因はわかりませんが、私達の仕事が実ったんでしょうね」

『アンノウン』が減っている。
その調査結果は私達にとって喜ばしいことだった。

私達という狩人がいても、『アンノウン』の被害が全部防げるわけではない。自殺者はまだいる。
だが、こういう結果が出てきてくれれば、気持ちも少しは楽になるというもの。自分達の仕事が何らかの形で報われていると思えるのだから。
  _
( ゚∀゚)「なら、普通の仕事も増えてきそうだな」

⌒*(・∀・)*⌒「普通の仕事ってなに? 兄さん」
  _
( ゚∀゚)「まあ、『天国』の元々の仕事さ。コピーやら書類整理やらの雑用。時には荷物運びだとかな……」

(*゚∀゚)「私達は研究しなくちゃだから、そういうのはジョルジュに任せます〜」
  _
( ゚∀゚)「ちょwww ひでえwww」

『天国』に『アンノウン』の対策がはじめられて、早1年。
私達は仕事に確かな手ごたえ感じつつ、日常を過ごしていた。



  
98: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/25(土) 00:06:51.60 ID:jKdbHlH10
  

そんな時に、ひとつの仕事が舞い込んできた。
それは国会議員から国防長官、そして『天国』の上司というルートを通って命じられたという、『最重要任務』に位置するものだった。

「ある国会議員がどうやら『アンノウン』に憑かれたらしく、最近連絡がない。秘書に聞いても居場所がわからないという。
 もしかしたら自宅で『アンノウン』に憑かれたまま苦しんでいるかもしれないので、急遽その家まで向かってほしい」

そう上司から告げられた時は、何の疑問も持たなかった。
有名人が『アンノウン』に憑かれたから助けてほしい、という仕事はこれまでも何度かあったからだ。

ただ、今回はかなり有名な国会議員が救出相手らしく、ナビゲーターと指令を出す役には直属の上司がついた。

この上司は、これまで『アンノウン』対策にはまったく力を入れず、
最近になって私達が有名になった途端、手の平を返したように『私がやりました』顔で仕事を手伝うようになった男だった。

気に食わない男だったが、一応上司なので命令には従った。

仕事の日時は、夜中の2時。
周りにこの仕事のことが知られてはならないので、あくまで秘密裏に議員を助けなくてはいけない。
私達は準備よく仕事に望んだ。



  
100: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/25(土) 00:09:08.55 ID:jKdbHlH10
  

その日、その仕事についたのは私達全員だった。
  _
( ゚∀゚)「俺たち全員が狩り出されるのも久しぶりだな」

(*゚∀゚)「最近は別々で仕事するのが多かったもんね。私は嬉しいよ」

(*゚ー゚)「もうすぐ議員さんの家ですね」

私達は車を飛ばし、都内某所にある議員宅へと急いだ。

議員は独身で、都内の一戸建て住宅で1人暮らししているとか。
独身で一戸建てとは、これまた贅沢な暮らしをしているものだ。

そうこうしているうちに車は目的地に到着。
黒い服やコートに身を包み、私達は車を降りて議員宅の前に出揃った。

ジョルジュが先駆けて、インターホンを押す。
ぴんぽーん、という間の抜けた音が鳴るが、中からの反応はなく人の気配がしない。

留守か?
  _
( ゚∀゚)「うーん、寝てるのか? まあとにかく上がろう。鍵は受け取ってるしな」

ジョルジュが、秘書さんから受け取った鍵を穴に挿す。
だが、回すまでもなく、ドアノブに手をかけると扉は勝手に開いた。



  
101: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/25(土) 00:11:12.57 ID:jKdbHlH10
  

⌒*(・∀・)*⌒「? 開いてたみたいだね」
  _
( ゚∀゚)「そうだな……どうも様子がおかしい。中に入ろう」

ジョルジュを戦闘に、つー、しぃ、照美、私の順で中に入る。
それぞれ部屋の中を捜索し、議員さんはいるのかどうかを確認する。

と、「おい! こっち来てみろ!」というジョルジュの呼ぶ声が聞こえて、みんなが居間に集まった。

居間には1人の男――問題の国会議員の先生が、死体で寝転がっていた。

「どういうことだ?」
  _ 
( ゚∀゚)「わからん。けど……これは『アンノウン』の仕業じゃないな。
     と、照美は見るな。怖いぞ」

⌒*(・∀・)*⌒「う、うん」

(*゚ー゚)「ですね。頭を銃弾で打ち抜かれてます……明らかに人間がやったことです」

(*゚∀゚)「どういうこと? 『アンノウン』の気配なんてひとつもしないじゃない」

それぞれが動揺の色を浮かべ、居間に横たわっている死体を見つめていた。

確かに死体にはほとんど損傷がなく、眉間に銃弾一発を打ち込まれているだけだ。
『アンノウン』の気配などひとつもないし、どうにも嫌な予感がしてならない。



  
102: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/25(土) 00:13:33.18 ID:jKdbHlH10
  

「早くここを出た方がいいかもしれん。どうにも嫌な感じだ」
  _
( ゚∀゚)「……だな。よし、みんな車に戻ろ、」

ジョルジュが言いかけた瞬間、外で1発の銃声が響き渡った。

なんだ? どうしてこんな場所に銃声が?

その場にいた全員がそんな疑問を頭に浮かべていると、次の瞬間にガラスの割れる音が部屋中に鳴り響いた。

「伏せろ!」

私がそう声をかけると、それぞれが反射的にしゃがみこんだ。

私はみんなが無事なことを確認すると、いったい何が部屋の中に入ってきたのかを探し、見つけて驚いた。
床に丸っこい鉄の塊が落ちており、しばらくするとその中から白い煙のようなものが噴き出してきたのだ。

催涙弾?



  
103: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/25(土) 00:15:49.96 ID:jKdbHlH10
  
  _
( ゚∀゚)「な、なんだあ?」

「催涙ガスだ! 逃げるぞ!」

そう叫び、みんなが走り出した所で、銃声が連続で鳴り響いた。
後ろを振り返ると、完全武装した特殊兵が乗り込んでくる姿が。
しかも、その後ろにはパトカーの赤い光も見える。

なんだ、これは?
どうしてパトカーが? どうしてこんな兵士が? どうしてこんな街中で銃を乱射しているんだ?

わけがわからずとも逃げる以外に選択肢はなく、ジョルジュを先頭にしてみんなは裏口から外に出る。
裏はまだパトカーで囲われていないらしく、人の気配はしない。

(*゚∀゚)「な、なんだっていうのよ!」
  _
( ゚∀゚)「知るかよ! とにかく逃げるぞ! こっちだ!」

ジョルジュがひとつの方向を指差し、走り出す5人組。

この状況に多くの疑問符を浮かべるものの、後ろからの銃声に後を追いかけられている自分達は逃げる以外に道がない。



  
104: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/25(土) 00:18:36.70 ID:jKdbHlH10
  

「いたぞ! こっちだ!」
「殺人者達を捕まえろ!」

殺人者? いったい何のことだ?

そう疑問の言葉を言い出す暇もなく、後ろから銃声が何発も聞こえる。

と、ひとつの銃声が響いた途端、前を走っていた照美が倒れた。

⌒*(・−・)*⌒「っいた……あ、ああ……」

銃弾は太ももをかすっており、怪我はそれほど深くはなかったものの、照美は銃に撃たれたということにショックを受けているようだった。
立ち上がれず、ただかすかな悲鳴をあげるだけで、立ち上がろうともしない。

ジョルジュは立ち止まり、後ろを追いかけてくる兵士達を一瞥し、そして今度は私達の顔を見渡す。
  _
( ゚∀゚)「ちっ、このままじゃあ、追いつかれる……クー、銃は持ってきてるか?」

「ブローニングが一丁……それだけだ」
  _
( ゚∀゚)「俺もマグナムが一丁……だが、時間稼ぎにはなるはずだ。
     よし、しぃとつーは照美を連れて、先に逃げてくれ。落ち合うのは○○町の公園にしよう」

(*゚∀゚)「え、けど、ジョルジュ達は……」
  _
( ゚∀゚)「大丈夫だよ。俺たちが一緒なら、どんな相手にも負けないさ。な、クー?」

「……そうだな」



  
105: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/25(土) 00:21:20.60 ID:jKdbHlH10
  

「こっちだ!」という兵士の声が聞こえる。もう敵はすぐそこまで来ていた。
ジョルジュは「早くしろ」と声をあらげて、腰からマグナム銃を引き抜いた。
  _
( ゚∀゚)「俺は死なないさ。つー、俺はきっとまた会いに行くからさ」

(*゚∀゚)「……わかった! 気をつけなさいよ!」

「しぃと照美も早く行け!」

(*゚ー゚)「う、うん!」

⌒*(;−;)*⌒「い、痛いよお……兄さん……」
  _
( ゚∀゚)「泣くな! 今はとにかく逃げるんだ! お兄ちゃんがついてるだろ!」

⌒*(;−;)*⌒「う、うん……」

しぃとつーが照美の両肩を支え、走り出していく。その足取りはおぼつかなく、頼りない。
彼女達を守るために、ここは自分達が頑張らなくてはならない。

拳銃2丁で、特殊部隊にどこまで渡り合えるかわからないが……やるしかない。
生き残るためにも。生き残らせるためにも。



  
108: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/25(土) 00:24:32.29 ID:jKdbHlH10
  

(♯゚∀゚)「この、この!」

「……ちぃ!」

物陰に身を隠しつつ、特殊部隊に拳銃で銃弾を浴びせて牽制をする。
そうすることでなんとか彼らの足を止めて、つー達の逃げる時間を稼ぐ。
そして、あわよくば自分達が逃げる機会も得る。

運任せの作戦だったが、1人でも死者を減らすにはこうするしかない。敵も味方も。

ブローニングから何発もの弾が発射されていく。ある弾は相手に当たり、ある弾は外れ、兵士のような奴らが近づないような状況を作ってやる。

だが、それでもこちらの装備など貧弱なものであり、どれだけの腕を持とうが相手のサブマシンガンに勝てるはずがない。
弾は残り少なくなっていき、じりじりと距離を詰められていってしまう私達。
  _
(♯゚∀゚)「くそ! もうすぐ弾がなくなるぞ!」

「……む、これは」

その時、私は気付いた。気付いてしまった。
ジョルジュよりも先に。敵よりも先に。




つー達が逃げた先に……『アンノウン』の気配がすることを。



  
113 : ◆ILuHYVG0rg :2006/11/25(土) 00:33:17.17 ID:jKdbHlH10
  

「……ジョルジュ」
  _
( ゚∀゚)「なんだ!?」

「『アンノウン』が……つー達の逃げた先にいるかもしれない」
  _
( ゚∀゚)「なにぃ! ほんとうかよ、それ!」

一瞬にして顔面が蒼白になるジョルジュ。こんな狼狽振りは始めてみる。

だが、それも当然なのだ。
つー達のうち、『アンノウン』と直接戦えるのはつーしかいない。しぃと照美はあくまでサポートなのだ。
つー1人で『アンノウン』を倒せるのか……しかも、感じた気配はひとつではなかった。

つー達が危ない。
それは分かりきった状況。

しかし、特殊兵たちを牽制している自分たちには、そちらに行く余裕がない。
物陰から姿を現せば、すぐさま銃弾の雨を身体に浴びることだろう。

守るはずの存在が危ないというのに……なんという体たらくだ。



  
117: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/25(土) 00:36:25.13 ID:jKdbHlH10
  
  _
(♯゚∀゚)「ちくしょう! クー! 3つ数えたら走るぞ!」

「なに!? どうするつもりだ!」
  _
(♯゚∀゚)「決まってんだろ! あいつらのところだよ!」

何? どうやって行くというのだ。今にも兵士達がこちらになだれ込んでくるような状況で、どうしろと?
  _
( ゚∀゚)「いくぞ! 1!」

明らかにジョルジュは自分を見失っている。いつもの冷静な判断を下せていない。
このままつー達の所へ向かえば、全滅だ。『アンノウン』と兵士の挟み撃ちで、きっと全員が死ぬ。
  _
( ゚∀゚)「2!」

けど……それでも行きたいと思ってしまう自分は何だ?
行っても行かなくても仲間が危ない。ならば、自分はどうする? 
合理的には犠牲の少ない方を選ぶべきだろう。警察学校時代からずっとそう教えられてきた。父にもそう教えられてきた。

でも、感情では?
  _
( ゚∀゚)「3! 行くぞ!」

ジョルジュが勢いよく走り出す。
仲間の所へと向かうために。自分の感情を優先させ、助けたいと思う人を助けるために。

それを見て、私は……



  
122 : ◆ILuHYVG0rg :2006/11/25(土) 00:43:41.56 ID:jKdbHlH10
  




走れなかった。






足が、動かなかった。




私は……



  
127: 暴れん坊VIPPER :2006/11/25(土) 00:46:25.13 ID:jKdbHlH10
  
  _
( ゚∀゚)「クー! くっ!」

ジョルジュが立ち止まった瞬間、その身体に銃弾が浴びせられていく。
致命傷は避けたようだが、右腕から血が噴き出ている。彼の顔には脂汗がどっととにじみ出ていた。
  _
( ゚∀゚)「クー! 早くしろ!」

そう言われても、動けない。感覚が麻痺している。頭の中がぼーっとしてきている。
明らかに自分の身体の中で相反する二つの感情が交じり合っており、動こうとしてくれない。

理性と感情。

ふたつのものがそれぞれ押し合い、殺し合って、私の身体を硬直させていた。
  _
( ゚∀゚)「クー!」

ジョルジュが腕を引っ張ってきて、ようやく私はハッと意識を取り戻した。

すでに兵士達はこちらに向かう足を進めており、約10メートルの所まで近づいてきている。

これ以上残るのは危険。
合理でも感情でもそう判断した頭は、ようやく身体を動かしてくれた。
  _
( ゚∀゚)「こっちだ! 裏道を通るぞ! で、あいつらと合流だ!」

ジョルジュに従い、全速力でつー達を追いかける私。
ただ走ることだけを考えていればいいのに、『アンノウン』の気配がまだ消えていないことに気付いてしまうのがとてつもなく嫌だった。



  
131: 暴れん坊VIPPER :2006/11/25(土) 00:49:10.11 ID:jKdbHlH10
  


それから先のことは、断片的にしか覚えていない。


私は無理やり腕を引っ張られて公園にたどりつき、

血を流して動かない照美と、

虚ろな目をして笑みだけを浮かべているつー、

その2人に必死で『気』を送り込み、「おねえちゃん、照美ちゃん!」と悲鳴に近い叫びをあげているしぃ、

そして、妹と想い人の横で、呆然とした表情で立っているジョルジュ。

現実とも思えないその光景。



けれども、確かにそれは現実にあったこと。

私の記憶の底に奥深く鎮座し、

今も私の心を蝕んでいるのが何よりの証拠なのだ。





  
133: 暴れん坊VIPPER :2006/11/25(土) 00:51:44.57 ID:jKdbHlH10
  



( ^ω^)「……」
('A`)「……」
(´・ω・`)「……」

狐「結局、彼らは捕まってしまった。日本の警察にね。
  彼らは、国会議員殺害事件の実行犯として逮捕され、警察の留置場行きとなった。
  ツイン照美は死に、つー君の精神は異常をきたしたまま、ね」

( ^ω^)「ど、どうしてクーさん達がそんな目に……」

狐「……それはね、大人の汚い取り引きがあったんだよ」





戻る携帯用2ページ目へ