( ^ω^)ブーンが心を開くようです
- 184 : ◆ILuHYVG0rg :2006/12/07(木) 22:33:37.21 ID:t0QnZp7a0
- 第22話
静かな森の中、その男は2メートルほどの大きな石の上に立っていた。
黒いコートに身を包み、ポケットに手を入れたまま笑みを浮かべている。
かつて話をし、助けられ、過去における行動も聞いたその男――ジョルジュ長岡。
どうして彼がここに?
そんな単純な疑問ばかりが頭の中を飛び交い、ブーンは何一つ言葉を漏らすことができなかった。
そして、それに拍車をかけるのは彼の横にいる面々。
( ,,゚Д゚) 「……」
ギコがいた。
从 ゚−从「……」
ハインリッヒもいた。
( ´_ゝ`)「……」
(´<_` )「……」
流石兄弟もいた。
そして
( ´∀`)「……」
モナーもまた、彼らの傍に立っていたのだ。
- 188 : ◆ILuHYVG0rg :2006/12/07(木) 22:36:16.01 ID:t0QnZp7a0
川 ゚ -゚) 「どういうことだこれは……なぜモナーがそちらにいる!?」
_
( ゚∀゚)「簡単なことさ。こいつは俺たちの仲間。ただそれだけだ」
川 ゚ -゚) 「なに!?」
( ´∀`)「……」
モナーはグローブを握り締めたまま動かない。
彼の足下には白い円筒の物体があった。
おそらく『H.L』なのだろうが、それは完全に分解されており、原型をとどめていなかった。
どうやって、そしてどうしてそんなことをするのかがわからず、ブーンは混乱する頭をなんとか整理しようと努力する。
だが、その前にクーが「……モナー、そうなのか?」と彼に問いかける声が聞こえた。
川 ゚ -゚) 「もともと、ジョルジュに内通していたのか?」
( ´∀`)「……そうだモナ」
川 ゚ -゚) 「いつからだ」
( ´∀`)「2,3年前……だモナ」
川 ゚ -゚) 「情報を横流ししていたのもお前か?」
( ´∀`)「それは……」
- 193 : ◆ILuHYVG0rg :2006/12/07(木) 22:38:49.77 ID:t0QnZp7a0
_
( ゚∀゚)「おっと、いじめるのはそれぐらいにしろよ、クー」
ジョルジュが横槍を入れ、からかいの表情を浮かべる。
ブーンはそれを見て、確信した。これは本当にジョルジュだと。
いつでも楽しそうに喋るその顔は、まさしく彼だった。
_
( ゚∀゚)「後輩いじめは後々しっぺ返しをくうぞ?」
川 ゚ -゚) 「黙れ、そもそもお前はどうしてここにいる。それに『H.L』がどうして分解されているんだ。答えろ」
_
( ゚∀゚)「お〜、こわ。怒ったクーは怖いねえ」
クーの怒気をやすやすと受け流すジョルジュは、半笑いの表情を崩さない。
まるでこの状況を楽しんでいるようだった。いや、これから起こることを楽しみに思っているという感じ。
_
( ゚∀゚)「まあ、ひとつひとつ疑問に答えていきましょうかね。
俺がここにいるのは、俺の目的のため。この兵器を分解したのも、俺の目的のため。
ちなみに、お前達がここにいるのも俺たちの目的のため、だ」
川 ゚ -゚) 「目的、だと?」
_
( ゚∀゚)「悪いが、話す時間は少ないんでな。まずは……ギコさん、頼みます」
( ,,゚Д゚) 「ああ」
ギコが動いた。
懐から弓矢を取り出し、唐突に3本を構えて放つ。
- 194 : ◆ILuHYVG0rg :2006/12/07(木) 22:40:57.34 ID:t0QnZp7a0
ブーンは慌てて『光障壁』を出してそれをガード。クーとぃょぅも身体を逸らして避ける。
川 ゚ -゚) 「ちっ!」
( ^ω^)「やる気かお!」
ブーンは手に『剣状光』を出して、『光弾』をジョルジュ達に向かって放つ。
3、4個の光の弾が彼らに向かって飛んでいく。これは当たる!
( ´_ゝ`)「遅い」
しかし、流石兄弟の兄が動いた。
ジャンプした兄者は、長いロープを一振り、二振りと振り回す。
それらは確実に『光弾』を捉え、軌道を修正してあらぬ方向へと弾き飛ばしていく。
ついには全ての『光弾』が彼により弾き落とされた。
( ^ω^)(なっ……)
まさか全て叩き落されるとは思わず、踏み込もうとしていた足を止めざるを得なかった。
川 ゚ -゚) 「ジョルジュ! お前は!」
クーがすばやい動作で懐からブローニングを取り出し、ジョルジュに向かって構える。
彼女の銃の腕前はかなりのもの。そのまま撃てば、確実に当たる。
- 198 : ◆ILuHYVG0rg :2006/12/07(木) 22:43:19.77 ID:t0QnZp7a0
从 ゚―从「させない」
しかし、ハインリッヒが動く方が早かった。
彼女は手に持っていたマシンガンらしき短機関銃をすばやく構え、ブローニングめがけて2,3発銃弾を放つ。
恐るべき命中率で、弾丸はクーの拳銃に当たり、弾き飛ばされる。
川 ゚ -゚) 「ちっ」
( ^ω^)「クーさん!」
从 ゚―从「近づくな」
ハインリッヒは、照準をすばやく変えて、ブーン、ぃょぅの地面の前にも銃弾を放ってくる。
そのため、クーを援護しようとしたこちらの動きも封じられた。
( ^ω^)「お!?」
(=゚ω゚)ノ「ょぅ!?」
( ,,゚Д゚) 「よそ見してる暇はないぜ」
ギコのそんな声が聞こえたと思った瞬間、3本の矢が自分達の方へ向かってくるのに気付いた。
だが、完全にハインリッヒの方へと注意を逸らされていたため、『光障壁』を張る暇も避ける時間もなく、矢は自分達の方へと確実に向かってくる。
- 199 : ◆ILuHYVG0rg :2006/12/07(木) 22:45:42.22 ID:t0QnZp7a0
( ^ω^)「くっ!」
ブーンは目をつむり、襲い来る衝撃に耐えようと身を硬くする。
だが、矢は自分の身体には当たらなかった。
それは腰にあった「疑似障壁」の発生装置へと当たっていたのだ。
ガッ、という音と共に、装置は粉々に砕け散る。完全に。
クーとぃょぅも同じだった。
『疑似障壁』を易々と貫いたギコの矢は、彼らの腰の装置へと命中し、障壁を消滅させる。
川 ゚ -゚) 「……っ、何をする!」
_
( ゚∀゚)「それがあると邪魔なんでな。ほら、後ろに『影』がいるぜ?」
ブーンは驚いて後ろに振り返った。
すると確かに『影』が1体、その場に立っていた。
気配も何も感じなかった。どうして? いつの間に?
そう思う暇もなく、それはこちらへと向かってくる。ゆっくりとしたスピードで歩きながら。
前にはジョルジュ達、後ろには『影』。
前門の虎、後門の狼、といったところか。
- 202 : ◆ILuHYVG0rg :2006/12/07(木) 22:48:00.83 ID:t0QnZp7a0
ブーンは『飛槍光』のイメージを密かに始めた。『影』は倒し、ジョルジュ達は戦闘不能にする。
この場を切り抜けるにはそうするしかない。
隣のクーもジョルジュ達を気にしながらも刀を引き抜いた。ぃょぅも小太刀を抜いている。
10メートルほどの距離まで近寄ってきた『影』。
イメージが完了し、今まさに『飛槍光』を出そうと身を構えたブーン。
しかしその前に変化が起こった。
( ^ω^)「な、なんだお!」
『影』がいきなり霧状に変化したのだ。
身体を構成していた結合がいきなり解かれ、細かい粒子になったかのように。
霧散した『影』の細かい粒子が、上空へと向かい、また方向転換して、ある一方向へと向かって飛んでいく。
その先にはジョルジュがいた。
_
( ゚∀゚)「……!!」
霧状の『影』は彼の身体を包み込んだかと思うと、急速に彼の身体の内部に染みこんでいく。
いったい何をしているのか、見当もつかない。
徐々に黒い物体が彼の中へと入り込み、最後には完全に跡形もなく消え去った。
これは……まさか、『影』を吸収したのか?
- 204 : ◆ILuHYVG0rg :2006/12/07(木) 22:50:22.93 ID:t0QnZp7a0
(=゚ω゚)ノ「『影』を……取り込んだ?」
_
( ゚∀゚)「ふぅ……いや、同化って言った方が正確だな。『気』で『影』を包んで取り込んでるしな。
これを行った俺たちは、もう人間ではないのとも言える」
川 ゚ -゚) 「お前……」
目を見開き、刀を手にしたまま動かないクー。
それは、これまで理解していたものが急に理解できなくなった時のような困惑さを表しているかのように、ブーンは思った。
(=゚ω゚)ノ「くっ、手をあげるょぅ! お前達は危険だょぅ!」
ハインリッヒが機関銃を下ろしているのに気付いていたのだろう、ぃょぅが拳銃を抜き、彼らに向ける。
しかし、銃口を向けられたジョルジュは笑うだけだった。
_
( ゚∀゚)「はは、撃ってみろよ」
(=゚ω゚)ノ「なに……!」
_
( ゚∀゚)「撃たないなら……俺が撃つぜ!」
ジョルジュが懐に手を伸ばして、何かを取り出そうとする。
しかしその前にぃょぅが引き金を絞り、パンという軽い音が響き渡った。
- 205 : ◆ILuHYVG0rg :2006/12/07(木) 22:53:15.92 ID:t0QnZp7a0
(=゚ω゚)ノ「な……に?」
_
( ゚∀゚)「ふふ……はははは!」
ジョルジュは倒れなかった。
それどころか、弾丸が当たった様子すらない。
彼の後ろにあった木の幹からは火花が立っていたのに、彼自身には何の傷もない。
もしかして、すり抜けた……?
『影』と同化したから、『影』と同じ身体を持ったというのか?
(=゚ω゚)ノ「そんな……」
从 ゚―从「銃を下ろして」
ぃょぅが呆然と拳銃を掲げていると、再びハインリッヒがマシンガンを構える。
右には、いつの間にか移動していたギコが矢を弦にかけて思いっきり引き、
左には兄者がロープを構え、弟者が手裏剣を手に持っている。
三方から狙われた自分達は、完全に動けなくなってしまった。
- 206 : ◆ILuHYVG0rg :2006/12/07(木) 22:55:22.28 ID:t0QnZp7a0
_
( ゚∀゚)「ったく、手間をかけさせるなよな。俺はお前達と話をしにきただけなんだ」
川 ゚ -゚) 「話だと? ジョルジュ……お前はいったい」
_
( ゚∀゚)「まあ、聞けよ。
クー。『影』はどうして犯罪者を襲っているんだと思う?
『天国』時代から、このことはずっと謎だったよな?」
黒いコートを翻しながら、ジョルジュは薄ら笑いをやめずにそう問いかける。
しかし彼女は何も答えない。呆然と彼を見つめたまま動かない。
返事がないのも構わず、ジョルジュは話を続けた。
_
( ゚∀゚)「わからないか? まあそうだろうな。
確か『天国』では『人間を滅ぼそうとしているのかも』なんてことを話し合ってたよな」
川 ゚ -゚) 「……」
_
( ゚∀゚)「だがな、今の俺ならその理由がわかる。同化した今なら。
『影』は別に人間を滅ぼそうとはしていない。その逆だ。
奴らは、この世界をより良いものにするために犯罪者を殺しているんだ。
人間社会における悪人が裁かれ、善人が救われる世界にするための存在……
いわば、地球の白血球のようなものだ」
( ^ω^)「はっけきゅう……?」
- 207 : ◆ILuHYVG0rg :2006/12/07(木) 22:58:14.92 ID:t0QnZp7a0
_
( ゚∀゚)「なぜ、こいつらが発生したかは俺にはわからない。
もしかしたら、ブーンと関連があるかもしれないが、今はそんなことどうでもいい」
ジョルジュの笑みが、消えた。
無表情に近い厳しい顔。
何かに達観しつつも、目的のためならどんな冷酷なことでもやってしまうであろう兵士の目。
これがジョルジュなのか? とブーンは思った。
_
( ゚∀゚)「世界を浄化するための『影』という存在。
俺はこいつらを使って、少々この世界に変化を与えたいと思ってる」
川 ゚ -゚) 「変化……だと?」
_
( ゚∀゚)「もうひとつ質問をしようか……クー、どうして俺の妹は死んだんだと思う?」
川 ゚ -゚) 「……」
ジョルジュの妹、ツイン照美。
『天国』時代、ある国会議員の陰謀により、クーとジョルジュ達は罠にはめられた。
国会議員殺しの汚名を着せられ、警官隊においかけられ、そして『影』にも襲われた彼ら。
そんな中、ジョルジュの妹であるツイン照美は死に、つーは精神を患った。
クーの中にある、鬱屈とした過去。
そして、妹と想い人を同時に失ったジョルジュにとっては、許されがたい事実。
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