( ^ω^)ブーンが心を開くようです

  
3: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:20:33.62 ID:3BbD6WXw0
  
第27話

こんなことがあっていいというのか?

世界を変えるためには、どんな人も死んでいいというのか?

違う。そんなの違う。

だって、彼女が死ぬ理由なんてない。
彼女はずっと自分の傍にいてくれた。支えだった。目標だった。

最初に助けてくれた時から、厳しくも優しい言葉ではげしてくれた彼女。
「安心していけ」という緊張をほぐしてくれる言葉は、もう聞けないというのか?

おかしい。そんなのおかしい。

( ゚ω゚)「クー……さん」

ブーンはクーの手を握り、その顔を覗き込んだ。
彼女の瞳は閉じられたままで、ぴくりとも動かない。
胸の呼吸運動は止まっているし、だんだんと身体は冷たくなってきている。

そして何よりも、彼女の心の光が失われていくのを、ブーンはリアルに感じ取っていた。



  
4: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:21:08.94 ID:3BbD6WXw0
  

( ゚ω゚)「クーさん……クーさん!」

身体を激しく揺らしても、彼女は反応しない。
すでに彼女の心の光は失われ、何も感じ取れなくなっていた。

( ;ω;)「そんな……そんな!」

どうして彼女が死ななくちゃならない?
そんな必要があるとでも言うのか?

ジョルジュ達が言っていた「犠牲」に、クーも入っていたというのか?

そうだとしたら……いや、そうでなくても!

( ´_ゝ`)「『人の子』!」

(´<_` )「ここはギコが……そうか、その女にやられたか。だが、そちらも1人やられたようだな」

( ´_ゝ`)「まだ勝負はついていない。さあ、来い! 決着をつけるぞ!」



  
6: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:21:55.04 ID:3BbD6WXw0
  

(  ω )「うるさいお……」

ジョルジュが行おうとしていること。恐怖で世界を安定させるということ。

止めなくちゃいけない。そんなもの。

(  ω )「もうお前達を……」

これ以上、誰も死なせないために。

( ゚ω゚)「許さないお!」

ブーンは立ち上がり、流石兄弟達の方へと振り返った。

コンマ数秒の間に兄者が近付いてくる。
だが、ブーンが出した『剣状光』はいち早くそれを察知して、敵のロープをガードする。

( ´_ゝ`)「何!?」

( ゚ω゚)「おおおおお!!」

もう誰も死なせない。
誰も殺させない。

そのために、今はこいつらを倒す。
敵を殲滅する。

それが今必要なこと。



  
7: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:22:49.49 ID:3BbD6WXw0
  

ブーンの背中に再び光の翼が宿る。
大空に飛び立つブーン。

その瞬間、ひとつのイメージを垣間見た。

それは、兄者が黒いロープでこちらの足をからめとり、その隙に弟者が手裏剣を叩き込むというもの。

言葉でも映像でもない。
ただ単に頭の中に飛び込んできたその確定事項を、ブーンはすんなりと受け取り、すぐに対策を立てる。

( ´_ゝ`)「はあっ!」

イメージ通りに、兄者が黒いロープを投げ縄のように飛ばしてきた。

それを翼で叩き落としたブーンは、『剣状光』を槍のように伸ばして弟者に投げ飛ばす。

(´<_` )「ぐっ!」

弟者の足に突き刺さりダメージを与えられても、ブーンの頭の中に飛び込んでくるイメージはとどまることを知らない。

兄者が弟者をガードするように立ちふさがり、ロープを2本使ってこちらに攻撃することが、ブーンの未来の確定事項となった。



  
9: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:24:08.09 ID:3BbD6WXw0
  

( `ω´)「そんなのぉ!」

すでにイメージすることすら不要となった無数の『飛槍光』を発生させるブーン。
それらは兄者と弟者の周りを猛スピードで飛び回り、徐々に彼らの逃げ場をなくしていく。

( ´_ゝ`)「なんだ……なんだこれは!」
(´<_` )「兄者……俺がひきつけるから、ここは退いてくれ!」
( ´_ゝ`)「何を言う! ここで止めなければ、俺達が戦ってきた意味がないだろうが!」
(´<_` )「だが……!」

( ゚ω゚)(お……お!)

『飛槍光』の結界の中に閉じ込められた2人の次の行動が、またブーンの頭の中に飛びこんでくる。

今度は、弟者が四方に手裏剣を放って『飛槍光』を何発か落とし、その間に兄者がこちらに攻撃をしかけてくる、という確定事項。

( `ω´)「やらせるかお!」

ブーンの目はすでに全てを見通していた。

『剣状光』を2刀、両手に持ち、結界の穴から出てくる兄者の2本のロープを叩き落す。

( ´_ゝ`)「く……どうして読まれているんだ!」

読む? そうだ。これは推測でしかない。
けど、確定事項だ。



  
10: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:25:15.58 ID:3BbD6WXw0
  

『飛槍光』を弟者の方へと集める。
足をつぶされた彼は逃げることができない。
彼の体は、一斉に白い槍に貫かれていく。

( ´_ゝ`)「弟者!」

(´<_` )「が……は」

黒い身体をつぶされ、弟者は倒れた。

( ´_ゝ`)「……くっ!」

弟者を見やった兄者だが、すぐにこちらの方へと顔を向け、2本のロープを構える。

( ´_ゝ`)「まだだ……まだ終わらん!」

( ゚ω゚)「邪魔をするんじゃないお!」

兄者の行動は全て読めた。
左と上から同時に繰り出されるロープをなんなく受け止め、逆に『光弾』をお見舞いしてやる。

( ´_ゝ`)「ぐはっ!」

兄者は無防備にもそれを受けてしまい、弟者が倒れている場所へと吹き飛ばされ、2人まとめて地面に突っ伏した。

終わり、だ。



  
11: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:25:58.49 ID:3BbD6WXw0
  

( ^ω^)「……行くお」

動かない2人をしばらく見つめ、ブーンは翼をはためかせて空へと飛ぶ。
もう迷いはない。ジョルジュを止めるためなら、なんでもやる。

そう決めた。今、この場で。

だが、後ろから手裏剣が飛んでくるイメージを得たブーンは、その場で急旋回して『光障壁』を発生させる。

3つの手裏剣が飛んでくるのを、完全にガードできた。

( ´_ゝ`)「い……行かせるか!」

(´<_` )「まだ、だ!」

1人は白い槍に貫かれ、1人は内臓をずたぼろにされても、まだ立ち上がる。
殊勝な……とまでは言わないが、粘っていることは確かだ。

( `ω´)「邪魔を……するなお!」

ブーンは『光弾』を何個も発生させ、未来イメージによって得た2人の回避先へと撃ち込む。
完全に虚をつかれた2人は、無数の『光弾』をその身体に受け、倒れた。



  
13: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:28:37.15 ID:3BbD6WXw0
  

( ´_ゝ`)「ぐぅ……」
(´<_` )「……」

沈黙する2人。ブーンは改めて空へと目をやり、ジョルジュの所へと向かおうとした。

だが、

( ´_ゝ`)「まだだと……言っているだろう!」
(´<_` )「俺達は……お前を……!」

まだ立ち上がる2人。

(  ω )「邪魔するなって……」

ブーンは再び『飛槍光』を発生させ、放った。
イメージする必要のなくなったその白い槍は、避けることのできない猛スピードで彼らへと次々と突き刺さっていく。

( ゚ω゚)「言ってるんだお!」

そして、最後に巨大な『光弾』が、ズタボロになった彼らの身体を包み込む。
2人は何も抵抗することなく、その光を受け止めていた。

( ´_ゝ`)「最後まで足止めできて……」
(´<_` )「やはり俺達は……」

( ´_ゝ`)(´<_` )「流石、だな」

白い光が消えたと同時に、彼らも消滅した。
跡形もなく。



  
15: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:29:32.46 ID:3BbD6WXw0
  

( ^ω^)「……行くお」

今度こそブーンは空へと飛び立つ。

ふと、ブーンは自分の下で眠るクーに目を移した。
彼女は目を瞑ったまま、まったく動かない。いや、これからもずっと動けないのだろう。

ブーンはしばらくの間彼女を見つめ続けていたが、やがて宙に浮かび、全速力で飛んだ。
飛ぶ方向はもうわかっていた。ジョルジュの気配が、はっきりと感じ取れていたから。

倒す、絶対に。

そんな決意が胸の中にあった。

ふと、視界の端に見知った顔を見つけた。

遠目からでもわかる。ぃょぅだ。

ブーンはそちらの方へと向かった。



  
17: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:30:10.72 ID:3BbD6WXw0
  

(=゚ω゚)ノ「……ブーンかょぅ」

( ^ω^)「ぃょぅさん……」

その場に降り立つと、彼の横で誰かが倒れているのが見えた。
それはモナーだった。刀を突き刺され、青い顔をしているモナーは、おそらく死んでいる。

( ^ω^)「……モナーさんを」

(=゚ω゚)ノ「仕方ないょぅ。それより、無事でよかったょぅ。今から一緒にジョルジュの所へ行くょぅ」

( ^ω^)「けど、腕が……」

ぃょぅの左腕はまったく動いていない。
おそらく肩の骨をつぶされたのだろう。その状態で戦うことなんて不可能だ。

(=゚ω゚)ノ「それでも行くょぅ。今は四の五の言ってる暇はないょぅ。あいつを止めるんだょぅ」

(  ω )「……」

ブーンは翼をはためかせ、身体を浮かせる。
ぃょぅが驚いた顔でこちらを見ているが、気にせずにさらに高度を上げる。



  
18: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:31:24.23 ID:3BbD6WXw0
  

(=゚ω゚)ノ「ブーン、何を……」

(  ω )「ぃょぅさんは、狐さん達の所へ戻ってくださいお」

(=゚ω゚)ノ「けど、それは」

ブーンは一方向を人差し指で示す。

(  ω )「あっちにクーさんの身体があるお。あのままじゃあんまりだから……よろしく頼むお」

(=゚ω゚)ノ「く、クーさんが? まさか!」

(  ω )「ジョルジュさんは、いや、ジョルジュは……」

ブーンは敵がいるであろう方向を見つめる。

あいつを倒せば全てが終わるはず。
守りたいものを守りきれるはず。

( ゚ω゚)「僕が倒すお!」

ブーンは一直線にその方向へと飛び立った。

彼の心の中には、もう怒りと戦う意志しかなかった。





  
19: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:32:12.58 ID:3BbD6WXw0
  


空を見上げていたジョルジュは、ふと白い光が空にきらめいたことに気付いた。

プレハブ小屋の屋上は不安定だったけれども、ジョルジュはバランスよくその場で立ち上がる。
  _
( ゚∀゚)「来た……か」

ふぅ、と息をつき、ジョルジュは懐から拳銃を取り出した。
  _
( ゚∀゚)「あいつらはみんな……いっちまったか」

遠い目を空に向けつつ、ジョルジュは仲間の気配が全てなくなっていることを感じ取り、目を瞑った。

この時のために、彼らはこれまで時間を稼いでくれた。身を呈してまで。
彼らにもう一度会ったら、お礼を言わないといけないだろう。ありがとう、と。

よくやってくれた、本当に。



  
20: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:33:14.33 ID:3BbD6WXw0
  
  _
( ゚∀゚)「……けど、まだなんだよな」

ジョルジュは、隣で車椅子に座る女性に目を向け、その顔を見た。

まだ無表情なままで、何も喋らない彼女は、まだ心を決めかねているのだろう。
彼女には時間が必要だ。流石兄弟達だけでなく、自分も時間稼ぎに向かわなくてはならない。
  _
( ゚∀゚)「じゃあ、行ってくる。また戻ってくるからな」

ジョルジュはそう言い残し、プレハブ小屋から飛び降りた。

向かうべき所は分かっている。
ここは元『天国』があった場所なのだから、広くて人気の無い場所も知っている。

あとは、『人の子』とどれだけ戦えるか、なのだろう。

ジョルジュは懐からもうひとつ拳銃を取り出し、それに『気』を張ってみた。
黒い『気』はたちまちに2丁の銃を覆い、強度と威力を増していく。



  
21: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:34:04.02 ID:3BbD6WXw0
  

この2丁の拳銃は、常人では扱うことの困難なPfeifer Zeliska(ファイツァー ツェリザカ)という代物。
総重量6キロ、60口径という最大の口径を持つリボルバー拳銃だが、
その威力の大きさと重さ故に、訓練を受けた者でも容易には使いこなせない。

だが、『影』の力を得た自分は、こんなものは片手で扱える。

きっと大丈夫だ。

黒光りする銃を見つめつつ、ジョルジュは自分にそう言い聞かせ、不安をぬぐった。

そして、走る。
走り続けたジョルジュがたどりついたのは、かつての『天国』のビルがあった場所。

今は更地だったが、景色や空には見覚えがあった。

妹やクーと一緒に仕事をし、「彼女」と出会い、別れた場所。

ここで全てが始まり、全てが終わる。

それでいい。この世界はそうやって導かれていく。



  
22: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:34:44.58 ID:3BbD6WXw0
  


空を見上げたジョルジュは、白い光がだんだんと近付いてくるのを感じ、銃を両手に持った。

撃つのではない。『彼』の攻撃を受け止めるためのもの。

終わりが始まるまで、まだ時間がある。
それまで、『彼』と会話をするのもいい。

戦うということは、心を混じり合わせるということでもあるのだから。


黒いコートを脱ぎ捨てたジョルジュは、構えた。






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