( ^ω^)ブーンが心を開くようです

  
23: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:35:46.82 ID:3BbD6WXw0
  



( ゚ω゚)「ジョルジュー!!」
  _
( ゚∀゚)「来たか! ブーン!」

まずは『剣状光』でジョルジュに攻撃する。
だが、彼は上手く拳銃でそれを受け止めた。

( ゚ω゚)「あんたを止めに来たお!」
  _
( ゚∀゚)「そうか! それでいい! 止めてみせろ!」

ハイキックを繰り出そうとするのを感じ取り、ブーンは翼を動かして上空に緊急回避する。

追い討ちをかけるようにジョルジュが発砲した。
だが、拳銃の弾は全て、ブーンの身体の周りを常に覆っている『光障壁』が防ぐ。
  _
( ゚∀゚)「強くなったな! ブーン!」

ジョルジュは発砲をやめないまま、徐々に横に移動していく。
全て『光障壁』で防げているとは言え、隙を見せればすぐに銃弾を打ち込んでくるだろう。

それに、『気』で覆われているのであろう銃と銃弾は『剣状光』では切れない。
ここは安全に距離を取るのが得策。



  
24: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:37:01.51 ID:3BbD6WXw0
  

沸騰する頭の中で、異様なまでに冷静に分析したブーンは、旋回と移動を繰り返しながら、
「みんな死んだお!」と叫んだ。

( ゚ω゚)「クーさんも、流石兄弟も、モナーさんも、ギコも、みんな死んだお!」
  _
( ゚∀゚)「そうだな。そして高岡もだ。お前も気付いているんだろう?」

( ゚ω゚)「クーさん達が死ぬことが、今の世界に必要だと言うのかお!」

ブーンは何十もの『飛槍光』を発生させ、射出する。
白い槍は目にもとまらぬスピードでジョルジュへと襲いかかかるが、彼は顔色ひとつ変えずに喋り続ける。
  _
( ゚∀゚)「そうだ! この痛みが、この死が全て後につながる! 生みの苦しみというやつさ!」

ジョルジュはおもむろにダッシュして、『飛槍光』を避けるが、白い槍は彼を逃しはしない。

一斉に周りを飛び交い、流石兄弟を追い詰めた結界を回りに形成する。



  
25: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:38:24.87 ID:3BbD6WXw0
  
  _
( ゚∀゚)「だが、まだ足りない! まだ戦いは終わらない!」

ジョルジュはいきなり両腕を左右に広げ、おもむろに銃の引き金を引いた。
銃弾は『飛槍光』に辺り、2本の槍は跡形もなく消え去った。

ジョルジュは止まらない。続けて銃を両方とも右に構えて撃ち、白い槍を打ち落とす。

次には左、上、下、また左右に広げたり、上下に撃ったり、

銃声が連続して発せられ、それにつられるように白い槍が次々に消されていった。

ブーンは驚愕の表情でそれを見続けていた。

まるで舞うように次々に銃弾を放つジョルジュ。

最後に2発の銃声が響くと、『飛槍光』は全て撃ち落とされてしまっていた。



  
26: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:39:44.44 ID:3BbD6WXw0
  
  _
( ゚∀゚)「時間が足りないんだ。だから、俺がお前と戦う。さあ、来い!」

ジョルジュがその場でしゃがみこみ、ばねのようにして飛び上がる。

それは驚くべき高さのジャンプだった。

飛んでいるこちらの目の前に現れたジョルジュは、銃の底で殴りかかろうとしてくる。
『剣状光』でそれを受け止め、逆に『光弾』のカウンターをかけようとしたが、ジョルジュのもう一方の銃が先に火を噴いた。

( ^ω^)「っ!」

近距離だからなのか、『光障壁』を貫いたその銃弾は頬にかする。

遅まきながら『光弾』を撃つものの、ジョルジュはすでに下へと降下し、地面に転がって全て避けてしまう。

( ^ω^)「あんたが言ってた『良い目的のためなら、どんな残虐なことをしてもいいのか?』ってやつ。
      はっきり言うお。 それは間違いだお!
      方法を考えてこその目的なんだお!」
  _
( ゚∀゚)「その通りだ。 俺もそれには反対しない」

( ^ω^)「ならどうして!?」

ブーンは再び『飛槍光』を発生させるが、ジョルジュは猛スピードで地面を走り回っており、照準が定まらない。
牽制の『光弾』を何発か撃ち、機会をうかがう。



  
27: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:41:08.54 ID:3BbD6WXw0
  
  _
( ゚∀゚)「方法は考えたさ! 腐るほどな!」

ジョルジュは走りながらも銃を撃つことを忘れない。
  _
( ゚∀゚)「考えた末に導き出した方法が、これだ。
    もうこれしか残っていない。穏やかな日々を取り戻すにはな!」

( ^ω^)「何を……!」
  _
( ゚∀゚)「方法がひとつしかないのなら、俺はその道を突き進むだけだ!」

銃弾が絶え間なく降り注ぐ。
全て『光障壁』が防いでくれているものの、このまま弾を受け続けていれば障壁は崩されてしまうかもしれない。

ジョルジュの心は、もう言葉でどうにかできるようなものではなかった。
彼は彼の道を見つけ、それにまい進している。
止めることなどできない。

もし自分が、誰かに「守るために戦うことをやめろ」と言われて、できるか? 
きっとできないだろう。

ジョルジュも同じだ。

その心は理解できなくとも、彼の決意だけはよくわかる。



  
29: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:42:13.16 ID:3BbD6WXw0
  

だから、今は、

( ゚ω゚)「なら、あんたを止めるだけだお!」

戦うしかない。

また、自分の頭にイメージが流れ込んでくるのを感じた。
ついさっき、流石兄弟を倒した時と同じように、相手の行動の「予測」が目に見えてくる。

右に動いて転がりながら銃を撃つジョルジュ。

ブーンはそれを避け、右手から『光弾』を予測地点に放つ。

だが、予測のさらに上を行く速さでジョルジュは側転して回避行動を取り、すぐに銃を放ってきた

ブーンは驚きながらも、さらに流れ込んでくる未来の確定事項に対しての対策を立てる。

次は、ジョルジュが弾を入れ替える時間。
ブーンは何度か旋回しつつジョルジュに近付き、『剣状光』を振るった。



  
30: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:44:36.37 ID:3BbD6WXw0
  

( ^ω^)「これでも!」
  _
( ゚∀゚)「ちっ!」

弾込めの途中だった銃でガードするものの、ジョルジュはこちらの速さに驚いた顔を見せていた。
ブーンはさらに頭の中のイメージに従い、ジョルジュの予想もしない攻撃を次々と繰り出していく。

まず、『剣状光』を振り下ろすが、銃に当たる直前で1度剣を消してしまう。
  _
( ゚∀゚)「なっ!?」

さらに左手で光の壁を作り出して、まだ1発だけ弾が残っていたのだろう、右手の銃から放たれた弾をガードする。

そして最後に、がら空きになった右わき腹に掌を当て、ゼロ距離で『光弾』を発射。

流れるような連続攻撃に、「ぐっ」とうなり声をあげるジョルジュ。

ボディブローは相当効いたようで、足をぐらりとふらつかせる。



  
32: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:45:51.50 ID:3BbD6WXw0
  
  _
( ゚∀゚)「くっ……だが!」

前宙をするように身体を回転させ、その勢いで踵落としを繰り出すものの、ブーンはそれすらも予期していた。

頭上で腕を交差させ、『光障壁』を使って軽々と防御する。

だが、その後いきなり見えた未来のイメージに反応することができず、ブーンはジョルジュの左足での膝蹴りをモロに喰らった。

(メ^ω^)「くはっ!」

イメージが見えてから、実際にそれが行われるまでのラグが短すぎる。
それだけジョルジュの動きが早いということなのだろう。見えていても対応することができない。

だが、それでも『飛槍光』を放つには十分だ。

腹がじんじんと痛む中で、ブーンは翼を動かして距離を取り、背中に『飛槍光』を発生させる。
未来が見えている今、イメージが重要視される白い槍を扱うのは容易だ。

何十もの『飛槍光』が発射され、それら全てがジョルジュの方へと向かっていく。



  
33: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:47:15.72 ID:3BbD6WXw0
  
  _
( ゚∀゚)「くっ!」

ジョルジュは弾をこめ終えた両手のリボルバー拳銃を前に構え、その引き金を何度も引く。
白い槍は黒い銃弾に次々と落とされていくが、未来を見通した目で放たれた『飛槍光』は先ほどの比ではなかった。

今までよりも数倍早く、数段複雑な動きをする白い槍を全て撃ち落とすことなど不可能。
撃ち漏らした多数の白い槍は、次々とジョルジュの身体を貫いていく。
  _
( ゚∀゚)「ぐっ! くぅ!」

身体をそらしたり、移動を繰り返して、なんとか致命傷を避けているジョルジュ。
だが、完全には回避できていない。
膝や顔、腕に次々と傷ができていき、YシャツとGパンの切れ目から黒い身体が見えてきた。

最後、全ての『飛槍光』を撃ち落としたジョルジュ。
だが、すでに彼はボロボロになっていた。



  
34: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:48:32.40 ID:3BbD6WXw0
  

( ^ω^)「……」
  _
( ゚∀゚)「はぁ、はぁ……」

完全にこちらが優位。
おそらく、もう彼に勝ち目はない。『飛槍光』をもう一度使えば、彼を殺すことだってできるだろう。

殺す。

その響きは、残酷で悲しい。

けれども、時には必要なこと。

守るためには、必要なこと。

ブーンは再び背中に『飛槍光』を発生させ、未来のイメージを掴む。

だが、未来のジョルジュは何一つ動こうとはしなかった。

( ^ω^)「……もう、やめないかお」



  
35: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:49:59.06 ID:3BbD6WXw0
  
  _
( ゚∀゚)「はぁはぁ……それはできない相談だな」

( ^ω^)「どうしてだお!クーさん達が死んで、その上で、本当に世界が安定するとでも言うのかお!
      こんなことが……こんなことが!」
  _
( ゚∀゚)「1発逆転の手はこれしかない。俺が生きている間に、もう一度あの日々を……」

( ^ω^)「けど、それでみんなが死んだら、元も子もないお!」
  _
( ゚∀゚)「死なないさ。俺は人を殺しているわけじゃない。人を生かすために、あえて俺は……『影の子』を……」

ふと、ジョルジュは顔を上げ、後ろに振り向いた。

戦いの最中に視線を逸らすなんて言語道断。
だが、ジョルジュはそんなことは気にもかけず、後ろの「何か」を見つめていた。



  
36: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:51:00.73 ID:3BbD6WXw0
  
  _
( ゚∀゚)「そうか……やっと、決めてくれたんだな」

ほっとした表情で呟き、おもむろにズボンのポケットに手を突っ込む。

取り出したのは……手榴弾?
  _
( ゚∀゚)「今、行く」

ピンを抜いて目の前に放り出したそれは、瞬間的に強烈な光と音を轟かせた。
スタン・グレネードという、殺傷能力はないものの、敵を気絶させるための手榴弾だと気付いたのは、その光をモロに浴びた後だった。

目と耳が焼けるような感覚。すぐに意識が持っていかれ、ブーンはその場に倒れこんだ。

( ´ω`)(く、くそぅ……)

ジョルジュがその場を去ろうとしていることに気付いた時には、もう目の前は真っ暗になっていた。





  
38: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:52:13.13 ID:3BbD6WXw0
  



息を切らせ、血がにじみ出る腕を振り、たどりついた場所はあのプレハブ小屋だった。

ジョルジュは弾む息を落ち着かせながら、一足飛びで屋上に上がり、彼女の目の前に立った。

彼女は相変わらずの無表情だったが、その目の奥にある光が確かに自分を見てくれていた。

それを見て、ジョルジュは安心する。
微笑み、彼女の肩に手を置いた。
  _
( ゚∀゚)「決めてくれたんだな」

ぽたぽたと血を垂らしながら、彼女に近付くジョルジュ。
止血はすでに無駄だった。ブーンの白い槍によって傷つけられたこの身体は、もう使い物にならない。
  _
( ゚∀゚)「……よく頑張ってくれたよ、ほんと」

空を見上げると、そろそろ夕方の時間帯に差し掛かっていることに、今になって気がついた。
冬だから、日が落ちるのも早い。太陽がいなくなった空は暗闇に染まり、世界を恐怖に陥れるだろう。



  
39: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:53:24.43 ID:3BbD6WXw0
  

けれども、太陽は昇る、絶対に。
どんな暗闇でも、いつかは光で包まれる時が来る。

世界は、人は、それぐらい強いはずなのだから。
  _
( ゚∀゚)「さあ、行こう」

ジョルジュは彼女の手を取り、慎重に立ち上がらせた。
彼女の足の筋肉はかなり衰えており、立つこともままならない。
ジョルジュは腰に手をやり、抱きかかえ、倒れないようにしてやる。
  _
( ゚∀゚)「あの日を……俺たちの時間を、取り戻そう」

力強く彼女を抱きしめるジョルジュ。

すると、徐々にジョルジュの身体に変化が訪れた。
彼の黒い身体が光りだすと同時に、徐々にもやになり、霧散していく。
『影』と同化していたその身体が、黒い光になっていく。



  
40: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:55:00.20 ID:3BbD6WXw0
  

ジョルジュは彼女の顔を見つめた。
彼女もジョルジュの顔を見つめていた。

その目が確かに自分のことを見ていることに気づき、ジョルジュは笑みを浮かべ、呟いた。
  _
( ゚∀゚)「つー……」

(*゚―゚)「ジョル……ジュ」

ジョルジュは完全に原型を失い、その身体を構成していた黒いもやが宙に飛び出していく。

それらはつーの身体へと入り込み、彼女の隅々にまで染み込み、同化していく。

全てが彼女の身体に入り込み、一瞬だけ静けさが辺りに戻った。


冬の冷たい風がプレハブ小屋に吹きつけ、夕方のオレンジ色の光が徐々に空に差し込んでくる。

工事現場であるこの場所には、都会の喧騒も届かず、耳には風の音がするだけ。



  
41: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:55:56.77 ID:3BbD6WXw0
  

数秒後、

強烈な黒い光が辺りを照らし、一瞬だけその場を夜にした。

何も見えない暗闇が広がり、そして再び凝縮されていく。

夜はすぐに明け、再び辺りは夕方の光に包み込まれる。

黒い光が完全に消えた時、その中心に現れたのは、



(*゚∀゚)「……」




黒い翼を持った女性。



第27話 「真理と未来を見通す目」 完



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