( ^ω^)ブーンが心を開くようです

  
66 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 21:34:02.53 ID:Pq8gNNQw0
  








最終話 「遥か彼方へと続くこの道の先へ」










  
67 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 21:34:52.16 ID:Pq8gNNQw0
  


ξ−凵|)ξ「……?」

ひとつの光が自分のまぶたを横切った時、自然と目を開けることができた。
今まで、開こうとしても開かなかった目。開いても何も見えなかった目。

それが、ようやく光を捉える能力を取り戻した。

ξ゚听)ξ「ここは……」

一言で言えばたやすい。真っ白な空間、だ。

上下左右の感覚すらない。空と大地の境目もなく、今自分はどこに立っているのかも分からない。
けど、確実に自分の足は「何か」を捕らえている。こうして立っていられる。

目も見える。
声も出せる。
音も聞こえる。

何も問題はない。



  
71 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 21:35:52.45 ID:Pq8gNNQw0
  

ξ゚听)ξ「……」

ツンはゆっくりと歩き出した。
自分の行くべき場所はわかっている。

けど、時間は残り少ない。
右手の薬指に光る指輪が、どの道をたどれば良いか教えてくれている。

だから、歩き出そう。

ξ゚听)ξ「……遠いわね」

どれだけ歩けばいいのか分からない、というのは不安を覚えるものだ。
だが、一歩一歩が近付いていることを理解していれば、自然と不安はぬぐわれていく。

ξ゚听)ξ「……ん?」

後ろに誰かが立っている気配がした、
なんてことはなく、ただ不意に後ろを振り返ってみただけ。

だが、驚いたことにそこには2人の人間が立っていた。



  
75 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 21:37:10.79 ID:Pq8gNNQw0
  
  _
( ゚∀゚)「……」
(*゚∀゚)「……」

1人はつーだ。『VIP』のビルの時とまったく変わらない、無邪気な笑顔を浮かべてこちらを見つめている。

その横に立っている男は……見たことのあるような、ないような。
青年の顔立ちをしていて、白いYシャツが背景に溶け込んでいる。

彼の肌色の手が少し見えて、ああこの人もここにいるべき人なんだ、とツンはなんとなく理解した。

(*゚∀゚)「どこに行くの?」

ふと、つーが笑顔を浮かべたまま言った。

はっきりとしたその口調に違和感を覚えつつも、ツンはしっかりと質問の意味を汲み取り、口を開いた。



  
76 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 21:38:15.39 ID:Pq8gNNQw0
  

ξ゚听)ξ「……私が行くべき場所に」
  _
( ゚∀゚)「それがどこなのか分かってるのか?」

今度は男が尋ねてくる。
真面目そうな顔をしているけど、どうも裏表がある人のような気もする。

だが、信用に足る人物だという直感も否定できない。

ツンは淀みのない言葉で「さあ」と答えた。

ξ゚听)ξ「……言葉にはできないけど、なんとなくわかるわ。あいつがいる場所、だから」
  _
( ゚∀゚)「それは良かった」

男が腰に手をやり、やんわりと笑みを浮かべる。
優しい顔をする人だな、とツンは思った。



  
77 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 21:39:25.88 ID:Pq8gNNQw0
  

ξ゚听)ξ「あなたたちは何をしてるの?」
  _
( ゚∀゚)「……色々と考えてるんだよ」

(*゚∀゚)「そう。考えてる。私達は考えなくちゃいけない。ずっと、ずっとね」
  _
( ゚∀゚)「それが俺たちの……そしてお前にとっての責務であり、欲求、だろう?」

ξ゚听)ξ「そうなの?」
  _
( ゚∀゚)「そうさ」
(*゚∀゚)「そうよ」

ツンは、この人たちは全てを分かっているのかもしれない、と思った。
なら、自分の疑問にも答えてくれるかも。

そう考え、ツンはゆっくりと口を開く。

ξ゚听)ξ「ねえ」
  _
( ゚∀゚)「ん?」



  
78 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 21:40:30.36 ID:Pq8gNNQw0
  

ξ゚听)ξ「結局、あいつは何だったの? 人? それとも宇宙人? 超能力者?
     それに、『影』って何?」

一息にそんな質問を投げかけると、男は「ふむ」と考え込むように腕を組み、口を閉じた。
何を考えることがあるのだろう? 全てを分かっているからこそ、ここまでやって来たのではないのか?
  _
( ゚∀゚)「……まず、『影』は俺たちにも分からない。いきなり現れ、犯罪者狩りを行っていたもの。
     もしかしたら、あの世界が生み出した、『変革』に対する反作用……なのかもしれない」

ξ゚听)ξ「何それ……世界に意思があるっていうの?」
  _
( ゚∀゚)「分からない。高次の次元のものを理解できるほど、俺たちは発達していない」

ξ゚听)ξ「そう……」



  
81 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 21:42:24.79 ID:Pq8gNNQw0
  

ジョルジュは話を続けた。
  _
( ゚∀゚)「だが、あいつのことは分かる。
     あいつは俺達の……人間の、動物の、物質全体の、この世界に存在する全てのモノの子供だ。
     俺達という親が子供にモノを与え、子供は与えられたものの中から、
     自分の取るべき道しるべを決め、世界を理解し、何らかの変革をもたらす」

ξ゚听)ξ「……」

(*゚∀゚)「そして私は、彼とは反対の存在」

ξ゚听)ξ「反対の……存在?」

つーが自分を指差し、楽しそうな笑みを浮かべて言った。

(*゚∀゚)「ひとつの存在があれば、それとは対極に位置するもうひとつの存在がある。
    アダムとイブ、カインとアベル、天使と悪魔、白と黒、光と闇、そして、『人の子』と『影の子』。
    私は彼とは対極の存在であり、彼と同じ『子供』だった」



  
82 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 21:44:01.60 ID:Pq8gNNQw0
  
  _
( ゚∀゚)「『彼』と『彼女』、どちらが世界を変革させるかは、この戦いですでに決まってしまった。
     あいつは自分の進むべき道を見つけ、世界を変えようとしている」

(*゚∀゚)「これが正しいのかは分からない。けど、彼はそれを決めた。『全てをひとつにする』という道を選んだ」

ξ゚听)ξ「……」

ゆっくりと頭の中でその言葉を咀嚼し、理解を深めていく。
言葉はこういう時に役に立つ。
  _
( ゚∀゚)「だが、まだあいつの決めていないことがある」

(*゚∀゚)「それが、あなた」

ξ゚听)ξ「私……?」
  _
( ゚∀゚)「お前と、それに呼応するあいつの心。その指輪の中に秘められたわずかな意志。それがまだ決まっていない」

(*゚∀゚)「だから、あなたは行くべきなの」
  _
( ゚∀゚)「お前はあいつと話をする権利がある」
(*゚∀゚)「彼に心を決めさせる権利がある」
  _
( ゚∀゚)「その心をあいつに渡し、心を開かせることができる」
(*゚∀゚)「私達はそれを見守る……できれば手伝いをする。それが役割。権利。特権」



  
83 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 21:46:19.76 ID:Pq8gNNQw0
  

ツンは自分の薬指にはめられた指輪を見つめた。
質素な指輪だ。おそらく銀で出来ているのだろうけど、粗悪な銀に違いない。所々がくすんでいる。
けど、彼の気持ちがちゃんと込められている。それはよく分かる

そして、自分は彼と話すことができる。それも分かる。

けど、何を話せばいい?

ξ゚听)ξ「……私はあいつと何を話すべきなの?」
  _
( ゚∀゚)「お前の心が望むこと……話したいことを話せばいい。
     世界の変革を防げとか、あいつを説得しろ、なんてことは言わない。
     正否なんてものは、そもそも関係ない」

(*゚∀゚)「あなたが話したいことを話して。話したくないなら、それでもいい」
  _
( ゚∀゚)「全てはお前の自由だ」

(*゚∀゚)「自由は空に羽ばたく翼。けど、時にそれは重荷になる。
    空に対する不安と恐怖を増長する。
    あなたは……どうしたい?」

自分がやりたいこと。
自分が話したいこと。

それは……ひとつに決められない。たくさん、たくさんある。



  
84 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 21:47:49.94 ID:Pq8gNNQw0
  

ξ゚听)ξ「……あいつと話してくるわ」
  _
( ゚∀゚)「そうか」

(*゚∀゚)「なら、行ってらっしゃい。気をつけて」
  _
( ゚∀゚)「色々な人の思いがここには交錯している。道に迷うこともあるかもしれない。
     けど、お前の心が望む方向に行けば、きっとたどりつくさ」

(*゚∀゚)「私達は……ちゃんと見てるから」
  _
( ゚∀゚)「頑張れ」

そう言って、2人は白い泡のようになって消えていった。



  
92 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 22:05:15.04 ID:Pq8gNNQw0
  

ツンは前を向き(といっても前がどっちかなんて分からないけど)、ゆっくりと歩みを進める。
自分がやるべきことはもう分かっている。

あいつと話して、あいつの心をちゃんと見定めて……迷っていることがあるなら、一緒に考えて……

高尚な議論はできないけど、話すことなら、聞くことならできる。

つまりは、1人にさせないこと。
それしかない。

ツンは歩き続ける。
光は縦横無尽に広がっているけれども、右手の指輪は自分を案内してくれているように思えた。

だから、迷わない。





  
94 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 22:06:41.54 ID:Pq8gNNQw0
  




世界は白く染まっていく。
そこには全ての人たちの思いが込められている。






  
95 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 22:08:33.34 ID:Pq8gNNQw0
  



ある日、ある場所のこと。

彼女はベッドの上で、彼に対する気持ちを膨らませていた。

从 ゚−从「……どうして私を助けたの?」
  _
( ゚∀゚)「死にそうな人間を助けるのは当たり前だろう?」

从 ゚−从「でも、私は敵。あなたの仲間を殺した敵」
  _
( ゚∀゚)「そうだな。敵なら殺す。だが、お前が銃で撃たれて倒れた時点で、戦いは終わったんだよ。
     敵も味方もなくなった。だから、敵じゃないお前を助けるのは、当たり前だろう?」

彼女はその出会いに感謝した。
ある任務がきっかけで起こったその出会いに。

それによって、自分は変わることができた。
「殺人機械」から脱却することができた。

だから、彼女は彼を助けるために、彼を守るために戦う。





  
97 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 22:10:28.38 ID:Pq8gNNQw0
  



ある日、ある場所のこと。

彼らは自らのプライドを賭けて戦っていた。

( ´_ゝ`)「くはぁー!! どうしてお前には勝てないんだ! 理解できん!」
  _
( ゚∀゚)「だからさー、もう少し戦略というものを考えようぜ。コンピュータゲームでも戦略は必要なんだよ」

(´<_` )「兄者……そろそろ帰らないか? 隊長がうるさいぞ」
(#´_ゝ`)「まだだ! まだ終わらん! 俺は勝つまではやめんぞ!」
  _
( ゚∀゚)「しゃーねーな」

ヴァーチャル上でも戦いは戦い。
突如傭兵部隊に入ってきた男を倒すために、彼らは自らの知識を総動員して戦略を立てた。

それでも終わらなかった戦い。
ライバルは自分の道を突き進むために旅立った。彼らもそれを追いかけていき、結局交わされた再戦の約束。
そして、ライバルの思想を聞き、深く考えた結果、彼を助けることを選んだ。

彼らは戦う。

プライドを守るために。





  
100 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 22:13:04.10 ID:Pq8gNNQw0
  


ある日、ある場所のこと。

彼は、自分の胸の内にある疑念を晴らすための方法を探していた。

「口答えするな! お前の意見など聞いておらん! 出直せ!」

( ´∀`)「……」

理不尽な仕事、納得のいかない説明。
彼は自分のやることが、本当に人のために、国のためになるのか、疑問を抱いていた。

そんな中もたらされた、1本の電話。

「俺の話を聞いてほしい。モナーさん」

( ´∀`)「誰だモナ……あんたは」

「この国を救いたいと思っている1人の男、とでも答えておきましょうか」

それは救いの電話なのか? それとも破滅への電話なのか?

だが、彼はその電話を取り、その言葉を信じた。
自らの信念を貫き通し、あえて茨の道を進んだ。

全ては、この国を守るために。





  
102 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 22:14:58.17 ID:Pq8gNNQw0
  



ある日、ある場所のこと。

彼は自らの人生の集大成として、未来を救う道を選んだ。
  _
( ゚∀゚)「……本当についてきてくれるんですか?」

( ,,゚Д゚) 「ああ。もう迷いはない。お前を手伝うことにするさ、ゴラァ」
  _
( ゚∀゚)「けど……あなたにはCIAの仕事が……」

( ,,゚Д゚) 「あんなもんはクソ喰らえ、だ」

今までやってきたことを償えるとは思っていない。
これまでの人生、全ては灰色で塗りつぶされてきた。
「あの国を守るため」という大義の元、色々と汚いことをやってきた。
大義は正しくとも、方法が間違っていればダメだというのに。

だから、この老獪の身に、最後の最後で光を浴びることを許してほしい。
人間らしく、自らの人生に良い幕引きが訪れることを願うのは、普通のことだろう?

戦おう。今は。

信念と人生を裏切らないために。
子供たちの未来を守るために。





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