( ^ω^)ブーンが心を開くようです
- 104 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 22:17:09.75 ID:Pq8gNNQw0
※
ある日、ある場所のこと。
彼は、本当にこの国にとって良いことを成すために奮闘していた。
狐「……では、『VIP』の設立は?」
「いいだろう。だが、少しでも問題が起きればすぐに解散だ。それを肝に銘じろ」
狐「はっ!」
『アンノウン』という恐怖に対して、彼は独自の力で戦うことを選んだ。
本来なら、全てを自分の力で行いたかったものの、そのための実力はない。
この国を変えたくとも、それを行う力が無い。
だから、今は内部からこの国を守る。この国を変える。
それがちゃんとした未来に通じる。みんなを守ることができる。
『アンノウン』という脅威が取り除かれ、全ての恐怖から解放されれば、きっと……
そうして彼は戦いの道を選んだ。
人々を守るために。
※
- 105 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 22:20:10.49 ID:Pq8gNNQw0
※
ある日、ある場所のこと。
彼女は過去を振りほどき、『影』という敵を倒すために戦い続けていた。
(*゚ー゚)「今日も成果なし……はぁ。なかなか『影』の尻尾がつかめないなあ」
彼女は、『VIP』のビルの中をゆっくりと歩き、大切な人のいる部屋に向かう。
親はとっくの昔に他界し、今や家族はこの人だけ。だから、ちゃんと守らなくてはならない。
たとえ、自分に戦う力がなかろうとも。
(*゚ー゚)「お姉ちゃん……」
「……」
(*゚ー゚)「明日は……きっと話してくれるよね」
その力は小さいかもしれない。けど、力は力だ。
縁の下の力持ちでもいい。ただの治療役でもいい。
彼女は何かの役に立ちたかった。
自分のように、家族を『影』に殺された人たちなんて、もう生み出したくなかった。
彼女は戦う。
みんなに悲しんでほしくないから。
※
- 107 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 22:23:21.06 ID:Pq8gNNQw0
- ※
ある日、ある場所のこと。
彼は、自分ができることを模索していた。
(=゚ω゚)ノ「……はあ、毎日デスクワークばっかりで飽きるょぅ」
この国を守る、国民のために何かをしたい。
そんな青雲の志をもって、政府という大きなシステムの中に入った彼。
だが、自分の力でできることとはいったい何なのか、まったく分からなかった。
そんな時にかかってきた、1本の電話。
「やあ、狐というものだが、少し話があるんだ」
(=゚ω゚)ノ「話……?」
「以前身体検査を受けただろ? それの結果が非常に興味深くてね……まあ、話を聞いてほしい」
その電話がきっかけで、彼は自分の力の使い道を見つけた。
これならきっと、この国を守れる。大きな脅威から、みんなを守れる。
そうだろう? 自分はずっとあこがれてきた。アニメの中のヒーローに。
これからは自分がヒーローだ。
だから、戦おう。
※
- 109 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 22:25:21.96 ID:Pq8gNNQw0
- ※
ある日、ある場所のこと。
彼と彼女は、自らの進む道を探していた。
_
( ゚∀゚)「なあ、『天国』って、この国のためになってっと思うか?」
川 ゚ -゚) 「ん? いきなりなんだ。頭にコーヒーでもかけられたか? 豆腐の角に頭をぶつけたか?」
_
( ゚∀゚)「ちょwww ひでぇwww」
迷いながら過去を生きてきた彼ら。
だが、未来にて、ようやく自らの進み道を見つける。
彼は、世界を旅することで人間の本質を見抜き、その本質に則った対策を打ちたてた。
そして、それを行うための方法を模索し、ギコという助けを借りて、ようやく『影の子』というキーワードを見つける。
一方彼女は、戦いから離れ、1人考え続けることで道を見つけようとした。
それでも見つからない道。迷いっぱなしだったとも言える。
だが、1人の少年と出会い、戦い続けることでようやく道を見つけた。
感情という、否定されがちな要素を肯定し、理性をも肯定し、彼女は新たな方法を見つけ出した。
そんな2人に共通する意志は同じ。
この世界を守りたい。ただそれだけ。
※
- 117 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 22:39:46.23 ID:Pq8gNNQw0
※
ある日、ある場所のこと。
『彼』は、公園の片隅でじっと座っていた。
空は夕焼け。一日の終わりを告げる光が、辺りを照らしている。
( ^ω^)「……」
『彼』――ブーンは、手に木の棒を持ち、砂場に大きく丸を描いていた。
笑顔なんて浮かべていない。口をへの字に曲げ、ぼんやりと目を開き、一心不乱に丸を描く。
ひとつの大きな丸が出来上がった時、ブーンは棒を放り捨てて、近くのベンチに座った。
周りには誰もいない。
いるはずもない。全ては『自分』になってしまったんだから。
ここにいるは自分ひとり。世界中、どこを探しても自分だけ。
異様な風景だったものの、嫌ではなかった。
これが自分の選んだ道だから。
これでいい。これなら、きっと全てが上手くいく。
- 120 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 22:42:53.23 ID:Pq8gNNQw0
「あんた、まだここにいたのね」
ブーンはゆっくりと顔を上げて、その声の出所を探った。
そこには見知ったようで知らない顔、ずっと会いたかったようでいて、けどそれすらも分からない人が立っていた。
「ツン」とブーンは自然とその人の名前を口に出す。
( ^ω^)「……どうしてここにいるんだお?」
ξ゚听)ξ「それはこっちの台詞。あんた、まだ『ここ』にいたのね。
律儀に中学校の制服まで着て。カバンは……持ってないか、当たり前よね」
ツンは、じろりとこちらを視線でひと舐めし、周りを見渡し始めた。
きっと驚いているんだろうな、とブーンは思った。
ここの太陽はまったく動かない。地平線に沈みかけたままで止まっている。
夜になることも、昼に戻ることもない。
ここは全ての時間が止まっている。
自分はここから抜け出せていない。
それは分かる。だが、ここで考えに考え抜き、ようやく結論を出したのだ。
だから、別に迷うこともない。
- 123 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 22:45:45.99 ID:Pq8gNNQw0
ブーンは座ったままで、「ツン」と呼びかけた。
( ^ω^)「……僕を止めに来たのかお?」
ξ゚听)ξ「別にそんな気はないわ」
「これ何?」と、ツンは砂場に描かれている丸を指差した。
彼女の答えに驚きつつ、ブーンは立ち上がり、砂場の丸の中に1人で入ってみた。
( ^ω^)「……境界線」
ξ゚听)ξ「何と何の?」
( ^ω^)「僕と他人の、だお」
丸の中から、ツンに話しかける。
それだけのことで、自分と他人は別だということがよく分かる。
普段は目に見えないし、自覚していないけど、自分と他人の間には明確な境界線があるのだ。
この線の外には、色々な人たちがいる。
時には自分の丸と重ね合わせようとしてくる人もいる、時にはぶつけ合おうとする人もいる。
ただひとつ言えるのは、この丸が完全に消えることもないし、他の丸とぴったり重なり合うこともない、ということ。
- 126 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 22:48:59.92 ID:Pq8gNNQw0
しかも、丸を書く場所は限られているから、自然と他の丸と重なったり、ぶつかったりしてしまう。
だから、戦いが終わることなんてない。
( ^ω^)「……けど、もう分かったんだお。この丸をこうやって大きくすれば……」
ブーンを囲っている丸は、何もしていないのに徐々に大きくなっていた。
砂場をはみ出し、公園を超え、ついには見えない所まで広がっていく。
丸は、この世界を覆ってしまった。
( ^ω^)「……全ての丸を大きな丸で囲めば、みんなが『自分』になれば、もうぶつかり合うこともないお。
自分や他人を守る必要すらなくなるんだお」
ξ゚听)ξ「そうね。そうなのかもね」
丸は急激に小さくなり、再び砂場の上へと戻ってきた。
ブーンはいまだその中で、外にいるツンを見つめている。
ツンは、腰に手をやり、胸を張った。
気がつかなかったが、彼女の服装はワンピース、つまり私服だった。
ξ゚听)ξ「……私はね、別にあんたに説教しに来たわけでも、あんたを助けたいわけでもない」
「ただね」とツンは近付いてくる。
砂場に入り、丸の前で止まった。
- 127 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 22:52:57.86 ID:Pq8gNNQw0
ξ゚听)ξ「……よっ!」
いきなり、丸の一部分を足で消してしまった。
( ^ω^)「あ、ああっ!」
ξ゚听)ξ「よいしょっと……」
続いて、その欠けた部分を通って丸の中に入ってくるツン。
丸の中に2人の人間が入り込んだ。
彼女の身体がものすごく近い。
( ゚ω゚)「あ、ああ……」
ブーンは身体をガタガタと震わせ始めた。
こんなに近くに人が来たのは初めてだったから。
そして、自分はどうすればいいのか分からず、不安だったから。
ξ゚听)ξ「何震えてんのよ」
( ゚ω゚)「入るんじゃないお!」
手を前に出して、彼女を押し出そうと試みるブーン。
だが、ツンはその手を掴んで、勢いを殺してしまう。
ますます震えがとまらなくなり、ブーンは腰を抜かしそうになる。
- 129 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 22:55:55.19 ID:Pq8gNNQw0
ξ゚听)ξ「……やっぱり、ね」
( ゚ω゚)「来るんじゃないお、来るな……来るなぁ」
ξ゚听)ξ「あんたはね、怖いだけなのよ」
( ゚ω゚)「怖……い?」
ξ゚听)ξ「そう。こうやって、丸の中に入ってこられるのが怖い。他人と手をつなぐのが怖い……
その人のことを良く知りもしないのに、一方的に怖がってる」
( ^ω^)「……」
ξ゚听)ξ「分かる? あんたが怖がってるのは『他人』じゃない。他人が何をするのか分からないことを怖がってるのよ」
( ^ω^)「……けど、他人のことを理解するなんて不可能だお。怖がるのは当然だお」
ξ゚听)ξ「……そうね。実際、私も怖いもん。いつあんたが私を襲ってくるのか、分からない。それが怖い」
(;^ω^)「そ、そんなことはしないお!」
ξ゚听)ξ「うん、分かってる。怖いけど、私はあんたのことを信じてる。だから大丈夫」
『信じる』……?
- 131 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 22:58:28.80 ID:Pq8gNNQw0
ξ゚听)ξ「だから、あんたも私のことを信じて。
殴ったり、叱ったりするかもしれないけど……信じてほしい」
( ^ω^)「……」
ツンはブーンの手をぎゅっと握り締める。
ブーンはその手の力の強さに戸惑いつつも、ゆっくりとその手を両手で取って、握り締めた。
『信じる』ということ。
確かに、他人と完全に分かり合うことは不可能かもしれない。
だからこそ、考え方や思想の違いで戦いが起きる。
けど、だからと言って他人を完全否定する理由にはならないのではないか?
ξ゚听)ξ「あんたは1人じゃない」
( ^ω^)「……!」
ξ゚听)ξ「私が見てるから……だから、1人じゃない。あんたはこっちにいるのよ」
( ^ω^)「……けど、僕はどうすればいいんだお?」
ξ゚听)ξ「それは、あんたが考えること」
ツンが手を離した。
丸の外に出て、悲しげな笑顔を浮かべて話を続ける。
- 132 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 23:01:34.92 ID:Pq8gNNQw0
ξ゚听)ξ「あんたが決めるのよ……私は話をしに来ただけ。
最後に決めるのは……あんたじゃないと」
( ^ω^)「けど……けど、僕はそんなに強くないお! どうしてみんな、僕に決めさせるんだお!」
ξ゚听)ξ「馬鹿ね、ほんと」
ツンは「しょうがないわね」とでも言いたげな顔をして、再びブーンの手を取った。
その手のぬくもりが暖かく、ブーンは呆けたような表情を浮かべて言葉を待った。
ξ゚听)ξ「あんたを1人の人間として認めてるから……
あんたがちゃんと考えられると信じてるから……任せるの」
( ^ω^)「……」
ξ゚ー゚)ξ「私はもう何も言わない。今はあんたが信じる道を進んで。
色々な人から色々と教えてもらったでしょう。もう決められるはずよね」
( ^ω^)「ツン……僕は……」
と、ふと彼女の手のぬくもりがなくなったことを感じ、ブーンは驚き顔でその手を見つめた。
その手は色が薄くなっており、徐々にだが白い光へと変わっていこうとしていた。
ξ゚听)ξ「……時間、みたいね」
( ^ω^)「ツン! 僕は、僕は!」
- 135 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 23:04:15.69 ID:Pq8gNNQw0
ξ゚ー゚)ξ「大丈夫……私はちゃんと見てるから……私が見てるんだから、あんたはちゃんとここにいるでしょ?」
( ;ω;)「ツン!」
ξ゚ー゚)ξ「じゃあ……ね」
ツンの身体が消えた。
白い光に分解し、その光すら辺りの風景に溶け込んでいってしまった。
キン、という音がした。
地面を見下ろすと、そこにはクリスマスプレゼントでツンにあげた指輪が落ちていた。
ブーンはそれを拾い上げ、涙目で見つめる。
銀色に輝く指輪は、何も答えてはくれない。
( ^ω^)「僕は……」
ブーンは、砂場の丸をもう一度見つめた。
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