( ^ω^)ブーンが心を開くようです

  
39: ◆ILuHYVG0rg :2006/10/15(日) 01:13:16.25 ID:9ucnnUMl0
  
そんなブーンの心とは裏腹に、狐は深い笑みを浮かべて「どうもしないよ」と言った。

狐「別に君を拘束したり、私達の組織に入れたりはしない。帰りたいなら帰ってもいい」

( ^ω^)「……」

狐「けど、提案する。ここにいれば、君達は安全だ。私達が保護しよう。外に出てもいいが、他の組織が君を狙っているかもしれない」

(´・ω・`)「他の組織? 他にも予言だかを信じている組織がいるんですか?」

狐「しぃ君の話では出てこなかったね……今現在、『影』は世界のあらゆる所で出現し、またあらゆる所で犯罪が多発しているんだ」

(´・ω・`)「そ、そんなことニュースじゃやってないけど……」

狐「けど、実際に起こっている。これは確実。で、私達の他にも色々な組織がこの予言を知っているだろうし、信じているところもあるだろう。
  だとしたら、その予言を聞いた所はどうすると思う?」

('A`)「……『人の子』を自分の所に引き込んで、混乱する世界の中で生き残ろうとする」

狐「ビンゴ!」

ドクオに向かって冗談のように指を差し、答える狐。。



  
40: ◆ILuHYVG0rg :2006/10/15(日) 01:16:03.90 ID:9ucnnUMl0
  

狐「そういうことなんだ。人は『選べれた者』でありたがるもの。特に生死の境には。
  たぶん外に出れば、いろんな国のいろんな組織が君を狙うだろうね」

ξ゚听)ξ「なぜ? ブーンが『人の子』だなんて、誰も思わないはず……あなた達すらそれを疑ってるのに」

狐「あんな街中で『影』が現れれば、通行人の1人や2人はその状況を目撃しているし、そこから情報は漏れてしまう。
  ブーン君が『人の子』だとは確定できなくても、疑わしいならまず捕らえようとするよ。
  もちろん君達も疑われる」

ショボン、ドクオ、ツンと順番に指差しつつ、「そんなの嫌だろ?」と狐は言った。

( ^ω^)「……」

ブーンは黙りこくり、考えた。



  
41: ◆ILuHYVG0rg :2006/10/15(日) 01:17:58.53 ID:9ucnnUMl0
  
『人の子』『予言』『他の組織』『捕らえられる』『保護』

話の内容はよくわからなくても、なんとなく筋だけは読めた。
ようは、自分はもしかしたら特別な存在かもしれないから色々な人に狙われる。
ここにいれば安全だから、ここにいないか? ということ。

どうすればいいんだ?

正直言って、早く家に帰ってしまいたい。孤児院で暖かいご飯を食べて、暖かい布団に入ってしまいたい。

なんでこんなことになったんだろう。
ゲームをやったりしている時は『ああ、自分も勇者や主人公になりたいなあ』とか思ってしまうものだ。
だが、実際に自分が特別な存在になってしまうと、今度はそれが重みになってくる。

普通の日常がやけに恋しくなり、早くそこに戻りたいと考えてしまう。

けど、それは危ないと狐は言う。

どうすればいいんだ……?

(´・ω・`)「わからないことがあります」

一生懸命考えていると、ショボンが再び手をあげた。



  
44: ◆ILuHYVG0rg :2006/10/15(日) 01:22:02.77 ID:9ucnnUMl0
  

狐「なんだい?」

(´・ω・`)「ブーンがここにいて、あなた達に何かメリットがあるんですか? 
      あなた達の話を聞いていると、僕達のことばかりを言って、あなた達の目的について何一つ語られていなかった。」

その言葉を聞いて、ブーンはあっと今になって気付いた。
確かにそうだ。自分がただ「ここにいる」だけなら何もメリットにならない。
普通なら正体不明のこの力を解析するなり、無理矢理にでも味方に引き込むなりするはず。

なのに、ただ単に「保護」?
おかしい。何かがおかしい。

狐「やあ、これは手厳しい質問だ」

狐は困ったように言い、右手で頭を掻き始めた。
ショボンはさらに問い詰める。

(´・ω・`)「もしかして、ブーンの力を悪用しようと考えていませんか?」

ショボンの顔がとたんに険しくなる。
それは友達を思い、友達に辛い思いをさせたくはないというショボンの優しさのように、ブーンは感じた。



  
46: ◆ILuHYVG0rg :2006/10/15(日) 01:25:06.03 ID:9ucnnUMl0
  
確かに自分の力がもし『世界を導く』という何か特別なものなのなら、味方に引き入れようとするはず。

それが具体的にどんななのか分からないけど……狐達には何か裏があるように思えてならなかった。

だが、狐は慌てるわけでも開き直るわけでもなかった。

ただ悲しい表情を浮かべていた。そういうことを言われることが悲しい、とでも言いたげなように。
答えは聴けなかったし、彼らの目的が何なのかもわからなかったけれども、ブーンはその表情を見ただけで、この人は信用できると思った。

(´・ω・`)「やっぱり悪用するつもりじゃあ――」

( ^ω^)「もういいお、ショボン」

ショボンの言葉をさえぎり、ブーンは彼に向かって首を横に振った。
聞かなくていい、と。それ以上聞く必要はない、と。

ショボンはそれを見ると、素直に引き下がった。自分の気持ちをよくわかってくれるショボンに、ブーンは心から感謝した。

そして、ブーンは再び考える。
どうすればいいのか。
彼らに頼るべきなのか、危険を冒してでも家に帰るのか。



  
48: ◆ILuHYVG0rg :2006/10/15(日) 01:28:13.03 ID:9ucnnUMl0
  
('A`)「ブーン……」

悩みに悩んでいると、ドクオが話しかけてきた。彼は神妙な顔つきで、だけれども無理な笑みを浮かべよう口をゆがませていた。

('A`)「俺達のことは気にしなくていい。お前がやりたいようにしろ」

(´・ω・`)「そうだね」
ξ゚听)ξ「あなたがここにいたいって言うなら、私もここにいてあげるわよ」

ξ////)ξ「べ、別にあんたと一緒にいたいわけじゃないんだからね!! 乗りかかった船だから仕方ないだけなんだからね!!!」

( ^ω^)「ドクオ、ショボン、ツン……」

友達の信頼と好意に感謝しつつ、ブーンは考え続けた。

たぶん勉強でもこれほど考えたことはなぐらいに、考えた。

どうすればいいのか? ここにいたら、狐の言う通り安全になるのだろう。
自分達に危害がないように保護してくれるというのは、彼らの言葉と態度を聞けば分かる。

けど、日常は失ってしまう。
学校に行ったり、遊んだりすること……ドクオの家でゲームをやったり、ショボンの変な情報を聞いたり、ツンの顔が赤くなるのを見たり……いろんなことを失ってしまう。

きっと自分は、正体不明の組織に襲われるよりも、そっちの方が怖い。
それに……自分は『人の子』じゃないかもしれない。もしかしたら、他の組織に自分のことがばれていないかもしれない。
少ない可能性だけれども、そういった可能性にも賭けてみたくなった。

答えは決まった。



  
50: ◆ILuHYVG0rg :2006/10/15(日) 01:31:19.93 ID:9ucnnUMl0
  
( ^ω^)「僕は……家に帰るお」

その言葉を言ったとたん、狐の表情が落胆に変わった。

狐「そうか……仕方ない。私達が君の行動を強制することもできないしね」

(*゚ー゚)「本当にいいんですか?」

( ^ω^)「僕は家に帰ってご飯を食べたいんだお……こんな変な所にいるより、そっちの方がいいんだお。
      僕達を助けてくれたり、知らないことを教えてくれたりしたのに、こんなこと言ってごめんなさいだお」

川 ゚ -゚) 「謝らなくていい………その気持ちはよくわかるからな」

クーが遠い目をして言った。何かを思い出しているのか懐かしんでいるのか……彼女の目は望郷の念がこもっているかのように見えた。

と、そこで狐が立ち上がった。

狐「なら、善は急げだ。君達を家まで送っていこう。もうブーン君の肩はよくなってるだろうしね」

( ^ω^)「はい、だお」

ブーンは肩をまわして狐の言葉に答えた。こんなに早く治るだなんて、しぃには感謝しなくてはならない。



  
51: ◆ILuHYVG0rg :2006/10/15(日) 01:33:20.63 ID:9ucnnUMl0
  

狐「あ」

狐が小さく声をあげた。何かを思い出したようだ。

狐「そういえば、どうしてブーン君の傷がこんなに早く治ったか教えてなかったね。それは……」

( ^ω^)「いいんだお。聞いても仕方ないことだお。治ったらそれでいいお」

開きかけた狐の口を、ブーンは言葉で押さえた。

狐「そうかい? ……そうだね。これ以上君達の日常に入り込むわけにもいかないか」

狐が微笑みを浮かべて、ブーンの肩を叩いた。まるでブーンの心を読んでいるかのようで、なんだかブーンは彼のことがよくわからなくなってきた。

狐「クー君としぃ君についていってくれ。出口まで案内してくれるから」

(*゚ー゚)「じゃあ、私達についてきてくださいね」

しぃとクーが歩き出した。ブーン達は自分達の荷物を持って、彼女達の後ろをついていった。

狐「君達がここに戻ってこないことを祈っているよ」

部屋を出た直後、中からそんな声が聞こえて、ブーンは狐の思いやりに心の中で感謝した。



  
52: ◆ILuHYVG0rg :2006/10/15(日) 01:36:12.14 ID:9ucnnUMl0
  



病室を出て、長い廊下を歩くこと数十分。
窓がないので外の様子を見ることはできなかったが、どうもこのビルはかなり大きいらしい。
中にいるだけではその全容はわからない。
けれども、廊下がものすごく長かったり、所々に飾ってある装飾品を見れば、ドクオの言っていた通り、高級なビルであることは間違いないように思えた。

オフィスビルのようにも見えるが、どうやら居住区もかねているらしい、ここは。

部屋の中を見ればもっと詳細がわかったことだろう。歩いている間、色々な部屋のドアを見かけたが、しかしその中を覗くことは一切できなかったし、その気もなかった。

これ以上ここに関与する必要もないし、好奇心もそれほど湧かない。
早く家に帰りたいというのが、ブーンの気持ちだった。

(*゚∀゚)「あれー?」

そんな時、突然ドアのひとつが開き、1人の女性が部屋から廊下へと現れた。

黒いショートカットの髪と茶色っ気が強い瞳。
だがそれ以上に目を引くのは、彼女が車椅子に座っているということだった。



  
54: ◆ILuHYVG0rg :2006/10/15(日) 01:39:24.35 ID:9ucnnUMl0
  

足に障害でも負っているのだろうか? 
毛布がかけられているためにそれを判別することはできなかった。
だが、足がまったく動いていないのを見ると、もしかしたら歩けない身体なのかもしれない。

(*゚∀゚)「なんだかぁ、光が見えるなぁ。すご〜くまぶしいなぁ」

頭をゆらゆらと揺らしながら、何が面白いのか満面の笑みを浮かべてこちらに近づいてくる彼女。
その瞳は何か狂気の色を含んでいるように見え、車椅子に乗っている理由はもしかしたら足の障害以外にも理由があるかのように思えた。

パジャマに身を包み、かすかに手を伸ばす彼女。それはブーンに向いているように思えた。

(*゚ー゚)「おねえちゃん! 部屋から出てきちゃだめじゃない!」

しぃがその手を掴み、彼女の肩に手を置いた。
おねえちゃん? ということは、しぃの姉なのだろうか?

(*゚∀゚)「なんでぇー? まぶしいんだもん、見てみたいんだもん」

頭をゆらゆらと揺らして楽しそうな笑みを浮かべるしぃの姉は、そう言いながら再びブーンに目を合わせた。
いきなり見つめられたブーンはどぎまぎとしながらも、浅めのお辞儀をした。



  
55: ◆ILuHYVG0rg :2006/10/15(日) 01:41:40.10 ID:9ucnnUMl0
  
(*゚∀゚)「あははー、なんか頭下げたよ〜。どうして〜? ねぇ、しぃ、どうして〜?」

(*゚ー゚)「お姉ちゃん、部屋に戻ろう」

しぃが姉の車椅子の取っ手に手をかけ、ゆっくりと押し始めた。
しかし、姉の方は断固として戻ろうとしなかった。
車輪を掴んでブレーキをかけ、「だめぇ〜!」と叫ぶ。
その声は廊下の向こう側まで響き渡った。

(*゚―゚)「お姉ちゃん……」

(*゚∀゚)「ねえ、そこのきみぃ、すっごくまぶしいねぇ。なんで〜?」

( ^ω^)「お? お? 別に光ってなんかないお?」

姉のゆったりと、それでいて明瞭な言葉に、ブーンは答えられずにはいられなかった。
何か会話を強制的にさせられてしまう魔力のようなものが、彼女にあった。

(*゚∀゚)「え〜? だってぇ、私まぶしくてきみをきちんと見れないんだよぉ?」

そう言いながらも、姉は目をしっかりと開いている。眩しさなんて微塵も感じていない。

やっぱり、どこかがおかしいのか……?

ブーンがそう思っていると、姉が納得したかのように拍手を打った。



  
56: ◆ILuHYVG0rg :2006/10/15(日) 01:44:03.41 ID:9ucnnUMl0
  
(*゚∀゚)「もしかしてぇ、きみ、パプテスマ受けたぁ?」

( ^ω^)「お? なんかどっかで聞いたことがあるお」

(*゚∀゚)「やっぱりぃ? じゃあ、きみはもっとまぶしくなるんだぁ〜。いいなあ〜。私はぜんぜんまぶしくなれないのにぃ〜」

確かに聞いたことがある。
『パプテスマ』
確か、夢の中のしぃが言っていたようなないような……

(*゚ー゚)「お姉ちゃん、部屋に戻ろう? ブーンさん達はもう帰るの。ね?」

しぃが懇願すると、姉はもうすでに話すことがなくなってしまったのか、「いいよぉ〜。戻ろう〜」と楽しそうに言い、自分で車輪を動かして部屋に戻っていった。

ドアが閉められると、再び静寂が戻った。姉が戻っていた部屋の中からは物音ひとつ聞こえない。

いったい部屋の中で何をしているのだろう?
ブーンはふとそんな疑問が思い浮かんだが、しかしこれ以上は詮索する必要もないし、何よりしぃがあまり深入りしてほしくなさそうな表情をしているので、考えるのをやめた。

(*゚ー゚)「私の姉で『つー』といいます。今、ここで治療中なんです……」

しぃはそれだけをブーン達に告げると、再び歩き始めた。なんだか悲しそうな顔をしているのは、気のせいではないように思えた。

ブーンはなんとなく姉の言っていることが気にはなったが、努めて考えないようにした。



  
57: ◆ILuHYVG0rg :2006/10/15(日) 01:46:05.20 ID:9ucnnUMl0
  

エレベータに乗って地下に行くと、そこは膨大なスペースを占めている駐車場だった。色々な車が所狭しと並んでいた。
車の列からひとつの赤いワゴン車を選び、クーが車のキーを入れる。
運転席にクー、助手席にしぃ、中の席にブーンとツン、後ろの席にショボンとドクオがそれぞれ乗り込んだ。

発信する直前、しぃから細長く黒い布を渡された。それで目隠しをしておけということだった。
ドクオ達はここに来るときもこれを付けさせられたのか、素直に従っていた。

ブーンももちろんそれに従った。
無駄なことを知って、無駄な騒動に巻き込まれる必要などない。きっとビルの場所を知られるといろいろと不都合なことがあるのだろう。

車が発進する。揺れる車内、感じる加速度。

何度も発進と停車、カーブを繰り返し、車は走る。
目がふさがっているので時間がわからないが、少なくとも1時間以上は走ったような気がした。

しぃから目隠しを取るように命じられた時、目の前にはktkr孤児院があった。

ブーン達は車から降りた。久しぶりの慣れた地、慣れた空気に、彼らは自然と心が安らぐのを感じた。
もうすでに外は暗く、夜中と言ってもいいような時間帯だった。



  
59: ◆ILuHYVG0rg :2006/10/15(日) 01:48:13.24 ID:9ucnnUMl0
  

川 ゚ -゚) 「では、これでな。一応、これを渡しておこう」

そう言って、クーは運転席の窓から1枚のメモ用紙をブーンに手渡した。
そこには携帯番号とメールアドレスのようなものが書いてあった。

川 ゚ -゚) 「何かあった時には連絡してくれ。すぐにかけつけるから」

( ^ω^)「わかったお」

川 ゚ -゚) 「連絡を楽しみにしているよ……まあ、連絡が来ない方が君達にとってはいいんだろうがね」

クーが自嘲的に笑ったのを見て、ブーンは狐の言葉を思い出した。

『他の組織が君達を狙っている』。
本当にそうなのかはわからない。怖いと言えば怖いけれども、少なくとも、今この場所に立っている限りではそんな空気は感じられない。

ブーンはクーにもらったメモ用紙をポケットに入れた。携帯電話には登録しなかった。



  
60: ◆ILuHYVG0rg :2006/10/15(日) 01:50:00.02 ID:9ucnnUMl0
  
川 ゚ -゚) 「そうだ……ツン君」

ξ゚听)ξ「はい?」

クーがツンに声をかけた。その顔は何か申し分けなさそうだった。

川 ゚ -゚) 「傘、壊してしまってすまない。ずっと謝りたかったんだ」

ξ゚ー゚)ξ「いえ……私達を助けてくれたんだから、傘ぐらいなんでもないです」

川 ゚ -゚) 「そうか……ありがとう。では……これでな。会わないことを祈っているよ」
(*゚ー゚)「みなさん、さようなら」

( ^ω^)「さようならだお」
('A`)「さいなら」
(´・ω・`)「さようなら」
ξ゚听)ξ「さようなら〜」

そうして、クーとしぃが乗った車は走り去っていた。

( ^ω^)「……」
('A`)「……」
(´・ω・`)「……」
ξ゚听)ξ「……」

車が見えなくなると、突然辺りが静かになったように感じた。
今日の夕方からの異常事態。狐やクー達と話した『人の子』『影』などの非日常的な会話。ブーンの怪我。

日常とはかけ離れた様々な事態に遭遇した後だからなのか、こうやって普通の街中に立っていることに違和感を覚えた。



  
61: ◆ILuHYVG0rg :2006/10/15(日) 01:51:06.14 ID:9ucnnUMl0
  

ξ゚听)ξ「……もう0時回ってるわね」

ツンが携帯のディスプレイを見ながらそう言うと、ブーンは孤児院のみんなのことをようやく思い出した。
連絡も何もせずに遅くまで帰ってないのだから、みんな心配しているはずだ。
どうやって事情を説明しよう? 『影』に襲われて怪我をして、謎の組織に助けられたとか?
そんなこと、信じてくれるはずもない……

('A`)「あ〜、今日俺の家、親いないんだよなあ。みんなで泊まらねえか?」

言い訳を色々と考えている中で、そんなタイミングのいい……いや、ドクオなりの気遣いなのだろうその提案を受け、これでなんとかなるとブーンは思った。
ドクオの家に遊びに行ったまま泊まると言えば、少しはマシな言い訳になる。

ブーンはもちろん、ショボンもそれに同意した。
いつもなら『男3人の中で一緒にいるなんて、嫌』と言うツンも、今日だけはそれに賛成した。

みんな、いい言い訳となる以上に、1人でいるのが寂しかったのかもしれない。少なくともブーンはそう思った。



  
62: ◆ILuHYVG0rg :2006/10/15(日) 01:52:27.62 ID:9ucnnUMl0
  
ドクオの家に行く前に、ブーン達はそれぞれ親や家に連絡した。

ブーンが孤児院に電話をかけると、荒巻院長が出た。

ドクオの家に泊まることを告げると『まあ、いいじゃろう。しかし、もっと早く連絡してほしいものじゃの』と叱られた。
その口調はやんわりとしたものだったが、院長なりの機微さがあった。

また他にも、今日からヒッキーが親戚の家に泊まるという連絡を受けた。

/ ,' 3『お菓子は勝手に食べといて、だそうじゃ』

( ^ω^)「わかったお……」

/ ,' 3『明日はそのまま学校に行くんじゃな?』

( ^ω^)「はいですお」

/ ,' 3『なら、明日はきちんと帰ってくるように。じゃあ、楽しんでこい』

( ^ω^)「わかりましたお」

プツンという音と共に、電話が切れた。

ブーンは通話終了のボタンを押し、携帯電話をポケットにしまいこんだ。

顔を上げれば、孤児院が目の前にある。部屋の電気は全て消されており、きっと中の子供達はみんな寝ているのだろう。静かで、それでいて安心できる場所が目の前にある。

けれどもブーンにとって、そこはなんだか遠い場所のように思えた。

第4話 完



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