( ^ω^)ブーンが心を開くようです

  
38: ◆ILuHYVG0rg :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:00:43.91 ID:x+lVgNNR0
  

( ^ω^)「さ、寒いお」

(*゚∀゚)「光らないかなあ、もっと光らないかなあ」

つーが何か言っているが、まあ意味がよくわからないので無視しておこう。
ブーンは屋上の扉へと向かおうとする。

いや、待て。薄着の彼女をこのまま置いていくのも忍びない。風邪をひく可能性だってある。

( ^ω^)「つーさん、ビルの中に戻りませんかお?」

(*゚∀゚)「ん〜? 光るのを見るんだから、らめぇ〜」

( ^ω^)「風邪ひいちゃうお」

(*゚∀゚)「光れば暖かいのぉ」

駄目だ。断固として動こうとしない。
どうしたものかと考えつつ、ブーンは空を見上げた。

嫌になるほどの雲が出てきている。風が強いから雲が流れるのも早い。
だんだんと気温も下がってきて……寒い。寒すぎる。



  
39: ◆ILuHYVG0rg :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:02:28.41 ID:x+lVgNNR0
  

ξ゚听)ξ「ちょっと、ブーン。こんなところで何してるのよ」

( ^ω^)「ツン」

ツンが、屋上の扉を開けて呆れたような顔で立っていた。
ジャケットとマフラーをつけた彼女の格好は暖かそうで、ブーンはうらやましげな顔でそれを見つつ、「ちょっと気分転換だお」と答えておいた。

ξ゚听)ξ「ふーん。つーさんも一緒に?」

( ^ω^)「偶然だお」

(*゚∀゚)「……」

ツンが現れた途端、つーが車椅子を動かし始めた。
今までどうやっても動こうとはしなかったのに。

ξ゚听)ξ「つーさん、これ着けます?」

(*゚─゚)「……」

いきなり無表情になったつー。
マフラーを差し出したツンの問いかけには何も答えないまま、その横を通って屋上を出て行った。



  
41: ◆ILuHYVG0rg :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:07:25.45 ID:x+lVgNNR0
  

なんだろう、あの変わりよう。
まるで、ブーン以外の人間はまったく興味がないとでもいうような。

ξ゚听)ξ「……なんか、気に障ることでもしたかな」

( ^ω^)「気分屋なんだお、きっと」

ツンにフォローをいれつつ、ブーンが彼女のマフラーを受け取った。
それを首に巻いてみる。うん。暖かい。

ξ////)ξ「ちょ、ちょっと!!」

( ^ω^)「暖かいお、ツンのマフラー。寒かったからちょうどよかったお」

ξ////)ξ「な、なに勝手に使ってんのよ! ま、まあ寒そうだから貸してあげてもいいけどね!」

ツンが横に立ち、2人して空を見上げた。
まだ太陽は出ていない。雲は厚くて、辺りは薄暗くなっている。

急に強い風が2人の間に通り、「お!」とブーンは声をあげた。



  
42: ◆ILuHYVG0rg :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:08:15.95 ID:x+lVgNNR0
  

( ^ω^)「さ、寒いお」

ξ゚听)ξ「あんた薄着だもん。仕方ないわ」

( ^ω^)「マフラーを借りても寒いとは……予想外だお」

ξ゚ー゚)ξ「まあ、あんたが馬鹿なだけよ」

ツンが笑って、自分も笑った。
なんだか以前の日常の空気が途端に戻ってきたような気がした。

周りは公園。遠くにはちょっとしたビル街が見える屋上。

ツンの気配と香りが少しだけ感じられ、笑いあって、互いの思いはわからないけれども言葉は交し合える。

穏やかでいて、生ぬるいけれども心地よい空間。

……こういう時間が続けばなあ、とブーンは思った。



  
44: ◆ILuHYVG0rg :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:10:27.38 ID:x+lVgNNR0
  


どうしてあなたは戦うのですか?

そんな疑問を投げかけたところで、戦っている人にとってはうっとうしいことこの上ないのだろう。

だって、そういう疑問を投げかけるということは、その人の行動に少なからず疑問を抱き、場合によっては否定してしまうかもしれないからだ。
自分の考えや行動を否定されることほど、人にとって嫌なものはない。

それに、戦うという行為ほど決意の必要なものは滅多にないから、その決意すら否定されるかもしれないからだ。
きっと、戦っている人は戦うまでに多くの疑問を持っていただろう。

だから、すでに決意を固めた人は、すでに戦うことに疑問をあまりもたない。少なくとも戦っている間は。
だから、そんな疑問を改めて投げかけられると答えるのも面倒だし、問題のぶり返しになるから、いらいらするだろう。

だけれども、僕はあえて問いたい。
その答えに否定も肯定もしない。
ただ理由が知りたいだけだから。

「どうしてあなたは戦うのですか?」



  
45: ◆ILuHYVG0rg :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:12:00.70 ID:x+lVgNNR0
  


夜、ブーンはなんだか目が冴えて眠れなかった。

身体が興奮するというか、異様に頭が冴えて眠ることを拒否しているというか。
まあ、夜更かしが常態となっている自分としては、夜の9時に就寝なんて不可能なことなのだ。

(‘A`)「zzzzz」
(´─ω─`)「zzzzzz……あれ? ブーン?……zzzzz」

同じように夜更かしに慣れてしまった2人は、どうしてこうまで簡単に眠れるのだろうか。いつか問いただしてみたい。

暗い部屋の中、ブーンはベッドから出て、ジャンパーを羽織った。
眠れないなら仕方ない。こうなった夜のビルを探索だ! という気概を持って、部屋を出る。

夜のビルは昼以上に人気がない。時々、誰かにすれ違うことはあるものの、大抵クーや狐であって、他の人に会ったことがない。
なんでも、狐とクーぐらいしかこのビルに住んでいる者はおらず、後は動かせない病人が泊まるぐらいなのだそうだ。つーもその1人だとか。



  
46: ◆ILuHYVG0rg :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:13:22.74 ID:x+lVgNNR0
  

( ^ω^)(……なんだか夜の学校並みに気味が悪いお)

ビルの廊下をつれづれと歩く。
暗い道。障害物なんて何もないこの廊下で、ふらふら歩いても何も危険なことはない。
けれども、電気も何も点いていない中で歩くのは少し怖かった

暗くて狭い道。静かで何も感じない道。

先なんて何も見えず、不安を覚えながら、戻ることもせずに歩くしかない。

なんだか自分にぴったりくるというか……「合っていた」。

( ^ω^)「……」

だが、その静けさに亀裂が走る。

女性の悲鳴が、外から聞こえた。

「きゃああああ!」

( ^ω^)「な、なんだお?」



  
47: ◆ILuHYVG0rg :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:14:51.95 ID:x+lVgNNR0
  

耳をつんざく女性の金切り声。
ブーンはとっさに周りを見渡したが、窓も何もないこの廊下では外の様子なんて見れない。

ただ、声のした方角を推測すると、声は右から聞こえてきたようだった。
で、右に目を移すとつーの部屋があり、ブーンは迷った。

気になる。あんな女性の悲鳴、日常では考えられない。
けれども、つーの部屋にいきなり入っていいものだろうか。仮にも女性の部屋だ。マナーをわきまえないと……

そうやって逡巡していると、扉の方が勝手に開いて、ブーンは驚いた。
扉を開けたのはつー本人だった。

(*゚∀゚)「……入るぅ?」

そう尋ねられて、ブーンは思わず頷いてしまった。
車椅子に乗ったつーが横にのいて、ブーンは頷いてしまった手前、緊張した面持ちで部屋に入る。

部屋の中は電気が点いてなくて暗かったが、部屋のだいたいの様子は見ることができる。



  
48: ◆ILuHYVG0rg :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:16:25.54 ID:x+lVgNNR0
  

まるで子供みたいな部屋。絵本やぬいぐるみやおもちゃなどが散らかっていて、年齢一ケタの少女の部屋と言われても疑わなかった。
それが第一印象だったが、今はそんなことを気にしているわけにもいかず、すぐに窓へと近づいて外を見た。

ビルの下、道路の真ん中。
女性が倒れていた。

( ゜ω゜)「た、助けにいかないと!」

ブーンは駆け出した。
つーの部屋を飛び出し、エレベータに乗って下へと向かう。

確か玄関の鍵は閉まっていたはずだが、関係ない。
目の前に倒れている人がいるのだから、助けにいかないといけないのだ。
そこに理由なんてない。バーローだって言ってたじゃないか。



  
50: ◆ILuHYVG0rg :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:18:12.22 ID:x+lVgNNR0
  


ブーンが出て行った部屋の中、車椅子に乗るつーは笑いながら窓の外を見つめていた。

(*゚∀゚)「光はぁそのままでは光れない〜。そこに意志がなければ強くなれないんだよねぇ」

外には空と公園だけが広がっている。
夕方から出てきていた雲はほとんどなくなっていて、徐々に月が雲間からその姿を覗かせるようになっていた。
あと少しすれば、空は晴れてくる。

今日は満月だ。

(*゚∀゚)「行動には理由が伴い〜、理由は心の動機付けから発生するのよねぇ。原因と結果ぁ、どちらが欠けていても存在することのない人間の行動ぉ。
    因果律ぅ。心の原因〜、イドと意志ぃ」

ずっと外を眺めていたつーは、ふと後ろから足音が聞こえてきたような気がして、振り返る。

その足音が3つあることに気付き、つーはにんまりと笑みを浮かべた。

(*゚∀゚)「そうだ〜♪ うれしいんだぁ、生きる喜び〜♪」

歌声が、部屋の中に響き渡っていった。



  
51: ◆ILuHYVG0rg :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:20:06.39 ID:x+lVgNNR0
  



玄関から外へ、そして悲鳴が聞こえた場所へ。
ビルの壁に沿う形で、ブーンは力の限り走った。

この辺りは広場のようになっているらしく、時々親子連れが歩いているのを窓から見たことがある。
また、ビル街から駅までの近道になっているらしく、サラリーマンやOLが通っていくこともある。
女性がどうして真夜中にこんな場所にいたかはわからないけれども……とにかく、助けないと!

そう思って、悲鳴の場所にたどりついた時。

頭がなくなっている女性の死体を発見した。

( ゜ω゜)「……間に合わなかったのかお」

頭がなくなっているのは、『影』の仕業の証拠。
『影』に襲われたということは、この女性は犯罪者か何かだったのだろうか? 
女性の服装を見てみると、何やら特攻服のようなものを着ている。
暴走族の一員だったのだろうか……?

ブーンは呆然とした表情でその女性の死体を見つめた。
ネットで見るようなグロ画像よりもさらに気持ちの悪いものだったけれども、目を逸らすことができなかった。



  
52: ◆ILuHYVG0rg :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:21:52.52 ID:x+lVgNNR0
  

助けられなかった。
悲鳴をあげて、助けを求めている人を助けられなかった。

あと少し早ければ、助けられたかもしれない人を。
自分に『影』が倒せるかわからないけれども、それでも何かができるはずなのに、間に合わなかった。

無力だ。自分は。本当に。

ブーンは周りを見渡した。『影』がまだ近くにいるかと思ったが、何の気配もしない。
どうやら『影』は消えてしまったらしい。

ため息をつき、警察にでも連絡しようかと携帯電話を取り出す。

その時、後ろに足音が聞こえて、ブーンは振り返ろうとした。

「動くなニダ」

だが、振り返れなかった。
首筋にナイフを突きつけられたから。



  
53: ◆ILuHYVG0rg :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:23:54.61 ID:x+lVgNNR0
  

(;^ω^)「だ、誰だお……」

<ヽ`∀´>「動くな。動いたら殺すニダ」

ナイフはギザギザが掘ってあり、なんだかすごく切れ味がよさそうだ。
サバイバルナイフといっただろうか?

なんだこれ。どうしてこんなものを、こいつは首筋に当ててくるんだ?

『各国の組織がこの国に入ってきている』

狐のそんな言葉を思い出し、ブーンははっとなった。

そうか。こいつ、どこかの国の兵士か何かなんだ。
で、自分を捕まえるために、こんなことを……

ブーンは自分のうかつさを呪った。ビルから出るなと言われたのに外に出て、気をつけろと言われたのに何も考えていなかった。
狐たちから十分注意は受けていたのに……どうして自分は、こんなにも馬鹿なんだろう。



  
55: ◆ILuHYVG0rg :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:25:39.18 ID:x+lVgNNR0
  

<ヽ`∀´>「運がよかったニダ。まさか偶然こんな所でターゲットを見つけられるとは思わなかったニダ。警備員はノしたし、ちょうどいいニダ」

男がぶつぶつと何か言っている。なんだか、ギコやクーのような調査員とは少し雰囲気が違っていた。
なんというか、ちょっと甘さがあるというか……こんなこと呟かなくても、早く自分を連れて行けばいいのに。

簡単に連れて行かれるつもりはないけど。

( ^ω^)「……」

ブーンはタイミングを計っていた。強そうじゃないこんな男なら、もしかしたら逃げることもできるかもしれない。
隙を見て走り出せば、あるいは……

待て。もしかしたら拳銃を持っているかも。なら離れても危ない……

<ヽ`∀´>「さてと、ウリについてきてもらうニダ」

予想的中。
ナイフと共に、今度は拳銃を出してきた男。



  
56: ◆ILuHYVG0rg :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:28:06.13 ID:x+lVgNNR0
  

指1本動かすこともできず、ブーンは立ち尽くした。もう何もできない。

『人の子』が特殊な力を持っている?
そんなの『影』に対してだけじゃないか。『気』は普通の人間には何の役にもたたない。
こんな風に銃で脅されれば……結局は1人の人間に戻ってしまう。

諦めとも絶望ともつかない感情が溢れてきて、ブーンは身体の力が抜けていくのを感じていた。

( ´ω`)「……」

<ヽ`∀´>「早く来るニダ! ウリの国に連れて行って、その力を」

男の言葉はそれ以上続かなかった。
突然、誰かが男を殴ったからだ。

ドカリというパンチの音共に、男が倒れる。



  
58: ◆ILuHYVG0rg :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:29:48.32 ID:x+lVgNNR0
  

<ヽ`∀´>「ノー!!!」

('A`)「ブーン! 逃げろ!」

(´・ω・`)「こいつは僕達に任せろ!」

ξ゚听)ξ「ブーン、こっち!」

(;^ω^)「み、みんな」

ドクオとショボンが男に飛び掛り、ツンが腕を引っ張ってくる。

どうしてここに? どうして自分を助けに?

ブーンはわけが分からず、ツンに引っ張られるままに走り出した。
だが、逃げてはいけないような気がする。
そうだ。相手は拳銃を持っているんだ。このままドクオとショボンを置いたままにしておけば、彼らが危ない。

いや、だけど自分が残ってどうにかなるのか? 普通の喧嘩は限りなく弱い自分が。
いったい何ができる? 何をする?



  
59: ◆ILuHYVG0rg :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:31:33.13 ID:x+lVgNNR0
  

<ヽ`∀´>「むむむ、ファビーン! 邪魔するなニダ!」

( ゜A゜)「ぐは!」
(´ ゜ω゜`)「ぐっ!」

振り返ると、ショボンとドクオが男に殴られて倒れていた。
腹を押さえて悶絶している2人。

まただ。また自分のせいで大事な人が傷ついた。

<ヽ`∀´>「邪魔するやつは……消すニダ!」

銃を構える男。
その銃口は、明らかにツンを狙っている。

ξ゚听)ξ「ひっ」

小さく悲鳴をあげるツン。
恐怖で凍り付いているのか、彼女はその場から動かない。いや、動けない。



  
61: ◆ILuHYVG0rg :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:33:20.01 ID:x+lVgNNR0
  

ブーンはツンに逃げろとも言えず、その様子を食い入るように見つめていた。
頭の中はずっと混乱しっぱなしだが、ひとつの思いが自分の身体を突き抜けた。

駄目だ。駄目なんだ。
これ以上、傷つけさせたくないんだ。誰も。

敵であっても味方であっても、誰も傷ついてほしくない。

けど、銃口を向けている相手にそんなことは言ってられない。
このままだと、ツンが……守りたいものが殺されてしまう。

なら、どうすればいい?

<ヽ`∀´>「死ぬニダ!」

そうだ。

そうなんだ。

守ればいい。

自分が。

自分が守れば。



  
62: ◆ILuHYVG0rg :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:35:23.92 ID:x+lVgNNR0
  

男が引き金を引いた瞬間、ツンの目の前に「あの」光の壁が発生した。
その光の壁は、銃弾をものともせず、完全にその衝撃を吸収した。

勢いを失った鉛の銃弾が、地面にポトリと落ちる。

<ヽ`∀´>「な、なんだナリ!」

ξ゚听)ξ「え? え?」

ブーンは自分の手を見た。
光が生じている。粒子状で白く細かい光が、掌から生じている。
暗いこの場を照らすかのように。

いける、とブーンは思った。

その瞬間、光は収束していく。粒子はひとつになっていき、自分の手の上でひとつの形を作っていく。
相手を攻撃するためのもの……「剣」に。

( ゜ω ゜)「……守るんだお、みんなを、僕が……僕がぁぁ!」

光でできた剣。
まるでRPGででてくるような形をした剣。

それをしっかりと握ったブーンは、一気に銃を持つ男へと走り出した。



  
63: ◆ILuHYVG0rg :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:37:56.16 ID:x+lVgNNR0
  

<ヽ`∀´>「に、ニダ!」

( ゜ω ゜)「おおおおおおおおお!」

男が銃を何発も撃つが、ブーンの目の前に生じる光の壁が全て防いでしまう。

あと少しで手が届きそうな所まで距離をつめ、ブーンは右手の光の剣を斜めに振るった。

刃は銃に当たった。
まるで薄皮をナイフで切ったかのように、それは軽々と両断される。
軽い。それに切れ味も鋭い、この光の剣。

拳銃の銃口部分を失い、呆然とした表情を浮かべた男は、次の瞬間「な、なんだニダ! ひぃぃぃ!」と悲鳴をあげる。

( ゜ω ゜)「ええええああああああああ!」

もう一度、光の剣を振るう。
男の頬に刃がかすめ、皮膚を少しだけ切り裂いた。



  
64: ◆ILuHYVG0rg :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:39:38.39 ID:x+lVgNNR0
  

男の頬から流れてくる赤い血。
それを見たブーンは、頭に上っていった血が急速に冷えていくのを感じた。

切った。人を。自分が。

( ゜ω゜)「お、お?」

<ヽ`∀´>「ひいいいいい!」

恐怖で顔をゆがめた男が逃げていく。逃げ足が速い。

ブーンはその後ろ姿を呆然と見つめていた。もう彼が逃げようが立ち向かってこようが、どちらでもよかった。

切った。人を。
自分が切ったのか……え? 『気』は人には作用しないんじゃなかったのか?

愕然としたブーンは、不思議そうに自分の手の中にある光の剣を見つめた。

切れるのか? 人を?

誰に投げかけたかわからない疑問を思い浮かべていると、光の剣は徐々に光度を低くしていく。
そして、粒子状に戻り、飛び散り、消えた。



  
65: ◆ILuHYVG0rg :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:41:21.94 ID:x+lVgNNR0
  

ξ゚听)ξ「ブーン……」
('A`)「そりゃあ、いったい……」
(´・ω・`)「……」

3人が驚きの顔でこちらを見ている。

彼らの顔を見て、場にそぐわず、ブーンはほっとした。
守れた。自分の大切なものを、守ることができた。

そうか。これはそういう力なんだ。自分が守りたいものを守るための力。

川 ゚ ?゚) 「ブーン! お前達! 大丈夫か!」

クーの声が聞こえたと思うと、人影が慌てた様子でこっちに向かってくる。
きっと仕事が終わってビルに戻ってきた際、偶然自分達を見つけたんだろう。
この場は彼女に任しておけば大丈夫だ。

ブーンは自分の右手をもう一度見た。

光の剣はなくなっている。
だけど、出そうと思えばもう一度出せるような、そんな気がした。

もう自分の中には剣があるということなのだろう。



  
66: ◆ILuHYVG0rg :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:41:58.65 ID:x+lVgNNR0
  



「どうしてあなたは戦うのですか?」

「僕は守りたいものを守るために戦うのです……きっと」

僕の質問に、僕は答えた。

自信なさげな僕の声が、僕の耳に聞こえた。

第9話 完



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