( ^ω^)ブーンが心を開くようです
- 22: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/27(月) 17:35:55.05 ID:zgn2QLwd0
※
( ^ω^)「ツン〜、みんな〜、おいすー」
('A`)「お、会議は終わったのか?」
(´・ω・`)「お疲れ。リンゴを剥いたから食べてね」
会議は終わってすぐ、ブーンは特別治療区域に向かい、ツンの病室へと飛び込んだ。
部屋にはベッドの上で寝ているツンの他に、トランプをやっているドクオをショボンがいる。
ブーンは彼らの横の椅子に腰掛けつつ、寝ているツンの様子を覗き込んだ。
白い布団をかぶり、目を瞑り、穏やかな顔で眠っているツン。
それはものすごく綺麗で、一瞬ブーンは目を奪われ、飛びつきそうになるのを抑えるのに苦労する。
ξ 凵@)ξ「……」
( ^ω^)「ツンは寝てるのかお?」
('A`)「最近は起きてる時間の方が少ないからなあ」
(´・ω・`)「床ずれが起きないよう、こまめに体勢を変えること、ってさっきお医者さんが言ってたよ」
( ^ω^)「じゃあ、さっそく体勢を変えるお」
ブーンは布団をめくり、ツンの身体に手を添える。
これは決して淫らな気持ちがあるわけじゃない。
そう心に誓いつつも、ツンの身体を見てしまうと反応してしまうのは悲しい男の性か。
- 23: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/27(月) 17:38:18.82 ID:zgn2QLwd0
なんてことを考えながら、ツンの身体を横にしてやると、気付いたことがあった。
細くなっているのだ。特に腕とか足の辺りが。
意識のないツンは、もちろん通常の食事を取ることができない。
そのため、点滴による栄養補給を行っているのだが、それは生命活動を行う上での最低限のエネルギーしか補給できず、だからこんなに細くなってしまうのだろう。
こんな細い腕は初めて見た。「小枝のような腕」という表現がぴったりと当てはまる。
ブーンは少し暗い気持ちになりつつも、ツンに布団をかけてあげると同時に「リンゴもらっていいかお?」とショボンに向かって手を差し出した。
(´・ω・`)「ん? いいよ。はい」
( ^ω^)「ありがとうだお」
8等分ぐらいにしたリンゴをもらい、それを一口で頬張る。
シャリシャリした感触を口の中で確かめながら、口移しでもできたなあ、とブーンは考える。喉に詰まるから危ないけど。
なんとかしてツンを助けたいのに、できない。
もどかしくて、嫌な気分になってしまうものだった。
- 25: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/27(月) 17:40:46.90 ID:zgn2QLwd0
( ´ω`)「……はあ」
('A`)「何ため息ついてんだ?」
(´・ω・`)「おいしくなかったかい?」
( ^ω^)「そんなことないお。ちょっと疲れただけだお」
('A`)「そうか」
(´・ω・`)「まあ、働きづめだしね。ねえ、ブーン。そろそろクリスマスだって気付いてたかい?」
( ^ω^)「そうだったかお? そういえば……もう年末だったかお?」
『VIP』にやってきたのは12月の上旬。
で、今は年末に近い日付。もう一ヶ月近くも家に帰っていないことになる。
時間が経つのは早い……その間にあったことは驚愕に尽きない出来事ばかりだったけど。
『影』に襲われて、変な光を出して、『VIP』に保護されて、戦う決意をして、変な組織にさらわれて……
嫌なことも嬉しいこともあった。悲しいことはもっとたくさんあった。
貴重な出会いもあれば、嫌な出会いもあった。
これからどこに進んでいくのかわからないけど、いつかはクリスマスを素直に祝えるような日々に戻りたい。ブーンはそんなことを考え、もうひとつリンゴを頬張る。
- 27: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/27(月) 17:43:21.91 ID:zgn2QLwd0
(´・ω・`)「クリスマスにテロでも起こしてみる?」
('A`)「バーローwwww それなんて小説だよwww」
( ^ω^)「冗談きついおwww」
こうやって冗談を言い合える時間が、もっと増えたらいい。
そんな希望を心に浮かべれば、これからの出来事にも少しは耐えられるような気がする。
(´・ω・`)「じゃあ、テロはまだしも、パーティぐらいならできそうじゃない?」
('A`)「いいね。最近、家族でもクリスマスにパーティすることなんてないからなあ」
( ^ω^)「普通の家庭は、高校生になるとケーキを食べるぐらいしかしないものだお。
まあ、孤児院でパーティはやってたけど」
(´・ω・`)「じゃあ、クリスマスに用事がなかったらパーティでもしようか?」
('A`)「プレゼントでも買ってくるかな。あ、外には出られないんだっけ?」
( ^ω^)「スタッフさんに頼めば大丈夫だお。僕から頼んでみるお」
(´・ω・`)「頼むよ」
('A`)「何にするかねえ。プレゼント交換会でもするかあ」
( ^ω^)「それは面白いおwww」
- 28: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/27(月) 17:46:41.06 ID:zgn2QLwd0
クリスマスプレゼント、か。
パーティ用とは別に、ツンにも何かプレゼントあげてもいいかもしれない。
例えば……指輪、とか?
( ^ω^)(恥ずかしすぎるおwww)
けど、ツンに指輪をあげるのはいいかもしれない。
目覚めた時に見慣れない指輪があるのを見たら、きっと驚くだろう。
顔を赤くして「だ、誰がこんなものを!!」と怒ったりとか。
そんなツンを見てみたい気もする。
ξ 凵@)ξ「……」
( ^ω^)(早く目を覚ますお、ツン。みんな、パーティの準備をして待ってるお……)
眠っているツンに心で語りかけてみるブーン。
返事は返ってこないけど、話しかけるだけで今は十分だった。
※
- 29: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/27(月) 17:49:37.56 ID:zgn2QLwd0
※
午後に入り、いつもの訓練の時間がやってきた。
今日はこれまでのクーとの訓練の復習と、新技の開発だ。
『光弾』『剣状光』『光障壁』の3つがあれば、近距離・遠距離共にカバーできるのだが、いかんせん数を倒すには適していない。
原則的に『影』との戦闘は1対1、もしくは味方2対敵1なのだが、これから大量の『影』と戦う可能性がないとは言えない。
例えば、過去につーの精神がおかしくなった事件の時のように、大量の『影』に囲まれた場合はどうするべきか?
なんとかならないか?とクーに話してみると「では、新しく技でも作ってみたらどうだ」という答えが返ってきた。
それから何日かクーと相談しながら新技開発に力を注いできた。
例えば、マシンガンのように連続して『光弾』を放出したりだとか、
地雷のように白い光を地面に埋め込め、トラップを形成したりだとか、
光をロープのように伸ばして敵に絡ませることで、捕縛したりだとか、
イメージさえ固めれば、白い光は形や性質を色々と変えてくれるので、後は実用性と効率の両面で有効なものを探すだけだった。
(ただ、ラウンジ教の施設を吹き飛ばしたようなドーム状の光はどうやっても出せなかった)
- 31: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/27(月) 17:52:33.46 ID:zgn2QLwd0
敵をいっぺんに倒しつつも、目の前に敵に集中できるようなもの。
けど、味方を巻き込まないようにできるもの。
そうやって色々考えた結果、ひとつの技に決めることができた。
川 ゚ -゚) 「では、ボールを投げるぞ。しっかりイメージして当てろ」
( ^ω^)「わかったお」
剣道場の端っこで、クーがこぶし大のゴムボールを持って構えている。
ブーンはそのボールを見つめながら、これから出す光をしっかりとイメージし、技がちゃんと出せるように準備する。
川 ゚ -゚) 「はっ!」
クーがマウンドに立つ投手のように大きく振りかぶり、勢いよくボールを投げる。
ゴムボールはすさまじい速さで壁に向かって飛んでいく。野球選手顔負けのスピードだ。130は出てるんじゃないか?
しかも変化球がかかっていたらしく、途中でカーブして予想外の動きをとろうとする。
しかし、ブーンのイメージはすでに完了していた。
- 32: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/27(月) 17:55:39.85 ID:zgn2QLwd0
ブーンが右腕を横に上げると同時に、白い光が腕全体から発し始める。
それは急速に収束・凝固し、ブーンのイメージする姿――細長い槍のような物へと形作られていく。
それらは腕から背中にかけて何本も発生する。外から見ればまるで多数の槍を背負っているかのように見えるだろう。
( `ω´)「……いけ!」
その声と共に、白い槍は自らの意志を持っているかのように、手首の方から順番に階段状に射出していく。
頭上に浮いていたそれらの光は、慣性の法則を無視しているかのように急激な加速をとり、宙を飛んでいるボールに向かって飛んでいった。
そして、4、5本の白槍がボールに突き刺さる。
ゴムボールはパン!という音と共に粉々に砕け散り、残骸が地面へと落ちる。
成功だ。
川 ゚ -゚) 「む、見事だ」
( ^ω^)「やったお! 完成だお!」
白い槍は、まだ2、3本ほどブーンの背中に背負われている状態で残っていた。
それを消し、ブーンはクーの方へと足早に近づいていく。
( ^ω^)「完成だお! これを『飛槍光』と名付けるお!」
川 ゚ -゚) 「名前はどうでもいいが……見事だ。
空を飛び、遠隔操作の出来る槍、か。大量に出せば、おそらく集団戦でも役に立つだろう。
こんなイメージ、どうやって思いついたんだ?」
( ^ω^)「某ロボットアニメだお! 本当は『ひれ状じょうご』と名付けたかったけど、それはパクリすぎてるし、かっこわるいからやめたお!」
- 33: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/27(月) 17:58:27.54 ID:zgn2QLwd0
ちなみにこの『飛槍光』は、望めば数百と出せるし、巨大な1本の槍にすることも可能だ(イメージするのが大変だが)。
ただ、放熱板と間違えられたり、敏感すぎてダイレクトに防御に走ったり、バリアを形成したりはしない。
( ^ω^)「これで『影』の討伐がもっと楽になるお。戦いだって終わるに決まってるお」
川 ゚ -゚) 「そうだな……そうなると良いんだが。
私も、お前のように『気』を飛ばすことができたらいいんだがな」
竹刀をぽんぽんと叩きながら呟くクー。
彼女はあくまで、剣の周りに『気』を張ることしかできない。だからこそ、剣術が生かされるというものなのだが。
川 ゚ -゚) 「方法はないものか……」
顔を俯けて、考え込むクー。心なしか落ち込んでいるような気がするのは気のせいか?
もしかしたら、強さで引き離されているとでも思っているのだろうか?
そんなことはない。剣術ではまだまだクーには適わないし、何より心の強さがぜんぜん違う。
戦いにおいて心理面が重要だというのは、嫌ほど経験してきたこと。
たとえ強力な技を持っていても、総合的に見ればクーの方がまだまだ上なのだ。
( ^ω^)「……クーさんも訓練すればいいんだお! そしたらきっとできるはずだお!
望めばきっと叶うんだお!」
川 ゚ -゚) 「……そうだな。一応、練習はしておくか」
ふっ、と笑うクー。少し元気になったようで、安心だ。
- 34: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/27(月) 18:01:54.97 ID:zgn2QLwd0
川 ゚ -゚) 「では、次にこれまでの復習をするぞ。まずは剣だ。
それが終わったら、光の弾やら、空を飛ぶ光の槍やらとのコンビネーションもやっておくぞ」
( ^ω^)「はいだお!」
( ´∀`)「も、盛り上がってる所をすまないモナ。ちょっといいかモナ?」
『剣状光』を出して準備万端という所で、急にモナーが慌てた様子で剣道場に入ってきた。
汗をかき、息を切らしているモナーの顔は、なんだが悲愴さが漂っているような気もしないではない。
( ´∀`)「緊急事態だモナ。すぐに会議室に来てほしいモナ」
川 ゚ -゚) 「なんだ? 何があった?」
( ´∀`)「『影』が現れたんだモナ。しかも大量に」
川 ゚ -゚) 「どこに?」
( ´∀`)「それは……『樹海』だモナ」
樹海?
その言葉を聞いたブーンは、何か不思議な感覚が身体を突き抜けていくのを感じた。
その場所に何かがあるという予感。そして、その場所に行ってはいけないという不安感。
- 35: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/27(月) 18:04:54.89 ID:zgn2QLwd0
(;^ω^)(な、なんだお?)
強烈なイメージが頭の中へと流れ込んでくる。まるで川の流れの先を見るかのような感覚だった。
目の前が真っ暗になったと思った瞬間、視界に飛び込んできたのは見慣れない光景。
視界の全てが灰色がかっており、まるで夢を見ているかのようにも思えた。
見えるのは、『剣状光』を持っている自分と、刀を構えて何やら喋っているクー。
周りは緑や、枯れた木で覆われており、目の前には巨大な石がそびえ立っている。
その上に立ち、クーと喋っている人影は……?
川 ゚ -゚) 「行くぞ、ブーン。どうした?」
( ^ω^)「あ……はいだお」
イメージは一瞬にして消え去った。
さっきまで見えていた森の中での光景は全て消え、心配そうな顔でこちらを見ているクーとモナーが視界に入ってくる。
正体不明のイメージ。あんな場所は行ったことがない。どうしてそんな場所がいきなり目の前に浮かぶんだ?
疑問を抱えつつも、ブーンはクーと共に会議室に向かう足を進めた。
今は『影』の話に集中しなくてはならない。
それでも、あのイメージは頭からついて離れなかった。
※
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