( ^ω^)ブーンが心を開くようです
- 23: ◆ILuHYVG0rg :2006/12/06(水) 23:24:34.22 ID:feDzEIXR0
- ※
(*゚ー゚)『時間です。南側から突入してください』
狐『健闘を祈るよ』
川 ゚ -゚) 「よし、行くぞ!」
クーの掛け声と共に、ブーン達は一斉に走り出した。
樹海の森はかなり深い。
足場はちゃんとしておらず、足元に注意していないとすぐにこけてしまいそうになる。
最初は遊歩道らしき場所を走っていく。
どうやら観光に使われているもののようで、石や木の枝に目を瞑れば平たんな道のりだった。
朝独特の冷気が顔にぶつかり、寒さで凍えそうになりつつも、ブーンは走った。
周りの景色はどんどんと入れ替わっていく。木から木へ、石から石へ、草から草へ。
場所が変わりながらも変化のないその道のりは、思った以上に険しかった。
- 24: ◆ILuHYVG0rg :2006/12/06(水) 23:26:27.81 ID:feDzEIXR0
( ´∀`)「2時の方向に『影』だモナ!」
(=゚ω゚)ノ「任せるょぅ!」
木々の間にさっそく現れた『影』に対し、ぃょぅが懐からくないを取り出す。
(=゚ω゚)ノ「ふもっふ!」
走りながら小さく腕を振ってくないを投げるぃょぅ。
木々の間を器用に通り抜け、それは『影』に当たる。
消滅こそしなかったものの、『影』の動きは鈍くなった。
( ´∀`)「10時の方向にもいるモナ!」
(=゚ω゚)ノ「セカンドレイド!」
奇妙な掛け声と共に、くないがもう一方の『影』にも放たれ、それは見事足らしき部分へと当たる。
そうして動きの鈍くなった2体の『影』の横を、クー、自分、ぃょぅ、モナーの順で駆けていく。
- 27: ◆ILuHYVG0rg :2006/12/06(水) 23:28:43.27 ID:feDzEIXR0
- 道に大きく盛り上がった木の根を飛び越えると、走ってる道がそろそろ遊歩道から逸れてくる。
この樹海は、1度道を逸れて迷えば、2度と脱出できないという俗説が流れているが、そんなことはない。
確かに、そこら中に穴が空いてて道は不確かだし、どこまで行っても木ばかりなので方向感覚も狂うが、
方位磁石はちゃんと働くし、携帯電話も通じる。
ただ、頭上に鬱蒼と茂っている木の枝のせいでGPSは使えない。
だが、それでも、狐たちのナビゲートと自前の地図を使えば十分現在地は確認できる。
狐『そのまままっすぐ進んでくれ。中央まではまだ先だ』
その声と、先頭を走るクーの地図を頼りに、樹海の中央を目指す。
(=゚ω゚)ノ「12時の方向に2体!」
川 ゚ -゚) 「任せろ」
真正面に現れた『影』に対し、速度をあげたクーが腰の刀に手をかけながら一気に近づく。
『影』は上から勢いよく腕を振りおろすが、クーは急速に横にジャンプしてそれを避け、重心を立て直しつつ足に力を入れて『影』に飛び掛る。
川 ゚ -゚) 「っ!」
一気に刀を抜いたクーは、逆袈裟切りで『影』の腕を切り落とし、
そのままの速度を保ちながら返す刀で後ろにいたもう1体の『影』の足を切りつけた。
- 30: ◆ILuHYVG0rg :2006/12/06(水) 23:31:05.67 ID:feDzEIXR0
2体の『影』の間に隙ができ、ブーン達は走る足を止めずにその場を通り過ぎる。
クーもまた走り出し、今度は自分達の1番後ろについた。
森は更に深くなっていき、ついには木の葉に隠れた自然の落とし穴−―風穴もちらほらと見当たりはじめた。
これに落ちると怪我をして危ないというだけでなく、時間のロスになる上、『影』に一気に囲まれてしまうことになる。
クーの地図を頼りに、その風穴を飛び越えたり回避したりして、なんとか走る速度を落とさないままにしなければならない。
川 ゚ -゚) 「10歩先、あるぞ!」
( ^ω^)「把握!」
クーの指示通り、9歩進んだ所でジャンプして、落ち葉で隠れて見えなかった穴を飛び越える。
少し振り返ると、ちゃんと後ろの3人もついてきていて、無事にやり過ごせたようだ。
(=゚ω゚)ノ「1時と11時の方向に2体ずつ! ここは僕が!」
( ^ω^)「いや、任せてくださいですお!」
ぃょぅに制止の合図を出したブーン。
正面の4体の『影』を見据えながら、頭の中で何度もイメージを繰り返す。
8本の白い槍が自分から飛び出していき、曲線を描きながら『影』に突き刺さるイメージを。
- 33: ◆ILuHYVG0rg :2006/12/06(水) 23:33:32.10 ID:feDzEIXR0
( `ω´)「いけ!」
右手を横にあげると、腕から背中にかけて8本の『飛槍光』が出現した。
それらは自分のイメージどおり、階段状に射出され、複雑な曲線を描きながら『影』へと向かっていく。
『飛槍光』を使う上で1番大事なのはイメージだ。
猛スピードで宙を飛び、敵に突き刺さるまでのイメージを完璧に行わないと、命中させることはおろか発生させることもできない。
つまりは潜水艦の魚雷のようなものだ。
潜水艦の魚雷は敵がどの位置にどれくらいの速度で移動するかを予測し、その予測地点に魚雷を発射する。それに近い。
だが、『飛槍光』がそれと違うのは、たとえ射出した後でも、途中でイメージを変えれば『飛槍光』もそれに応えて軌道を変えてくれることだ。
射出された白い光の槍は、ほぼイメージ通りに飛んでいった。
複雑な軌道を描きながらも、『影』に感知されない猛スピードで飛んでいく。
( `ω´)「っ!!」
4体の『影』の内、3体まではイメージ通りに『飛槍光』が命中した。
しかし、もう1体が予想外にも大きなジャンプをしたために『飛槍光』は外れ、地面に突撃。
上空から自分達の方へと『影』が落ちてくるのを見たブーンは、とっさに『光障壁』を発生させようする。
が、その前に自分の横を通る人影に気付いた。
- 36: ◆ILuHYVG0rg :2006/12/06(水) 23:35:53.14 ID:feDzEIXR0
( ´∀`)「されるかモナ!」
それはモナーだった。
彼は、落ちてくる『影』にタイミングを合わせて、驚くべき高さでジャンプし、足を振り出す。
( ´∀`)「はぁっ!」
靴が白くぼんやりとした光をまとっているのは、『気』を張っている証拠。
彼の蹴りは見事に命中し、移動方向を縦から横のベクトルに強制変更させられた『影』は近くの木へと吹き飛ばされた。
( ^ω^)「すまないお」
( ´∀`)「気にするなモナ! それより走るんだモナ!」
礼を言っている暇もなく、ブーンはモナーにせかされて走り続ける。
彼の蹴りをくらった1体は木にぶつかったまま動かない。
その隙を見て、ブーンは先頭を切って走っていった。
前を見ると、うっそうとした森が広がる中で複数体の敵がいるのが見える。
しかし、こちらの走るスピードに追いつけるものは少なく、ブーン達は邪魔になる何体かだけに攻撃を加え、あとは全て無視をした。
それからもずっと走り続けた。『影』の邪魔はあまり入らず、スムーズに進んでいると言っていい。
だが、
- 39: ◆ILuHYVG0rg :2006/12/06(水) 23:38:06.64 ID:feDzEIXR0
狐『陽動部隊が一時撤退した。そちらの状況は?』
その狐の問いにクーが「あと数十分で到着。障壁の展開の用意をします」と答えるのを聞きながら、
ブーンは頭の中で、まだ着かないのだろうか?と思い始めていた。
もうずっと全色力で走り続けている。正直言って、体力の限界が近い。
だが、後ろを走るクー達はスピードを緩めようとはしない上、息切れなんてまったくしていないように見える。
(;^ω^)(み、みんなおかしいお)
こっちはもう足は痛いし、息も切れ始めてきた。
マラソンは得意な方ではないのだ。
いくらクーとの訓練を続けてきたとはいえ、学校マラソン万年学年最下位の自分がこの速度で走るのはきつい。
(;^ω^)「はぁ、はぁ、ひぃ」
(=゚ω゚)ノ「大丈夫かょぅ? あと少しで分岐地点に着くょぅ。頑張るょぅ」
(;^ω^)「わ、わかったお」
ぃょぅに励まされながら、なんとかブーンは走り続ける。
弱音は吐いてられない。まだまだやるべきことはたくさんあるのだ。
作戦を成功させるためにも、ここを全力で走らないといけない。
- 42: ◆ILuHYVG0rg :2006/12/06(水) 23:40:34.97 ID:feDzEIXR0
それから数分後、「止まれ!」というクーの声が聞こえて、ブーンは急いで立ち止まった。
そこは、ちょうど木の少ない草むらのような場所だった。視界がよく、もし敵が出てきても対処がしやすい。
敵から見つかりやすいのが難点だが、これだけ『影』がいる中で見つかるも見つからないも関係ない。
( ^ω^)「はぁ、はぁ……」
ブーンは膝に手をついて息を整える。ここまで走りっぱなしだったので、身体はもう悲鳴を上げ続けている。
けれども、逃げる気はない。クー達が心配そうにこちらを見る中、「大丈夫だお」とブーンは答えておいた。
川 ゚ -゚) 「……よし、ここだ。ここから四方に分かれる。それぞれの爆破地点まで『H.L』を守るんだぞ」
狐『ここからが正念場だ。よろしく頼む』
川 ゚ -゚) 「『疑似障壁』、展開」
クーの声を合図に、ブーン達は腰の装置のボタンを押した。
すると、白く濁った透明なドーム状の壁が自分達の周りに発生した。
『疑似障壁』――ブーンの光を人為的にドーム上に展開することで発生する、防御に特化した壁。
銃弾などは防げないが、『影』の攻撃ならある程度まで耐えられるという。いわば『光障壁』の劣化版か。
ブーンは自分の周りに展開されている『疑似障壁』を見て、まるでシャボン玉の中にいるみたいだな、と思った。
- 45: ◆ILuHYVG0rg :2006/12/06(水) 23:42:59.42 ID:feDzEIXR0
ふと、自分が行く方向を見てみる。
自分は北西に行くようだが、そちらは今、北と西に引き寄せられた『影』で一杯になっていることだろう。
他のみんなも同じだ。今から行く場所は『影』で埋め尽くされた危険地帯。
いくら『疑似障壁』があるとはいえ、少しでも油断すれば死んでしまうだろう。
川 ゚ -゚) 「……ここが正念場だ。不退転の意志で望まなければならない」
(=゚ω゚)ノ「……」
( ´∀`)「……」
( ^ω^)「……」
それぞれ顔を見合わせ、視線を交わす4人。
これで終わりなのではない、まだ始まりなのだということを感じさせてくれるこの空気。
川 ゚ -゚) 「所長と同じ言葉になるが……死ぬな、みんな」
(=゚ω゚)ノ・( ´∀`)・( ^ω^)「了解!」
ブーン達は何もためらわず、四方に分散した。
ここからは1人で戦わなくてはならない。
だが、その緊張など微塵も感じなかった。
※
- 49: ◆ILuHYVG0rg :2006/12/06(水) 23:46:04.12 ID:feDzEIXR0
※
(*゚ー゚)「北側陽動部隊、撤退を確認。人的損害15%。死者は0。
突入部隊、四方に分散。これより目標地点へと向かうようです」
狐 「予定よりも早いね。いいのか悪いのか……陽動部隊を南からも突入させるんだ。
ここからは持久戦になる。少しでも彼らの手助けになるように、奮起しないと」
VIPのビル内。
テレビや通信設備、気候や周辺状況、それぞれの部隊の状況など、様々なものを移すモニター郡が揃っているこの部屋。
今ここでは、複数の怒声と怒号、しいの指示や状況説明などが飛び交っていた。
中心となっているのはしぃと狐だが、今回は他にも多数のオペレーターや指揮官がこの部屋にいる。
たぶん陽動部隊の指揮官なのだろう、1人の男が青い顔をしてモニターの前に立っているのを、ドクオは見た。
ついさっき「武器がまったく役に立たないか。ここは退くしかない」と言っているのを聞いたことから推測して、たぶん状況が良くないのだろう。
- 51: ◆ILuHYVG0rg :2006/12/06(水) 23:48:13.37 ID:feDzEIXR0
('A`)(すげえな……まるで戦争じゃねえか)
ドクオは、こんな光景をどこかで見たことがあるような気がしていた。
と言っても、それは映画とかテレビの中ででしかない。
自分は戦場にいたことなんてないし、今までこの国に戦争なんて起こらなかったのだから。
だが、今、目の前には戦場が広がっていた。
モニターに移る樹海の状況。そこには『影』と戦っているのであろう銃を持った人間がチラホラと写っている。
映画で見たような兵士の格好だった。
(*゚ー゚)「西側より入電。西側陽動部隊、人的損害30%。死者0、重傷者5です」
狐 「くっ……西は早く撤退だ! 南はまだか!」
('A`)(……)
ドクオは呆然と前だけを見据える。
まるで別世界に来たかのような感覚。
今までとは何もかもが違う緊張感。
綱渡りをしているかのような危機感。
怖い。
- 52: ◆ILuHYVG0rg :2006/12/06(水) 23:50:35.32 ID:feDzEIXR0
「ドクオ?」
('A`)「え、ん? なんだ?」
いきなり呼びかけられて、ドクオはビクリと身を震わせながら横を向く。
そこには、ツンの車椅子の取っ手を持ちながら、いぶかしげな顔つきでこちらを見ているショボンがいた。
(´・ω・`)「なんだはこっちの台詞だよ。さっきから呼んでるのに全然反応しないし……どうかしたのかい?」
('A`)「いや、なんでもない……ちょっと雰囲気が苦手に酔っただけだ」
そう言いながら、ドクオはもう一度モニターへと目を移す。
そこには『影』にやられて頭から血を流している兵士の姿が映し出されていて、慌てて目を逸らす。
見たくはなかった、あんなもの。
戻る/携帯用3ページ目