( ^ω^)ブーンが心を開くようです

  
24 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 20:46:58.10 ID:Pq8gNNQw0
  

だが、まだ終わっては居なかった。
F−22の全滅を目の当たりにしたB−2のパイロットは、目標と距離を取って攻撃することを選択した。

利口な選択であることは間違いなく、B−2は白い光を浴びることなく、遠くからミサイルを発射することができた。

そのミサイルはクラスター爆弾と呼ばれるものだ。
大きな爆弾の中に、小さな爆弾が数百個入っており、さらにその中には600個の鉄球が詰め込まれている。
これが空中で爆発することで広範囲に敵を殲滅することができ、
また、逃げるスペースを少なくすることもできる。

対地対人兵器としては一流の爆弾だ。

空中で爆発したクラスター爆弾は、目標の少年に向かって数万個の鉄球を降り注いでいく。



  
26 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 20:48:30.86 ID:Pq8gNNQw0
  

( ゚ω゚)「……」

だが、それすらも無駄だった。
突如少年の頭上に現れた光の壁が、鉄球を全て防いでしまったのだ。
光の翼には、防ぐどころかすり抜けてしまい、まったくのノーダメージ。

B−2のパイロットは、もちろん、それを見て驚愕し、恐怖した。
もしかしすると、これに対してはどんな兵器も効かないのではないか?

そう思っていると、目標の少年が動いた。
B−2ではない。近くの街に向かってその目が動き、翼からまたしても巨大な光球が発生し始めたのだ。

再び発せられた『聞こえない声』。
巨大な光球は、街に直撃し、恐怖の再来を告げた。

街が完全に消滅してしまっていたのだ。

恐怖におののくパイロット達。
クラスター爆弾は効かない上、戦闘機や街を一瞬にして消してしまう力。
こんな化け物に、どうやって対処しろと?



  
27 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 20:49:58.10 ID:Pq8gNNQw0
  

と、そこにひとつの緊急コードがB−2に対して発信された。

それは、特Aクラスのコード。
通常の戦争でもまず使われることのない、緊急かつ有事を示すコード。

つまり、核ミサイルを使用せよ、というコードだ。


パイロットはぶるりと背中が震えるのを感じ、自分の指先を見つめた。
指先は、核ミサイルのボタンに触れている。

かつて、実際に核爆弾が使用された例は2つしかない。
H島とN崎。その2つだけ。

そして今、3つ目の核爆弾が、再びこの国に落とされようとしているのだ。

アメリカ人であるパイロットでも、これが何をもたらすのかはわかっている。
核の不拡散を謳い続けてきた国連。そして、startなどの核不拡散条約によって、核軍縮が進んできたこの時代。
そんな中再び核が使用されれば、どうなるのか? それは誰にも予想がつかない。



  
29 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 20:52:13.29 ID:Pq8gNNQw0
  

だが、ここでこれを使わなければ、確実に被害は広がってしまう。
この国は残らず消滅させられてしまうかもしれないし、それが自分の国に広がる可能性も否定できない。

自分の国と、国の家族を守るため……B−2のパイロットは、震える指を抑えながら核ミサイルのスイッチを押す。

B−2の底部から放たれたミサイルは、1次ブースターを切り離し、目標に向かって一直線に飛んでいった。
その弾頭に搭載されたウラン型の核爆弾は、1度起爆すれば辺り一帯に黒い雨と死の灰を降らせる。
かつてのH島・N崎で使われた核爆弾と比べて、2、3倍の威力を持つその爆弾なのだから。


だが、B−2のパイロットがその爆発を見ることはなかった。

まず、パイロットの身体は、ミサイルを撃った直後に光へと転じてしまっていたからだ。

意識する暇もない。翼から放たれた光の球がB−2に直撃し、その機体と中の人間を全て光に変えてしまう。



  
31 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 20:53:22.56 ID:Pq8gNNQw0
  

続けて、ミサイルにも変化が訪れていた。

少年に近付いていくにつれて、ミサイルの周りに白い光が現れ始めた。

それは少年から発せられたものではない。
空から、雪のように舞い落ちてきた光が、核ミサイルを覆っていたのだ。

直進するごとに、その鉄の塊は白い光に変化する。
砂のように分解され、少年の翼の一翼に吸い込まれていく。

最後には完全に核爆弾は無力化された。

そう。
人類最強の兵器でさえ、少年を殺すことはできなかったのだ。



  
33 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 20:54:12.68 ID:Pq8gNNQw0
  

自分に近付くもの全てを白い光に変えてしまった少年は、
そのまま空中でとどまり、『聞こえない声』を出し続けている。

空から降ってくる白い光は、徐々にその量と範囲を広げていく。
雪のように、羽のように舞い落ちるその光は、空の白さと相まって幻想的な風景を作り出していく。

避難所にいた人々はそれを呆然と見つめる。
ヘリコプターから見たテレビカメラもそれを写す。
『VIP』とアメリカ軍もそれを見ては、口をぼんやりと空けてその場を動かない。


世界はその結末を決せられた。

それを止める力を持つ者は、もはや誰もいないということを、F−22とB−2の全滅が示していた。





  
34 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 20:56:00.68 ID:Pq8gNNQw0
  


通信士「……F−22とB−2の編隊が全滅。核ミサイルも……白い光に変えられてしまいました」

( ^Д^)『【なんということだ……これは……悪夢か?】』

戦闘機の全滅を双眼鏡で目撃し、急いでテントに戻ってきたドクオが最初に聞いたのは、通信士とプギャーの悲痛な声だった。

特にプギャーは、自信満々で送り出した編隊がいとも簡単にやられたことに、驚き以上に恐れを抱いているのだろう。

『いったいどうしろと言うのだ……』という諦めの色を含んだぼやきから以降、彼は一向に話しだそうとはしなかった。

打つ手なし、といったところか。



  
35 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 20:57:13.55 ID:Pq8gNNQw0
  

ドクオは、テントの中にいる人達が、全員ひとつのモニターに釘付けになっていることに気付き、そちらに目を移した。

そこには、8枚の翼を携え、悠然と宙に浮かんでいるブーンの姿があった。
おそらく『VIP』かアメリカ軍の偵察機が撮っているのだろう。

周りに建物もなく、白い空と同化するように広げられている白い翼は、今も光を発し続けていた。
ブーン自身も口を広げ、何か声を出しているような姿をとっている。

ドクオはそれを見て、顔をしかめる。

彼が、アメリカ軍の戦闘機を全滅させた。中にいる人間は、おそらく死んだのだろう。

彼がこんなことをやる人間か? 本当に?

ドクオはブーンの顔を見つめ続けた。
ショボンも、そして意思を持たないツンもそうしていることに気付き、さらに顔をしかめた。



  
36 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 20:58:48.91 ID:Pq8gNNQw0
  

狐「……そうか、そういうことか」

モニターを見つめていた狐が、独り言のように呟いた。

狐「それが君の導く世界なんだね、ブーン君……」

へたり込むように椅子に座り、ふっと笑みを浮かべた狐。
その顔には諦めの色が伺えて、きっと何かを悟ったのだろうということが分かる。

狐「これで世界は終わり……いや、新たな方向に導かれる、か……」

(=゚ω゚)ノ「所長……」

狐「私が馬鹿だったのかもね。いや、もう正否すら意味がない。全ては『人の子』の意思、か……」

その呟きを最後に、狐は片手で顔を隠し、背中を丸めた。
自らの無力感に打ちひしがれているその背中。

アメリカ軍にも、『VIP』にも打つ手がない今、ブーンを止めることのできるものはいないのだろう。
彼が街を消滅させていく中、見える結末はおそらく『世界の終末』だ。

ブーンの白い光によって、全ては消滅させられてしまう。
いや、白い光に変えられる、と言った方が正しいか?

どちらにしろ、この世界に終わりがきたということに間違いは無い。



  
37 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 21:00:13.64 ID:Pq8gNNQw0
  

黙りこみ、顔を覆っている狐。
通信機の先で、何も言葉を発しようとしないプギャー。

ドクオは何も言えなかった。

こんな結末になると、誰が予想した?

それともブーン、お前がこの結末を描いているのか?


だが、それにしてはお前の顔は……

ξ 凵@)ξ「う……うぅ」

突然、ツンが呻き声をあげた。
ドクオとショボンは驚き、彼女を見る。

ξ 凵@)ξ「うぅ……あぁ……」

そこには、



  
38 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 21:00:43.37 ID:Pq8gNNQw0
  



ξ;凵G)ξ「ぶ……ブー……ン……! ブーン……! うぅ……」



必至になって彼の名前を呼び続けるツンの、一筋の涙が流れていた。



  
39 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 21:01:58.46 ID:Pq8gNNQw0
  

('A`)「……ツン」
(´・ω・`)「……」

ξ 凵@)ξ「うあぁ……」

再び無表情に戻り、黙りこくるツン。
だが、その頬には確かに涙の跡が残っている。

ツンの気持ち。一粒の涙が、確かに感じられた。

('A`)「そっか、分かるんだな」

ドクオはさっきから感じていた感情をそのまま口に出した。

それに答えるようにショボンも口を開く。

(´・ω・`)「ブーンが……寂しがってるって」

ドクオはショボンの顔を見た。
ショボンもこちらを見つめてきた。

自分たちだけには分かる。
彼の表情の奥底に隠れている感情が。

友達として長年付き合い、助け合い、一緒に馬鹿をやってきた中で積み上げられてきた感覚が、それを察することを可能にしていた。



  
40 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 21:02:42.29 ID:Pq8gNNQw0
  

ドクオはショボンと頷き合い、自分達がやるべきことを確認した。

行くか?
うん。

無言の会話で確かめ合い、放り投げていたサブマシンガンを拾い上げるドクオ。

まだ弾は入ってる。
自分の身を守るためならこれで十分だ。

まずショボンが走り出し、テントの外へと出た。
行動の早い彼ならではだ。

ドクオは感心しつつ、ツンの車椅子を押して、彼の後に続こうとする。

(=゚ω゚)ノ「ちょ、ちょっと待つょぅ! どこに行くんだょぅ!」

振り返ると、ぃょぅが心配そうな顔で腕を掴んできた。
車椅子から手を離し、ドクオはゆっくりと人差し指を一方向に向けた。

('A`)「行かなくちゃいけない……!」

(=゚ω゚)ノ「……!」

示された指の先には、ブーンの白い翼があった。



  
41 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 21:03:45.07 ID:Pq8gNNQw0
  

ここからあそこまでは、けっこうな距離があるのだろう。

だが、見えるぐらいなら絶対に行ける。
この世界が終わりを迎えようがなんであろうが……自分達は行かなくてはならないのだ。

それが、今やるべきこと。

(´・ω・`)「乗って!」

車の排気音と共に、どこからか持ってきた軽ワゴン車のハンドルを握っているショボンが、助手席のドアを開けて呼びかけてくる。

ドクオはぃょぅの手を振り払う。
急いで車に近付くと、ツンを車椅子から降ろして、まず彼女を後部座席に座らせた。
シートベルトをちゃんと締めて、怪我しないように注意する。

それが終わり、続いて助手席に乗ろうとした所で、ぃょうに肩を掴まれた。

(=゚ω゚)ノ「待つょぅ! あそこは今危険だょぅ! 行けばきっと……」

('A`)「けど、行かなくちゃいけないんすよ、俺たちは」

(=゚ω゚)ノ「だけど……!」

狐「どうしてだい?」



  
42 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 21:05:25.89 ID:Pq8gNNQw0
  

突然、狐が割り込むようにして言った。

狐「どうして、危険をおかしてまで行くんだい?」

ドクオはその顔を見て、彼の問いが真剣であり、それでいて何かの答えを求めているかのようでもあった。

('A`)「それは……」

車に乗り、ショボンと目を合わせる。

考えることは同じだ、ショボンも、そしてツンも。

ドクオとショボンは、声を揃えて言った。



('∀`)(´・ω・`)「友達だから!」

ξ 凵@)ξ「……」


車は走り出す。
ブーンの所に向かって。





  
43 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 21:06:13.52 ID:Pq8gNNQw0
  

突然、狐が割り込むようにして言った。

狐「どうして、危険をおかしてまで行くんだい?」

ドクオはその顔を見て、彼の問いが真剣であり、それでいて何かの答えを求めているかのようだとも思った。

('A`)「それは……」

車に乗り、ショボンと目を合わせる。

考えることは同じだ、ショボンも、そしてツンも。

ドクオとショボンは、声を揃えて言った。



('∀`)(´・ω・`)「友達だから!」

ξ 凵@)ξ「……」


車は走り出す。
ブーンの所に向かって。





  
44 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 21:08:08.05 ID:Pq8gNNQw0
  



車が走り去るのを見ても、もう誰も何も言おうとはしなかった。
ただ呆然と車を見つめるのみで、止めようともしない。
本来は、止めなくちゃいけない

だが、そんな場合ではないのだろう。

狐は空を見上げ、徐々に白い光が落ちてくるのを見た。

それは、まるで天使の羽のようだった。

兵士「いいんですか?」

状況を把握していないのか、兵士が横から無頓着にも尋ねてきた。
狐はひとつため息をつき、「何がだい?」と答えた。

兵士「あのまま行けばきっと彼らは……それに、命令違反につながる可能性も……」

狐「こんな時に何を言ってるんだい……それよりも見てみろ。
  こんな光景人生で1度だって見ることはできないよ」

狐はそう言いつつ、落ちてくる白い羽を見つめた。



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