( ^ω^)ブーンが心を開くようです

  
85: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/17(金) 00:33:59.06 ID:7fQNAVNT0
  



硝煙のにおいが立ち込めている。
廊下の向こうからは時々爆音らしき音がこだまし、耳をつんざく。
兵士や研究員、信者と思われる人々が廊下を行きつ戻りつし、建物の中は完全に混乱状態と化していた。

川 ゚ -゚) 「よし、そろそろだろう」

それまで貧相な身なりで廊下の端っこに座っていたクーは、次の瞬間には服を脱ぎ捨て、戦闘服へと様変わりした。

腰には小型の短機関銃「イングラムM11」と手榴弾が数個。
胸ポケットにはイングラムの弾。
たすきがけにしている銃のソケットには愛用のブローニングM1910。

パックパックには他にも色々と装備品を持ってきており、今回は完璧な武装と言えた。

川 ゚ -゚) (まずはブーンを助けに行くか)

そう思って足を踏み出した所で、さっそく兵士と思われる防弾チョッキと鉄帽子を来た人間に出くわした。

相手はすぐさま手に持っていたサブマシンガンをこちらに向けるという、警告もなしの暴挙に出てきた。



  
86: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/17(金) 00:36:22.32 ID:7fQNAVNT0
  

川 ゚ -゚) (くっ……!)

クーは曲がり角に身を隠す。
そのすぐ後にサブマシンガンのフルオート射撃のやかましい音が廊下に鳴り響き、銃弾が壁を削り取っていく。
クーはひやりと汗を流し、イングラムを再度握りなおす。

川 ゚ -゚) (警告もなしとは……よほど切羽詰っていると見える)

射撃の合間にちらりと兵士の方を見てみる。敵は2人。持っている銃はサブマシンガン「P90」。
ライフル弾のような形状の弾を使い、人間工学に基づく斬新なデザインが特徴の、反動が少なく命中精度の高い高性能な代物だ。
どうしてラウンジ教ごとき宗教団体にそんなものがあるのかはわからなかったが、しかし使う人間がこれではどうしようもない。

敵が隠れたままなのに、フルオートを際限なく続けている。これではすぐに弾切れだ。

予想通り、P90の弾はすぐに尽き、敵はすばやくカートリッジを変える。だが、その隙を見逃すはずがない。



  
88: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/17(金) 00:38:51.63 ID:7fQNAVNT0
  

クーは腰にかけていた閃光手榴弾のピンを抜き、隠れながら手のスナップだけで敵に向かって投げ、同時に自分の耳と目をふさぐ。

瞬間的な閃光、そして爆音。

それが収まると同時に、クーは物陰から身を現し、イングラムの引き金をしぼった。
すさまじい反動が腕におそいかかるが、そんなのはいつものことだ。
セミオートで発射した銃弾は、閃光手榴弾のショックで倒れていた兵士の足に当たる。

ギャッ!という呻き声をあげる兵士。それ以上動かない。ショックで気絶してしまったようだ。
これでこの兵士2人は行動不能、だ。

川 ゚ -゚) (命まではとらんよ……)

なるべく人を死なせたくはないからな。

そう思いつつ、クーは倒れている兵士2人の上を飛び越えて、走り出した。

廊下を曲がり、目的の場所へと急ぐ。
途中兵士や研究員と出くわすこともあったものの、その全てをなんなくやり過ごし、クーは順調に作戦が進んでいることを実感した。

兵士「南だ! 南に敵は集中しているらしいぞ! 早くいけ!」

そんな叫びにも近い声を耳に入れつつ、クーはその兵士の横を通り過ぎる。



  
89: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/17(金) 00:41:12.81 ID:7fQNAVNT0
  

南、か。
モナー達はちゃんと敵をひきつけてくれているらしい。

今回の作戦は比較的単純だ。
建物の外壁をセムテックスで爆破し、同時に南から『VIP』の工作員が戦闘を仕掛ける。
しかし、決して殲滅するためではなく、あくまで陽動。無茶はせず、形勢が不利になれば後退。
追いかけてきた敵には後方からの機関銃で牽制。

それによってラウンジ教に混乱を引き起こし、その間にクーとその仲間数人が建物内部にてブーンと、つい先日さらわれたツンを助ける。

もしブーンとツンを助けられなければ、力でこの建物を制圧する。

そんな二段構えの作戦だった。

川 ゚ -゚) (……)

しかし、先日ツンをさらわれたのは想定外の出来事だった。

自分の部屋で寝ていたはずのツンが、朝になれば消えていたのだ。ビルのどこを探してもいないし、付近にもいなかった。
手がかりとなるものもなく、ということは誰かにさらわれたのか? と思い至ったのだが、しかし誰がそんなことをする必要があるのか不思議に思っていた。



  
92: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/17(金) 00:43:20.70 ID:7fQNAVNT0
  

そんな時にかかってきた、1本の電話。
声を機械で変え、逆探知ができないように電話の中継地点を機械でランダムに変えていたその電話の主。

『ツンはラウンジ教にさらわれた』

そんな短い内容の、しかし自分達にとっては宝のような情報をよこしてきたその電話。

あれはいったい誰からなのだろう?

川 ゚ -゚) 「っと、考えている暇はない!」

思考の渦に巻き込まれそうになったクーは、突然目の前に現れた兵士1人に手刀を一発浴びせて気絶させる。
いったい何人の兵士がここにいるのだろうか。見当もつかない。

走り続けるクーは、ようやくひとつの扉にたどりついた。
ブーンが収容されている部屋。監獄のようなせまく、薄暗い部屋。

約30分前に彼に待っているように伝えたが、果たして彼はちゃんといるのだろうか?

ブーンは敵から奪ったカードキーを使い、その部屋のロックを解除する。

ギィ、という音と共に開く鉄の扉。

しかし、中には誰もいなかった。



  
93: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/17(金) 00:45:50.11 ID:7fQNAVNT0
  

川 ゚ -゚) 「ブーン……くそっ!」

どこに行った? いや、そんなのはだいたい予想がつく。
何せ、部屋の壁に大きな穴が空いていたのだから。

その穴はおそらく『剣状光』で切ったのだろう。豆腐を包丁で切るよりも鋭く切断されている。

川 ゚ -゚) (おそらくツンのところか?)

だいたいの予想をつけつつ、クーは腰の無線機に手を伸ばした。

川 ゚ -゚) 「こちら【クール】。特殊1班。聞こえるか」

特殊1班はクーと共にこの施設に潜入し、人質を助けるのが任務の班だ。今頃はツンの方を助けに行っているはず

特殊1班班長『どうぞ』

川 ゚ -゚) 「【少年】が消えた。見かけなかったか?」

班長『いえ、見ていません』

川 ゚ -゚) 「そうか。【少女】の方はどうか?」

班長『事前に入手していた情報の部屋にはいませんでした。ただいま全力で捜索中です』

川 ゚ -゚) 「ちっ、そうか。両者共、見つけたら報告しろ」

班長『はっ、了解』



  
95: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/17(金) 00:48:17.21 ID:7fQNAVNT0
  

クーは続いて別のボタンを押し、もう一度無線機に声を吹き込む。

川 ゚ -゚) 「【クール】だ。【コウモリ】、そちらはどうだ?」

【コウモリ】はぃょぅにつけられた呼称だ。

(=゚ω゚)ノ『こちら【コウモリ】。敵は建物からあまり出てこないょぅ。
    こちらから陽動をいくつかかけてるけど、あと30分が限界だょぅ』

川 ゚ -゚) 「そうか、【バッファロー】そちらは?」

また別のチャンネルに合わせて、【バッファロー】――モナーに呼びかける。

( ´∀`)『後方からの支援は相手が建物から出てこない限り難しいモナ。もう少しセムテックスによる扇動が必要だと思うモナ』

川 ゚ -゚) 「よし、特殊2班にそれを伝えてくれ。あと10分後に爆弾をセット。その後はこちらからの指示を待て」

(=゚ω゚)ノ『了解だょぅ』
( ´∀`)『了解だモナ』

無線機を切り、クーは周りを見渡した。

兵士は間断なく走りまわっているようだが、どうやら外に出ている兵士は少ないようだ。これではブーンの捜索がやりづらい。
ここはひとつ、陽動をかけておく必要があるが、それは特殊2班――建物内における陽動が任務の班に任せておくべきこと。



  
96: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/17(金) 00:50:52.67 ID:7fQNAVNT0
  

川 ゚ -゚) (よし、ブーンを追うか)

クーは頭の中にこの施設の地図を呼び起こし、ブーンが行きそうな場所をシミュレートしてみる。
地図は潜入していた2日の間に歩き回ったから、完璧に頭に入っている。

クーはイングラムを再度握りなおし、当たりをつけた場所へと走り出した。



( `ω´)「おおおおお!!!!」

兵士「ぐはぁっ!!!」

『光弾』が兵士に命中。壁に叩きつけられた兵士は気を失う。

瞬時に振り向いたブーンは、もう一発『光弾』を放つ。
予想通り、後ろでサブマシンガンを構えていた兵士に当たり、同様に気絶した。

( ^ω^)「はぁ、はぁ」

ブーンは部屋を脱出した後、建物の中をめちゃくちゃに走り回っていた。

もちろん、目的はツンとヒッキーを助けること。
誰の力も借りない。自分の力で、絶対に助けてみせる。

その証拠に、途中、兵士や研究員に会うことはあっても、それら全てを撃退できた。
サブマシンガンの弾は『光障壁』で防ぎ、『光弾』を当てて命中させる。
これで十分、兵士をやっつけることができた。



  
104: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/17(金) 00:58:28.96 ID:7fQNAVNT0
  

( ^ω^)「つ、ツンはどこだお? ヒッキーは?」

しかし、肝心のツンとヒッキーがまったく見つからない。
例えば、さっきの作戦司令室みたいな部屋に行ってもヒッキーはすでにいなかったし、テレビ画面は何も写していなかった。
やみくもに部屋を探し回っても、2人の姿はまったく見つからない。

くそぉ。いったいどこだ、どこにいる?

ブーンは焦りの色を顔に浮かべながら、再度あたりを見回した。

兵士「いたぞ! 捕まえろ!」

( `ω´)「邪魔をするんじゃないおぉ!」

現れる3人の兵士に巨大な『光弾』を浴びせ、瞬時に沈黙させる。

今、自分は力に溢れていた。誰かを助けるという思いが、自分を強くしていた。
心が強くなっていた。

( ^ω^)「どこだお! どこにいるんだお! ツン! ヒッキー!!」

近くの部屋の扉を『剣状光』で切り裂き、中を覗く。
中に居たのは信者と思われる廃人になった男、1人。

やっぱり、いない。



  
107: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/17(金) 01:01:04.01 ID:7fQNAVNT0
  

「おい、ブーン!」

唐突に名前を呼ばれ、ブーンは声のした方へと顔を向ける。

そこにはジョルジュが、慌てた様子で立っていた。
  _
( ゚∀゚)「ブーン、何してるんだよ、こんな所で。ここは危ないから、早く逃げろ!」

( ^ω^)「ジョルジュさん! ツンは! ヒッキーはどこだお!?」
  _
( ゚∀゚)「ああ、あの2人か……助けに行くのか?」

( ^ω^)「当たり前だお!」
  _
( ゚∀゚)「そうか……」

顔を俯かせて、考え込むジョルジュ。

それを見たブーンは瞬時にひらめいた。この人は、2人がどこにいるのか知っている、と。
 
( `ω´)「どこだお! どこなんだお!」
  _
( ゚∀゚)「ちょ、ちょっと待て。そうだな……ツンは1階の195号室に収容されている。ヒッキーはその隣の196号室だ」

( ^ω^)「あ、ありがとうだお!」

ブーンはさっそく走り出した。1階の195号室。確か南方面にあったはずだ。さっき地図を見てきたから覚えている。



  
109: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/17(金) 01:03:42.98 ID:7fQNAVNT0
  

南方面は銃声や爆発音が何度も聞こえ、危険な地点なのは素人でもわかるが、今はそんなことは言ってられない。
とにかくツンとヒッキーを助ける。ただそれだけだ。

と、ブーンは立ち止まり、振り返った。
ジョルジュはまだそこに立っていた。

( ^ω^)「……」
  _
( ゚∀゚)「どうした? 早く行ってやれ。時間が経てば、回復する見込みも薄くなるぞ」

( ^ω^)「どうして、助けてくれるんだお?」
  _
( ゚∀゚)「ん?」

( ^ω^)「ラウンジ教の人間なのに……どうして?」

ジョルジュは、ふっ、と薄い笑みを浮かべた。
  _
( ゚∀゚)「……お前が気に入ったからだよ。って、変な意味じゃないからなwww」

( ^ω^)「……ありがとうだお!」

ありがたかった。
今はこんな優しい笑みや、おちゃらけた言葉がありがたかった。

こんな人に後押しされれば、きっと助けられる。絶対に。



  
110: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/17(金) 01:06:16.63 ID:7fQNAVNT0
  

そう思いながら、ブーンは走り続けた。
走って走って走って、走りまくった。

途中、兵士に出くわしても、すべて一撃の下で気絶させた。
今は誰にも負けない。そんな気持ちが溢れていた。

だって、ほら、もうたどりついた。195号室に。

( `ω´)「はぁ!」

『剣状光』で扉を真っ二つにして、中に入る。
中は白い壁と白いベッドがあるだけの簡単な部屋。

ξ 凵@)ξ「……」

そのベッドの上に、ツンはいた。
上半身だけ起こして、うつろな目で。

( ^ω^)「ツン!!」

ξ 凵@)ξ「……」

声をかけてもツンは何も答えてくれない。まったく動いてくれない。目を合わせてもくれない。

ないない尽くし……まるで生きていないかのような。



  
111: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/17(金) 01:08:43.71 ID:7fQNAVNT0
  

(  ω )「ツン……」

ブーンはツンの肩をとり、抱きしめる。

しかし、ツンはそれでも何も反応してくれない。
いつもなら、『何すんのよ!』という怒鳴り声を浴びせてくるはずなのに、今は指先の力すら入っていない。

(  ω )「……」

ブーンはツンを精一杯抱きしめた。
彼女の体温は感じられても、心が感じられない。

(  ω )「くそぉ……」

ツンを抱きしめているブーンの体から、白い光が溢れ出ていた。

(  ω )「くそおおおおおおおお!!!!!!!!!!」

それは部屋中を覆い尽くしても、まだ彼の身体から生まれ出ていた。

まるで世界の全てを拒絶するかのようなその光が。





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