( ^ω^)ブーンが心を開くようです

  
36 : ◆ILuHYVG0rg:2006/12/19(火) 23:17:27.89 ID:Bto8pEe+0
  

(´<_` )「安心しろ、今回は麻痺毒は塗っていない」

そんな声が聞こえて、ブーンは血を吸う作業を中断し、ギコ達の方へと眼を向けた。

『光弾』の散弾の雨はすでに止み、土煙が辺りをぼやけさせる中、彼らは確かにその場に立っていた。

( ^ω^)「どういうことだお……」

(´<_` )「どうもこうもない。以前はお前を捕らえるために使ったが、今回は違う。
      あんな姑息な手は使わない。真正面から、お前と戦う」

( ^ω^)「……」

ブーンは宙に静止しつつ、彼らの様子を観察する。
ギコは弓矢を持った手をだらんとおろし、流石兄弟は武器を構えた手をこちらに向けている。そして、モナーはグローブのずれを直していた。

各自、余裕の表情。『光弾』の散弾を食らったダメージなんて微塵も感じさせない。
やはり、1人で彼らに挑むのは無理があったのか?

( ,,゚Д゚) 「……ブーン、ひとつ聞きてえことがある」

神妙な表情のギコが、こちらを指差しながら言った。



  
39 : ◆ILuHYVG0rg:2006/12/19(火) 23:19:13.37 ID:Bto8pEe+0
  

( ^ω^)「……なんだお」

( ,,゚Д゚) 「ここに何しにきた?」

何しにきた?

ブーンはその質問を聞き、戸惑った。

いったい、何の意味があってこんなことを尋ねてくる?
当たり前じゃないか、ここに来た理由なんて。

もしかして、からかっているだけなのか?
自分達が余裕であることを見せびらかしたいだけなのか?

だが、彼らの顔にはそんな意図など微塵も感じられない。
口を結び、真摯な目で見据えてくるその表情は、純粋に疑問を投げかけているだけの顔。

……そうか、わかった。



  
40 : ◆ILuHYVG0rg:2006/12/19(火) 23:20:41.91 ID:Bto8pEe+0
  

( ^ω^)「……ジョルジュを、あんた達を、」

この質問の意味は……

( ^ω^)「止めにきたお!」

自分達と相手を、

( ,,゚Д゚) 「そうか……ならお前は、」

心の中の明確なラインによって、

( ,,゚Д゚) 「俺達の敵だ、ゴラァ!」

敵と味方に分ける儀式。

( ^ω^)「行くお!」
( ,,゚Д゚) 「来い! 止めてみせろ!」

そうして戦いは始まる。





  
42 : ◆ILuHYVG0rg:2006/12/19(火) 23:22:41.04 ID:Bto8pEe+0
  



( ,,゚Д゚) 「おらよ!」

放たれた黒い矢は、猛スピードでこちらに飛んでくる。
無論そのまま当たる気なんてない。ブーンは身を翻してそれを避け、反対に『光弾』を放つ。

2、3個の『光弾』は、しかし兄者のロープによって完全に叩き落とされ、無効化。
やはり彼らに『光弾』のような弱い攻撃は効かない。
『飛槍光』か、『剣状光』の完璧な一撃でなければ、致命的なダメージになりえないだろう。

だが、彼らの動きが早すぎるため、なかなかそのチャンスが訪れない。
しかも流石兄弟を中心としたコンビネーションが完璧で、『光障壁』を一瞬でも消せば、たちまちにやられてしまうこと必至。

( ´∀`)「モナ!」

( ^ω^)「くぅ!」

モナーの左ハイキックを腕でガードし、体勢を立て直すために地面から空へと飛び立つ。
だが、それを待っていたかのように弟者の手裏剣とギコの矢が襲ってくる。
なんとか『光障壁』でガードできたが、長い間飛ぶことは危険だった。



  
46 : ◆ILuHYVG0rg:2006/12/19(火) 23:24:59.32 ID:Bto8pEe+0
  

そのため仕方なく地面に降り、ダンプカーやショベルカーなどの障害物を使いながら『飛槍光』の準備を進めたいのだが、
モナーと兄者がそれをさせてくれない。

2人共すさまじいスピードでこちらに近づき、連打を浴びせてくるのだ。イメージを進める暇なんてない。

(;^ω^)(なんだお……この強さ……!)

4人とも、どこかおかしい。人間離れした動きをしてくる。

もしかして、それが『影』との同化を果たした結果なのだろうか?

ちりちりと、頭の奥で何かが叫んでいるのを、ブーンは聞いた。

それは、生存本能から発せられた声。このまま戦えば、おそらく死んでしまうであろうという本能の叫び。
いくら光の力をもってしてでも、この4人を倒すことは不可能という、恐怖。

だが、逃げることは許されない。ここで退けば、友達やみんなを守ることができなくなる。

だから、ブーンはそれらの叫びや恐怖を押さえ込み、戦い続けた。
自分が死ぬ? だからなんだ。自分もみんなも守る方法を見つければいいだけ。そうだろう?

自分の命を捨ててでも、なんてことは考えない。誰だって自分の命は大切だ。
だが、命を賭けることはできる。それならば、賭けに勝てばいいだけの話なのだ。勝てば、自分もみんなも守ることができて、一件落着。

だから、今は必死で戦う。彼らを倒すために、自分もみんなも守るために、戦う。

それが必要なのだ。



  
47 : ◆ILuHYVG0rg:2006/12/19(火) 23:27:05.86 ID:Bto8pEe+0
  

( ,,゚Д゚) 「ん? 来たか」

兄者のロープをさばいていると、ギコが奇妙な言葉を発しているのが聞こえた。
『来た』? 誰が?
まさか、敵の増援?

( ,,゚Д゚) 「兄者、弟者。後はお前達に任せた。俺とモナーは今からあいつらの相手だ」

( ´_ゝ`)(´<_` )「わかった。任せろ」

( ,,゚Д゚) 「よし、行くぞ、モナー」

( ´∀`)「……わかったモナ」

ギコとモナーが離れていく。その後ろ姿を見て、攻撃する絶好のチャンスだと思ったが、しかし流石兄弟がそれを許してはくれなかった。

( ´_ゝ`)「『人の子』。お前をここから一歩も先へ進ませはせん」
(´<_` )「俺達のやるべきことの邪魔はさせないさ」

ギコとモナーの驚異的な足の速さを見る暇もなく、兄者のロープを『剣状光』で受け止める。
ロープを弾き飛ばした後は、後ろから手裏剣が飛んでくることを警戒し、2人のどちらにも後ろをとられないために、まずは空へと逃げることにする。
これなら後ろはまだ安全だ。

空中で静止していると手裏剣が何個も飛んでくるが、『光障壁』はそれを防いでくれる。



  
50 : ◆ILuHYVG0rg:2006/12/19(火) 23:29:23.45 ID:Bto8pEe+0
  

( ^ω^)「あんた達の成し遂げることを止めるために、僕はいるんだお!」

( ´_ゝ`)「そうだ、だから俺達は戦っている」

兄者のロープが飛んでくるが、急上昇して避ける。
これで滅多なことでは2人の攻撃は届かなくなった。

こう着状態だ。

( ´_ゝ`)「俺達は互いに持つ思想や主張が異なっている。だから戦う。
       そして、勝者と敗者が生まれ、一方の主張がまかり通る。ただそれだけのこと」

戦う手を止めて、流石兄弟はそんな言葉を投げかけてくる。
ブーンもまた攻撃を止めて、その言葉に聞き入る。

(´<_` )「全ての戦いの根源にはそれがある。
       人間の私利私欲、守りたいという気持ち、理性、人間の考える全てが戦う理由になる」

( ´_ゝ`)「どうだ、『人の子』。以前投げかけた質問に答えは出たか?」

兄者から以前投げかけた質問。

『自分の守りたいものを守るためには、他人の守りたいものを踏みにじらなければならない』。



  
53 : ◆ILuHYVG0rg:2006/12/19(火) 23:31:43.14 ID:Bto8pEe+0
  

( ^ω^)「……それは仕方のないことなんだお。戦いの中で生まれる悲劇のひとつなんだお」

( ´_ゝ`)「そうだ。その通りだ。他人の守りたいものを破壊してしまうからと言って、俺達が戦うことを止める理由にはならない」

 (´<_` )「パシフィストは口を揃えて戦争反対と叫ぶが、
       そうやって反対と叫び、自分の主張を押し通そうとしていること自体が戦いの芽になると気付いていない」

( ´_ゝ`)「俺達は全て別個の人間。考え方も違えば、行動様式も違う。たとえ世界が100人の村であっても、2人しかいなくても、戦いは起きる」

(´<_` )「ならばどうする? 本当に戦いをなくすためには?
       答えは簡単だ。ジョルジュのなすべきことがなされれば、全ての人間はひとつになる」

( ´_ゝ`)「恐怖は世界をひとつにしてくれる……」

(´<_` )「あと数時間でそれが成される」

( ´_ゝ`)「だから、」

兄者がロープを構える。
弟者もそれに合わせて、手裏剣を構える。

彼らのその表情は、

( ´_ゝ`)(´<_` )「だから俺達はお前と戦う!」

1つのなすべきことを決意し、戦おうとする男のもの。



  
55 : ◆ILuHYVG0rg:2006/12/19(火) 23:33:23.67 ID:Bto8pEe+0
  

だが、

( ゜ω ゜)「だからと言って、人の命が犠牲にされていいことはないんだお!」

彼らの考えに賛成していいはずがない。

人の命を軽んじた方法は、どこかが間違っているのだ。
だから、止めなくてはならない。戦わなくてはならない。

もう、敵の守るべきものを気にかけている時では、ない

ブーンは翼を翻し、『剣状光』を手に取った。





  
57 : ◆ILuHYVG0rg:2006/12/19(火) 23:35:21.94 ID:Bto8pEe+0
  



バイクで高速を何時間も走り続けていると、身体中の筋肉がおかしくなってくる。
肩や腕、腰の筋肉が張ってきて、どうにも上手く動かせなくなってくるのだ。

だが、それで音をあげていられないのも事実。
車は破壊された道路を走りにくいし、ヘリは狐達の戦力として残したいから使えないため、結局はバイクで移動するしかない。

それに、ブーンからの通信が途切れて数十分。
もう彼からの連絡はなく、きっと戦っているのだろうと考えれば、否応なく前に進まなければならない。否、進みたい。

都会から田舎へと向かう道路が渋滞になっているのを横目に、
都会へと向かうこの道路には車が1台もいないことを確認しつつ、クーは横を走るぃょぅに向かって通信を試みた。

川 ゚ -゚) 「ぃょぅ、あとどれくらいだ」

(=゚ω゚)ノ「あと10分ほどだょぅ。高速を降りたらすぐ目の前にあるょぅ」

川 ゚ -゚) 「そうか」



  
60 : ◆ILuHYVG0rg:2006/12/19(火) 23:38:15.54 ID:Bto8pEe+0
  

ブーンが言っていた『更地』。
元々は公共機関の施設があった場所を政府が更地にし、大きなショッピングセンターを建てる予定があると、
調査をしてくれたしぃから聞いたのがついさっき。

今はその場所を目指してバイクを走らせているが、いかんせん心の中に何かもやもやしたものが漂っていることも、クーは自覚していた。

川 ゚ -゚) (あの場所は……確か……)

甦るのは、輝きながらも鬱屈した『思い出』。

5年前までその更地に建てられていたという公共施設とは、クーもよく知り、そして敵も知っている建物……『天国』のビル。
自分が心のよりどころにしていながらも、裏切り、裏切られたもの。

どうしてそこにジョルジュ達が、とは思わなかった。彼なら、こういうこともやりそうだと、心のどこかで思っていた。

きっと彼は、『天国』であったことを忘れないために、忘れさせないためにそこにいるのだ。
そうに違いない。でなければ、あんな隠れづらい場所を選ぶ理由がない。

川 ゚ -゚) (『天国』で決着か……皮肉なものだ)

全ての始まりは『天国』から、全ての終わりも『天国』から。
その『天国』という言葉の表面的な意味も、裏に隠された意味も、全て皮肉めいている。

もやもや感を感じるなという方が無理な話だ。



  
61 : ◆ILuHYVG0rg:2006/12/19(火) 23:39:55.89 ID:Bto8pEe+0
  

川 ゚ -゚) (む、出口か)

そうこうしていると、高速の下り場が見えてきた。
その下り場に向かおうとする車は1台もない。それ以前に、この道路を走る車がほとんどない。

逆に、反対車線は車で埋まっている。
恐怖から逃れるために、恐怖から身を守るために、彼らは必死で戦っている。
そして、ブーンも。

狐 『クー君、少しいいかい?』

唐突に耳から狐の声が聞こえ、クーは驚きながら「はい」と答えた。

狐 『少し話しておきたいことがある』

川 ゚ -゚) 「なんでしょう?」

狐 『今から5分後ぐらいかな……たぶん、私と君達との通信はできなくなると思う』

川 ゚ -゚) 「……どうしてですか?」

狐 『未確認のヘリや車がこちらに向かっているとの情報を得た。また、この近辺の哨戒を行っていた自衛官が、銃で撃たれて死亡した。
   たぶん、【VIP】を攻撃してきた兵士達の仕業だろう』

え、とクーは息を詰まらせた。
もう来たのか? 早い。早すぎる。



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