( ^ω^)ブーンが心を開くようです
- 62 : ◆ILuHYVG0rg:2006/12/19(火) 23:41:47.70 ID:Bto8pEe+0
狐 『彼らとの戦闘が始まれば、君達との通信を行う余裕がなくなりそうなんだ。ジャミングを受ける可能性もあるしね』
川 ゚ -゚) 「そう……ですか」
狐 『君達の様子は偵察衛星でこちらから見ることはできるけど、通信はできない。
歯がゆいが……応援を送れそうもない。すまない』
川 ゚ -゚) 「いえ……私達を送り出してくれただけで十分です」
狐 『そうか……ありがとう』
その瞬間、通信機越しに何かの爆発音が響く音が聞こえた。
おそらく、敵側の兵士の爆弾。それが近くで爆発した。
狐 『状況把握! 急げ! 避難民はすばやく移動させろ!』
狐の切羽詰った声が聞こえる。
あちらでも戦いが始まる。長く辛い戦いが。
狐 『クー君、じゃあね。また生きて会おう……お互いに』
川 ゚ -゚) 「はい」
(*゚ー゚)『クーさん……』
狐からしぃに通信相手が変わったようだ。
しぃの声は今にも泣きそうな、親と離される子供のような声をしていた。
- 64 : ◆ILuHYVG0rg:2006/12/19(火) 23:44:12.58 ID:Bto8pEe+0
川 ゚ -゚) 「しゃきんとしろ、しぃ。ここから正念場だ」
(*゚ー゚)『はい……クーさん、お気をつけて』
川 ゚ -゚) 「ああ、わかってるさ」
分かっている。自分が死ねば、ジョルジュをとめることができなくなる。
自分が止めなくてはならない。ジョルジュを、彼の行動を。
通信が切れた。あちらでは今から戦闘配置につくのだろう。もう彼らの応援を期待することはできない。
ここからは……全て自分の力で!
高速を降りてしばらく走っていると、すぐにその更地は見えてきた。
どこまでも広がる平坦な土地と、白い地面。全てが始まり、終わる場所。
川 ゚ -゚) 「あれは……」
その空に、一筋の光が舞っているのが見えた。
目を凝らし、よく見てみるとそれはブーンだった。
- 65 : ◆ILuHYVG0rg:2006/12/19(火) 23:46:44.78 ID:Bto8pEe+0
背中に光の翼を携えている姿は異様だった。
あれが「空を飛んでいる」という言葉の真相なのだろう。
何度も旋回、急降下、急上昇を繰り返して、何かと戦っている。
バイクを走らせながらも見えるその白い光は、確かに彼に違いなかった。
川 ゚ -゚) 「もう戦っていたのか……!」
(=゚ω゚)ノ「早く行くょぅ!」
バイクを更地へと向け、更に加速させる。
早くブーンの元へ……!
そんな思いが心で弾ける中、しかし急にバイクに強烈な衝撃が加わった。
川 ゚ -゚) 「くぅ!」
ハンドルが右に持っていかれ、バランスを崩した車体はあえなく横転する。
地面へとぶつかる直前にバイクから飛び降り、コンクリートの地面で前回り受け身を取るしかなかった。
それで幾分か衝撃を和らげることができたものの、身体のあちこちが悲鳴をあげ始める。
- 67 : ◆ILuHYVG0rg:2006/12/19(火) 23:48:37.75 ID:Bto8pEe+0
(=゚ω゚)ノ「クーさん!」
川 ゚ -゚) 「いい! 行け!」
ぃょぅがバイクを止めてこちらに助け舟を出そうとするが、クーはそれを断る。
自分のことより、まずブーンの所へ。
そう言外で諭したことが功を奏したのか、ぃょぅはすぐにバイクを発進させる。
「自分よりまずブーン、か。いい心を持ってるじゃねえか」
自分のバイクの前輪が、黒い矢のようなもので貫かれていることを確認しながら、クーは回りを見渡してその声の出所を探る。
この声は何度も聞いたことがある。
1度目は公園で共闘した時、2度目は暗闇で狙撃された時。
そして今が3度目。
もう誰なのかはわかる。
川 ゚ -゚) 「出て来い、ギコ!」
( ,,゚Д゚) 「ちっ、もうわかるのかよ」
後ろに気配がし、クーは腰からブローニングを抜いて、迷わず引き金をひいた。
一直線に進むその弾丸は、ショベルカーの陰から出てきたギコに命中した……はずだった。
銃弾は彼の身体をすり抜けてしまった。
- 69 : ◆ILuHYVG0rg:2006/12/19(火) 23:51:39.23 ID:Bto8pEe+0
- ( ,,゚Д゚) 「へ、銃はきかねえよ。忘れたのか」
川 ゚ -゚) 「忘れたわけではない。確認だ」
ギコがそこにいるのか? 『影』と同化したのかどうか? それらの確認。
確認はもう済んだ。あとは彼を倒すだけ。
川 ゚ -゚) 「ブーンはどうした」
更地の地面を踏みしめながら、ギコに向かって言った。
彼はショベルカーにもたれかかりながら、笑みを浮かべて応えた。
( ,,゚Д゚) 「流石兄弟とやりやってるはずだ。ちなみに、あのぃょぅとかいうのも、因縁の相手と戦ってる最中だろうな」
川 ゚ -゚) 「……モナーか」
( ,,゚Д゚) 「お前の相手は俺だ。何度目の戦いになるかわかんねえが、これが俺達のラストバトルだ、ゴラァ」
川 ゚ -゚) 「私にとってはラストではない」
クーは腰の刀を引き抜き、彼に向ける。
真剣の刃に『気』が灯る。
川 ゚ -゚) 「お前を倒して……ジョルジュを止める!」
刀が一閃のきらめきを放つ。
※
- 71 : ◆ILuHYVG0rg:2006/12/19(火) 23:53:45.08 ID:Bto8pEe+0
※
ぃょぅはバイクで更地の上を猛スピードで走っていた。
周りには建物のひとつもなく、全てが更地。真っ白な土地だった。
この真っ白な土地で、敵が成そうとしていること……世界を恐怖でひとつにするということ。
正直言って、ぃょぅはその考えを完全に理解したわけではなかった。
だが、それが危険な考えだということだけはわかる。長年培ってきた諜報員としての勘が、それを告げているのだ。
人々を犠牲にし、この国を窮地に陥れる存在。
彼はそんな存在とずっと戦ってきた。直接刃を交えることはなくても、スパイや諜報の分野で彼は戦ってきた。
全てはこの国を守るため。
『VIP』の一員として、国民として、自分はこの国を守らなくてはならない。
そう誓いを立ててやってきたのだ。
だから、ジョルジュ達を止める。倒す。
- 74 : ◆ILuHYVG0rg:2006/12/19(火) 23:55:29.18 ID:Bto8pEe+0
(=゚ω゚)ノ「くっ……けっこう遠いょぅ」
ブーンが戦っている空を見上げながら、ぃょぅは呟いた。
彼は背中に翼を生やし、誰かと刃を交えている。
彼――『人の子』ならば、この状況をなんとか打開してくれる。
そんな泡のような希望を持ち、ぃょぅはバイクを走らせていた。
自分に全てを託したクーのためにも、彼は走らなければならなかった。
(=゚ω゚)ノ「ょぅ!」
と、いきなり目の前に誰かが飛び出してくるのに気付き、ぃょぅはとっさにブレーキをかけてハンドルを左に切った。
だが、更地の砂にはタイヤのグリップは弱く、車輪は滑りながらその人影へと衝突しようとする。
が、次の瞬間、バイクはその人影によって止められた。
人影は手を前に差し出すと、勢いよく滑ってきたバイクを受け止めて、完全に勢いを殺してしまったのだ。
ぃょぅは唖然となりながらも、その人影が誰であるかに気付いてバイクから飛び降り、距離をとった。
- 76 : ◆ILuHYVG0rg:2006/12/19(火) 23:57:24.15 ID:Bto8pEe+0
(=゚ω゚)ノ「……モナー!」
( ´∀`)「ぃょぅ……」
モナー。
かつての自分の同僚。そして腐れ縁の友達。
彼は専用のグローブと靴という戦闘具を身につけ、少し悲しそうな顔をしながら目の前に立っていた。
その服は真っ黒……いや、違う。服なんて身につけていない。それは彼の身体そのものだった。
彼の身体は真っ黒に染まり、顔だけが不自然に肌の色を保っていた。
これはかつて見たジョルジュと同じであり、ということは彼もまた『影』と同化しているという証拠。
(=゚ω゚)ノ「モナー……どうしてこんなことになったんだょぅ!」
( ´∀`)「……これが僕の選んだ道なんだモナ」
モナーは苦し紛れにそう言葉を搾り出すが、彼の顔は苦渋に満ちている。
まるで、仕方なく裏切ったとでも言うような。
- 78 : ◆ILuHYVG0rg:2006/12/19(火) 23:59:14.99 ID:Bto8pEe+0
(=゚ω゚)ノ「まさか、ジョルジュ達に脅されているとかじゃないのかょぅ!?」
( ´∀`)「それは違うモナ!」
モナーの顔色が変わった。
それは敵意丸出しの、憎むべき相手に向ける視線だった。
どうして、そんな目をこっちに向ける?
自分達は同僚で、悪友だったはずじゃないか。
( ´∀`)「僕は僕が進む道を見つけたんだモナ。もう、ぃょぅでも止められないモナ」
(=゚ω゚)ノ「だから……だから4つの『H.L』に細工をしたのかょぅ!」
( ´∀`)「……気付いてたのかモナ」
(=゚ω゚)ノ「気付かないはずがないょぅ。『H.L』は作戦前日までは異常はなかった。
当日まで保管していた部屋の鍵を持っていたのは、モナーとしぃさんと所長だけ。
なら、裏切ったお前が『H.L』に細工したことなんて、明白だょぅ!」
本当は信じたくはなかった。
最近になってどうも元気がなく、色々と話しかけても2つ返事しか返さなかった彼がスパイだなんて信じられなかった。
だが、調査しても不審な点は見えず、しかも数年来の悪友だということもあり、疑いをかける期間は少なかった。
- 81 : ◆ILuHYVG0rg:2006/12/20(水) 00:01:10.18 ID:S4nr4FqZ0
だが、結局はその妄信が作戦の失敗を呼び込み、この状況を作り出してしまった。
それに対しての責任感は、もちろんある。
だが、それ以上にどうしてモナーが裏切ったのか理解できなかったし、信じられなかった。
一緒に『VIP』に入局した時から、この国を守ろうと誓い合った。
カップラーメンの争奪戦以降、競い合うようにして仕事を続けてきたのも、全てはこの国を守るため、身近な人を守るため。
だが、モナーはそれを捨てて敵側についた。何故なのか。
(=゚ω゚)ノ「どうして……どうして裏切ったんだょぅ!」
ぃょぅはそう叫びつつ、腰の小太刀を抜いた。
モナーが『影』と同化してしまったのならば、銃は効かない。
『気』を張った武器で――彼と何度も訓練し、技術を高めあってきたこの小太刀で戦わなくてはならない。
( ´∀`)「……もう、この国に守るべき価値はないんだモナ。この世界も」
(=゚ω゚)ノ「それをジョルジュに吹き込まれたのかょぅ!」
小太刀で縦方向に切りかかるが、モナーはそれを避け、グローブで腹を攻撃してこようとする。
だが、ぃょぅは身体をねじってそれを避け、左手でくないを投げつける。
もちろん無理な体勢が投げたそれは外れるが、その間にモナーとの距離をとることはできた。
- 83 : ◆ILuHYVG0rg [>79 ギコが忘れてたぜw] 投稿日: 2006/12/20(水) 00:02:53.07 ID:S4nr4FqZ0
( ´∀`)「これは僕が考えて、僕が決めたことだモナ」
(=゚ω゚)ノ「……どうしてそんな」
( ´∀`)「『VIP』で働いてて、よくわかったんだモナ。この国にはもう、自分と自分達を守ろうとする人達しかいないと。
たとえ間違っていると分かっていても、認めず、逃げて、言葉遊びに興じる政治家。
汚いものには蓋。見てみぬフリが1番、というのが信条の国民。
他にも色々……色々と見てきて、決めた結論がこれなんだモナ」
(=゚ω゚)ノ「……」
( ´∀`)「ぃょぅとは戦いたくはないモナ。けど、もし僕達の邪魔をするのなら……
武器を取ることもいとわないモナ」
自らの武器――拳を前に掲げ、鋭い目を向けてくるかつての友人。
彼は本気だ。きっと自分の志のためならば、誰であろうが戦おうとしてくるだろう。
それぐらいに真面目なのだ、彼は。
そう、そんなことはわかっている。
わかっているからこそ……
- 84 : ◆ILuHYVG0rg:2006/12/20(水) 00:04:49.49 ID:S4nr4FqZ0
(=゚ω゚)ノ「最後にひとつだけ、言っておくょぅ」
( ´∀`)「……なんだモナ」
ぃょぅは小太刀を握りなおし、構えた。
それは青眼の構え。
今まで、本気になった時にしか使わなかったし、
ましてや人間に対しては絶対に使用しなかった。
(=゚ω゚)ノ「……お前の悩みを、少しでも僕に話してほしかったょぅ」
( ´∀`)「……すまないモナ」
だが、今はそれを使う。
使わなければ勝てない。やらなければやられる。
ぃょぅが動いた時、モナーも動いた。
彼らの刀と拳は交じり合い、戦いが始まった。
第24話 『心の戰い 前編』 完
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