( ^ω^)ブーンが心を開くようです

  
8: ◆ILuHYVG0rg :2007/01/13(土) 23:13:45.73 ID:zD7q22Rl0
  

しかし、できるのか?
モナーは『VIP』の中でも随一の武闘派だった。
空手や柔道、合気道などの武道はもちろんのこと、軍隊式の武術でも常に優秀だった彼。

比べて、こちらはただのスパイだ。
武術なんてものは緊急事態にしか使わないし、くないも小太刀もそれほど極めているわけでもない。

スパイの頭で考えれば、ここは1度逃げて、改めて戦力を整えるべきだろう。

だが、逃げるわけにはいかない。
モナーを倒すのは自分でなければならないのだ。

スパイだとか兵士だとか以前に、人間としてこれは譲れない。

理由なんてない。彼を倒すのは自分なのだ。

(=゚ω゚)ノ「お前は……!」

ローキックの痛みが消えないまま、ぃょぅは左足を踏み込んで刀で切りつける。

だが、モナーは軽々とそれを避け、逆に右足でハイキックを繰り出してくる。
ぃょぅは歯を食いしばり、左腕でそれをガードするものの、次に飛んできた左の裏拳に反応することができず、まともに顔で受けてしまった。



  
10: ◆ILuHYVG0rg :2007/01/13(土) 23:15:29.53 ID:zD7q22Rl0
  

脳がぐらつき、意識を全部持っていかれそうになるものの、なんとか足を踏ん張って姿勢を低くし、足払いを繰り出す。

( ´∀`)「モナ!?」

片足を持っていかれたモナーはバランスを崩す。
その隙を見逃すはずもなく、ぃょぅは下から上に小太刀を切り上げた。

(=゚ω゚)ノ「はぁ!」

( ´∀`)「くっ」

切っ先が身体をかするが、致命傷には至らない。

モナーは後ろにステップをして距離を取る。
ぃょぅはその間に頬の痛みを沈めようと深呼吸した。

腕が立つもの同士の戦いとは、ほんの一瞬の気の緩みで勝敗が決する。

ただ忠実に基礎と防御を繰り返し、相手が隙を見せた所を狙い撃つ。
それが大事なのであり、大技だとか必殺技なんてものは必要ない。

集中力と正確さ。それだけが重要なのだ。

(=゚ω゚)ノ「はぁ、はぁ」

間合いを取ったぃょぅは息を整え、小太刀を握りなおす。



  
11: ◆ILuHYVG0rg :2007/01/13(土) 23:17:53.53 ID:zD7q22Rl0
  

小太刀は、剣刀の中でもかなり特殊な部類に属している。
剣術で小太刀だけを扱うものは少ないし、リーチが普通の刀に劣るこれは、
刀や槍の全盛期だった戦国時代でもあまり使われたことはない。

せいぜい敵の大将の首を切り落とすかぐらいだろう。

だが、何年もの間これを使っていると、ぃょぅはこれ以上に自分に合う武器はないように思っていた。

小太刀はその性質上、軽く扱いやすく、使用者の体術に大きく左右される。
いわば、剣術50:体術50の割合だ。身体をどれだけスマートに動かせるかで、小太刀の力は大きく変わる。

長年スパイ稼業を営み、身軽な自分にはぴったりの武器だった。

『気』と武器の相性というのは、そういう所から来ているのかもしれない。

ぃょぅは頭で何度もモナーの動きをシュミレートし、どうやって彼を倒すべきか考えた。

拳と靴には刀は通らないというのは、だいたいわかってきた。
どうやらそれらの部分は『気』と『影』の性質がごちゃまぜになっているらしく、
『気』と『気』は反発しあうので、こちらの刃は通りにくいようだ。

だが、モナーの身体自体は『影』そのものなので、こちらの攻撃は通じる。

なんとか拳と足を避けて、彼の身体に刀を突き刺せば……!



  
12: ◆ILuHYVG0rg :2007/01/13(土) 23:20:34.71 ID:zD7q22Rl0
  

( ´∀`)「モナ!」

モナーが掛け声と共にこちらの間合いに入り、正拳突きを出してくる。
それを避け、左手のくないでその腕を刺そうと試みるものの、今度は右足のハイキックが飛んできて、ぃょぅはガードを取るしかなかった。

『影』の力で強化された蹴りは、腕の上からでもかなりの衝撃だった。

(=゚ω゚)ノ「くぅ!」

モナーが隙を見せることは滅多にない。
さっきみたいに足払いでバランスを崩すのも、1度行えば次からは見切られてしまう。

そもそも彼は、的確に攻撃を当ててくるタイプだ。
大技は使わず、基本的な技を忠実に浴びせてくる。そのため、なかなかバランスを崩さない。

(=゚ω゚)ノ(隙を見せないなら……!)

ぃょぅは左手のくないを捨て、小太刀を一の太刀で構えた。

一の太刀は、両手で刀を持ち、顔の横で直立に刃を立てる構え。
身体全体で刀を振るので、力のある者なら敵の腕を一刀両断することもできる。

(=゚ω゚)ノ「はぁああ!」

ぃょぅは思いっきり刀を振りかぶり、モナーの首めがけて刃を立てる。
小太刀の軽さもあいまって、猛烈なスピードで襲い掛かるその刃を、しかしモナーはバックステップでかろうじて避ける。



  
13: ◆ILuHYVG0rg :2007/01/13(土) 23:23:43.34 ID:zD7q22Rl0
  

( ´∀`)「はぁ!」

すぐに反撃の正拳突きを繰り出すモナー。

一の太刀の弱点は、外れた後の隙が大きいこと。
両手で大きく振り出すので、その後の防御姿勢も取れない。

顔めがけて飛んでくる拳を、ぃょぅは目をそらすことなく、立ち向かう。

( ´∀`)「なっ!?」

(=゚ω゚)ノ「ぐぅ!」

突然の突貫にモナーの拳は狙いを外れ、左肩に直撃した。

骨が砕けるような音が身体中に響くのを感じながらも、ぃょぅは右手一本に持ち替えていた小太刀をモナーの腹へと突き立てた。

小太刀が比較的軽いからこそ行える、一の太刀からの特攻だった。

( ´∀`)「ぐ……ぐっ」

腹の底から出てくるような低いうなり声をあげるモナー。

その身体は小太刀によって貫かれ、内蔵や筋肉、全てを破壊されていく。

モナーは徐々に力を失っていき、姿勢を保てなくなる。
ぃょぅは刀から手を離すことなく、彼の体を受け止めた。



  
14: ◆ILuHYVG0rg :2007/01/13(土) 23:26:08.18 ID:zD7q22Rl0
  

( ´∀`)「ぐ……こ、これで終わりか、モナ……」

(=゚ω゚)ノ「……」

( ´∀`)「……そ、そうか……それもまた……いいモナ」

最後にそう呟くと、モナーの身体は完全に脱力する。

ぃょぅは左腕をだらりと下げ、モナーの体を地面に横にした。

(=゚ω゚)ノ「はぁ、はぁ……お前は、」

黒い色で染められていたモナーの身体は、彼の命がなくなったことをきっかけに、徐々に通常の肌色に戻っていく。

最後には、彼は完全に人間に戻った。
自分の悪友であり、仲間であり、かけがないのない理解者だったモナーに。

(=゚ω゚)ノ「お前は、真面目すぎたんだょぅ……」

ぃょぅはそう呟き、痛む左肩に右手をやる。

完全に左肩の骨が砕けているのだろう。全然動かせない。
触れるだけで吐きそうなぐらいの激痛が広がる。

これではもう、戦うことはできないだろう。



  
15: ◆ILuHYVG0rg :2007/01/13(土) 23:28:16.35 ID:zD7q22Rl0
  

(=゚ω゚)ノ「……」

モナーの身体の横に座りこみ、ぃょぅは空を見上げた。

あえて、彼の顔は見なかった。見ようとしなかった。


彼は、自分の友達なのだから。


空は夕暮れにさしかかりつつあった。

何も知らない空は、刻々と色を変えていくだけだった。





  
17: ◆ILuHYVG0rg :2007/01/13(土) 23:30:17.60 ID:zD7q22Rl0
  



戦闘開始からすでに10分以上が経過していた。

クーは剣を握り締める手をゆるめず、周りに精神を集中させていた。
何一つ小さな兆候も逃すことなく、兆候を見つければただちに反応できるように、身体全体で気配を感じ取っていた。

重機と木材が点在しているこの場所では、隠れる場所は多数ある。
たとえばゴミ木材が積まれている山の後ろや、重機の下、鉄骨の影などなど。

それらの場所に対し、5感をフルに活用して気配察知を行うのも、しかし限界が近づいてきていた。

ガサリ、という音が木材の山から弾ける。

川 ゚ -゚) 「くっ!」

クーは音の方向に目をやると、すでに黒い矢はこちらに放たれていた。
すさまじいスピードで迫ってくるその矢は、クーは刀の一閃で叩き落す。
だが、続いてやってきた2、3発目を落とすことはできず、身をよじって避けようとするものの太ももにかする。



  
18: ◆ILuHYVG0rg :2007/01/13(土) 23:32:52.95 ID:zD7q22Rl0
  

踏み込みを入れようと足を伸ばしたものの、すでに敵の姿は見失われ、攻撃することはできない。
右太ももから血がにじみ出てきて、クーはちっ、と舌打ちをした。

さっきからこの繰り返しだ。

弓矢と刀では間合いがあまりにも違う。

懐に飛び込めばこちらに分があるものの、『影』の身体能力とギコ自身の腕により確実に距離を引き離され、ヒット&アウェイで一方的に攻撃されてしまう。
こちらの1歩はあちらの3歩のようなもので、これでは間合いを詰めることすらできない。

距離が空くと弓矢の方に分があるのは当然で、何か手を打たなければどうしようもない状況だ。

川 ゚ -゚) 「くっ!」

また飛んできた黒い矢を叩き落し、すぐに飛んできた方向に目を向けるものの、すでにギコはいない。

『影』と同化しているので、ギコの気配を探ることはさほど難しくはない。
だが、気配を察知し、どこから来るか分からない攻撃に反応するためには多大な集中力が必要だ。
かれこれ10分以上戦っている今、その集中力は限界に近づいてきている。

人間の集中力は、フルで活動すると15分ほどで切れてしまう。
訓練でその時間を延ばすことはできてはいるものの、この状態を維持できるのも残り10分程度が限界だろう。

集中力が切れれば、たちまち黒い矢の餌食になる。
その前に、なんとか間合いを詰める方法を考えなければならない。



  
19: ◆ILuHYVG0rg :2007/01/13(土) 23:35:02.20 ID:zD7q22Rl0
  

( ,,゚Д゚) 「そろそろ限界か? ゴラァ」

川 ゚ -゚) 「うるさい」

どこからか聞こえてくるギコの声。
出所を探ってみるものの、高速で移動しながら喋っているのか特定し辛い。

( ,,゚Д゚) 「なあ、ジョルジュの言うことが間違っていると、本当に思うのか?」

川 ゚ -゚) 「当たり前だ。このようなことが許されるはずがないだろう」

( ,,゚Д゚) 「そうかい」

ギコの気配があちこちに移動している。これをやられると集中力を多大に消耗するため、かなりきつい。
だが、気を抜くこともできないため、頭が鈍い痛みを訴えるのを感じながらも、クーは集中し続けた。

この状況を打開するための方法は何か?
クーは周りに目を配り、使えそうなものはないか探した。
だが、どれもこれも『影』に対しては役に立ちそうにないものばかりだ。

( ,,゚Д゚) 「ほらよ!」

右、と反応した時にはすでに遅かった。
目前に迫っていた黒い矢をなんとか避けたものの、頬に掠り、肌を切り裂く。
赤い血が流れ出てくる。だが、拭く暇もない。



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