( ^ω^)ブーンが大仕事を成し遂げるようです
- 582:◆wAHFcbB0FI: 02/27(火) 21:38 h57FfGQsO
4-chapter13(2)
(*゚∀゚)「この世界、所謂現世とは別に、いくつかの世界があるんだよ」
その内の一つが魔界。魔王が支配する、太陽のない世界だ。
だが、魔界に巣くう者は必ずしも魔物とか妖怪とかそういう連中だけではない。
…そう、人間もいた。
現世の数カ所に魔界に繋がる扉があり、そこから時折人が魔界へと流れ込んでくるのだ。
魔界へ来た人間はそのまま魔界で生き、魔界で朽ちる。
だが、魔界の食物を口にした者は例え人間であっても魔力を得、その力を我が身に宿す。
―――こうなれば殺伐とした魔界でも十分生き延びることが出来る。
- 583:◆wAHFcbB0FI: 02/27(火) 21:43 h57FfGQsO
(*゚∀゚)「…けど、それでもただ一つ大きな問題があってさ…
それは『魔界の人間が魔界にて出産した場合』だよ」
親がいればまだしも、まだ子が幼い時点で両親が死亡する或いは育児放棄するようなことがあれば子供の運命は絶望的。
殺伐とした魔界に子供の子守をする者など存在せず、幼児が受け入れるような食物も殆どない。
だからといって放置する訳にもいかず、もしそのようなことが起きれば場合にもよるが魔界は混乱状態に陥る。
だが、魔界に来た人間は通常結婚することはない。
よって人間が出産することも、子供が誕生することもない―――はずだった。
(*-∀-)「…けど、世の中そうそううまくいかないものだよ」
- 584:◆wAHFcbB0FI: 02/27(火) 21:49 h57FfGQsO
今から約三十年前、魔界に二人の男女が迷い込んだ。
二人は夫婦だった。やがて数ヶ月経ち、魔界での暮らしにも慣れてきた時、突如その夫婦に子供が出来てしまった。
(*゚∀゚)「既に結ばれちゃってるのが魔界に来るとそういう問題が起きちゃうんだよね」
両親はこの殺伐とした世界で子供を必死で育てようとしたが、不運にも子供が産まれて数年後にその両親は原因不明の病で急死してしまった。
まだ五歳程の少年だった、残された彼等の子供は住処も何一つない事実上孤児となり、しかし誰も見向きもしなかった。
(*゚∀゚)「…これに最も困惑したのは五代目の魔王さんだったよ」
( ^ω^)「(魔王って本当にいたのかお…)」
五代目魔王、則ち現在の魔王。
意外にも心の広い彼は、その子が無事な人生を送れる為にはどうしたらよいかと真剣に悩んだ。
しかし流石の魔王も人間の子供を育てることは容易ではなく、そして苦悩した挙げ句に取った行動とは―――
(*゚∀゚)「――その子供を現世へ送ること」
(; ^ω^)「な、なんと!」
- 585:◆wAHFcbB0FI: 02/27(火) 23:11 h57FfGQsO
人間の子供はやはり人間が育てるのが一番と考えた魔王はその子供を人間の住む現世へと送還することにした。
しかしその子供は幼いながらも既にある程度魔力を使えるほどになっており、それが魔王を悩ませた。
もし現世で魔力を行使するようなことがあっては将来の現世に大きな影響が出るからだ。
(*゚∀゚)「…そこで魔王さんは」
( ・∀・)「その子供の記憶を封印した、だろ?」
(*゚∀゚)「知ってるんだ。そうだよ」
魔王はその子供の魔界での記憶を全て子供の心の奥深くに封印した。
魔力を持っていること自体を忘れてしまう為にその子供は魔力を解放することはなかった。
そして子供は現世の人目に付く所に送られ、人間に拾われて育った。
- 586:◆wAHFcbB0FI: 02/27(火) 23:21 h57FfGQsO
(*゚∀゚)「…言うまでもないと思うけどその子供がショボン。
あいつ、何事もなくすぐに人間に保護されて、大事に育てられたみたい」
( ^ω^)「…まだ続きがあるはずだお」
彼女が「もうこれで終わり」というような言い方をした為に、ブーンがそれを牽制する。
(*゚∀゚)「…そう、出来事はこれだけじゃない」
それから二十年程経ったある日、五代目魔王はふと思った。
記憶を封印され、過去の記憶が何一つないまま生涯を過ごすことはあまりにも酷いことではないのかと。
(*-∀-)「…だから魔王さんはあいつの記憶を解放することを考えた」
魔王は丁度その時魔界で戯れていた一人の住人を呼び出し、現世へ行って彼の記憶を蘇らせるよう命じた。
すぐにそれはショボンの前に現れ、彼の記憶を蘇らせた後、風のようにさっと魔界へ戻っていった。
- 587:◆wAHFcbB0FI: 02/27(火) 23:27 h57FfGQsO
( ゚∀゚)「……その時ショボンの記憶を蘇らせたとかいう奴がお前か」
(*゚∀゚)「そうだよ。
私はあいつがまだ幼い頃からずっとこの長い出来事を傍観してきた。だからあいつのことは何でも知ってる…って言うと嘘になるかな。
今は完全に放置だからね」
深く溜め息。
(*゚∀゚)「さて、長くなったけど私が知ってることはこれだけ。
…でショボンは今どうしてる? 元気か?」
―――言葉が出ない。
( ω )「……」
ブーンは返事が出来なかった。
(*゚∀゚)「どした? 調子悪いのか?」
( ゚∀゚)「あいつは…ショボンは……死んだよ」
(*゚∀゚)「!?」
つーは相当驚いたらしく、
(;*゚∀゚)「な…何で? あいつまだ若いっしょ?
何やったらそんなことに…」
( ・∀・)「それは僕達の責任でもあり、そしてお前や魔王とやらの責任でもあるんだよ」
ξ゚听)ξ「その魔王が記憶を蘇らせることがなければこうはならなかった」
('A`)「そして俺達があいつのことをよくわかってやれなかったせいでもある」
やはり、驚きと戸惑いを隠せない。
(*゚∀゚)「そ…そうだったの…(やっぱり記憶戻したのは失敗だったんだね)」
- 588:◆wAHFcbB0FI: 02/27(火) 23:31 h57FfGQsO
耐え難い罪悪感。
自分や魔王が彼の為にしたつもりだったことが、かえって彼の身を滅ぼすことになるとは。
時間が戻ることはなく、彼が生き返ることもない。
(*゚∀゚)「(とんでもないことになっちゃったなぁ…)」
何か、今自分に出来ることは―――
(*゚∀゚)「……」
つーは持っていたロストを放り投げる。
その瞬間、その大鎌が消えた。
(*゚∀゚)「ふぅ…先、進みなよ」
(; ^ω^)「…え?」
(*゚∀゚)「何か戦う気が失せちゃってさ。
…にしても死神が人の死を悔やむなんて変な話だよね」
( ゚∀゚)「お前…」
彼女からは微かに、だが確かに反省と哀愁の表情が伺えた。
(*゚∀゚)「いくら私が死神でも死人を蘇らせるなんてことは出来ない。
だからせめて罪滅ぼしに今回は素直に退くよ。今回だけだからね。
…次はないからな!」
つーは右手を前に出す。
途端に周辺の空間が歪む。
時空移動をする直前の状況だ。
- 589:◆wAHFcbB0FI: 02/27(火) 23:45 h57FfGQsO
( ^ω^)「ち、ちょっと待つお!」
(*゚∀゚)「…何さ?」( ^ω^)「何というか…ありがとう…だお」
いきなり礼を言われ、戸惑うつー。
(;*゚∀゚)「…はぁ?
何で礼なんか言うのさ? ショボンが死んだのは私の責任なんだよ?」
( ^ω^)「…いいんだお。全てがわかって何かほっとした気分だお。
それに、誰かを憎むことはよくないことだお。
ショボンだってそれで…」
ブーンはそこで口を閉じる。
(*゚∀゚)「…アンタ、確かブーンって言ったね…
その…ありがとうな。私もその後のことがわかって何かすっきりしたよ。
……じゃ、次に会うことがあるならその時は首を洗って待ってなよ!」
(; ^ω^)「ちょ…」
最後に恐ろしい台詞を残して彼女はその場から消えた。
川 ゚ -゚)「…結局奴は何だったんだろうか」
数秒の沈黙の後、クーが口を開く。
ブーンはそれに応えた。
( ^ω^)「彼女は好戦的な死神だお。
…でも本当は優しい心を持ってると思うお」
戻る/chapter13(3)