( ^ω^)ブーンが大仕事を成し遂げるようです

683:◆wAHFcbB0FI :03/16(金) 18:02 xk2kVmTiO
  

4-chapter18


それは激しい轟音とともに地を震わせ、地割れをも引き起こした。
のーに迫っていた触手は巨大化した鎚の一撃によって全て叩き潰された。

「……何とか本体への衝撃は免れたようだな」

身を護る触手を失ったものの、本体は無傷だ。

(*゚A゚)「…もう体力切れそうや。
    やっぱり一度に一回きりしか使えへんのはあかんがな…」

彼女が持っている鎚『クラッシュ』。
恐ろしい程の重量を持つ、のー専用の武器であり
名の通り粉砕の為だけに存在する。
持ち主の意志で巨大化させることが可能だが、その代償は大きい。

鎚は元の大きさに戻っていたものの、力をほぼ出し切った彼女にもはやそれを軽々と振り回す余裕などなかった。



684:◆wAHFcbB0FI :03/16(金) 18:08 xk2kVmTiO
  

座り込んだまま立ち上がれないのーに、体勢を立て直したモララエルが牙を剥く。

「我が手が失せようが、我自体は無傷…
 今度こそ貴様に勝機はない…消えろ」

モララエルは口を大きく開け、あの漆黒の波動を再びのーへ放とうとする。
が、のーは動かない。

(*゚A゚)「…避ける気力もないがな」

彼女は後悔した。
未熟者の自分が下手に強がり、単身で強大な敵に立ち向かったことを。

(*゚A゚)「情けへんなぁ…」

彼女は他の誰も恨みはしなかった。
我を忘れて口論をはじめ、単身で戦う原因を作ったタカラ、そして先輩であるつー。
何か、別な行動もとれたはず。
そう考え、彼女は自身を責めた。

この様子を見ている人間達が目に入る。
こちらを見ている。
ひどく慌てた様子で。

(*゚A゚)「……」

彼女は生を諦めていた。
その彼女に漆黒の波動が迫り―――



685:◆wAHFcbB0FI :03/16(金) 18:12 xk2kVmTiO
  

(*-A-)「……」

彼女は反射的にうずくまっていた。
それで攻撃を防げるはずがないのだが―――

何も起こらない。
自分の身が消滅することもなかった。

(*゚A゚)「…?」

恐る恐る目を開ける。
すると前方に、のーを護るような形で黒い壁が発生し波動を防いでいた。
よく見ると、それは無数の黒いナイフのような刃が集まって形成されている。

(*゚A゚)「これは…」
(*゚∀゚)「いや、ずっと任せっきりで悪かったねぇ」

その刃を発した本人はいかにも申し訳ないというように言い、続いて

(*゚∀゚)「『Rose Shield』、解除」

言葉と同時に黒い刃は弾けるように拡散し、消えた。



686:◆wAHFcbB0FI :03/16(金) 18:27 xk2kVmTiO
  

状況を把握するのに数秒。

(*゚A゚)「先輩、あの…」

沈黙の後にのーが口を開く。

(*゚∀゚)「ま、いつまでもタカラと喧嘩してる場合じゃないしね。
     今はあいつが化け物と殺り合ってるところだから心配しなくていいよ」

彼女はのーを宥めるように言い、その後で付け加える。

(*゚∀゚)「…にしてもよく頑張ったよ、ご苦労様。
     後は私達でやるから、もうアンタは休んでな」
(*゚A゚)「…すんません」

せめて、つーを援護したいと思ったのだが、
今の自分の体力を考えると足を引っ張ることになりそうだ。
そう判断したのーは戦線離脱せざるをえなかった。

(*゚∀゚)「謝ることなんてないよ。
     今度は私が戦う番だし、あの化け物には後輩の分も含めて償ってもらわないといけないしね」

そう言うと彼女は再び戦場へ向かった。



687:◆wAHFcbB0FI :03/16(金) 18:36 xk2kVmTiO
  

つーの言葉通り、現在はタカラとモララエルが対峙していた。

( ^Д^)「お前が蛇ならこっちだって蛇でいくぜ!」

バシリスクを振りかざし、その刃から黒い光の蛇が生成され次々とモララエルへ迫る。
対するモララエルはそれを薙ぎ払おうとするが、身を護っていた触手は全て粉砕された為なかなかうまくいかない。
相手をしきれないと判断し地を駆け回るが、黒蛇は執拗に追ってくる。

「おのれ…あの小娘め…!」

怒りの余り牙を噛む。
のーに自分は倒すことは出来ないと断定し、そして油断した結果だ。



688:◆wAHFcbB0FI :03/16(金) 18:42 xk2kVmTiO
  

( ^Д^)「ほらほら、そのままじゃ蛇に全身蝕まれて消滅するぞ?
     蛇が蛇に喰われるなんて情けないことこの上ないぞ?」

余裕な表情で、しかし攻撃の手は緩めずにタカラは言う。

「…ならば」

モララエルは黒い八枚の羽を大きく広げ、飛翔。
同時に蛇も動きを止めた。

( ^Д^)「なーるほど」

バシリスクの魔力によって生成された黒光の蛇は地を這いながら敵に迫り、追い詰める。
名の通り、動きが読みづらい蛇そのものの動きをするのだが、それ故の欠点も存在する。
それは―――

「…相手が地に身体を近付けなければ攻撃出来ないことだ」
( ^Д^)「…正解」

身体を少し宙に浮かす程度ならば何とか届く。
だが今のように羽を用いて飛翔する程の高さでは流石に届かないのだ。



689:◆wAHFcbB0FI :03/16(金) 18:48 xk2kVmTiO
  

( ^Д^)「だが…甘い。俺の攻撃手段はまだまだある」

タカラは一旦両手の武器をしまい、手ぶらとなった両手の人差し指を空中にいるモララエルへ向け

( ^Д^)「お前にはこれをくれてやる!」

その両手の人差し指から、拳大の大きさの橙に輝く火球がマシンガンの如く発射された。
だがモララエルは

「ふん…その程度か」

自らそれに首を近付け、さらに顎を開き―――

(;^Д^)「げっ!?お前、俺の火球を…」

火球はモララエルの喉へと吸い込まれていき―――
文字通り喰らったのだ。

「…甘いのは貴様の方だ。
 その程度の炎で我が身を焦がせると思うな」
( ^Д^)「流石は強大な魔力を操る幽霊…
     魂が復活したのは伊達じゃないってことだな」

納得するようにタカラは言い、そして

( ^Д^)「…ま、でもやっぱお前の方が甘ったるいな。
     俺はさ、酒のつまみになるような辛い物の方が好きなんだよな」

笑みを浮かべた。

「それは一体どういう…」
( ^Д^)「お前の敵は俺だけじゃないってことだよ」



690:◆wAHFcbB0FI :03/16(金) 18:52 xk2kVmTiO
  

次の瞬間、モララエルの羽がある位置を血のように赤い巨大な刃が立て続けに二つ通過。
そして何かが切断される音。

「!?」

彼の八枚の羽が宙を舞い、血をまき散らすことなく掻き消える。
飛行能力を失ったモララエルは地に降ろされる。

( ^Д^)b「…ナイスだ」
(*゚∀゚)b「どうもー」

モララエルがいた位置と同じ高さの宙に、翼を広げたつーの姿。
八枚の羽を切断した、大鎌ロストが生成した二つの赤い刃は地面に深々と突き刺さっている。



691:◆wAHFcbB0FI :03/16(金) 18:57 xk2kVmTiO
  

(*゚∀゚)「ところで、どうよ私の後輩は?
     何でもしっかりこなすし、可愛くて仕方ない奴だろ?」
( ^Д^)「全くそうだな。
     あいつのおかげで俺の攻撃も通るようになったし」
(*゚∀゚)「アヒャ! だろ?
     けど惚れちゃいけないよ!」
( ^Д^)「わかったわかった。
     てか、もうあの化け物さっさと倒しちゃおうぜ?」

それとは触手と羽を失い、殆ど力が残されていないモララエル。

(*゚∀゚)「OK…折角だし、どっちが先にトドメ刺せるか勝負しない?
     負けた方が勝った方へ要求されたもの奢るってのはどう?」

タカラが勝てば酒、つーが勝てば血を要求することは互いにわかりきっていた。
それぞれ片方にとっては好物であり、もう片方にとってこの上なく嫌悪を抱くものだ。

( ^Д^)「え?…後悔するぞ? いいのか?」
(*゚∀゚)「いいよ。
     私が勝つに決まってるし」

その後何も言わず、二人は武器を構える。
しかしこの二人、自分が負けたときのことを全く考えていない。



692:◆wAHFcbB0FI :03/16(金) 19:00 xk2kVmTiO
  

(*゚∀゚)「攻撃が当たればもう勝ちは決まったようなもの!
     というわけでまずはつーちゃんの攻撃いきまーす!」

左手を掲げ、握る。
同時に、指と指の間に黒い刃が発生。
それを放り投げ、命令。

(*゚∀゚)「…獲物はあの化け物だよ、行きな!」

同時に刃は意志を持ったかのように動き出し、一斉にモララエルへと突っ込んでいく。

「畜生め…!」

対するモララエルは残された四肢で移動し攻撃を避けていく。
もはや彼には反撃する余裕がなく、しかし狼の如く地を駆け回り
執拗に迫る刃を間一髪で回避。

「やはりこれは打ち消すべき…!」

一瞬の隙をみて魔光刃へ波動を放ち、それらを撃墜。



694:◆wAHFcbB0FI :03/16(金) 19:21 xk2kVmTiO
  

(*゚∀゚)「あーあ、壊されちゃった」

軽く落胆するつー。
そこへ

( ^Д^)「今度は俺のターンだ!」
(*゚∀゚)「あーもう、ずっと私のターンでいいよ…」

手甲のような武器を右手に装着したタカラがモララエルへと接近し、その身を引き裂く。

「ちっ…」

少し狙いが逸れたために大打撃には至らなかったようだが、
それは確かに痛手を与えた。

( ^Д^)「悪魔の爪と骨で作られた、俺用の手甲タイプの武器だ。
     …元々これが俺のメインなんだけどな」

そう言うと再び爪でモララエルを引き裂こうとし、モララエルは当然これを回避。
それが何度も繰り返された。
その攻防の様子は闘技場で激闘を繰り広げる戦士と猛獣を彷彿とさせる。



695:◆wAHFcbB0FI :03/16(金) 19:23 xk2kVmTiO
  

(*゚∀゚)「あいつしぶといなぁ…
     てか、これじゃガチでずっとタカラのターンじゃん」

攻撃が来ないことをいいことに様子を眺めていたつーはふと呟く。

(*゚∀゚)「そうだ…ロストもきっと遊びたがってるよね?
     …OK、楽しませてあげよう!」

つーは大鎌・ロストをモララエルの方へ向け

(*゚∀゚)「行っておいで、ロスト…
     アヒャヒャ…ヒャ-ッ!」

気合いの声(?)と共に力一杯投げつけた。



696:◆wAHFcbB0FI :03/16(金) 19:34 xk2kVmTiO
  

それに気付いたタカラは攻撃の手を止め、後退。

( ^Д^)「…どうやら俺のターンはここまでらしいな」

直後にモララエルへ飛んできたのは、赤い刃を持った大鎌。

「武器を投げるだと…?」

この程度の速度ならば避けるのは容易だ。
そう考えた時

(*゚∀゚)「やっちまいなー!」
「…?」

モララエルはその大鎌を注意深くみて、呆然とする。
それもそのはず、大鎌は回転することなくそのままの向きで真っ直ぐ標的へ向かっていき―――

「!?」

独りでにモララエルへ攻撃を始めた。
モララエルは牙でそれを止めるが、しかし徐々に押されている。


( ^Д^)「相変わらずだな…お前もロストも」
(*゚∀゚)「私がやってるんじゃないよ。
     ロストが遊びたいって言うから」
( ^Д^)「お前、やっぱ最悪だな」
(*゚∀゚)b「アヒャ♪」

笑いながら、つーはガッツポーズを取った。



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