( ^ω^)ブーンが大仕事を成し遂げるようです
- 73: ◆wAHFcbB0FI :05/31(木) 17:41 Y4ICy9QaO
5-chapter8
援護砲撃が再開されてもフッサールは全く意に介さず、ブーンとのーも戦いの手を止めることはない。
幸い、戦車に搭乗している者(=ギコ達)は二人がフッサールに接近している間は砲撃を止めるらしく
そのお陰で誤爆には至らなかった。
( ^ω^)「…!」
ブーンはキルサタンを様々な武器へと変化させ、それなりに有効でありそうな形状の武器を探していた。
相手の隙を突いて攻撃しては変化させ、別の形状にしてもう一度攻撃―――といった具合だ。
ミ,,゚Д゚彡「そんなチマチマした攻撃じゃ俺はやられないから」
(; ^ω^)「おっ…」
無論容易に防がれるが、それでも彼は攻撃を止めない。
- 74: ◆wAHFcbB0FI :05/31(木) 17:44 Y4ICy9QaO
( ^ω^)「…刀の方がいい気もするけど、ここは敢えてこれでいってみるお!」
多くの武器を試した結果、最終的にブーンはキルサタンを槍状へと変化させた。
ブーンにとっては槍のような『刺突』中心の武器よりも、刀や剣のような『斬撃』が主流の武器の方が使い慣れているのだが―――
( ^ω^)「(防御も兼ねるなら…こっちの方が便利だお!)」
ブーンは槍状に変化させる際、柄の部分を並の槍よりもやや長めに設定した。
ゆえに振り回せば、広範囲に渡る攻撃と防御が可能。
仮にこれでうまくいかぬようならば、再び武器を変更すればいい。
攻撃の種類が多いことが今のブーンの利点だ。
- 75: ◆wAHFcbB0FI :05/31(木) 17:50 Y4ICy9QaO
(*゚A゚)「おりゃ!」
ミ,,゚Д゚彡「効くか…ッ!」
対し、のーはフッサールの頭部を狙って鉄槌を振り下ろす攻撃を仕掛け続ける。
やはり防がれるが、それでも続け様に鉄槌を繰り出す。
先程からこればかりではあるが、多彩な攻撃手段を持ち合わせていないことは彼女の弱点であり、
しかし長所でもある。
- 76: ◆wAHFcbB0FI :05/31(木) 17:53 Y4ICy9QaO
攻撃の選択肢が多ければ、それは却って迷いを生み、そして隙に繋がる。
だが、予め攻撃手段が制限されていれば惑わされることなく自身の力を最大限発揮できる。
要は、迷いの種を根本から断ち切るということだ。
( ^ω^)「…そろそろ次の砲撃が来る頃だお」
砲撃の来る感覚をいくらか掴んだブーンはフッサールから距離をとる。
が、のーは攻撃の手を止めず、退くこともしない。
(; ^ω^)「ちょ、危ないお!」
(*゚A゚)「大丈夫、自分はあんなんじゃ傷一つ付かへん」
( ^ω^)「あっ…そうだったお」
のーはあくまで幽体。
人間が造り出した、魔力も聖なる力もない手榴弾では爆風に触れる心配すらない。
- 77: ◆wAHFcbB0FI :05/31(木) 17:57 Y4ICy9QaO
安心したその時、再びフッサールが爆風に飲み込まれる。
それと同時に、ブーンの前を何かが高速で横切った。
(; ^ω^)「うわっ!?」
飛んでいった方を慌てて見るブーン。
それは夜空へ昇っていき、しかし途中で勢いを失う。
次の動きはその逆。
一瞬夜空で停滞した物体が、今度は引力を受けて落下を始めたのだ。
( ^ω^)「お…?」
それを見つめるブーン。
物体は一気に地へと落ちていき―――
次の瞬間、物体が落ちていった地点で爆発。
( ^ω^)「……」
(^ω^)
- 78: ◆wAHFcbB0FI :05/31(木) 18:01 Y4ICy9QaO
(; ・∀・)「待て待て待て待て!」
地上で様子を見守っていたモララーが大声を張り上げる。
( ,,゚Д゚)「何だいきなり」
( ><)「何事ですか…?」
戦車の頭頂部の出入口から、首から上だけを出した二人にモララーは説教を浴びせる。
( ・∀・)「ここは村だからな。人もいるんだからな!
そんでもってさっき撃った方角には待機中の連中だっているんだからな!
結局何が言いたいのかっていうと、撃ち漏らしは駄目なんだよ!」
( ,,゚Д゚)「そんなこと言われてもな…こっちもプロじゃないし」
( ><)「いちいち気にしてたら撃てません!」
- 79: ◆wAHFcbB0FI :05/31(木) 18:04 Y4ICy9QaO
顔を見合わせる二人。
( ・∀・)「やかましい、今外した奴どっちだ?」
( ><)ノ
( ・∀・)「よし、代われ! 出てこい!」
(;><)「ちょ…出来るんですか?」
( ・∀・)「あまり僕を嘗めない方がいい…少なくともお前よりは出来る!」
( ><)「……」
返事を待つことなく、モララーは半ば強引に戦車へ乗り込む。
…そして内部。
∩゚∀゚))「こうたい?」
( ・∀・)「そうだ…僕が照準定めて撃つから、お前は手榴弾セットしろ!」
∩゚∀゚))「わかったよ! さいたまさいたま!」
( ・∀・)「(…それは僕に対する挑戦なのか? だとしたら覚えてろ…!)」
しかし今は挑発らしきものに乗っている場合ではない。
モララーは操作方法を確認し、準備を始めた。
- 80: ◆wAHFcbB0FI :05/31(木) 18:06 Y4ICy9QaO
( ^ω^)「おっ…!」
ミ,,゚Д゚彡「ガルッ!」
ブーンは再びフッサールへ接近していた。
ブーンは刺突、フッサールはやはり爪による攻撃を放つ。
だが刺突は止められ、逆に爪は素早く回避。
互いにダメージはゼロ。
(*゚A゚)「ほいっ」
そしてブーンを援護するようにのーが鉄槌を繰り出す。
今のところ、地道に攻撃を重ねていくしか手段はない。
(*゚A゚)「さっきの…大丈夫かなぁ?」
(; ^ω^)「お…」
先程の地上での爆発が村や待機中の皆に被害を与えていないかどうかが気になるが、今の状況で深く考えては命取りだ。
- 81: ◆wAHFcbB0FI :05/31(木) 18:14 Y4ICy9QaO
その時。
ミ,,゚Д゚彡「……」
ふと、フッサールが攻撃の手を止めた。
だがその文字通りの獣の目は、しっかりとこちらを見据えている。
( ^ω^)「おっ…?」
(*゚A゚)「(…なんや、降参か? 懐いたんか?)」
何が来るか解らない。
油断することなく二人は身構える。
それとほぼ同時にフッサールが口を開いた。
ミ,,゚Д゚彡「…しぶとい人間共が。
もうこの際一気に終わっちまえ!」
次の瞬間、両腕から発光。
(; ^ω^)「なっ…!?」
- 82: ◆wAHFcbB0FI :05/31(木) 18:16 Y4ICy9QaO
それは今までの発光とは違った。
白、青、黒、赤、緑―――
それらが混ざり合ったような、鮮やかで明るく、しかしどこか不気味な光。
(*゚A゚)「(こりゃあ…凄いモンが来そうやな)」
(; ^ω^)「何をする気だお…」
二人は直感で危険と判断し、距離をとり身構える。
ミ,,゚Д゚彡「グルル……」
対し、フッサールは牙を剥いて唸り、発光している両腕を合わせる。
キィン、という鋭い音と共に両腕の発光が止み、代わりに両手の先に五色の光が集っていた。
光が球体の形をとっている、という表現が適切か。
- 83: ◆wAHFcbB0FI :05/31(木) 18:19 Y4ICy9QaO
ミ,,゚Д゚彡「…吹っ飛べ」
言葉と同時に両腕を振り下ろす。
次の瞬間、両手の先から光の球が消え―――
(; ^ω^)「おっ!?」
それは音速をも超える勢いでブーンの横を掠めていき―――
少し離れた場所から激音。
(; ^ω^)「な…何が起きたんだお?」
(;*゚A゚)「…後ろ見てみぃ」
( ^ω^)「…え?」
言われるがままに振り返る。
(; ^ω^)「ば…馬鹿な!」
今北村から少し離れところに位置していた小山が、跡形もなく消し飛んでいたのだ。
- 84: ◆wAHFcbB0FI :05/31(木) 18:25 Y4ICy9QaO
ミ,,゚Д゚彡「ちっ…久々だから上手く狙えないな…」
その小柄な外見からは想像出来るはずもない、凶悪な破壊を見せた元凶は辺りをぎろりと見回し―――
ミ,,゚Д゚彡「次はお前等が吹っ飛ぶから」
(; ^ω^)「お…」
先程の光弾は五色の魔力を合成して凄まじい破壊力を生み出したモノ、と考えて良さそうだ。
それが何故爆発の力に繋がるのか―――
理屈は解らぬが、アレに巻き込まれれば即死は確実。
正直、怖い。
思わず後退りしたくなるが―――
( ^ω^)「かかって来いお…!」
――自分達が戦わずして、誰があの化け物と戦うというのだ。
彼の心のどこかが抵抗の意を表し、ブーンはそれに従う。
- 85: ◆wAHFcbB0FI :05/31(木) 18:30 Y4ICy9QaO
ミ,,゚Д゚彡「じゃあ望むとおり…この辺ごと吹っ飛ばしてやるから!」
フッサールの両腕が、再び多色の発光を始める。
今度はその両腕を、しっかりと二人へ向けている。
奴は、文字通り一気に終わらせるつもりのようだ。
(; ^ω^)「そ…阻止するお!」
(*゚A゚)「…そうやな!」
山をも粉砕する破滅の力。
もしそれが村に落ちれば、当然破滅以外に考えられるものはない。
アレを撃たせては駄目だ。
これ以上奴に破壊活動をさせてはならない。
何としても止めなくては。
- 86: ◆wAHFcbB0FI :05/31(木) 18:34 Y4ICy9QaO
しかし、これはチャンスでもある。
(# ^ω^)「おー!」
魔力を溜めるために動きを止めているフッサールに、ブーンが気合いの声と共に迫る。
その手には、銀色のトマホーク。
キルサタンの重量は使い手の力に比例し、形態を変えてもそれは一定。
とはいえ、武器の形状によってそれぞれ重心は変わる。
ゆえに攻撃の際にかかる重圧もまちまちで
全く威力が変動しない訳ではなく、変化した武器によって多少の差が生じる。
そして相手が動きを止めている今、やられるまえにこちらから攻撃力を重視した武器で決めてしまおう、とブーンは考えたのだ。
そしてブーンに追従するように夜空を飛翔するのー。
その手には、元のサイズよりも大分巨大化した鉄槌・クラッシュ。
(*゚A゚)「猫さん無防備やな…頭ぶっ叩いてやるわ!」
彼女もまた、ブーンと同じ考えだった。
- 87: ◆wAHFcbB0FI :05/31(木) 18:46 Y4ICy9QaO
フッサールとの距離が僅かになるが、奴は未だ『溜め』が完了していないようだ。
( ^ω^)(*゚A゚)「覚悟ッ!」
言葉と同時にブーンが斧を振り上げ、少し遅れてのーがクラッシュを振りかぶる。
この時間差攻撃ならば、万一奴が動いたとしても簡単にはガード出来ないはず。
最も、こんな至近距離まで来ても防御姿勢をとる気配がないのだから、もはや警戒はいらないだろう。
( ^ω^)「(…いけるお!)」
―――その慢心がいけなかった。
ミ,,゚Д゚彡「ガルル…!」
(; ^ω^)「え…!?」
突如、唸りをあげつつ奴が動いたのだ。
そして両腕を光らせたまま、ブーンに爪を繰り出す。
既に攻撃体勢に入っていたブーンに、避ける余裕はなく―――
(; ^ω^)「ぐぁぁっ!?」
結果、ブーンの腹部に爪、そして灰色の手が深々と突き刺さる。
- 88: ◆wAHFcbB0FI :05/31(木) 20:06 Y4ICy9QaO
ミ,,゚Д゚彡「ッ!」
フッサールはブーンの腹部から腕を勢いよく引き抜く。
同時に、痛々しく開いた傷口から鮮血。
(; ゚ω゚)「……」
言いようのない強烈な痛みが体内を駆け巡り、力なく落下を始める。
(;*゚A゚)「…! あかん!」
のーは慌ててクラッシュを元のサイズに戻し、ブーンの救護へと向かう。
(*゚A゚)「気失っとる…意識も――」
彼女はブーンの身体を片腕で持ち上げ、フッサールを睨む。
だが、彼女の心はすぐに恐怖と絶望で支配されることとなる。
見えてしまった。
フッサールの両腕が二人にしっかりと向けられ、その先に多色の光弾が形成されているのを。
ミ,,゚Д゚彡「…吹っ飛べ」
次の瞬間、光弾が放たれた。
- 89: ◆wAHFcbB0FI :05/31(木) 20:08 Y4ICy9QaO
爆発。
それが村の上空を支配。
だがそれは戦車から放たれた弾薬のものではない。
ミ,,゚Д゚彡「……」
爆発を引き起こした本人は、体毛と同じ灰色の翼で未だに滞空していた。
爆発の発生は光弾が標的に命中したことを意味し、
そして爆発がおさまった今、標的の姿はなかった。
ミ,,゚Д゚彡「…殺ったか」
小さく呟いた後、この世のものとは思えぬおぞましい雄叫びが、鋭く村中に響きわたった。
- 90: ◆wAHFcbB0FI :05/31(木) 20:18 Y4ICy9QaO
発光、爆発、その後雄叫びをあげるフッサール。
地と空は離れてはいるが、肉眼でも大方状況判断は可能だ。
( ・∀・)「(くそっ…間に合わなかったか!)」
一連の事態を確認したモララーは、外に出て睥睨するように夜空を睨む。
夜空に光が見えた時点で手榴弾を撃ち込んでおけば、あの爆発は阻止出来たかもしれない。
だが双眼鏡で様子を見たところ、二人がフッサールに接近していたためにギコもモララーも砲撃を躊躇ってしまったのだ。
(;^Д^)「なあおい、これって――」
( ・∀・)「……」
返事はない。
彼は今何を思い、何を思案しているのか。
- 91: ◆wAHFcbB0FI :05/31(木) 20:20 Y4ICy9QaO
その時ギコが青ざめた表情で戦車から出てくる。
(;,,゚Д゚)「やばいぞこりゃ…双眼鏡でも奴等の姿が確認出来ねぇ」
( ・∀・)「…爆発に巻き込まれたに違いない…というのか」
あの爆発をまともに受ければ、生き残れる可能性は限りなく低い。
あってほしくないことだが、仮に二人がやられたとなるとフッサールの次なる攻撃対象は必然的に地上となる。
( ・∀・)「このままだと僕達も待機中の連中も危ない…。
タカラ、皆をこっちに連れてきてくれ。合流する。
勿論、装備も忘れないように伝えてほしい」
( ^Д^)「…よし任せろ」
そう言うとタカラは自らの爪で空間を裂き、そこに生まれた裂け目に飛び込んでいった。
- 93: ◆wAHFcbB0FI :05/31(木) 20:22 Y4ICy9QaO
( ・∀・)「(前々から思っていたが、やはりタカラとつーは何かしら違うようだな。
…いや、今はそれどころではない!)」
モララーは再び戦車へ向かう。
( ・∀・)「…ギコ、続けるぞ」
( ,,゚Д゚)「お…おうよ!」
手榴弾程度の爆撃が意味のないことは目に見えている。
だが何もしないよりはマシだ。
( ・∀・)「(あいつらがそんなに簡単にやられる訳がないだろ…!)」
それは現実逃避にも思える考え。
だが同時に、二人は必ず戻るだろうという期待もある。
だから彼は砲撃を続ける。
二人が再び戦場に戻るまで、精一杯の時間稼ぎをするために。
( ・∀・)「(二人共、無事に生還しろ…
奴が空にいる以上、奴を止められるのはお前等だけなんだからな!)」
- 94: ◆wAHFcbB0FI :05/31(木) 20:28 Y4ICy9QaO
今北村にある、小さな森。
月の光も明かりもない、暗い空間に人影が見える。
(*゚A゚)「……」
のーだ。
彼女は消滅することはなく、しかし時折ふらつきながら森の出口を目指して歩いていた。
光弾が迫る寸前にクラッシュの柄を光弾に向けて伸ばし、衝突させたことにより
光弾を彼女の手前で爆発させて攻撃を抑えることに成功したのだ。
とはいえ、流石に無傷というわけにはいかず、爆風に身を眩ましつつこの森に降り立ち今に至るという訳だ。
- 95: ◆wAHFcbB0FI :05/31(木) 20:38 Y4ICy9QaO
( -ω-)
そして彼女の背には、一人の人間。
それはフッサールの凶悪かつ鋭利な爪の前に倒れたブーンだ。
(*゚A゚)「早ようせんと……あかん」
彼女のような霊体に人間が触れることは叶わないが、逆に彼女から触れることは可能。
何とも理不尽で矛盾だが、つーが放った蹴りがブーンやしぃに命中したのも同じ理由である。
( -ω-)
のーが施した応急手当により、ブーンの腹部からの流血は僅かながら止まったが、彼の体内の血液は未だに減り続けている。
傷口を塞がない限りそれが完全に止まることはないだろう。
(*゚A゚)「皆のところまで戻って傷何とかしてもらわんと手遅れになる…
自分が一肌脱ぐのはそれからや…」
彼女ならば人間一人を抱えたまま飛行する位の力はあるのだが、
今飛行すれば再び奴に狙われる。
ブーンには意識がなく、この状態で戦うのは自殺行為だ。
(*゚A゚)「…ッ」
痛みに耐えつつ彼女は足を早める。
一刻も早く流血を止めてもらわなくては。
―――その時、既にブーンは息をしていなかったのだ。
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