( ^ω^)ブーンが大仕事を成し遂げるようです

101: ◆wAHFcbB0FI :06/07(木) 15:55 ML/McnprO

5-chapter9


闇夜の村にいたはずが、ブーンは自分が今どこにいるのかわからぬ状況にあった。

( ´ω`)「…ここは?」

彼の視界に広がっているのは深海のように暗く
孤独を絵に表したような、何もない空間。
とりあえず先程のことを思い出してみる。

( ´ω`)「確か…僕は空で魔獣と戦ってて、それで腹を貫かれて…
      …ってことは僕は死んだのかお?」

考えてみれば、自分は随分呆気なくやられたものだ。
油断して下手に接近などしたのが文字通り命取りとなったのか―――



102: ◆wAHFcbB0FI :06/07(木) 16:04 ML/McnprO

…そんなことを考えたりしていた時だ。

「…どうだい、今の気分は?」
( ´ω`)「…お?」

どこからか声が問いかけてくる。
何となく気配は感じられるものの、主の姿は見えない。
だがこの声を聞くと同時に、ブーンはいくらか安心感を覚えた。

「見てたよ…さっきの戦い。 君は今まで本当によく頑張ったと僕は思うよ」
( ´ω`)「……」

相手は続ける。

「…けど、君もそろそろ疲れてきたんじゃないかな?
 数多くの人々がいるこの世で、ほんの一握り…いや、それにも満たない者達だけが世界の危機に立ち向かうなんて理不尽だと思う。
 それで君もこんな目に遭って…嫌になったりしないのかい?」



103: ◆wAHFcbB0FI :06/07(木) 16:07 ML/McnprO

気遣うように優しく問いかけてくる相手に対し、ブーンはようやく言葉を返す。

( ´ω`)「…確かに無茶苦茶な話だお。
      けど、今回の事件は僕達の責任だお。だから僕達がやらなくちゃいけないんだお」
「じゃあ…君は戦いを望むのかい?
 その先に絶望が待っていようとも、責任一つに縛られてまで戦うという意志があるのかな?」

ブーンを案ずるような問いかけに対しても、彼の意志は変わらない。

( ´ω`)「僕は一人じゃないお。みんなが戦って、みんなで支え合っているんだお。
      だから…嫌になんかならないお」



104: ◆wAHFcbB0FI :06/07(木) 16:13 ML/McnprO

彼の強い意志を読み取った相手は、安心したように言葉を返す。

「…それでこそ君だよ。
 一度決めたことや承ったことは必ず成し遂げる…君は何事に対してもそうだった」
( ´ω`)「……?
      君は一体誰だお?」

ブーンの疑問に対しても声の主は姿を現すことはなく、自嘲するように言葉を返してくる。

「僕は君に名乗る程の存在じゃない…むしろ僕に名乗る権利なんてないよ。
 とりあえず言っておくと、僕は天使でも悪魔でも死神でもない。
 早い話が今の君と同じ、肉体から魂が抜けてる存在さ」



105: ◆wAHFcbB0FI :06/07(木) 16:17 ML/McnprO

( ´ω`)「するとやっぱり僕は…」

魂が抜け出た状態―――
詳しいことはよくわからないが、それは恐らく死を意味するのだろう。

だが、そんな俯くブーンを慰めるように再び声がかかる。

「確かに、今の君が生きている状態と言えばそれは嘘になると思う。
 …だけど、まだ完全に死んでしまった訳じゃない」
( ´ω`)「お…?」
「君にはまだ生の可能性が残されているよ」



106: ◆wAHFcbB0FI :06/07(木) 16:24 ML/McnprO

「折角だし、少しばかり説明しよう。
 …いいかな?」

相手はブーンに問い、彼が了解するとそのまま言葉を続ける。

「肉体から魂が離れた者でも、その身体に命の欠片さえ残っていれば魂が肉体に戻ることも不可能じゃないんだよ」
( ´ω`)「…命の欠片っていうのは魂じゃないのかお?
      いまいちピンとこないお」
「…逆に言うと、要は蘇生不可能な要素が一つもなければいいのさ。
 例えば血液が殆ど体内に残っていないとか、心臓や首がやられてたり
 細胞が死滅したりとか。そうなるとアウトだけどね」
( ´ω`)「成る程…」

ブーンに再び希望が戻ってくる。
まだ再起可能なのだと。
まだ諦めるのは早いのだと。

致命傷を負った際に流血が酷かったはずだが、今の会話からまだ手遅れではないと判断していいだろう。



107: ◆wAHFcbB0FI :06/07(木) 16:33 ML/McnprO

( ´ω`)「…でも、早くしないと奴が」

現状を思いだし、焦るブーンに相手は問う。

「…やっぱり、戻りたいかい?」
( ´ω`)「当たり前だお。僕はまだ死ぬわけにはいかないお」
「そう…だよね」

暫しの沈黙。
やがて、相手は少し声を強めてブーンに言う。

「なら、再び戻りたい、と強く思うことだ。
 何事にも屈しない強い意志があれば、それはきっと叶うはずだよ」
( ´ω`)「お…ところで、君はこのままでいいのかお?
      僕にそこまで教えてくれていながら、君からは生きようとする気が感じられないお」

疑問に思う。
自分と同じ状況ならば、何故戻りたいと思わないのか。
自らが戻ろうとは考えないのか―――

そう思っていると、相手は少し悲しげに言葉を返してきた。

「僕にはもう戻る身体がないからね。
 …それに僕は生前にとても重い罪を犯したから、蘇ることは到底許されないよ。
 まあ、良くて転生…生まれ変われるかどうかだね」
( ´ω`)「そんな…」



108: ◆wAHFcbB0FI :06/07(木) 16:43 ML/McnprO

その時。

( ´ω`)「お…!? 僕はまだ何も――」

突如、ブーンから眩い光が溢れ出したのだ。
それはこの空間には存在しないはずの、生を象徴する光。

「うん、君は運がいい…というか、良い仲間に恵まれてるね」
( ´ω`)「それは一体どういう…」

戸惑うブーンに対し、相手は少し嬉しそうに言葉を発する。
まるで、ブーンの復活を喜ぶかのように。

「どうやら、誰かが君の魂を連れ戻そうとしているようだ。
 まあ、こんなことが出来るのは人間じゃないだろうけどね」



109: ◆wAHFcbB0FI :06/07(木) 16:45 ML/McnprO

言うなり、声を改める。

「そろそろお別れだ。 やっぱり、君はまだ死んではいけないよ」

そう言われて、ブーンははっとする。
ブーンの発光が強くなるにつれて、正体の解らぬ声の主が次第に遠ざかっていくような感覚に襲われる。
今呼び止めなくては、二度と会話が出来ないような気がするのだ。

( ´ω`)「ち、ちょっと待ってほしいお!」

返事がないが、ブーンは続ける。

( ´ω`)「僕には何故か君がとても親しい存在に感じるんだお。
      君は一体…誰だお?」



110: ◆wAHFcbB0FI :06/07(木) 16:50 ML/McnprO

再び問いかけた疑問。
さらに沈黙が流れるが、それは長くは続かなかった。

「…僕のことは忘れてほしい。 ただ――」
( ´ω`)「…?」

相手は少し照れくさそうに

「…また会えるといいな」

ブーンもまた、同じ心境だった。
相手が何者なのかわからないのに、何故かそう思ってしまう。
何故かそう思わずにはいられないのだ。

( ´ω`)「僕も…また会いたいお。
      いや、きっとまた会えるお!」

ありがとう、と相手は言葉を返し、さらにブーンに言い放つ。

「さあ、もう行くんだ。
 君のように、生きようと思う人はこの場所に相応しくないから…」

言葉が終わると同時に、気配が完全に消え去った。

( ´ω`)「…ありがとうだお…」

それから間もなくブーンの意識が飛び―――



111: ◆wAHFcbB0FI :06/07(木) 17:14 ML/McnprO

…………

( ´ω`)「……」

突如、ブーンに意識が戻ってきた。
それはまるで、長い夢から覚めたような感覚。

( ^ω^)「お…!」

恐る恐る目を開けた次の瞬間、視界に入ってきたのは仰向けに寝かされていた自分を上から覗き込むのーの姿だった。
目が合うなり、彼女の表情が明るくなる。

(*゚A゚)「…! やった、成功や!」
(; ^ω^)「…え?」



112: ◆wAHFcbB0FI :06/07(木) 17:19 ML/McnprO

状況を把握する間もなく、次々と親しき者達が押し掛けてくる。

('A`)「ブーン! お前意識戻ったのか!?」
( ゚∀゚)「流石はブーンだ…死んでも生き返るとはな!」
( ^ω^)「ちょ…毒男にジョルジュ!? 来てたのかお!」

彼等だけではない。
起き上がって見回すと、そこにはツンやクーの姿もあった。

ξ゚听)ξ「…全く、アンタが爆発に巻き込まれたとかいうからわざわざ来てみれば
      普通に生きてるじゃないの、この死に損ないめっ!」
(; ^ω^)「ちょwwwwいきなりそれは酷いお」
ξ////)ξ「…べ、別にアンタが心配だった訳じゃないんだから!」
(; ^ω^)「……」

出会い頭にキツい言葉を喰らったが、彼女もまた少なからず自分の身を案じてくれていた……はず。



113: ◆wAHFcbB0FI :06/07(木) 17:25 ML/McnprO

( ><)「しかし腹を貫かれて、爆発の衝撃もあったのによく生還出来ましたね…」
( ^ω^)「…僕もさっきまで生死の狭間をさまよってたみたいだお」
( ゚∀゚)「それだけどな、お前のーとモララーに感謝しないといけないぜ?」
( ^ω^)「お…」

言われて、ブーンは「あの空間」での会話を思い出す。
自分の魂を連れ戻そうとした者とは―――

( ^ω^)「…もしかして、のーちゃんが僕の魂を連れ戻したとか?」
(*゚A゚)「まあ…これでも自分、死神やからな。
    死んだ方々の魂をあの世へ連れてくのが本来の死神の役割らしいけど、自分や先輩はそんなつまらんことはせえへんのや」

完全に死んだ者を蘇らせることは流石に不可能だが、肉体から魂が離れて間もない段階ならば
その魂を回収して元の肉体に叩き入れると息を吹き返すらしい。
そんな荒業を為す死神という部類に、つーやのーは入っている訳だ。
そして放っておけば手遅れとなる要素であった出血も、モララーが再生薬で傷口を塞いで治療してくれたらしい。



114: ◆wAHFcbB0FI :06/07(木) 17:32 ML/McnprO

(*゚A゚)「けど、今回ははっきり言うて運がよかったわ。
    自分は不器用なせいもあって、100%上手くいくとは限らんのや。
    先輩なら絶対成功するはずやけどな」
( ^ω^)「でも、こうして戻れたんだからいいんだお。 ありがとうだお!」
(*゚A゚)「あ…どういたしまして」

失敗したかもしれない、と言われると少しゾッとするが、無事だった以上そんなことはどうでもよい。
そもそも死んだ者が生き返ることなど本来は有り得ないのだから、ほんの少しとはいえ
生死をコントロール出来る彼女は相当な存在だ。



115: ◆wAHFcbB0FI :06/07(木) 17:40 ML/McnprO

( ^ω^)「(……)」

ブーンは敢えて「あの空間」でのことを皆に打ち明けることはしなかった。

一部始終をはっきりと覚えているとはいえ、ただの幻覚であった可能性もあり
それにあのことは誰にも話さずにしておくべき、と思ったからだ。
理由は解らぬが、むやみやたらと話すべきではないと思わずにはいられなかった。

まあ、終わりよければ全てよし―――


川 ゚ -゚)「喜んでいるところ悪いが…少し待って欲しい」


―――という訳にはいかないようだ。



116: ◆wAHFcbB0FI :06/07(木) 17:48 ML/McnprO

川 ゚ -゚)「ブーンの復活を喜びたいところだが…それはまだ早い」

クーの言葉で皆、我に返る。
少し離れた位置で、二台の戦車が砲撃を行っていた。

( ^ω^)「…あの中にモララーとギコがいるのかお?」
( ><)「そうです!」

モララーとギコの姿がなかったのはこのためだったのだろう、と認識する。
そして砲撃が続いている以上、奴は未だ存命であることも悟る。



117: ◆wAHFcbB0FI :06/07(木) 18:00 ML/McnprO

川 ゚ -゚)「それにだ…
     奴は不死身であると聞いている」

戦車の砲撃などは時間稼ぎに過ぎず、今の状態でフッサールに対する攻撃が途切れれば
奴はすぐさま破壊活動に移るだろう。

(; ^ω^)「なら、ここはまた僕…が――!?」

気を入れようと力んだ途端、ブーンは強い目眩に襲われ、崩れるように倒れる。

(;'A`)「おいブーン…大丈夫か!?」
(; ^ω^)「…な、何とか」

幸いブーンはすぐに立ち上がる。
同時に、目眩の原因もすぐに判明した。

川 ゚ -゚)「まずいな…恐らく血液の流出が負担になっている」
(; ^ω^)「え…?」



118: ◆wAHFcbB0FI :06/07(木) 18:01 ML/McnprO

一命を取り留め、傷口も塞がりはしたが
彼の体内から流れ出た血液は思いの外多量であり、これでは戦うこともままならない。

ξ゚听)ξ「これは…まずいわね」
(*゚A゚)「ならせめて自分だけでも!」

翼を広げたのーを、ジョルジュが慌てて止める。

(;゚∀゚)「馬鹿…アンタだって傷を負ってるっていうのに、たった一人で魔獣に立ち向かうのは自殺行為以外の何でもないぞ!」
(*゚A゚)「自分がもっと早くここに来れれば、こんなことにはならなかったんや!」

硬質な黒い翼を広げ、無謀にもただ一人飛び立とうとするのーと、それを止めようとする人間達。

―――が、その時。



119: ◆wAHFcbB0FI :06/07(木) 18:06 ML/McnprO

( ^Д^)「まあ待てよお前等!
     あんましギャーギャー騒ぐな」

今まで黙っていたタカラが、突然口を開いたのだ。
同時に、そこに居合わせた皆が一斉にタカラへ目を向ける。

( ^Д^)「のーも他の連中も少しばかり落ち着け。
     五体満足じゃねえってのに、そんなごちゃごちゃやってたら勝てねえぞ?」
(*゚A゚)「…確かにそうやな」
( ゚∀゚)「だよな…

そう言われて、皆は落ち着きを取り戻す。
何故タカラがいきなりそんなことを言い出したのかは謎だが、彼の発言の内容は最もだ。



120: ◆wAHFcbB0FI :06/07(木) 18:11 ML/McnprO

( ^Д^)「さて、ブーンがその状態で戦えねえっていうのなら…
     ブーン、お前に力が湧いてくればいい訳だ」
( ^ω^)「そうだお…?」
( ^Д^)「戦いに復帰する力が、あの化けモンと戦う力が…欲しいか?」

一瞬戸惑うが、答えは一つ。

( ^ω^)「…欲しいお」
( ^Д^)「危険を伴うことになるかもしれねえが、いいのか?」

ブーンは黙って頷く。
その強い意志を感じ取ったのか、皆は誰一人として否定しない。
それを見て、タカラは小さく笑いを浮かべた後
何かを探すように自らを下半身である宝箱へと引っ込め、やがて再び顔を出す。

( ^Д^)「じゃ、やってみるか…『賭け』ってモンをよ!」

その際、タカラの右腕にあったモノは―――



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