('A`)理想桃源郷のようです

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/05(土) 03:14:03.99 ID:UpTKW9GcO
 3  フレンズ

('A`)「……あれ? ここ何処だ?」

そこで、稲妻が走ったかのような気がして、
いつの間にか草野を歩き、外の空気を吸っていた。

('A`)「たしかデレとキスしようとして……え? デレって誰だ?」

辺りを探してみても、デレらしきものは見当たらない。
デレというのは、自分にとってものすごく大事な物だったりしないだろうか。

不安になったが、付近にデレの手がかりは無かった。

(;A;)「デレエエエェェェェッッ!!」

('A`)「って叫んでもどうせどうしょうもないんでしょ、いつもそうだったもん」

('A`)「……これからどうしよう。桃源郷ってくらいだから、李の木でもあるかな。探してみよう」

('A`)「あぁ……なんか、股間に湿り気を感じるなー」



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/05(土) 03:16:24.95 ID:UpTKW9GcO
 
('A`)「しかし、広い街だな……」

この街の名は何というのだろうか。どんな人がいるのだろうか。
そもそもここには、どれぐらいの空間が広がっているのだろう。

あの、クーとかいう「最高権力者」によれば、この桃源郷は地下空間らしいが、
とてもそうは思えない。しっかり太陽が照っているのが証拠だ。

('A`)「一体、ここは何処なんでなんだぜ?」

不思議な空間だ。狭いだろうと思っていたのに、遠く、地平線さえ見える。
ひょっとしたら地平線かと思うだけかも知れない。

('A`)「どっか、高いところに行きたいな」

そう思っていたら、その向こうから砂塵を上げて何かが駆けてきた。

(;^ω^)「うおおおおおおぉぉぉぉ!!!!!!」

('A`;)「あははは……なんか来てる、なんか来てるよおおおおっっ!11111」

いや、これは有り得ない。絶対に夢だ。
ただの人間がF1級のスピードで走ってくる訳がない。



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/05(土) 03:19:09.31 ID:UpTKW9GcO
(;゚A゚)「うぎゃああああああ!!!!」

冗談じゃない。あんなのに巻き込まれたら殺される。俺は必死で脇道に逃げ込んだ。

-=三^ω)ゴオオオオオオ……

行ったか、と思い、ほっとする。

(^ω^三 クイッ

(゚A゚)「何だとおおおおおおっ!!!!」

しかし、男はすぐに引き返してきて、俺の方に駆けてきた。
そして、腰を抜かした俺の前できゅっと止まると。

(;^ω^)「只今参りましたお、内藤タクシーでございますお!!」

('A`)「……は?」

男はポケットから錠剤のたっぷり入ったビンを取り出すと、三粒かじった。

男の体中から、白い煙がゴボゴボ出てくる。やがてそいつは、煙に包まれて見えなくなった。

('A`)「……カーズ?」

(;^ω^)「何ですかお、カーズって? 僕はブーンですお」

煙が晴れて、俺は目を擦った。
男は、男だった奴は、やたらと車高の低い車になっていた。



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/05(土) 03:21:25.27 ID:UpTKW9GcO
 
('A`)「知らないなら良い。だが、このまま流す訳にはいかんな」

(;^ω^)「お? お?」

('A`)「呼んでもいないのに、もの凄い勢いでタクシー業者が走ってきたと思ったら、薬を飲んで車に変身した」

(;^ω^)「え? 確かに呼ばれましたお? 高いところに行きたいって……」

('A`)「……そういうもんなのか?」

車の話では、ここユートピアでは、望めば手に入る世界なんだそうだ。
こいつは走るのが好きだったから、凄まじい足の速さと車の姿を望んだそうで。

('A`)「じゃあ、このユートピアで、一番高いところに連れていってくれ! この世界のはじっこを知りたい!」

( ^ω^)「了解しましたお! 乗って下さいお!!」

あくまで人の体の中に入り込むのは癪だったが、歩くのも嫌だ。
おとなしく、男に乗り込んだ。

( ^ω^)「じゃあ、出発しますお!!」

そして俺は、光になった。



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/05(土) 03:23:31.69 ID:UpTKW9GcO
 
+(O゚^ω^)「さ、着きましたお!」

('A`)「……楽しそうだな、つやつやしやがって」

( ^ω^)「お? お客さん、車酔いでもしましたかお?」

俺が車を降りると、そいつは人間に戻った。

('A`)「あぁ。おまえの中にいっぱい出してやったぜ」

(;^ω^)「……3140円ですお」

あぁ、はいはいとポケットを叩いて、財布はジョルジュに取られたと思い出した。

('A`)「……やっぱり、お金って必要?」

(;^ω^)「当然ですお! この世界でだってお金が無きゃ生きてけないですお!!」

(;'A`)「あー、参ったな……」

ポリポリ頭を掻いていると、奇妙な音が聞こえてきた。
地響き、地中で何かが蠢いている。
そして、草をかき分けて、そいつは地面から腕までだけ出てきた。

( ・∀・)「あ、ども。こんにちは〜」



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/05(土) 03:25:03.84 ID:UpTKW9GcO
 
奇妙すぎる生き物だった。
オレンジの毛並み、猫のような耳と手に、点、ターンエー、点で構成された顔。
そいつが喋っていることが信じられなかった。

( ・∀・)「ちょっと、何黙ってんだい、ドクオ」

唐突に名前を呼ばれ、身が竦んでしまう。

(;'A`)「……俺か?」

( ・∀・)「うん。お前さっき、お金が欲しいと思ったよな?」

まぁ、と答える。
と、生き物はずぼ、と地面に手を突っ込み、1センチほどの札束を取り出した。
それで、そいつを俺にぽいと投げてきた。

( ・∀・)「それじゃあ、ひとまずこのくらいでどうだ?」

('A`)「……は?」

おい、見てるか一万円札?

お前の上にお前の上にお前の上にお前の上にお前の上にお前の上に……お前がいるんだけど。

( ・∀・)「ま、少し多いぐらいで丁度良いみたいだな。じゃあの」

それだけ言うと、そいつは身を翻して、ずぼずぼ地面に潜っていった。
その跡には、奴の通ったらしき穴さえも残っていなかった。



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/05(土) 03:27:36.84 ID:UpTKW9GcO
('A`)「……何だったんだ?」

手にずっしり残った札束の重みを感じながら、ぽつんと立っている男に聞いてみた。

( ^ω^)「知らないんですかお?」

('A`)「……あぁ。今日来たばっかなもんでな」

( ^ω^)「なら、知っとくと良いお。あれは、この世界の金の管理者ですお」

('A`)「金の管理者?」

( ^ω^)「はいですお。望めば来てくれて、いくらでもお金をくれますお」

なるほど、と思うと同時に、かなりの衝撃だった。

(;'A`)「じゃ、じゃあ働かなくたって良いのか!?」

いんや、と男は首を振る。

( ^ω^)「やりたいことが見つかるまでは、彼に頼っても問題はないと思うお」

( ^ω^)「けど、いつまでもそのままじゃいけないお?」

( ^ω^)「それに、やりたい事を生業にできる……きっと、それって良いことだお!」

('A`)「だよな……」

ちょっとだけ落胆した。男に金を払い、釣りをもらうと、男はまた光になって消えた。



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/05(土) 03:29:05.42 ID:UpTKW9GcO
 
近くにあった建物を見上げる。

('A`)「……すげえな」

その姿は、まさしく摩天楼。
銀色のガラスを光らせ、天上までそのボディを伸ばしていた。

入り口は自動ドア、様々な出店がある中心に、エレベーターがあった。

アカマムシソウのエキスを練ったアメや、ラムネ味のコーラだとか、
少し値は張ったが、目に新しい物は全て買って、エレベーターに乗り込んだ。

降りてきた客を待って、一人、円柱型の箱に乗り込む。

(*゚ー゚)「どちらまで行かれますか?」

('A`)「あ、最上階まで」

(*゚ー゚)「はい、了解しました〜」

エレベーターガールが、ぽんとボタンを押すと同時に、

(*゚ー゚)「ハイパー上に参りますタイム発動!!」

俺はまた、光になった。



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/05(土) 03:31:02.91 ID:UpTKW9GcO
 
(;'A`)「……はぁ」

匍匐前進でエレベーターから出ると、天井には岩が広がっていた。
これが、地上との境なのだろうか。望遠鏡に掴まって、立ち上がる。

(;'A`)「外はどうなってるんだ?」

顔を上げてみると、どこまでも続く空と天井と地面が見えた。
立っても同じのこと、ずっと地面が続いて、地球が丸く見える。

('A`)「綺麗だな……真下が見えない」

しばらくその景色を見つめていると、横から夕陽が射してきた。
そう言えば、あの光の正体は解明できていない。

('A`)「うーん……地中に太陽は存在しないとは思うが」

(;'A`)「……つーか、もう夜になっちまうのか? どこで寝りゃあ良いんだよ?」

その問いに答えたのは、ちょうどエレベーターから出て来た、一人の少女だった。

ζ(゚ー゚*ζ「ドクオさん。それなら、私の家に来て下さい」

('A`)「……ん?」



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/05(土) 03:34:07.47 ID:UpTKW9GcO
 
会ったことのない少女だ。
しかし、かなり深い関係のような気もする。

('A`)「……デレ……さん?」

ζ(゚ー゚*ζ「はいっ! 覚えていて下さったんですね!!」

彼女の名前だけは、何故だかぽっかりと浮かんだ。
俺が記憶障害を負ったことが、なぜ分かるのだろう。デレはそう言った。

ζ(゚ー゚*ζ「いやー、あの後ドクオさんったらふらふら出かけて行っちゃって。慌てて探したんですけど見つからないし……」

('A`)「……ごめん」

ζ(゚ー゚*ζ「いえいえ、いーんです! 私があんなの食べさせたから……」

しばらく沈黙して、少女は、「帰りましょっか」と笑顔で僕の手を握った。

手を繋いで、それこそ人生で初めて女の子と手を繋いで、エレベーターに乗る。
下りはゆっくりだった。あんまり早いとそれ落ちてるだけだもんね。

その分、少女と手をつないでいる時間はやたらと長く感じられた。



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/05(土) 03:36:38.39 ID:UpTKW9GcO
 
(;'A`)「すいません、やたらと手汗かいちゃって」

ζ(゚ー゚*ζ「いいえ。ぬちゃぬちゃして、気持ちいいです」

食えない人だ、と思った。
こんな人が、地上にいてくれたら良かったのに。

デレがいてくれたら、俺はマジョリティに加われた気がする。
今更そんなifを考えてみた所で意味ないし、あいつらと一緒に生きていきたくはないけども。

('A`)「……上は、どうなってるのかな」

ぽつりと呟いた。

ζ(゚ー゚*ζ「え?」

('A`)「いや、地上に残してきた両親、今頃どうしてるのかなって。君は、心配になったこと、無いの?」

ζ(゚ー゚*ζ「うーん、無いですね。私、虐待受けてたんで」

彼女は、さらりと言ってのけた。
何だか、デレの知ってはいけないところを見てしまった気がして、とにかく謝った。

ζ(゚ー゚*ζ「顔上げて下さいよ。私、ここで幸せだから、もう気にしてないんです」

('A`)「でも……うん、分かったよ」



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