( ^ω^)ブーンは大人嫌いのようです。

10: ◆NoxMiNDgA2 [視点変更。] :2006/10/19(木) 22:13:48.29 ID:qynpSQBL0
  
【( ´;゜;ё;゜;)】

 ブーンが持っていた小型の懐中電灯で足元を照らしながら、ボク達三人は山道を歩いていた。
( ^ω^)「プーン、手、繋ごうお」
( ´;゜;ё;゜;)「え?」
 どういうつもりだ。
 ブーンは返事も待たずにボクの左手を掴んだ。
( ^ω^)「兄ちゃんも、プーンと手、繋ぐお」
('A`)「ちっ」
 渋々という感じでドクオさんはボクの右手を掴んだ。
 何だ何だ。あ、そうか。ボクを逃がさないようにって事?
 こんな暗い山に連れてきて、僕をどうするつもりなんだ。
 まさかボクを殺してその辺に埋めてしまおうとか考えちゃっているのか? この二人は。
 ひぃぃ、たたた大変だ、逃げなければ!



11: ◆NoxMiNDgA2 :2006/10/19(木) 22:16:44.60 ID:qynpSQBL0
  
( `;゜;ё;゜;)「は、はなっ、離せよぅ!!」
( ^ω^)「駄ー目だおー」
('A`)「うざ」
 ボクは手を振り解こうと暴れてみせたけど、二人はしっかりとボクの手を握っていて離さない。
 殺される!!
( `;゜;ё;゜;)「ひぃ、ひぃぃ……い、命だけは……っ!!」
( ^ω^)「覚えてるかお? プーン」
( ´;゜;ё;゜;)「な何、何をですか!?」
 ブーンが相手なのに思わず丁寧語になるチキンなボク。
( ^ω^)「小さい頃、僕とプーンはよくこうして手を繋いでこの裏山に遊びに来てたんだお」
( ´;゜;ё;゜;)「え!? いやっ、それはまぁ……覚えてる、けど」
( ^ω^)「懐かしいお」
 ブーンは嬉しそうに繋いだ手をぶんぶんと振った。



12: ◆NoxMiNDgA2 :2006/10/19(木) 22:19:28.32 ID:qynpSQBL0
  
( ^ω^)「あの頃は楽しかったお。プーンと遊んだ思い出、ここにはいっぱいあるお」
 何を考えているんだこいつは。
 もしかして、ボクの命を狙っている訳では無いのか?
( ^ω^)「僕は大人になっても、子供の頃の純粋な気持ち、忘れないお」
 そんなの、ボクだって忘れない。
 ブーンは初めてできたボクの友達なのだ。
 と言うより、ボクにはブーン以外の友達は居ない。できない。
 ブーンだけだった。ボクと仲良くしてくれたのは。
 そんなブーンとの思い出を、忘れられるはずが無いじゃないか。



14: ◆NoxMiNDgA2 :2006/10/19(木) 22:21:53.61 ID:qynpSQBL0
  
 頂上に着いた。
('A`)「疲れた……」
( ^ω^)「兄ちゃんは相変わらず運動不足だお。プーンは疲れてないかお?」
( ´;゜;ё;゜;)「平気」
 ボクは毎日の尾行で鍛えているからね、と言おうとしたけどやめておいた。
( ^ω^)「プーン、見るお。綺麗な夜景だお」
 ブーンは町を指した。
( ^ω^)「この景色も十年前と何も変わってないお」
 知るか。別に、景色なんて見たって何の得も無い。
( ^ω^)「プーン、大人になろうお」
( ´;゜;ё;゜;)「だからそれ何だよ大人って」
( ^ω^)「働こうお」
( ´;゜;ё;゜;)「無理だし」
( ^ω^)「大人はみんな働いてるお。働かなくても許されるのは子供や学生だけだお。ニートはいくないお」
 ブーン、お前までそんな事を。
 説教なんか聞き飽きた。



15: ◆NoxMiNDgA2 :2006/10/19(木) 22:24:42.76 ID:qynpSQBL0
  
( `;゜;ё;゜;)「人事だと思って、簡単に言うなよ!!」
 ニートが良くない事ぐらい、本当はボクだってずっと前から気付いていたさ。
 アルバイトをしようと思った事もある。
 でも、どこへ行っても何度面接をしても落とされた。
 人と会うたびに気持ち悪がられて、嘲笑われて、そんなのボクには耐え切れない。
( ´;゜;∀;゜;)「ボクを雇ってくれる所なんてどこにも無いしwww」
( ^ω^)「あるお」
 ブーンは笑顔を崩さずに、言い切る。
 うざってぇ。何も知らない癖に。
 お前だって本当はボクを見下しているんだろ? 優越感に浸るのは楽しいもんな。



16: ◆NoxMiNDgA2 :2006/10/19(木) 22:27:18.08 ID:qynpSQBL0
  
( ´;゜;∀;゜;)「どこにあるんだよ、ボクみたいなのが働ける場所がwww言ってみろよ、え? 口ばっかし君?」
( ^ω^)「僕と一緒にコンビニで働こうお」
( ´;゜;ё;゜;)「え……」
( ^ω^)「僕からも店長に頼んでみるお。プーンなら、きっと働けるお」
 ブーン、お前はその笑顔の裏で何を考えている?
 いや、分かっているよ。お前は引き立て役が欲しいんだろ?
 だからボクに優しくしてくれるんだ。
 それ以外に、ボクと一緒に居て得する事は何も無いもの。
 この偽善者が。
 でもいいんだ。ボクは全然気にしていないから。人間なんてみんなそういうものだろうしね。
 人間関係は損得感情無しでは成り立たない。



17: ◆NoxMiNDgA2 :2006/10/19(木) 22:29:32.86 ID:qynpSQBL0
  
( ´;゜;∀;゜;)「お前なんか信用出来ねぇよ。どうせ口先だけの癖にwww」
( ^ω^)「そんな事無いお」
( `;゜;ё;゜;)「嘘つけ!!」
( ^ω^)「僕はプーンを……友達を、助けたいんだお」
( ´;゜;ё;゜;)「と……」
 友達だと? 今更そんな言葉で騙されるものか!!
 そう言い返したいのに、徐々に嗚咽が込み上げてきて、声にならなかった。
( ^ω^)「また昔みたいにプーンと仲良くしたいお」
 涙が溢れ出して止まらなくなった。
 滲んだ夜景がきらきら光って、綺麗で、綺麗で、とても綺麗で、ボクは胸が苦しかった。



18: ◆NoxMiNDgA2 :2006/10/19(木) 22:31:25.06 ID:qynpSQBL0
  
( ´;゜;ё;゜;)「で、でも……でも、変われるかな。こんな、ボクが……」
('A`)「変われるさ」
 震える声で呟くボクに、ドクオさんが言う。
('∀`)「俺だって変われたんだからな」
 ドクオさんは、にっ、と笑ってボクの手を強く握った。
( ^ω^)「大丈夫だお」
 ブーンもボクの手を包み込むように握る。
 何だかボクの心が浄化されていくかのようで、晴れ晴れとした気分だった。



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