( ^ω^)変わった人達のようです
- 73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/24(水) 21:21:11.06 ID:CcPdhQurO
それは、誰も愛さない彼女の話。
それは、僕の愛した彼女の話。
それは、挟み込まれた彼女の話。
彼女は彼女を僕から奪い、他に何を求めるのでしょうか。
『みっつのひとつ。』
始まりは、三人の関係。
- 75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/24(水) 21:24:02.01 ID:CcPdhQurO
ぱたん
かちゃん。
僕は何を考えるでもなく、ただ背筋に未だ感じるぞわぞわを持ったまま、少しだけ移動しました。
3と書かれた扉の前に立ち、僕は深呼吸をします。
この扉の向こうには、彼女がいるからです。
かちゃ。
- 77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/24(水) 21:27:09.42 ID:CcPdhQurO
ζ(゚ー゚*ζ「あ……内藤さん」
( ^ω^)「……デレちゃん、こんにちはだお」
薄茶の巻き毛を揺らして僕を見る彼女は、ベッドで膝を抱えていました。
その隣に寝転がる彼女の姉は、眠る様に目を瞑っています。
僕はその柔らかそうな金色の巻き毛を見つめて、視線を外してドアを閉めます。
ζ(゚ー゚*ζ「内藤さん、どうぞ……何もありませんけど、座ってください」
( ^ω^)「……有り難う、だお」
少し戸惑いがちに話す彼女はへなりと笑って、僕は促されるがままに椅子に座ります。
ぎこちない笑顔。
少し俯く彼女は、横たわる姉を見て、笑顔に含まれた戸惑いを濃くしました。
- 79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/24(水) 21:30:07.53 ID:CcPdhQurO
ζ(゚ー゚*ζ「あの、内藤さん…………どうしたんですか? ……その、いきなり……」
( ^ω^)「……話を、聞きたくて」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
( ^ω^)「なんであんな事をしたのか……」
ζ(゚ー゚*ζ「なんで、こんな事をするのか」
( ^ω^)「聞かせてもらえる、かお?」
ζ(゚ー゚*ζ「……内藤さんもご存じの事ばかりだと、思います……それでも、よろしければ……」
( ^ω^)「…………お願い、するお」
ζ(゚ー゚*ζ「……分かりました、分かりづらいかも、知れませんが……」
( ^ω^)「それでも、お願いするお」
ζ(゚ー゚*ζ「はい……」
始まりは、三人の関係の変化だった。
- 80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/24(水) 21:33:10.02 ID:CcPdhQurO
彼女らは双子でした。
良く似た、可愛らしい双子でした。
気が強く、誰に対してもはっきりと物を言うしゃんとした姉。
少しばかり気の弱い、控えめで姉の後をついて歩く妹。
二人には幼馴染みの男が居て、その男は姉が好きでした。
そして、妹も姉が好きでした。
ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃんはとても綺麗で、可愛くて、私には無い物ばかり持っていました。
私はそんなお姉ちゃんが大好きで、尊敬していたんです」
幼い頃から三人は良く一緒に遊び、話し、男が姉をからかい、すぐに熱くなる姉、その姉を宥める妹。
その関係を維持したまま、時は流れて三人は高校生になります。
それでも暫くは変わる事の無かった関係。
歳を重ねても、いつもいつも、変わらずに居ると。
そう、思っていたのです。
- 82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/24(水) 21:36:10.67 ID:CcPdhQurO
けれどある日、男が姉に好きだと告白をしました。
姉は困った顔をしましたが、照れた様に笑ってその申し出を受けたのです。
妹がそれを知ったのは、数日後。
ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃんに恋人が出来たと知った時は、驚きました。
もちろん祝福をしようと思いましたけど、けど、何も言わずに恋人を作って、お姉ちゃんからは何も言わなくて……。
何だかよく分からないけれど、凄く……寂しかったんです」
妹は、姉と男が二人で並んで歩く姿を見ていると、どうしようもない孤独に苛まれました。
幸せそうに笑って歩く二人が羨ましい。
けれどその羨ましいと言う感情は、どちらに感じる物なのか。
恋人同士と言う関係にか、姉にか、それとも、男に、か。
ζ(゚ー゚*ζ「ずっとずっと考えてました、二人が歩く後ろを、数歩引いて。お姉ちゃんの笑顔が寂しくて」
- 85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/24(水) 21:39:28.62 ID:CcPdhQurO
そんな事ばかり考えていたある日、夜中に目の覚めた妹は何かを飲もうと部屋を出ました。
廊下を歩いていると、姉の部屋から光が漏れている事に気付きます。
ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃんが夜中に起きてるなんて珍しいと思って、覗いてみたんです」
ドアの向こうには、膝を抱えて横たわる姉の姿。
その手には何かが握られていて、妹にはそれが何か分かりませんでした。
けれど姉が手をそっと開き、ころりと転がり落ちる小さな何か。
それは、細く小さな指輪。
ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃんは、指輪を何度も拾って転がしてを繰り返してました。
私は何をしてるのかよく分からなくて、お姉ちゃんは虚ろな目をしてたから、覗くのをやめて部屋に戻ったんです」
小さなピンクの石がついた、可愛らしい指輪。
妹がその正体を知ったのは、翌日でした。
- 86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/24(水) 21:42:04.16 ID:CcPdhQurO
ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃんの右手に、薬指に、あったんです……その、指輪が」
指輪をつけた姉と、それを喜ぶ男。
二人の後ろ姿に、指輪の意味が分かりました。
あれは、男が姉に渡した物。
つまり、二人は
ζ(゚ー゚*ζ「指輪を渡す様な関係に、なってしまったんだ、と…………それを見ていたら、なんだか胸が、気持ち悪くなりました」
理解不能なもやもや。
胸に抱えた暗くて重いそれをどうすれば良いのか分からなくて、妹は二人の背中から、また、離れて行きます。
何日も、何日も
妹の中にたまったもやもやは無くなる事は無く妹の中に存在し続けました。
無くなるどころか肥大して行くもやもや。
妹はすっかりふさぎこみ、姉を見る事すら躊躇う様になりました。
- 88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/24(水) 21:45:06.51 ID:CcPdhQurO
ζ(゚ー゚*ζ「それと……ああ、ある時リビングに行ったら、お姉ちゃんがソファで寝ていました」
制服のまま横たわる姉は、しなやかな白い足を投げ出して眠っています。
整った顔立ち、やわらかな巻き毛、長い睫毛、形の良い、唇。
その姿はひどくひどく美しく、妹は姉の寝顔に見とれながら、少しずつ身体を動かして。
姉に、覆い被さりました。
ζ(゚ー゚*ζ「綺麗でした……すごく、甘い匂いがして……お姉ちゃんは、きれいなんだなあ、って……」
姉に覆い被さった妹は、躊躇う事無く、唇を重ねました。
少し弾力のある柔らかさ、心地よさ。
ふわりと鼻をつく姉の匂いは、とても優しくて華やかでした。
『デ、レ?』
唇を離したその瞬間、洩れる声。
- 90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/24(水) 21:48:40.37 ID:CcPdhQurO
姉は驚いた顔で間近にある妹の顔を見つめていました。
その姉の表情を見た妹は、はっとして一瞬だけ身を引きましたが、不意に動きを止めて。
ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃん、驚いた顔も、きれい…………色んな顔が、見たくて……私は、お姉ちゃんを貪りました」
二人以外は誰も居ない家。
腕を押さえつけて、服を脱がせて、小さな胸を覆う下着を剥ぎ取って。
白い太ももを撫でながらスカートの中にするすると手を入れて、下着越しに触れて。
頬を、鎖骨をぬらりと嘗めました。
首筋に、乳房に優しく噛み付きました。
内腿へ、脚の付け根へ指先を動かして。
妹はただ貪欲に姉の表情を楽しみました。
姉の身体を犯しながら。
ζ(゚ー゚*ζ「私、気付いたんです……私が好きなのは、お姉ちゃん…………ただ、お姉ちゃんが好き……」
- 91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/24(水) 21:51:19.77 ID:CcPdhQurO
ただただひたすらに身体を弄ばれていた姉は、ろくな抵抗も出来なくて。
荒い息と虚ろな目を妹に向けて、問いました。
『私が、嫌い?』
ζ(゚ー゚*ζ「とんでもない、とんでもないんです。私はお姉ちゃんを嫌う様な事は絶対ありません。
だから私は言ったんです、お姉ちゃんの薬指を噛むのをやめて」
虚ろな目をしてぐったりとしている姉の頬に貼り付いた巻き毛を払って、妹は、にっこり。
ζ(゚ー゚*ζ「私が好きなのはお姉ちゃん、お姉ちゃんが好き、きっとずっと昔から、私はお姉ちゃんが好き、誰にも渡すものか」
口許にだけ浮かべた笑みをそのままに、妹は姉へと告げました。
姉の表情を見ていると、胸のもやもやは消えていった。
姉に触れていれば消えた。
ああ、もしかして、これは恋ですか?
姉に抱いたこれは、恋だったのですか?
- 92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/24(水) 21:54:06.02 ID:CcPdhQurO
翌日から、妹は己の感情を隠す事を止めました。
姉と男が並んでいるならば、そこに割り込んで姉の手を握り。
姉が男と出掛けて帰ってきたなら、その場で姉の服を脱がせて。
姉に男が寄り添いあって居るのなら、
男を殴って、姉の側から引き剥がして。
妹の男を見る目はひどくひどく冷たくて、姉が見ていようが気にする事もなく殴って、蹴り上げて。
ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃんの隣は渡さない、恋人だなんて許さない。
私は、嫉妬していました。
今まで何の躊躇いもなくお姉ちゃんの横を陣取っていた、あなたに」
流石の男も妹がおかしいと気付いたのか、姉にその事を問いただしました。
けれど姉は何も答えず、小さく笑って、ごめんなさい。
それでも男は、姉を守らなければならないと言う感覚に陥りました。
どうすれば妹は目を覚ますのか、そんな事を考える男の耳に届いた言葉。
『ねぇ、別れよう』
姉は小さな笑顔を崩す事なく、そう、囁いて。
- 93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/24(水) 21:57:07.88 ID:CcPdhQurO
『私はあなたを男として好きになれるのか分からない、それでも良いのなら、こんな中途半端な女で良いのなら、お付き合いします』
姉が男の告白を受けた時の、言葉。
それはあまりにも不安定で、姉はもう崩れ落ちそうなくらいで。
にこりと笑った男は、姉の頭を撫でて頷きました。
突然切り出された別れを、受け取って。
ζ(゚ー゚*ζ「ざまあみろ。
真剣にそう思ったあの時の私は、最低でした……でもこれで、お姉ちゃんを私の物に出来る……その気持ちでいっぱいで……」
それでも薬指の指輪を外さなかった、姉。
指輪を返そうとして、男に首を振られた姉は、小さく泣いてその指輪を、薬指に。
決して外す事のない指輪は、姉を求める妹にとってひどく邪魔な物でした。
ζ(゚ー゚*ζ「やっと解放されたのに、私のものに出来るようになったのに、あの指輪があると、あなたの顔が浮かんでくる。
邪魔、でした」
- 96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/24(水) 22:01:00.24 ID:CcPdhQurO
男は姉を友達として接し、妹は姉を女として接しました。
なんともないと言う様な顔をして笑う男、ただひたすらに姉を求めて笑う妹。
もう、限界だったのでしょう。
ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃんの部屋に入ったら、そこにはお姉ちゃんがぶらさがっていました。
だらん、と舌を出して、目を飛び出させて……」
首を吊った姉を下ろした妹は、呆然として姉の姿を見詰めます。
あんなに美しかったのに、あんなに愛らしかったのに。
この顔は、姿は、いったい。
変色したた姉は、ぱんぱんに膨れた顔は、どこも、美しくはありませんでした。
妹は必死になって姉の美しい部分を探します。
すると見つけた、一枚の紙。
- 97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/24(水) 22:03:51.62 ID:CcPdhQurO
『私はきっと、死んでいるのでしょうね
肺の中に水がたまる様な感覚は、
私を少しずつ少しずつ崩した。
しょうがなかった、
悲しかったけれどそう思います、
愛してくれてありがとうデレ、
世界の誰よりも大好きでした。
内藤、ごめんね、
いっぱい、沢山の思いをくれたのに。
桃色の石がついた指輪、
嬉しかった、すごく
いいのかなこんなの貰ってって聞いたら
優しく、内藤は私の頭を撫でたね
最初にくれたプレゼント、
喜んでくれたかなって聞いたね、
嬉しかったんだ、実は、すごく
何言ってるの、当たり前でしょ、なんて、
来年もまた一緒に過ごそうって言ったのに。
ごめんなさい、二人とも』
- 101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/24(水) 22:07:08.00 ID:CcPdhQurO
妹は手紙を握り潰して、姉の薬指を見下ろします。
近くにあったデザインカッターを取って、姉の薬指を、ごりごりごりぼき、ぶちん。
他の部位よりも美しいそこを胸に抱いて、妹は姉の部屋を出て行きました。
ζ(゚ー゚*ζ「これで、おしまいです」
( ^ω^)「どうして、そんな、」
ζ(゚ー゚*ζ「綺麗なお姉ちゃんが好きでした、だからお姉ちゃんの綺麗だったところがほしかったんです。
双子の姉を愛しちゃいけないなんて事、ありませんよね?」
( ^ω^)「だから……」
ζ(゚ー゚*ζ「だから、指を切りました。
お姉ちゃんは綺麗でなきゃいけないから、綺麗なところを引きちぎって、胸に抱いていたんです」
( ^ω^)「…………」
ζ(゚ー゚*ζ「内藤さん、私は」
( ^ω^)「もう……失礼、するお」
- 102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/24(水) 22:10:09.40 ID:CcPdhQurO
ζ(゚ー゚*ζ「……分かりました」
( ^ω^)「お邪魔しましたお……」
ζ(゚ー゚*ζ「……内藤さん、私は─────」
あなたを殺したい。
ドアを閉めるより早く舞い込んだ彼女の言葉に、ドアを閉めた僕は泣き崩れました。
どうして、どうして
そんなに僕が嫌いだったなんて
その場で膝を抱えて泣きじゃくる僕は、ただ嗚咽を堪えるだけで、精一杯、でした。
『みっつのひとつ。』
おしまい。
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