( ^ω^)ブーンは、春がくるたび戸惑うようです

2: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 02:30:07.99 ID:BedZdu/K0
   ;;;   :::: ...        ::::: ::;;;:::.....
;;;; ,,, 、、   ,i'            :;;::.,,:  丶;;:;;:
      ヾヾ              ゞ  ```
ゞゝ;;;ヾ  :::,r'  `  `          i、;;;ヽ;;;  ヾ;;;
i;;;::::′~^        `    `        ;;; ″~  ~
ii;;::iヽ /      `               ゞ:,,,:: ヾ 〃::;:
iii;::i `           `     `          ii;;;;::: ::   
iii;;::i    `C「きっかけ、はじめました」     iii;;;;::: ::
iiiii;;::i      `               `      iii;;;;::: ::
iii.,ii;;:i,                          iii;;;;::: :::
iiiii゚i;;:i            `        `      iiiii;;; :::::
iiiiiii;;::i                         ||iiii;;;;::::
iiiiiii;;::::ヽ;;,,';;"'';;";;""~"`"`;.";;""'"~"`~"'';;,,,   /iiiiii;;;;o;;;
iiiiiii;;::;';;"                    `;;/i:ii iii;;;;;::::



3: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 02:31:28.76 ID:BedZdu/K0
カポーン


だだっ広い、流石さん宅の浴場。

立ち込める湯気、降りかかる温水に打たれながら。
雨のようなシャワー音に包まれ、僕はそっと眼を閉じた、
ざーっと言う音が、頭へと直に響いてくる。

ああ、髪を伝って、身体を流れていく暖かさが、とても気持ちいい。
お風呂に入るより、僕はこうしている時間が好きだ。

どんなに小難しい事を考えても、一緒に流れてしまうから。

…?

その時、背後で物音がした。

小さく、カラカラ、と扉の開く音がした。


「……くすくす」

肌寒い空気がすうっと流れて、確かな人の気配。
続いて、押し殺したような笑い声も聞こえた。



6: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 02:33:17.28 ID:BedZdu/K0
そのまま、僕は身じろぎせず、素知らぬふりをする。

从・∀・ノ!リ「わっ、なのじゃ!!」

Σ(; ω )「ひいいっ!?」

(;^ω^)「なんだ、妹者ちゃんかお、ああびっくりした……」

うつむいた頭をあげて、髪と、顔面を流れる水滴をはらい、

首だけ後ろを向けば、そこには予想通り、一糸纏わぬ妹者ちゃんの姿、
そして、僕と目が合うやいなや、細い腕を首にまわして、背中にしがみついてきた。

ぺたん、と肌と肌が衝突して、背を伝う温水がぱちゃん、とはじかれた。
そんな少女の柔肌は、若干ひんやりしていて、ぞくりとくる。
けど、すぐにその奥から、ぬくもりがやってきた。

その身体に、ふくらみはまるで感じないが、ただただ柔らかくて、軽い。

僕の胸元で交差する細腕は、張りのある健康的な素肌を見せる。
水をも弾き、お風呂の曇った灯りを受け、まぶしいくらいだった。



9: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 02:35:38.97 ID:BedZdu/K0
从*・∀・ノ!リ「ふっふっふ、背中ががらあきじゃ」

右肩の真上にある、ほがらかな笑顔に、笑顔を返して。

おいでおいで、と手招きすれば、僕の前にやってきて、ちょこんと座った。
まるで犬のようだ、と思いながら、髪をしめらせ、シャンプーをつける。

こうして、頭を洗ってあげるのも、すでにパターンのなってきていた。

……いや、頭だけだからね、ちなみに。


从;-∀-ノ!リ「うー…」

( ^ω^)「はい終わりー」

从*・∀・ノ!リ「やっぱりナイトーがうしろに居ると、目をつぶっても怖くないのじゃ」

( ^ω^)「おっお、嬉しいこと言ってくれるじゃないの」

从・∀・ノ!リ「おれーに、背中を洗ってしんぜよう!」

( ^ω^)「ありがとうだおー」



10: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 02:37:23.78 ID:BedZdu/K0
けれど、実は、こうして一緒にお風呂に入っていると、いつも思う事がある。

今は恥じらいもなく、こうして一緒に入ってるけど、
そんな少女も、いずれ成長して、そうもいかなくなるだろう。

从#・∀・ノ!リ「でりゃりゃりゃりゃーーー!!」

( ^ω^)(うーむ…)

…何となく、世の中のお父さんの寂しさが、わかった気がした。
そのうち、きたないーとか言われるのかなぁ、泣けるね。

ふと鏡を見れば、映るのは、僕の背中で少女がせわしなく動く姿。
ついでに自分の姿もある、そして、見比べてみて思うのは。


(;^ω^)(ずいぶん、髪のびちゃったなぁ……)


ということ。

改めて見直すと、かなり伸びまくっていると気付く。
後ろ髪は肩についちゃってるし、前髪はおろしたら、目を覆いそうだ。



12: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 02:39:22.41 ID:BedZdu/K0
まあ、これも放浪時代の痕跡、だったりするんだけど。
危うく、ホームレスみたいになってしまう。
そういえば、髪伸びるの早いとエロいって言うよね、そうなのかな。

いや、とにかく、はやいとこ切りにいかなきゃ……。
近くにあるかなぁ、風呂から出たら、聞いてみよう。


……。



(´<_` )「美容室でよければ、俺の行きつけがあるけど?」

( ^ω^)「あ、じゃあそこで」

(´<_` )「おk、いつにしようか」


というわけで、さっそく聞きにきました。

弟者さんが、連れて行ってくれる事になった、相変わらずのいい人っぷりだ。
ヲタとは言え、お洒落には気を使ってると、自分で言うだけあるなぁ。



14: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 02:41:41.21 ID:BedZdu/K0
あ、美容院じたいは、さすがの僕も、ちゃんと行った事はあるよ。

……一箇所限定だけどね。

いくつか店はあったけど、初めての場所に行く度胸はなかったから。

だって、初めての場所ってさ、聞いてくるじゃない。

担当の希望はありますか〜とか、どんな髪型にするんじゃーいとか、
そんなこと言われても…任せます、としか言えなくて、その、困りますよ。


(´<_` )「今度の土曜でいい?」

( ^ω^)「はいですおー」

てなわけで、僕の都会・美容院デビューの、日取りが決まりました。
果たして、その場所には、何が待ち受けているのか、期待は高まる。

ん? そういえば、美容室、しつ、なのか?

……むむ、なんか違うんだろうか。



15: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 02:43:33.39 ID:BedZdu/K0
( ´_ゝ`)「ときにブーン、ちょいと来ておくれ」

( ^ω^)「?」

話が終わって、ちょっとした疑問に頭をひねっていると、
同じ部屋にいた兄者さんが、タイミングを見計らったように、僕を呼んだ。
そして、机に置かれた、ノートパソコンを指さした。

何か変なものでもあるのか、と思いきや、
画面に映っていたのは、メッセンジャーとかいう画面。

どうやら、チャットをしているらしい。
もう、数時間にわたる会話のログが、ずらーっと続いている。

読んでも、意味がよくわからない。
それにこういう、プライバシー的なのを覗くのは、よくないと思う。

けどパッと見た感じ、なんだろうね、この。

(ぁ

(マテ 

みたいな、自分に突っ込みをいれるのは、面白いと思った。



16: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 02:45:22.81 ID:BedZdu/K0
テレレン


その時、なんか変な音が鳴った。
なんでも、これはメッセージを受信した音らしい。

(;^ω^)「で、これが一体なんだお?」

( ´_ゝ`)「ふふふ……見ていたまえ」


そう言うと、兄者さんがキーボードを軽快に叩く。
名前を変更したようだ、しかもそれ、僕の名前ですよ。

あ、しかもそのまま発言しちゃった。
いいのか、これ…。

内藤 の発言:よろー


(;^ω^)「いいのかお?」

( ´_ゝ`)「イーンダヨー」



17: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 02:46:50.03 ID:BedZdu/K0
テレレン


( ^ω^)「あ、返事がきたお」



シャナ の発言:え?



シャナ の発言:ちょ

シャナ の発言:ちょっと待ってくだs



テレレン、テレレン、テレレン


すると、連続で受信音が鳴りまくる。
表示される文面は、ひどく慌てているように見えた。
何が起きてるのかわからない、兄者さんは何かふきだしてるし。



18: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 02:48:44.92 ID:BedZdu/K0
シャナ の発言:え、ほんとに・・・?

内藤 の発言:ほんとですよー

シャナ の発言:うそ、え、あの・・・いつから?

内藤 の発言:たしか・・・


内藤 の発言:よるよルートいいですよね、萌え死ぬぅうう(*´Д`)ハァハァハァ(死


内藤 の発言:くらいからですねー


シャナ の発言:・・・

シャナ の発言:・・・・・・

シャナ の発言:いやああああああああああああああ

シャナ の発言:くぁw背drftgyふじこlp;@:「



19: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 02:52:00.29 ID:BedZdu/K0
::(*´_ゝ`)::「腹がwwwwwこwwわwwれwwるwwwwww」

(´<_`;)(かわいそうに…)


(;^ω^)「???」

うーむ、謎だ…。

けど、そういえば、シャナってどこかで聞いたような…。
どこだっけ…うーん…思い出せない……。

(;^ω^)(……なんかの文庫本、だったかなぁ)


ちなみにその後、兄者さんは『ジョナサンにて.jpg』というファイルを送信していた。
その直後、先を上回る勢いで、メッセージが一気に受信されていた。

何を送ったのかを聞いてみたけど、教えてくれなかった。
けど、そのうち分かるとは言っていた、本当かなぁ。



……。



20: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 02:54:20.05 ID:BedZdu/K0
<コケコッコーー


( ^ω^)「………」


おはようございます、朝です。

どうやらまた、今朝もどこかで、彼が叫んでいます。

僕はなかば、反射的に目を覚ました、目覚まし時計は、まだ鳴っていない。

一応、確認の為にベランダへ出ると、あの男は、別の家の屋根に居た。
なんだか、放っておこう、という気にさせる、朝の風景だった。


( ^ω^)「さて、学校いくお……」



……。



21: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 02:56:08.01 ID:BedZdu/K0
日常的な、気だるくも、落ち着いた朝の空気の中。
学校へ到着すると、下駄箱を確認した、上履きがなかった。

どうやらまた、カバンの中に、入れっ放しのようだ。

やれやれ、僕ってばうっかりなんだから。

…ん。

…あれ、無いぞ。

もっと奥だろうか、それとも横の隙間に…。


(;^ω^)「……あれ…?」

おk、ちょっと落ち着こう。
いくらなんでも、上履きだよ、鞄に入ってたらわかるべさ。

鞄には入ってない、下駄箱にも入ってない。
あ、あれれ〜。



22: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 02:58:48.47 ID:BedZdu/K0
ぴょんとジャンプして、下駄箱の上を見る。

あ、あった!
と思ったら、違った、あれ、名前が書いてない。

僕のは、ちゃーんと名前は書いてありますし。


つづいて左右確認、キョロキョロ辺りを見回して、隣チェック。

そして、足元もちゃんと探す、灯台下暗しを信じて、
けど、無かった、まあコトワザなんて、所詮そんなものだよね。

ついでに下駄箱のまわりも、ぐるっと見てまわる。

 【 私はロリコンです こども大好きです だから手は出さない 】
       ! YES、ロリータ NO、タッチ !
         マナーを守って楽しいロリータ


と書かれたポスターが目についただけで、やはり無い。
僕のじゃない上履きなら、沢山あるんだけどなぁ。



24: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 03:02:16.41 ID:BedZdu/K0
(;^ω^)「……うーん、と」

さて、どうしよう、上履きを失くしちゃった、てへっ。
僕は、どうしようもなく、照れくさそうな仕草で、下駄箱前で立ちすくむ。


こんな時は、どうすればいいんだろう。

警察だろうか…でも、たしか、現行犯じゃないと駄目なんだよね。
だから、上履きを盗んだその瞬間に、捕まえないといけない。

それは、なかなか難しい注文だ、なにせ、既に盗まれてるんだから。

そんな法への憤りを感じつつ、僕は再度さがすべく、身を屈ませた。

もしかしたら、どっかに、落ちているかもしれないし。
それに、こうして、匂いを辿れば、見つかるかもしれないし。

臭ズ、って言うくらいですし…って、このネタ米仙人のじゃん。



25: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 03:04:32.33 ID:BedZdu/K0
……やっぱり、昨日の米仙人の呼び出しが、あれだったのかなぁ…。

(;^ω^)「はぁ……」

僕はしゃがんだまま、しょんぼりと溜め息をついて、
ひたすら地面に、の、という文字を描いた。

あれ、告白とか、そんなのだと思われてそうだもんなぁ。

実際は、ただの田植えの手伝いを、お願いされただけなのにー。
まあそれ以外にも、クラブ活動の勧誘もされたけども。

米作りの活動をする、名を、米米クラ部。

部員は彼女一人らしい。

手伝いはもう、あの流れで、しょうがないからおkしたけど、
クラブ活動のほうは、丁重におことわりした。

特に表情は変わらなかったけど、なんか一言だけ「…そう」と言ってた。
…思い出すと、まだ、ちょっと罪悪感があったりする…。



26: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 03:06:48.44 ID:BedZdu/K0
けど、まあしょうがない。
ちょっとした手伝いはまだしも、部となれば話は別だ。

ていうか、思い出にひたってる場合じゃないだわさ。
僕は今、消えた上履きを探しているのだわさ。

もっかい、床にへばりつく。


(;^ω^)「やっぱり、落ちてるわけない…かお」


そう、呟いた時だった。

なんと、僕の目の前に、上履きが、落ちてきたではないですか。


( ^ω^)「お?」

あ、しかもこれ、僕の上履きだ、名前が書いてあるし。
ていうか、今どっから降ってきたのこれ。



27: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 03:08:58.06 ID:BedZdu/K0
今、どう考えても、


(;^ω^)(上から…降っ……て)

僕はいちど見上げて、


(*゚∀゚)

冷たく見下ろす瞳に、視線がぶつかって、


(; ω )「……」

また、床を見た。



(*゚∀゚)「……おい」

そんな僕へと、静かに、囁くような声が投げかけられた。



29: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 03:11:17.69 ID:BedZdu/K0
う……と内心ごちりながら、おそるおそる、顔をあげてみれば、

(;^ω^)「……はい、ですお」

そこには、つい先日、出会ったばかりの猫さんが居た。

えーと……うん、考えるまでも無いとは思うけど。

今しがた、天井の方向から上履きが降ってきて、
今しがた、見上げた先で猫さんが、僕を見下していたなら、

それは。


(;^ω^)「お、はようございます……お」

(*゚∀゚)「ああ、おはよう……2−D、内藤ホライゾン」


えーと、なんでしょう、この無駄に張り詰めた空気。

猫さんは口調も穏やかだし、笑ってるように見えるけど、

なんか、目が笑ってないんです。



30: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 03:13:17.35 ID:BedZdu/K0
(*゚∀゚)「それ…お前ので、あってんだろ?」

猫さんが、おそらく、僕へと放り投げた物を、指さした。
それは、僕の目の前で、乱雑にころがる、上履きたん。


(;^ω^)「は、はい…間違いないですお」

な、なんで猫さんが僕の上履きを……?
はっ…まさか、そういうことなのか…?

じゃあもしかして、現行犯逮捕のチャンスですか?


よ……よし…。


(*゚∀゚)「ん?」

僕は、そっと猫さんの手を取った。
というか、手首を掴んだ。



31: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 03:15:49.36 ID:BedZdu/K0
(*゚∀゚)「……」

(;^ω^)「……」


沈黙、いきなり掴まれた割に、猫さんは全然反応をしめさない。
それどころか「んだよ…」みたいな目で、じとーっと見てくるばかり。

ちなみに、背丈に差があるので、猫さんは上目遣いに僕を見る。

淡い藍色の瞳は、一点の曇りなく。
吸い込まれそう、とはよく言ったものだ。

そのままで居ると、猫さんは目をそらし、肩をすくめて、首をかしげた。
髪の毛がふわりと揺れて、コンディショナーの香りが、ふわりと届く。
しかも、その斜めのポーズのまま、ちらりと上目遣い流し目。


あ、今なんかキュンとした、キュンキュンヾ(゚∀゚)ノ!

猫さんかわいいよ猫さん、ハァハァ……。



33: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 03:18:22.05 ID:BedZdu/K0
胸きゅんついでに、手が汗ばむのを感じて、こりゃいかんと離した。
するとやれやれ、といった感じで、猫さんはもう一度、僕を見据えた。


(*゚∀゚)「何なんだよ……」

あれ、何で今、手を掴んでたんだっけ……?
まあどうでもいいか、そんなことは。

あー、きっと、お礼を言おうとしたんだな、そうに違いない。


( ^ω^)「届けてくれて、ありがとうございますお」

(*゚∀゚)「ああ…まあ見つかって、よかったな
    ずいぶんと熱心にまあ、それ、探してたみてーだし?」

(;^ω^)「え…い、いえ、別に探してたとかいうわけではなくて」

(*゚∀゚)「…ほう?」

(;^ω^)「ほら、この学校広いですから、その…!」

何故か、僕は言い訳していた。



34: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 03:21:09.37 ID:BedZdu/K0
いやまあ…言い訳になってるかは、さておき。

何ていうか、ほら、僕って男の子ですし。
ここで情けなく「おろろーんよかったよおおお」なんて言えないですし。

それに、苛めがどうとか、言ってたし、なんか、知られちゃいけない気がする。

(;^ω^)「そう、迷子に…!」

(*゚∀゚)「……迷子?」

(;^ω^)「え、ええ! ほら、上履きちゃん、とくに左!
       ちゃんと、猫さんにお礼を言いいなさいお!」

とにかく、この場は適当にごまかして、切り抜けよう。
僕は両手でつまんだ上履きを、くいっと傾けて、ぺこりとお辞儀をさせつつ。


( ^ω^)『「ねこさん、ありがとう」』

(;*゚∀゚)「なに馬鹿なことを……ってうおお!? サラウンド!?」

多重音声で、お礼を告げた。
猫さんが、とても驚いた風に僕を見る。



35: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 03:23:16.07 ID:BedZdu/K0
(;*゚∀゚)「おい、ちょ、今なんか、声がだぶってたぞ!?」

( ^ω^)「おっお、実は以前、いっこく堂のバイト経験がありまして…」

こういった腹話術系は、お手の物なのだ。
猫さんは、しきりに「すげーんだな…いっこく堂」と感心していた。


(;*゚∀゚) テカ ソウイウ 物ナノカ?


ふふふ……どうにか誤魔化せたようだ。
人間やっぱり、一芸を持っておくものですね。


( ^ω^)「それじゃ猫さん、また、ですお!」

(;*゚∀゚)「は? お、おい!」

シュタッ、と片手をあげて、僕は駆けだした。
待て、とか制止の声が聞こえたけど、無視した。



36: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 03:26:03.42 ID:BedZdu/K0
無視して、逃げ出した、んだけど。


(#*゚∀゚)「てめぇ、待てってんだろ!」


しかし、回り込まれた。

ていうか速っ……。

やはり小さいから、すばしっこいのか…。


(;^ω^)「…なんですかお?」

(*゚∀゚)「お前、それがどこにあったか、気にならないのか?」

(;^ω^)「いや……ほら、見つかったし、いいかなぁー…なんて…」


正直、あまり聞きたくないのは、本当だった。



38: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 03:28:16.46 ID:BedZdu/K0
だけど猫さんは、僕のそんな想いは気にも留めず。


(*゚∀゚)「あん中だぞ」

どこか、苛立ちを混めた表情で、階段前にある、ゴミ箱を指さした。

……そんな所だろうとは、思ってはいたけど。
はあー……いざ目の当たりにすると、溜め息しか出てこない。


( ^ω^)「…ただの、悪戯だお」

(*゚∀゚)「嫌がらせ、の間違いだろ?」

猫さんは、目を細めて僕を見る。
そういうのが、許せないタイプなのだろうか。
しかし、僕としては、まだ、この程度は許容範囲だ。

けれど、目の前に居る人は、範囲外らしい。


(*゚∀゚)「これが…こういうのが、初めてってわけじゃないな?」



39: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 03:30:11.57 ID:BedZdu/K0
( ^ω^)「初めてですお」

(*゚∀゚)「……」


うーん…困ったな…もう完全に苛められてると思ってるよ、これ。

こうなると、もう何を否定したところで、信じてはくれないだろう、
僕が、我慢してると思われるだけだ。

(*゚∀゚)「話したくない、か…」

(;^ω^)「……いや、えーと…ほんとに、何も無いですお?」

(*゚∀゚)「今現在、あるじゃねーかよ」

(;^ω^)「それはそうなんですが…別にこの程度は、気にしなくても、というか」


あれやこれやと、言い訳をしていると、
不意に猫さんが俯いた、猫耳も元気なくぺたんとした。
そして、ぽつぽつ、と零すように呟いた。


(*。。)「………頼りない…か…?」



40: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 03:32:37.70 ID:BedZdu/K0
(;^ω^)「…え?」

(*゚∀゚)「やっぱ…オレみてーなのじゃ、駄目か?
    こんな頼りない人間には、なにを話しても、無駄か?」

(;^ω^)「いいい、いえ、そんなことは…」


……いや、ちょっと待って…。

何か、すごい、僕が悪いことしてるみたいな、この空気。
これは無いと言うか、卑怯じゃないか…?

そんな悲しそうに言われると……もう、どうしたらいいやら…。


(;^ω^)「えと……い、今は、まだ、本当に大丈夫なんだお」

(*゚∀゚)「……」

(;^ω^)「特に、直接ぐわーっと何されたわけでもないし」

(*゚∀゚)「………」



42: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 03:34:34.10 ID:BedZdu/K0
(;^ω^)「だだ、だからその……つ、次だお、次になにか
       こう…酷い目にあったりしたら、僕から相談しますお…」

しどろもどろながら、僕を見つめる瞳に、言い訳を語る。
何なんだろうね、この状況。

猫さんは、そんな僕の話を聞きながら、
どこか、考え事をするような素振りを見せ、


(*゚∀゚)「…なら」

と、切り出した。


(;^ω^)「…はい?」

(*゚∀゚)「手をだせ」

言われるままに、手を差し出す。
その手を、猫さんが握る、テノヒラに硬い感触。

(;^ω^)「お……? なんだおこれ?」



47: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 03:36:36.35 ID:BedZdu/K0
手渡されたのは、赤色あざやかな、バッジだった。
まるで校章のようなそれには、目いっぱいに文字が彫られている。

なんだこれ、びっぷ、いや……びっぱー…?


(*゚∀゚)「そいつを、肌身離さず持ってろ」

(;^ω^)「えと、くれるのかお…?」

(*-∀-)「……貸すだけ、だ…くれぐれも失くすなよ」

(;^ω^)「はあ…」


ふむ…謎だ…。

しかも、裏側をみると、学校の名前が掘ってあるし。
なんだろう、やっぱり校章っぽいけど、見たこと無いぞ。



52: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 03:38:57.58 ID:BedZdu/K0
(*゚∀゚)「お前、部活は?」

(;^ω^)「え、いえ、何も…」


(*゚∀゚)「そうか、んじゃあ、気が向いたら…」

(*゚∀゚)「いや、いつでもいいから、放課後、中庭に来てくれるか?」

(;^ω^)「いつでもって…?」

(*゚∀゚)「今日でも、明日でも、明後日でもいい…
    だから、気が向いたら、ってんだ」


よくわからないまま、僕は曖昧に返事をした。
猫さんは、それで満足したのか、僕に背をむけ去っていく。

渡されたバッジ、よく見ると、わりと年季を感じるぞ。
……失くさないようにしなきゃ……。



53: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 03:41:13.53 ID:BedZdu/K0
ひとまず、ポケットに入れて、溜め息を一つ。

……あんな風に言われたら、
もう、行くしかないじゃないか、ねえ?

僕はポケットに手を突っ込んで、バッジを弄りながら、
口には出さず、そっと自分に話しかけた。


と、


(;^ω^)「………え?」

その時、僕は、まるで絡まってくるような、強い視線を感じた。
視線の正体はもう、わかっている、今回はすぐに見つけた。

だけど、何故?

見つめ合ったのは、数秒か、もっと短かったか。
やがて、小さな人の群れがやってきて、それを飲み込んだ。

彼が、僕を見る理由だけは、どんなに考えてもわからない。
だから、また僕は、人波に消え往く姿を、ただ、呆然と眺めていた。



55: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 03:47:59.42 ID:BedZdu/K0
思えば……。



僕はこの時、予感していたのかもしれない。

今も、僕の気付かないところで、何かが蠢いていると。



そしてこの一件は、その始まりに過ぎないのだと。



何故ならば、この日をきっかけとして。

僕の。


僕らの心は、戸惑いにあふれ。

すれ違い、彷徨い歩く、変革の日々が待っていたのだから。



              Open your eyes for the falls down Start――――→



59: ◆aYo30Ks4N6 :2008/10/20(月) 03:52:28.86 ID:BedZdu/K0
P.s




  もし、あの頃の自分に言葉を贈れたなら

  僕はこれだけ伝えたい

      覚えていてほしい




             無知は、罪だ



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