ξ゚听)ξバスは走るようです

2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/02/22(日) 22:32:08.18 ID:VKYAoUBw0



  ('A`)は飛び乗るようです



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/02/22(日) 22:34:00.47 ID:VKYAoUBw0

大きく、どこまで伸びているのか分からない壁に囲まれている国。
それに触りながら一周しても扉などといったものは無いと誰かが言っていた。

俺はそこで生まれて、今まで育てられてきた。

この国で生まれ育った人間からしてみたら囲まれているのが普通だ。
みんないつもと同じように動き、暮らしている。

この壁がどうなっているのかは分からないし、知ろうとも思わなかった。
そう、ついこの間までは――――。

「ドクオ」

後ろから声をかけられ、はっとして振り向く。

(´・ω・`)「やあ」

('A`)「・・・ショボンか」



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/02/22(日) 22:36:00.53 ID:VKYAoUBw0

(´・ω・`)「何ぼーっとしてるのさ」

('A`)「別にそういうわけじゃないけどさ・・・」

ショボンは「そう」と呟き俺の隣に座る。
二人で公園のベンチに座っているが会話は無い。

というよりこの前のことが頭から離れなかった。

(´・ω・`)「何か隠してるでしょ?」

ショボンが意地の悪い笑みを浮かべながら聞いてくる。
おれの唯一の友達は勘が鋭い。

今回は俺が顔に出しすぎていたのかもしれないのだが。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/02/22(日) 22:38:00.57 ID:VKYAoUBw0

('A`)「絶対笑わないか?」

ショボンはこくりと頷く。

上を見上げれば灰色。
囲んでいる壁を見ても灰色。

俺は肩をすくめ、ゆっくりと話し始める。
この前起きた出来事を。

とても信じられなかったが、頭から離れないそれを。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/02/22(日) 22:40:00.94 ID:VKYAoUBw0

2日前の深夜、俺は目を覚ました。
この国は夜になると街灯以外の明かりが無くなる。

誰もが建物に入り、次の日まで深い眠りにつくのだ。
だから音は聞こえない、というより音は「無い」。

だけど俺は何かの音を聞いて目を覚ました。
鈍く響くように聞こえてきたそれになぜか興味を覚えてしまい、俺は外に出ることにした。

ぽつぽつとある明かりは道をつくるように光っていた。
まあ、街頭だからあたりまえなのだが。

('A`)「ん?」

唯一聞こえる音を頼りに道を進む。
歩いた先にあったのはバス停。

だが、そこには信じられないものが停まっていた。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/02/22(日) 22:42:00.83 ID:VKYAoUBw0

バスが停まっている。

この時間は誰も家から出ない。
バスだって運行していない時間なのだ。

しかも停まっているバスは本来のものではない。
普段ここらを通るバスは黒に近い緑をした車体に、金色のラインが入ったもの。
だが、目の前に泊っているバスは白い車体に黒のラインが2本入っているものだった。

明らかに異質。

街灯に照らされるそれは不気味な雰囲気を漂わせていた。
だけどなぜだか、怖くない。

('A`)「なんだよこれ・・・」

一歩ずつ近づいてみると、プシュー、という音とともに扉が開く。

(;'A`)「うわぁ!」

情けない声を出しながら尻もちをつく。
そして扉から一人の男が出てくきた。



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/02/22(日) 22:44:00.51 ID:VKYAoUBw0

/ ,' 3 「このバスは外界行き。乗りますか?」

しっかりとした服装の老人に急に訪ねられ、頭に疑問符を浮かべる。
訳が解らなかった。
外界行き?何を言ってるんだ。

/ ,' 3 「あなたはあの壁の向こう側が気になりませんか?」

/ ,' 3 「ここは閉ざされた世界なのです。出てみたいとは思いませんか?」

(;'A`)「え、どういうこと?」

/ ,' 3 「冷静になる時間が必要ですね。あなたは違和感を感じませんか?」

老人は指をさしてみせる。
灰色で、終わりのない壁に向かって。

/ ,' 3 「さて、時間がきてしまいました。近日中にもう一度会うことになるでしょう。
     日付は・・・そうですね――――」

老人は日付を付け足すとバスの中に入っていく。
そしてバスはゆっくりと走り出す。

(;'A`)「ちょっと待て、そっちは」

バスは灰色の壁に突っ込む。
思わず目を閉じてしまったが、音も何もしない。



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/02/22(日) 22:46:00.67 ID:VKYAoUBw0

('A`)「目を開けてみたらバスは無かった、ってお話」

一通り話し終え、ショボンに視線をやる。
ショボンはどんな表情をしているだろうか。

その瞬間だった。

(´゚ω゚`)「寝言は寝て言えくそがっ!!」

(;'A(#)「ぶべらっ」

ビンタが飛んできた。
話せと言ったのはそっちだろうが。

(´・ω・`)「あ、わりぃ。で、また会うときっていつ?」

全く反省の色を見せていないがまあいい。
こいつは俺をよく知っているし、俺もこいつをよく知っている・・・はずだ。

('A`)「それが今日の夜なんですよー」

もう一発ビンタが飛んできた。
痛い。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/02/22(日) 22:48:00.73 ID:VKYAoUBw0

そして、夜はやってくる。
街からは例の如く明かりが消える。

あの後の話し合いの結果、ショボンが俺の家に泊まることになった。
バスが来るかどうかを確かめたいのだそうだ。

ショボンはその程度の気持ちで良い。
だが俺はそれでは駄目なのだ。

灰色の国、ここの外がどうなっているのかがとても気になる。
少し気味が悪いという気もするが、バスに乗ってみようか。

('A`)「おい、ショボン」

かなり眠い、しかし起きていないと。
ショボンに呼びかけてみるが反応は無い。

すでに寝ているようだった。
ああ、畜生、俺も眠く――――。



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/02/22(日) 22:50:01.58 ID:VKYAoUBw0

――――何か聞こえる。

なんだよ五月蠅いな。
こっちは寝てるんだ、静かにするのが常識・・・。

あれ?
音が聞こえ――――。

(;'A`)「おい!ショボン起きろ」

ショボンの体を何度も揺する。
寝るつもりはなかったのに、睡魔には勝てなかったようだ。

(´-ω-`)「なんだよー」

ショボンは目を閉じたまま体を起こす。
バスが来たことを教えると、めんどくさそうにしながらも起き上がる。

(´・ω・`)「来てなかったらただじゃおかない」

とにかく二人で家を出てバス停に向かう。
頼むからいてくれ。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/02/22(日) 22:52:00.54 ID:VKYAoUBw0

(;´・ω・`)「嘘でしょ・・・」

ショボンが息をのむのが分かる。
俺だって最初に見た時は驚いたさ。

白い車体に黒のラインが2本、間違いない、あのバスだ。
それを眺めていると扉から老人が下りてくる。

/ ,' 3 「決まりましたか?・・・そちらの方もお乗りに?」

ショボンは何も言わない、話を信じていなかったのだろう。
だが俺は違う、十分に考えた。

('A`)「乗らせてもらうよ」

(;´・ω・`)「はぁ?何言ってんだよ?」

ここが囲まれていると知ってしまった以上、俺は出てみたい。
あの先に何があるのか。

('A`)「もし何かあったらすぐに戻ってくればさ――――」

俺の言葉を遮るようにして老人が言う、「それはできません」と。

(;'A`)「どういうことだよ?」



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/02/22(日) 22:54:00.88 ID:VKYAoUBw0

/ ,' 3 「正しく言うと可能です。ですがそれは誰もしたがりません」

/ ,' 3 「このバスに乗った人は、この国に居なかったことになります。記憶が消えるのです」

(;'A`)(;´・ω・`)

絶句。
2人の状況を表すにはそれが一番だった。

/ ,' 3 「この国は何不自由なく暮らせる場所です。しかし、たまにいるのです。
     嫌気、と言いますか・・・。何やら不満を感じる人が」


          「このバスはそんな人の元に訪れるのです」


そんな国に戻ってきたがる人がいますか?誰一人自分のことを知らないのに。
老人はそう言うと選択を迫る。
乗るか、乗らないか。

('A`)「あの囲いの外には何があるんだ」

俺は老人に尋ねる。

/ ,' 3 「空というものが広がっております」



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/02/22(日) 22:56:00.20 ID:VKYAoUBw0

空、初めて聞くものだ。
広がっているとはどれくらいなんだろうか。
この国より広いのだろうか。

(´・ω・`)「馬鹿らしい。帰ろうドクオ」

ショボンは老人に冷たく言うと踵を返す。

(´・ω・`)「この国に不満を感じるわけないだろう。さ、ドクオ」

ショボンが言った言葉に俺は立ち止まる。
ショボンは少し焦ったようにして声をかけてくる。

肩を揺するショボンに、俺はどんな風に映っているのだろうか。

「ドクオそんなことできるのかよ」「すごいな」

「やってみたらできたわ」「俺もー」

俺に出来ることはたいてい人にできた。
人が出来ることは俺にはできないのに。

いじめがあったわけでも何でもない。
ちょっとずつ人と話すのが嫌になったんだよな。
一人でいるのが楽になって・・・。



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/02/22(日) 22:58:00.83 ID:VKYAoUBw0

('A`)「俺は行くよ」

この一言にショボンはい驚いていた。
ああ、お前そんな顔もするんだ、結構笑えるよ。

(´・ω・`)「自分が何言ってるのかわかってるの?」

睨むようにして言うショボンをじっと見つめる。
俺だって自分がどんなに馬鹿な事を言っているのか分かってる。

だけど。
もう知っちゃったんだ。
まだ広い世界がきっとあるんだ。

(#´・ω・`)「勝手にしろ!!」

ショボンは怒鳴り声をあげて走っていく。
ああ、そうやって面と向かって言ってくれるのはお前だけだったよ。

/ ,' 3 「・・・よろしいのですか?あなたについての記憶は彼からも消えてしまいますよ」

('A`)「乗るよ。ただちょっと待ってくれ」

かしこまりました、老人は優しい笑みを見せてくれた。
俺は振り返り走る。
最後に言わなくちゃいけない、あいつとこんな終わり方は嫌だ。



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/02/22(日) 23:00:05.74 ID:VKYAoUBw0

行った先は公園。
確信は無い、けどきっとそこに居る。

公園の門をくぐるとブランコに乗っているショボンが見えた。
ショボンもこちらに気づいたようだがすぐに顔をそらした。

('A`)「・・・ショボン」

隣のブランコに座り、話しかける。
なんだよ、と今にも消えてしまいそうな声が返ってくる。

('A`)「俺さ、一人の方が気楽だな、って思ってたんだけど違ったよ」

('A`)「そう思い込んでただけだった。だから、話しかけてくれた時嬉しかったよ」

ショボンにしてみたら同情だったかもしれない。
でも、たとえ同情であろうと、救われたのは確かだった。

('A`)「じゃあな、ショボン。俺は・・・行くよ」

結局まともな声は聞こえなかった、それも仕方ないか。
とぼとぼと歩き、バス停に向かう。



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/02/22(日) 23:02:00.64 ID:VKYAoUBw0

その時だった、後ろから大きな声が聞こえる。

「ドクオ!!!」

('A`)「ショボン・・・」

(´;ω;`)「・・・どんな所か教えろよ」

('∀`)「把握した」

ショボンに背を向けるようにして足を進める。
俺はいつの間にか泣いていた。
嬉しかったのか、悲しかったのか、両方かもしれないな。

/ ,' 3 「それでは行きましょうか」

老人はハンカチを差し出してくれた。
それで涙をふくように、と。

('A`)「ショボンありがとうな」

独り言のように呟いて老人に続く。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/02/22(日) 23:04:00.40 ID:VKYAoUBw0

俺はバスに乗った。
少しも後悔をしていない、と言えば嘘になる。

だけど、俺は乗った。
空がどんなものかも気になる、何よりこんなことほとんどの人にできないじゃないか。

どうなるかなんて知ったことか。

バスは進んでいく。
まだ見たことのない世界へ。

きっとこの先には大切な人にも見せたい風景が広がっている。



('A`)は飛び乗るようです END



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