( ^ω^)やまさんのようです

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 19:04:36.62 ID:MnRRq0n5O
僕は見事VIP高校に合格し、その場で歓喜の雄叫びを上げた。
周囲からは冷たい視線と、生温い視線が同時に注がれてくる。
そういえば、ここは合否の紙を貼り出している掲示板の前だったんだっけ。
残念な結果に終わってしまった人にとっての僕の存在は、非常に疎ましいものだっただろう。
全速力で、駅へと逃げだした。

ともあれ、僕の笑顔が抜けることはなかった。

念願のVIP高校。僕の偏差値レベルでは到底無理とも言われていた。
だから頑張った。一日に十時間以上、寝る間も惜しみ、盆も正月も無く勉強した。
当初の理由は些細なものだったけれども、冬にもなると、純粋に合格だけを目指して勉強していた。

その結果がついに報われたのだ。喜びの度合いは人生最高のものだった。
両親に結果を話し泣いた。部屋の中一人泣いた。友と抱き合い泣いた。
VIP高校のパンフレットを眺め、自身が校内を駆け回る姿を想像し、嬉し涙を零した。

そして春休みも終わる頃。いよいよ明日が入学式という日の夜。
僕は、不安や緊張、楽しみのあまり、とうとう一睡も為す事が出来なかったのだ。



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 19:06:33.33 ID:MnRRq0n5O
おかげで、当日の体調はボロボロだった。
僕は自分で言うのもあれだが真面目君で、毎日八時間の睡眠は欠かさないタイプである。
皺一つない制服に袖を通すことも、憧れの電車通学も、桜吹雪の舞う校門も、全て何の想いも抱けぬままに過ぎていった。
そこにあったのは、むかむかする胃の痛みと、強烈な眠気だけだった。

入学式が始まった。
眠い。周囲の人間の顔すらぼやけていて、校長の話は長く、更には身になりそうもない。
パイプ椅子が軋む、僕の体はそれ以上に軋んでいる。前の席にいる女生徒のスカートが短い。
どこかから談笑が聞こえる。もう友達が出来たのか、羨ましい。

思考が上手く纏まらない。
神経が研ぎ澄まされていて、全ての情報を素直に受け止めている。

これ以上は限界だ。
そう思っていた矢先、校長の話が終わり、起立の号令がかかる。

―――いけない、立たなければ! 

足腰に伝導される命令、最後の力を振り絞り持ち上がっていく体。
そして次の瞬間、全身が羽のように軽くなり、世界がぐるりぐるりと回転を始めた。
心地よい浮遊感を得た後、鈍い痛みが駆け巡り、そして視界は黒く染められていった。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 19:08:23.49 ID:MnRRq0n5O
こうして、僕の高校生活での立ち位置は決定された。
学生なんてそんなものだとは分かっていても、未だに納得のいかないこの渾名。

あの日、入学式のあの時、僕は貧血を起こした。
そして全員が思った『ああ、この人は体の弱い人なんだな』と。
退屈とはいえ、高校生活の始まりを告げる入学式に僕が引き起こしたインパクトはあまりに大きく、
生徒達は、僕こと内藤ホライゾンの名前を、嫌でも脳裏に植え付てしまった。

その結果、誰かが言った『病人の内藤ホライゾン』。
次に誰かが面白おかしく言い触らした『やまいゾン』。
僕が否定した渾名を誰かが当たり障りなく改変した『やまさん』。

いくら拒絶しようともいたちごっこだと悟った僕は、それで妥協した。

その日から、VIP高校での僕は内藤ホライゾンではなく、体が弱く病がちな『やまさん』なのである。


―――( ^ω^)やまさんのようです



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 19:10:14.07 ID:MnRRq0n5O
僕の友人の長岡ジョルジュは、教室に入り、開口一番こう言った。

( ゚∀゚)「やまさん、やまさん、保健室のベッドが新しくなったってさ!」

( ^ω^)「なんと! その寝心地を試すのは間違いなく僕になるでしょうね!」

クラスメイトの数人が、その掛け合いを聞いて噴き出した。
病人扱いする言葉に、僕が面白おかしく乗っかる。
これが、このクラスの、所謂鉄板ネタというやつなのである。


( ゚∀゚)「やまさぁん〜、今日も相変わらず顔色が悪そうですね〜」

( ^ω^)「朝っぱらからジョルジュ君のハイテンションにはついていけそうにないです……ごほっごほっ」

わざとらしい咳、それを見てニヤニヤと表情を歪ませるジョルジュ。
この様子を何も知らない人が見たなら、虐めだと勘違いするのではないかと時々不安になる。
もっとも、僕が『やまさん』である事は、最早全校生徒に広まっているので、その心配など微塵もいらないのだが。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 19:11:43.66 ID:MnRRq0n5O
( ゚∀゚)「う〜ん、やっぱり一日一回はやまさんで遊ばないと調子が出ねぇな!」

( ^ω^)「良い迷惑だお」

( ゚∀゚)「はっはっはっ、確かに入学したてのやまさんは酷かったなぁ〜」

あの頃はジョルジュの話す言葉をそのままに受け止めてしまい、本気で落ち込む日々だった。
お先真っ暗な高校生活だと、絶望までする始末であった。

( ^ω^)「今じゃ完璧開き直ってるお」

( ゚∀゚)「だな、おかげで校内でも人気者! いやぁ〜羨ましい!」

( ^ω^)「……じゃあ代わるかお?」

( ゚∀゚)「それは勘弁だけどね!」

見知らぬ生徒に、やまさんと親しげに呼ばれ、希少動物のように写メを撮られるのに慣れたのはいつ頃だっただろうか。
可愛い女生徒とメアドを交換出来たのはラッキーだったけど。 ……一度もメールしてないとはいえ。

保健室の先生に、君のせいで保険室を使用する生徒が増えたと怒られたのはいつの事だっただろうか。
僕がいないかと覗く人が多いらしいが……そもそも僕は入学式以来、保健室にお世話になったことはないし、知ったこっちゃない。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 19:14:01.58 ID:MnRRq0n5O
( ゚∀゚)「ある意味、学校のアイドルだもんな〜、友人の俺は鼻が高い!」

( ^ω^)「このキャラを定着させていったのはジョルジュじゃないかお」

( ゚∀゚)「あれ? そうなの?」

(#^ω^)「そもそも、やまいゾンとかひでぇ渾名をつけられた恨み、僕は未だに……!!」

( ゚∀゚)「なんでだよ! 最高じゃねぇか、やまいゾン!」

クラスから同意の言葉が降り注ぐ。
冗談じゃない、そんなウルトラマンの敵みたいな名前だけは絶対に嫌だ。


軽口を叩き続けるジョルジュの態度を改めさせようとしたとこでチャイム。
同時に担任のモララー先生が姿を現し、暴れる僕とジョルジュを見つけ、言った。

( ・∀・)「おいおい、やまさん、もう年なんだから無理はしないでくれよ」

爆笑が巻き起こった。

この世界は腐っている。



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 19:17:10.07 ID:MnRRq0n5O
放課後、部活へと向かうジョルジュを見送り、玄関へと歩を進める。
帰宅部であるという誇りを忘れず、僕は寄り道もせずに真っ直ぐ家へと向かうのだ。

( ^ω^)「青春、何それ美味しいの?」

学校なんて、はぶかれない程度に過ごせればそれで良い。
向上心が無いと言われたらお終いだが、これくらいのポジションが僕には合っているのだろう。


( ^ω^)「―――おっ?」

ロッカーから外履きを取り出した時、強烈な視線を感じた。

まるで獲物を駆る獣のように、凶暴かつ冷静な気配。
背筋にその妙な寒気が走り、思わず身震いしてしまう。

その視線の主を探そうと、僕は周囲を見回す。
しかし360度確認しようとも異変を見つけることは出来ない。

気のせいだったのかと僕が虚空を見上げる―――そんな時だった。



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 19:19:17.56 ID:MnRRq0n5O
いたのだ『ソレ』は。

ソレはじっくりと、僕を舐めまわすかの様に凝視していた。
首から上だけを覗かせて、黒く伸びた体毛をロッカーの上からだらりと下げている。
得体の知れない雰囲気を感じさせながら、しかし美しさだけは健在で―――


(;^ω^)「って、何やってんすか、クー先輩」

川 ゚ -゚)「む、もうちょっと驚いてくれるものかと思ったんだがな」

先輩はロッカーの上から軽やかに飛び出し、着地する。
その際にスカートが翻ったので、僕はほんの少しだけ目を瞑った。

川 ゚ -゚)「久しぶりだな内藤君、元気そうでなによりだ」

(;^ω^)「久しぶりですクー先輩、貴方も相変わらずの破天荒っぷりですお。
       ほら、変な場所にいるから制服が埃まみれじゃないですかお!」

川 ゚ -゚)「君も相変わらずのお節介っぷりだな」

埃を叩こうとした僕に、クー先輩は笑いながらそう言った。
久しく見たその笑顔があまりに眩しくて、目を逸らさざるを得なかった。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 19:22:06.74 ID:MnRRq0n5O
川 ゚ -゚)「君がこの学校に来たというのは知っていたから挨拶に行こうと思ってたんだがな。
     新入生は忙しいだろうしと思い、ちょっぴり時間を置いたから行くことにしたんだ」

( ^ω^)「ちょっぴりって、もう夏ですお、テストも終わってもうすぐ夏休みですお」

川#゚ -゚)「それならお前の方から来れば良かっただろうが!」

(;^ω^)「逆ギレですかお!? ていうか喧嘩する内容でもないですお!」

一年以上も会っていなかったが、精神面での成長をクー先輩に見ることは出来なかった。
体の方は無駄に成長しているというのに……特にけしからん部分とか、けしからん部分とかが。


川 ゚ -゚)「まぁいい、内藤君、夏休み明けの生徒会役員選挙には必ず立候補しろよ。
     私も生徒会長に立候補するつもりだからな、中学の時と同じく一緒に頑張ろう!」

( ^ω^)「言われなくてもそのつもりでしたお……またこき使われるんでしょうけど」

川 ゚ -゚)「何を言う、目を掛けてやっている証拠だろう!」

きっと、この人は僕が裏で『下僕』などと呼ばれていたことを知らないのだろう。
生徒会への要望に『内藤ホライゾンの解放を要求する』なんてのもあったっけ……僕が隠しておいたけど。



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 19:23:45.57 ID:MnRRq0n5O
( ^ω^)「今日はそのことを言いに来たんですかお?」

川 ゚ -゚)「いや違う、ちょっとお前に頼みたいことがあってな」

( ^ω^)「パシリは、せめて生徒会に入ってからにして欲しいものですお」

川 ゚ -゚)「そういうことじゃなくてだな、お前、『やまさん』と呼ばれているだろう?」

心臓が、一瞬だけ、どくんと跳ねた。
その名前を、無理とは分かっていても、この人にだけには知られたくなかった。
期待はあっさりと砕かれたけど、そんな気持ちが、ほんの一瞬体に表れたのだと思う。


( ^ω^)「……それがどうかしたのかお?」

川 ゚ -゚)「体が弱く病がちか……私の知る限りでは風邪一つかかったことのないお前がなぁ」

( ^ω^)「クー先輩も同じですお」

川 ゚ -゚)「超健康体だからな……で、体の弱い振りなんかしていると?」

縦に頷いて返すと、先輩はそうかそうかと呟いた後、顔を輝かせた。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 19:26:32.55 ID:MnRRq0n5O
川*゚ -゚)「私を弟子にしてくれ!」

( ^ω^)「……は?」

そして元気一杯、ぐっと握り拳を掲げて確かにそう言ったのだ。
当然、僕には理解することも出来ず、間抜けな声を上げるのが精々だった。

( ^ω^)「……は?」

また、数秒の時を経た後でも、その衝撃は抜けきっていなかった。
全く同じ調子で、言葉ともいえない言葉を呟いていた。


川 ゚ -゚)「いやなぁ、私ってば超健康体じゃないか。
     喜ばしい事に、スポーツ面でも人より優れて産んでもらったりもしている」

先輩は、学業もスポーツも、有りっ丈の賞を掻っ攫うレベルだった。
創立の浅い僕の中学では、この人が残していった様々な賞状が、全体の半分を占めていたと思う。
特に陸上関係……短距離走では全国大会でも引けをとらないとかなんとか。

川 ゚ -゚)「しかし、しかしだよ明智君」

( ^ω^)「内藤ですお」



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 19:29:12.54 ID:MnRRq0n5O
川 ゚ -゚)「私は思った、これでいいのか私の青春、と。
     部活に燃える……大いに結構だと思うのだが、やはり女子高生に必要不可欠なのは恋愛ではないのかと!」

( ^ω^)「まず貴方に必要なのは恥じらいですお」

川 ゚ -゚)「とにかく、つまりはそういうことだよ!」

(;^ω^)「……いやいや、どういうことですお」

先輩はやれやれと大袈裟なジェスチャー付きで溜め息を零した。
少しだけ、いらっときた。


川 ゚ -゚)「清純派、処女崇拝、病弱ハァハァ、包帯萌え、パンツは純白……etc、etc。
     これらの言葉から分かる通り、世の男共は大人しめの女子に首ったけと見える」

( ^ω^)「少々意味不明の言語が行き交ったけども、まぁ大体は納得ですお」

川 ゚ -゚)「そこでだ、私も目指すことにしたのだ、病弱な小娘というやつを!!」

( ^ω^)「はぁ……」

本当になりたいのか疑問になる言い方だった。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 19:31:46.46 ID:MnRRq0n5O
川 ゚ -゚)「だが、この丈夫な体は真冬に滝を浴びようとも風邪すらひかん……。
     ならば演技だ、そしてそれには師匠が必要だ」

( ^ω^)「あぁ、んで、僕に病弱な振りをどうすればいいのか教えろと」

川 ゚ -゚)「拒否権はない、断ろうものなら生徒会長権限として、お前を生徒会に入れさせん」

(;^ω^)「まだなってもいない癖に、早速独裁者気取りですかお……」


ともあれ、これといって僕に反論する気はなかった。
何より先輩のキラキラと輝かせた瞳の前で拒否など出来るはずもない。


( ^ω^)「……この道は修羅の道ですお?」

川 ゚ -゚)「構わん、いくつの命を消すことになろうとも、私は突き進んでみせる」

(;^ω^)「流石にそこまで大袈裟なことにはならない……まぁ、とりあえずよろしくですお」

川 ゚ -゚)「おお、よろしくな、やま師匠!」

(;^ω^)「その呼び方は止めるお!」

こうして、奇妙な師弟関係が出来上がったのだった。



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 19:33:13.50 ID:MnRRq0n5O
川 ゚ -゚)「じゃ、私はこれから部活があるからな、明日からは指導をビシビシ頼むよ」

歩き出した先輩の後ろ姿。
その頼もしくも美しい姿を、僕は何度となく見つめてきた。

そして、僕はその度に―――


( ^ω^)「あ、ちょっと待ってください、クー先輩」

川 ゚ -゚)「む、どうした?」

振り向き様に髪がなびく。
それを手で優しく整えて、先輩はまた僕を見据えてくれた。

( ^ω^)「恋愛がしたいって言いましたよね、誰か好きな人でも出来たんですかお?」

川 ゚ -゚)「恥ずかしいことを聞くなぁ、お前は」

( ^ω^)「師匠になるんだから、それくらいは聞かせて貰っても良いお?」

川 ゚ -゚)「好きな人ねぇ、この気持ちがそうなのかどうなのかは分からん……が」



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 19:35:49.46 ID:MnRRq0n5O
川 ゚ -゚)「少なくとも、部活よりも夢中になってしまう相手がいるのは確かだな」

そう言い残し、先輩は足早にその場を立ち去った。
照れくさいのだろうか、どことなく頬が赤らんでいたような気もしなくない。


( ^ω^)「部活よりも夢中になる相手……ね」

僕は僕で、中断していた帰宅作業を続けることにした。
と言っても、ロッカーに履き替えた上履きを戻して、閉じるだけなのだが。

( ^ω^)「……あ」

そういえば中学の頃、先輩が言っていた。
あの時も確か下駄箱の前だった。生徒会の会議を終えて帰る時だったか。


『走っていると、風を感じる、そうすると世界と一緒になれている気がする。
 速く走れば走るほど、その気持ちは強くなるから、だから私はもっともっと速く走りたいんだ』


当時は何て臭い台詞なんだと口に出してしまい、先輩にジャーマンスープレックスをかけられた。



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 19:38:43.41 ID:MnRRq0n5O
しかし、もしもこの言葉が真実だったとするならば、それ以上に夢中になるなんて、とんでもない事ではないだろうか。
世界との一体感を得れる部活よりも、先輩が一緒になりたい相手だなんて想像もつかない。

( ^ω^)「男と女のマッスルドッキング……卑猥だお」

陰険な言葉を吐きながらも、僕の心はぽっかりと穴の空いたようだった。
目の前を通り過ぎようとする黒猫を威嚇してみたりするも、穴が塞がる様子はない。


―――VIP高校を第一志望にした理由。


無理だ無理だと言われながらも、絶対に受かってやると僕をやる気にさせた原動力。

それは他でもなく、クー先輩が通う高校だったからだという訳で。
ちょっとでも一緒に居たいと、あの頃の僕はずっと願い続けていた訳で。

今、その気持ちがまたぶり返そうとしている。

きゅうと痛む胸を押さえる仕草は、演技ではなく、紛れもない本物だった。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 19:41:03.32 ID:MnRRq0n5O
翌日の昼休み、山のように菓子パンを持って僕の元にくるジョルジュを呼び止める。

( ^ω^)「あー、ジョルジュ、悪いけど今日は違うとこでご飯食べるから、僕はちょい行ってくるお」

( ゚∀゚)「そうか? じゃあ俺は寂しくトイレで飯食うかな」

(;^ω^)「……いつも、僕たち二人で飯食ってる訳じゃねぇお」

僕らを除いた普段のメンバーが、ジョルジュを敬遠するように輪を小さくした。
どうやら自分たちが必要とされていない風な言葉に納得がいかなかったのだろう。


( ゚∀゚)「冗談だよー! 俺はお前たちも大好きだよー!!」


そして、その輪に、ジョルジュはあろうことかダイブした。
当然大惨事が起こり、散らばる弁当、踏み潰されるパンやおにぎり。

その結果、本気でジョルジュはトイレ飯を強要されていたが、僕は涙目な友人を無視して屋上に向かった。



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/29(日) 19:43:07.52 ID:MnRRq0n5O
( ^ω^)「屋上に来たのは初めてだお」

川 ゚ -゚)「そうか、実は私も初めてなんだ。
     漫画のように、屋上で授業をさぼったりなんて出来るもんではないんだなぁ」

先に屋上で待ち受けていた先輩は、太陽を眩しそうに手を掲げながら言った。
仮にも生徒会長を目指す人間なのだから、まずサボリを否定すべきだと思う。

( ^ω^)「一年以上いても屋上には来ないもんなんですかお?」

川 ゚ -゚)「ああ、そもそもここは普段鍵が閉まっていて入れないからな」

( ^ω^)「あれ? じゃあ今日はどうやってここに……」

川 ゚ -゚)「それは、その、まぁ色々あるんだよ、うん」

まさか、ドアの窓が無かったのは、つまりそういうことなのだろうか。
色々恐ろしい想像が浮かんだが、考えないでおく。



戻る次のページ