( ^ω^)ブーンが戦い、川 ゚ -゚)クーが護るようです

3: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 21:32:30.86 ID:e5u5I1QA0
  
第四話 『赤い靴の女』

『牙猫』ギコとの戦闘から一日。
あの後ブーンは、怪我を負ったクーを自宅へ運び、休ませた。
その折に母親に生暖かい目で見られ続けたというのは言うまでもない。

J( 'ー`)し「ブーンったら……こんなに大人になって」

(;^ω^)「かーちゃん、最近のアンタのキャラが解んないお……」

クーは昼に目を覚ました。
思ったよりも軽傷だったようで、先ほどまでモリモリ食事を摂っていた。
外見に似合わずよく食べる人だ、とブーンは思う。

食事が終わると、彼女は話があると言い、ブーンの部屋に上がっていった。
着いて行くにあたって、母親に生暖かい目で(ry



4: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 21:35:04.43 ID:e5u5I1QA0
  
ブーンの部屋。
ゲーム機が放置されており、ベッド脇には週刊少年ジャンポウの山。
本棚には漫画よりも小説類の方が少し多く、意外と読書家のようだ。
その頂上には、幾つかのトロフィーと盾、そして賞状。
今までのブーンの努力の結果が飾られている。

その普通の少年の部屋とも言える空間に二人の男女。
クーはベッドに腰掛けており、ブーンは己の机の椅子に座っている。

( ^ω^)「話って何だお?」

川 ゚ -゚)「昨日の続きだ」

( ^ω^)「お、そういえばギコさんに邪魔されて途切れてたお。
      どこまで話したお?」

川 ゚ -゚)「……昨日と違って、随分と聞く気があるようだな」

( ^ω^)「お?」

川 ゚ -゚)「いや、昨日は仕方なく、といった様子で聞いていた君が
     今や自分から話を聞く姿勢をとっているが……何か昨日あったようだな?」

( ^ω^)「そんな大層なことじゃないお」



5: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 21:37:14.84 ID:e5u5I1QA0
  
本人は気付いていないが、実は大層なことだった。
あれほど命を賭した戦いに恐怖していた彼が、今やその世界に自ら足を踏み入れようとしている。
その心境の変化に、自分が気付いていない。

それは恐ろしいことだ。
戦いを享楽とする戦闘狂の領域に、知らずに踏み入る可能性があるからだ。

中途半端な力は己の身を滅ぼす。
今のブーンは、その滅ぼされるか生き残れるかの狭間を彷徨っている状態だった。

無論、本人は気付いていない。
そして、クーもその変化を気にしていない。
その結果がどのように転ぶか、それは時が経つまで解らなかった。

川 ゚ -゚)「さて、今回は敵組織のことでも話そうか」

( ^ω^)「そうしてほしいお。
      敵の正体が解らないと、戦い辛いお」

そうだな、とクーは言いつつ、用意されたクッキーを一口食べる。



6: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 21:39:57.73 ID:e5u5I1QA0
  
川 ゚ -゚)「14のウェポン、クルト博士の遺産とも言えるそれを悪用しようとしている組織」

( ^ω^)「…………」

川 ゚ -゚)「名は『VIP』。
     その由来は解らんが、クルト博士と関係がある者が作り出した組織らしい」

( ^ω^)「クルト博士の関係者……たとえば、子供とかかお?」

川 ゚ -゚)「彼に子供はいない――というか、結婚すらしていない」

( ^ω^)「じゃあ、誰が……」

川 ゚ -゚)「それは解らないし、解る必要はあまり無いだろう。
     が、その目的は知る必要がある」

( ^ω^)「クーは、それを知らないのかお?」

川 ゚ -゚)「14のウェポンを集めようとしていること以外は、な。
     とりあえず危険だと判断している」

( ^ω^)「そうかお……」

ブーンも自分の手元にあるクッキーに手を伸ばす。



8: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 21:42:32.25 ID:e5u5I1QA0
  
( ^ω^)「ところで……」

川 ゚ -゚)「ん?」

( ^ω^)「何で、あのジョルジュはクーを追跡出来たんだお?
      何で、学校に隠れていたクーを見つけることが出来たんだお?」

川 ゚ -゚)「答えは簡単だ。
     隣合うウェポンの『共鳴反応』によって場所が割れたのだろう」

妙な単語に、ブーンは戸惑う。

( ^ω^)「おっおっお?」

川 ゚ -゚)「14のウェポンには『共鳴反応』という特殊な事象が存在する。
     たとえば、君が今持っている8th−Wは
     7th−Wと9th−Wが付近にいると『共鳴反応』を起こすんだ。
     無論、指輪の意思によって起こさなかったりもするが」

( ^ω^)「じゃあ、あの時の保健室での甲高い音が……」

川 ゚ -゚)「そう、8th−Wとジョルジュの9th−Wが共鳴反応を起こした結果だ」

(;^ω^)「そ、それじゃあ……何処に隠れても見付かってしまうお!」



9: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 21:45:33.76 ID:e5u5I1QA0
  
川 ゚ -゚)「確かにそうだ。
     だが、逆を言えばそれは捜索に使える」

( ^ω^)「捜索、かお?」

川 ゚ -゚)「9th−Wは既にジョルジュが持っているから難しいとして……。
     7th−Wを手に入れることが出来れば、6th−Wの所在も探せるということだ」

( ^ω^)「おー、なるほどー……芋づる式ってヤツだお」

川 ゚ -゚)「昨日の『牙猫』も、おそらく1st−Wを使ってウェポンを探していくつもりだろう。
     上手くいけば、1st−Wから8th−Wまでがこちらの手に入るかもしれん」

( ^ω^)「それは良いことだお!」

川 ゚ -゚)「だが問題が残る」

( ^ω^)「お?」

川 ゚ -゚)「9th−Wをジョルジュが押さえていることにより
     10th−W以降を手に入れられる確率が、我々はVIPよりも低いんだ」

(;^ω^)「確かにそうだお……どうすればいいんだお?」



10: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 21:48:02.07 ID:e5u5I1QA0
  
川 ゚ -゚)「まぁ、奪うしかないだろうな」

(;^ω^)「奪う、かお……。
      でも奪っても指輪は使えないんじゃ?」

川 ゚ -゚)「契約を切ればいい」

(;^ω^)「お?」

川 ゚ -゚)「術者が指輪での戦闘時に死亡、または気絶した場合
      その間に指輪を抜けば、その術者と指輪の契約がリセットされる。
      言うなれば、指輪が主を見放すということだ」

( ^ω^)「ほほぅ」

川 ゚ -゚)「奪った指輪に認められれば、それを使うことも可能だ」

( ^ω^)「なんと!
      なんかロックマンみたいだお!」

川 ゚ -゚)「ロック……?
     何やらよく解らんが、理解出来たなら良い」



11: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 21:50:27.59 ID:e5u5I1QA0
  
( ^ω^)「ロックマンっていうのは青い正義のロボットのことで――」

川 ゚ -゚)「つまり、今の私達に出来ることは2つ。
     7th−Wを探すか、ジョルジュを倒すか……そのどちらかだ」

(;^ω^)「華麗にスルーされたお……」

彼女は更にスルー。
うな垂れるブーンに向かって

川 ゚ -゚)「どちらを、選択する?」

問いかける。
本来なら、彼よりも詳しい彼女が方針を決めるべきなのだが
パートナーの意見も聞いておいた方が良いと判断したのだろう。

( ^ω^)「うーん……今の僕達でジョルジュを倒せるかお?」

川 ゚ -゚)「正直……難しい。
     だが、それを放置すれば、VIP側のウェポンが増える可能性がある」

(;^ω^)「そうだおね……」

ブーンは少し考える素振りをする。



14: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 21:54:23.46 ID:e5u5I1QA0
  
数秒、黙考した後、ふと顔を上げる。
結論は――

( ^ω^)「ホントは逃げ出したいお……。
      でも、そうすることは許されないんだお……」

だから

( ^ω^)「どっちもやるんだお!」

川 ゚ー゚)「いいだろう。
     私もちょうど同じ意見だった」

方針は決まった。
あとは行動だ。
クーが立ち上がり、ブーンに向かって手を差し出す。

川 ゚ -゚)「行こう、内藤」

( ^ω^)「解ったお、クー!」

がっちりとその手を掴む。

こうなってしまったからには仕方無い。
とことんまでやってやろう、とブーンは思うのだった。



15: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 21:56:09.20 ID:e5u5I1QA0
  
「〜♪」

女性の歌声。
もの悲しそうな歌だが、声の主の声は明るい。

響く場所はビルの屋上だ。
もはや使われることは無くなった廃墟ともいえる屋上に、歌声が鳴る。

(*゚∀゚)「〜♪」

女性がいた。
屋上の端、その淵に危なっかしく立っている。
彼女は都市ニューソクを見渡すように目を細め、歌っていた。
黒髪のショートカットに、黒い女性用のスーツ。
しかしその足にはスポーツシューズという、妙な格好だ。
その左手の人差し指には、赤色に光る指輪。

ふと、その指輪が震え出す。
キィィンという甲高く、しかし小さな音を発するそれを見て、女性は微笑んだ。

(*゚∀゚)「見ぃつけた……♪」

途端、女性が飛んだ。
10階以上はありそうな高いビルの屋上から、身を投げたのだ。
後には風が残るのみ。
静寂が戻る。



16: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 21:59:08.27 ID:e5u5I1QA0
  
('A`)「よいしょっと……」

ドクオはその場に、重いマットのようなものを置く。

ドクオは陸上部所属だ。
部長ではないものの、その実力はトップクラス。
事実、部活の皆はドクオに期待を寄せている。
彼はそれが内心とても嬉しかった。

昔から、キモい・怖い・変人の三拍子で嫌われ続けたドクオ。
高校に入ってからも、それは変わることはないと思っていた。

しかし、それは間違いだった。
ブーン、ツンという親友が出来、しかも今部活では期待のエースだ。
何故か未だにモテないが。

自分の足がそんなに速いとは、入学当時はまったく思ってもみなかった。
だが足に自信があるブーン(自称)と競争してみたところ、実は自分の速さは相当なものだと解った。

人生の転機とは突然に訪れる。
ドクオは当時、実感したものだ。



19: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:01:53.10 ID:e5u5I1QA0
  
今、彼は消えかかる夕日が照らすグラウンドの隅、体育倉庫で部活の後片付けをしている。
いくら期待のエースだからとて、そういう雑用を他の皆だけに任せるわけにはいかない。
そういう慢心は、ドクオが一番嫌うものだった。
しかも几帳面な部分もあるので無駄に綺麗に作業をする。

気付けば周囲には誰もおらず、皆帰ってしまったようだ。

('A`)「ふぅ……こんくらいで充分だろ」

常人から見れば完璧すぎるほどの片付け具合。
光すら輝いて見えるほどの綺麗さに、彼はようやく満足した。
額の汗を拭う。

('A`)「もうこんな時間か……早く帰ってゲームでもするかな」

体育倉庫を出る。
夕日は既に沈みかけており、辺りは闇に閉ざされようとしていた。

グラウンドの中央を歩き、着替えるために部室へ向かう。



20: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:04:24.14 ID:e5u5I1QA0
  
途中、異変に気付いた。

('A`)「?」

指輪が、震えている。
昨日と同じだ。
左手の中指にはめた茶色の指輪が振動を繰り返している。

('A`)「なんか昨日より激しいな……ってか、なんだ、この超常現象」

昨日はしばらくしたら振動は失せたので、今日もそんな感じだろうと思い
さほど気にすることなく部室へ向かった。
部室の扉に手を掛けた時だ。

「ねぇ」

背後から声。
しかも女性だ。
ドクオは一瞬、期待に胸を膨らませる。

('A`)(まさか……愛の告白……ッ!!)

心の中でガッツポーズ。
こういう無駄に早い勘違いが彼のモテない所以だとツッコむ人間は、残念ながら周囲にはいない。
ニヤけを押さえきれない表情で、背後に振り向く。



22: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:06:37.57 ID:e5u5I1QA0
  
(*゚∀゚)ノ「やっ」

片手を上げ、挨拶する女性がそこにいた。
年齢は20代か。
女性用のスーツを着込んだ、割と美人な女性。

('A`)(見覚えない顔だな……ってか、スーツってことは生徒じゃねぇよな?
    どっかの先公か?)

頭に疑問符が浮かぶ。
そんな彼に、女性は口を開いた。

(*゚∀゚)「ねぇねぇ、これ見てよ」

女が後ろに隠していた右手を上げる。

('A`)「?」

その手には、光があった。
柄があり、短いが光る刀身があり、刃があり――
どう見てもナイフだ。

(;'A`)「えっと……あの……?」

身の危険をジワジワと感じながら、正面の女性に問う。



23: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:10:39.34 ID:e5u5I1QA0
  
(*゚∀゚)「これってねぇ、よく切れるんだよ」

女性は嬉々とした様子で語り始める。

(*゚∀゚)「皮膚をね、スパって切ると、血がプシュって出てくるんだよ」

自分の手首を切るような動作。
その異常ともいえる動作と言動に、ドクオは困惑した。

(;'A`)「あ、あの……それが……?」

問いかけに対し、女性は歯を見せ笑った。

(*゚∀゚)「ごーとぅーへる♪」



25: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:12:49.02 ID:e5u5I1QA0
  
キィンっと、甲高い音がブーンの耳に響いた。

(;^ω^)「う、うわ!? なななんだお!?」

今、ブーン達は夕方の公園にいた。
8th−Wの発動方法や使い方の訓練をしていたのだ。

川 ゚ -゚)「これは……!」

クーがブーンの腕を取り、指輪を見つめる。
予想外に冷ややかできめ細かい感触に、ブーンは顔を赤くした。
しかしそれどころではない。

(;^ω^)「いきなり鳴り響き始めたお……これはどういうことだお?」

川 ゚ -゚)「7th−Wか、9th−Wの持ち主が危機に陥っているんだと思う。
     隣合うウェポン、つまりブーンの8th−Wに助けを求めているんだ。
     ただ、ジョルジュとは考えにくい……」

(;^ω^)「じゃ、じゃあ……7th−Wの人が……?」

川 ゚ -゚)「敵か味方か解らんが、行ってみる価値はあるな」



26: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:15:01.42 ID:e5u5I1QA0
  
(;^ω^)「わ、解ったお……」

拳を握り、深く念じる。
頭の中に情報が流れ込んできた。

( - ω-)(これは……走って……?
       そして、砂地……いや、グラウンド……)

気付き、顔を上げる。

(;^ω^)「学校だお!」

川 ゚ -゚)「よし、急ぐぞ!」

二人は駆け出した。
この公園から学校まで10分程度。
果たして、間に合うか。



28: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:17:19.17 ID:e5u5I1QA0
  
学校の中庭。
ドクオは校門目指して走っていた。
学校には既に誰も残っておらず、助けは得られそうにない。
足は恐怖でもつれ、頻繁に倒れそうになる。
背後には、その恐怖の元凶がいた。

(*゚∀゚)「あははは! ほらほらぁ、もっと早く逃げなくちゃ!」

(;'A`)「はぁ、はぁ……!」

あのナイフの女が、背後から迫ってくる。

いきなり指輪を赤く光らせたと思ったら、女性の足に赤いロングブーツが装着されていた。
一斉に背筋を這い登る殺意。
ドクオは一目散に逃げ出した。
しかし――

ドクオは足に人並み以上の自信があった。
が、あの女は桁外れだ。
何しろ、走ってさえいない。
歩くような動作で、ドクオとほぼ同じ速度で移動している。

(;'A`)「な、何だよ!? 何なんだよ!?」

走りながら叫ぶ。



30: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:19:22.25 ID:e5u5I1QA0
  
返事は横から来た。

(*゚∀゚)「君の死神って言うと格好いい?
     とりあえず、死んでもらうよー」

女がいつの間にか真横を走って――否、歩いている。
その手にはナイフだ。
来る。

(;'A`)「う、うわぁ……!?」

足がもつれ、遂に転んでしまう。
が、それが幸運だった。
ドクオの頭があった空間を、銀光放つナイフが突き抜ける。

(*゚∀゚)「ありゃりゃ、ナイス幸運!」

ビッと親指を上げながら、ブレーキをかけるかのようにドクオの前方で立ち止まる女。

(;'A`)
「い、い、一体、俺に何の恨みがあるんだ!?」

(*゚∀゚)「恨みなんてあるわけないっしょー。
     君がウェポン持ってるのが悪いわけで、それは仕方ないことなんだなー」

愉快そうで、しかし意味不明な回答。



33: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:21:46.03 ID:e5u5I1QA0
  
ドクオは焦った。

こいつは狂っている。
このままでは殺される。

(;'A`)「う、うわぁぁぁ!」

四つん這いで逃げ出す。
が、一瞬で女が行く手を塞いでしまった。
まるで瞬間移動だ。

(*゚∀゚)「根性ないなぁ。
     まぁ、私としては悲鳴はどんと来いって感じだけど」

ケラケラ笑いながら、ナイフを巧みに操り回す。

(*゚∀゚)「で、最期に何か言いたいことは?
     別に誰かに伝える気も、叶える気もないけど、聞くだけ聞いてあげるよー。
     私って優しくてたまんないね、こりゃ! 惚れたら駄目だよ!」

(;'A`)「な、な、なんで俺が……」

(*゚∀゚)「それが最期の言葉? もっと命乞いしなよー。
     そうじゃないと、殺す楽しみ半減じゃーん」



34: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:24:09.97 ID:e5u5I1QA0
  
ケラケラ、ケラケラ。

なんでこいつはこんなに笑っていられるんだ?
これから人を殺そうというのに。
もしかしたら警察に捕まって、人生が閉ざされるかもしれないのに。
家族や友達が、悲しむかもしれないのに。

(;'A`)「な、なんでだよ……なんでだよ!!」

(*゚∀゚)「はぁ? 頭だいじょーぶ?」

女の笑いがピタリと止まった。
その身から、得体の知れない気――殺気――が噴き出す。

(*゚∀゚)「もう飽きちゃった。
     そろそろごーとぅーへるの時間だよ」

(;'A`)「う、う、うあぁぁ……」

ガクガクと足が、手が、全身が震える。



36: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:26:31.42 ID:e5u5I1QA0
  
これから、俺は死ぬんだ。
これから、俺は生を失うんだ。
これから、俺はアイツらに会えなくなるんだ。
ブーン……そして、ツン……。

彼女の笑顔が過ぎった時。
ドクオの中に襲われて以来、初めて怒りという感情が湧き上がった。

なんで、俺が殺されなきゃならない?
なんで、コイツが勝手に生き死にを決定する?
なんで――

なんで、俺は何もしないんだ……!?

(;'A`)「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!!」

咄嗟に震える足に鞭打ち、低い姿勢で女に突っ込んだ。
要はラグビーの突進だ。
狙うはあの赤いブーツ。
相手を倒しさえすれば、逃げ切れるかもしれない。

生きたい。

それが彼を突き動かした。



37: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:28:53.43 ID:e5u5I1QA0
  
(*゚∀゚)「は?」

赤い足が消える。
ドクオは勢い余って、強かに顎を地面に打ちつけてしまった。

(;'A`)「い、いない……!?」

一瞬前まであったはずの足が消えている。

(*゚∀゚)「最期の足掻きってやつだねぇ……醜いねぇ……」

女の声が背後から聞こえた。
振り向く。
女がナイフを振り上げた瞬間だった。

(;'A`)「ッ!?」

激痛。
身体が無意識に跳ねる。
見れば、右足の腿にナイフが深々と刺さっていた。

(;'A`)「ああああぁぁぁぁぁ!?!?」



38: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:30:49.63 ID:e5u5I1QA0
  
初めて経験する痛み。
ある意味、産声とも言える声に女は過剰に反応する。

(*゚∀゚)「そう! その声!
     その声が聞きたかった!
     苦悶に満ちた声! 効く効くぅー!」

またもや親指をビッと勢い良く立て、笑顔で喋る。

(*゚∀゚)「意外と良い声してんじゃん!
     もっと聞かせてよ!」

彼女が二撃目を振り上げる。

死ぬ。
もう駄目だ。

ドクオは遂に生を諦める。

('A`)(…………)



40: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:32:54.69 ID:e5u5I1QA0
  
その時だ。

(*゚∀゚)「!?」

女が飛ぶようにその場を退避した。
続いて女がいた空間を、銀光がかすめていく。
そして、聞き覚えのある声。

(;^ω^)「ドクオー!!」

(;'A`)「っ……!?」

見れば、校門の方からブーンと女性が走ってきている。
現われた意外な人物にドクオは驚きを隠せない。

(;'A`)「ブ、ブーン……!?」

(;^ω^)「ドクオ、大丈夫かお!?」

川 ゚ -゚)「私に任せろ」

黒いコートを着た女性が、ドクオの止血に取り掛かる。



42: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:35:09.86 ID:e5u5I1QA0
  
川 ゚ -゚)「内藤、奴はどこへ行った? 警戒しておいてくれ」

( ^ω^)「把握したお」

言われたブーンが、拳を構えて周囲を警戒し始めた。
その彼に、ドクオは話しかける。

(;'A`)「ブーン……お前……」

( ^ω^)「話は後だお。 ここは僕に任せるお」

川 ゚ -゚)「校内に人は?」

(;'A`)「い、いや、もう皆帰っちまった……」

川 ゚ -゚)「よし、内藤……ウェポンを使うんだ」

(;^ω^)「え、でも……ドクオが……」

川 ゚ -゚)「君は意外と抜けているな。
     7th−Wの持ち主は、彼だぞ。
     もはや彼は我々の戦いに巻き込まれた」

(;^ω^)「え……mjd?」



43: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:37:20.32 ID:e5u5I1QA0
  
クーがドクオの左手を取る。
その指には茶色の、ブーンと同じ形状の指輪がはめられていた。

(;'A`)「え、え、え?」

(;^ω^)「そんな、ドクオ……」

混乱するドクオと、ショックを受けるブーン。

(;^ω^)「で、でも、今はこの場を切り抜けるが先だお!
       生き残れば、話はいくらでも出来るんだお!」

川 ゚ -゚)「あぁ、そうだな」

クーがドクオの側を離れ、先ほど投げた刀の回収に向かう。
その時だ。

(*゚∀゚)「あんたら、何?」

(;^ω^)「!?」

ブーンの背後の女がいた。
近付かれた気配など、微塵も感じてはいない。
まるで最初からいたとでも言いたげな表情で、彼女はそこにいた。



44: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:39:37.25 ID:e5u5I1QA0
  
(;^ω^)「な、何だお……!?」

(*゚∀゚)「何、って聞いてるのさ」

瞬間、女が腕を振るい、ブーンは反射的に身を屈する。
彼の喉があった場所を、ナイフが切り裂いた。

(*゚∀゚)「やるじゃん♪」

(;'A`)「き、気をつけろ、ブーン!
    そいつは瞬間移動するんだ!」

(;^ω^)「しゅ、瞬間移動!?
      んなファンタジックな!」

川 ゚ -゚)「その赤いブーツがウェポンのようだな」

刀を回収したクーが戻ってきた。
冷静な彼女がいれば、相手の能力分析は確実に行われるだろう。



48: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:41:48.57 ID:e5u5I1QA0
  
対する女は、ナイフを回転させながら

(*゚∀゚)「私の名前は『ツー』。
     ウェポンは、6th−W『ギルミルキル』。
     これが可愛くて可愛くて、仕方の無いヤツでねー。
     能力は――」

瞬間、ツーが消える。

川 ゚ -゚)「!」

今度はクーの背後にいた。

(*゚∀゚)「ってわけさぁ」

(;^ω^)「意味が解んないお……」

しかし確実な点がある。
彼女は自分の名とウェポン名をベラベラと喋った。
つまりは相当の自信があるということだ。
そして、その狂気とも言える自信と戦闘に対する姿勢には、見覚えがあった。



49: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:43:52.64 ID:e5u5I1QA0
  
( ^ω^)「もしかして、アンタは……」

(*゚∀゚)「VIPって言えば解るかなー?」

(;^ω^)「やっぱりジョルジュの……!」

(*゚∀゚)「ジョルジュ知ってるんだ。
     あんな奴は、同僚とは思いたくないけどねー。
     だって――」

彼女は、歯を剥いて笑った。

(*゚∀゚)「私 の 方 が 強 い し」

瞬間、消滅。
ツーの姿が掻き消える。

川;゚ -゚)「気をつけろ、内藤!」

( ^ω^)「合点承知!」



51: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:46:02.28 ID:e5u5I1QA0
  
指輪をはめた拳に力を篭める。
発光。

( ^ω^)「8th−W『クレティウス』――発動!!」

川;゚ -゚)(そんな掛け声はいらないのだがな……)

白いグローブがブーンの両拳に装着される。

(;'A`)「ブ、ブーン……」

親友の見たことの無い姿に困惑するドクオ。

( ^ω^)「ドクオは安全な場所に逃げるお!
       ここは僕達が何とかするお!」

(;'A`)「わ、解った……!」

痛む足を引きずりながら、その場を退避するドクオ。
しかし、それを阻む風があった。

(*゚∀゚)「逃ーがさないよー」

(;'A`)「う、うわ!?」



52: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:48:32.09 ID:e5u5I1QA0
  
突如、ドクオの眼前に現われるツー。
まさに瞬間移動といえる動作だ。

(;^ω^)「くっ!」

駈け寄り、拳を突き出す。
が、それが届く前に相手が消える。

(;^ω^)「このままじゃまずいお……」

相手の能力が瞬間移動であればと、相当に厄介だ。
自分の位置を自由に変更可能だとすれば、どんな死角からも攻撃出来ることを示す。
自らは攻撃は受けず、そして自由に攻撃が可能。
いくらブーンの身体能力が高くなっていようとも、移動時間がゼロの相手ではどうしようもない。

(;^ω^)「ど、どうするお……」

こうしている間にも、相手は何処から攻撃してくるか解らない。

川 ゚ -゚)「…………」

クーは、何かを考えるように黙考していた。

(;^ω^)「クー……?」



53: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:50:54.47 ID:e5u5I1QA0
  
(*゚∀゚)「いいのかなー?
     そんなボーッとしててさー」

風を切る音と共に、ツーが姿を現す。
場所は完全にブーンの死角となる背後だ。

(;^ω^)「!?」

慌てて防御体勢に持っていくが、間に合わない。
鋭い痛み。
咄嗟に振ったブーンの右肘に、赤い線が走った。

(*゚∀゚)「いいねいいねぇ……。
     その抗おうっていう心意気、嫌いじゃないよ。
     もちろん、それを叩き潰すのが一番好きなんだけどねー」

砂埃を残し、またツーの姿が消える。

(;^ω^)「反則だお……!」

悔しそうに歯噛みする。
その右肘からは、僅かだが血が流れ出ていた。



55: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:53:04.24 ID:e5u5I1QA0
  
(;'A`)「ブーン!」

川 ゚ -゚)「死角から狙う、か……」

クーが呟くのをドクオは聞いた。
彼女は刀を一振りし、ブーンに告げる。

川 ゚ -゚)「内藤、私と背中合わせになるんだ。
     少なくとも背後の死角は消せる」

( ^ω^)「解ったお!」

背中合わせになり、互いの武器を構える。
静寂。
その音が消えかかった空間で、ブーンは異音を聞いた。

( ^ω^)「……お?」

微かな音。
硬質な音。
単調な音。



56: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:55:23.79 ID:e5u5I1QA0
  
川 ゚ -゚)「この音……」

クーも気付いた。
ブーン達の周りに、同じ音が小さくだが響いているのだ。
先ほどは騒がしかったため気付かなかったが、おそらく最初から響いていたのだろう。

( ^ω^)「何の音だお……」

聞き覚えがあるような。
日常でも聞く音だ。
これは――

その時だ。
ドクオが、ブーン達に向かって叫んだ。

('A`)「蹴る音だ!
   砂地を、草を、コンクリートを蹴る音だ!!」

(;^ω^)「……!」

蹴る音。
つまり、ツーの能力は――



57: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 22:59:02.21 ID:e5u5I1QA0
  
(*゚∀゚)「ほいさぁ!!」

瞬間、頭上からツーが現われた。
いち早く反応したのはクーだ。
おそらく限られた死角の中、頭上に注意を払っていたのだろう。
突き下ろされる刃を、刀で受け止める。

(*゚∀゚)「ははぁ、すっごいねぇ! 失敗作のくせによくやるよ!」

川 ゚ -゚)「貴様の能力……瞬間移動に見せかけた、超高速移動か!」

(*゚∀゚)「あったりぃ! でも解ったからってどうしようも無いよねぇ!」

クーの刀を弾き返し、着地する。

( ^ω^)「高速移動だと解ったら、後は簡単だお!」

(*゚∀゚)「へぇ、どうするのかなー?」

(;^ω^)「……スマソ、こういうセリフ言ってみたかっただけだお」

川;゚ -゚)「君は……」

味方であるクーにさえ呆れられるブーン。
戦闘中だというのに、こののん気さはどうにかならないのか。



59: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 23:01:19.10 ID:e5u5I1QA0
  
(*゚∀゚)「んじゃ、続きといきましょかー」

音も立たせずに消えるツー。
後には砂埃が残るだけだ。

(;^ω^)「ど、どうするんだお……。
      このままだと攻撃出来ないんだお」

川 ゚ -゚)「……手はある」

(;^ω^)「え?」

クーが耳元に口を寄せる。
ボソボソと、ブーンの耳にそれを伝えた。

( ^ω^)「な、なるほど!」

川 ゚ -゚)「勝負は一瞬……気を抜くな」

( ^ω^)「把握だお!」



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