( ^ω^)ブーンが戦い、川 ゚ -゚)クーが護るようです
- 8: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 20:54:48.83 ID:lv/dT/ug0
- 第十七話 『それぞれの決意』
――アストクルフ家での戦いが終わって三日が経過した。
ギコとしぃは、その間に病院へ行き腕の治療を。
ブーンは腕の怪我を治療するために、ギコ達と共に病院へ行った後で学校へ。
ドクオは本来やるべき学業のために学校へ。
流石兄弟とショボンは、リトガーと完成品の情報を得るために情報収集を。
フサギコとツンはアストクルフ家から出てこず、その様子は解らない。
ブーンが倒したジョルジュはその場で捕縛され、今はショボンが管理している。
つまりは、皆この三日間で色々とやるべきこと――事後処理等――をこなしたというわけだ。
- 9: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 20:57:33.19 ID:lv/dT/ug0
- そして――
夜の闇が支配する都市ニューソクの郊外。
もはや定番であろう『バーボンハウス』に、普段よりも多くの人影が存在していた。
(´・ω・`)「つまり、僕らの敵はクルト博士の元・研究所に存在するわけだね」
( ´_ゝ`)「うむ、そういうわけだ。
昨日得た情報によると、リトガーは『完成品』の他に大量の兵隊を用意しているらしい。
こちらも早めに動かんと、向こうから仕掛けてくる可能性もある。
リトガーの目的は、『経験値を得た指輪の回収』だからな」
( ,,゚Д゚)「となると……やはり明日、ということになるか」
兄者が収集してきた『完成品』と『リトガー』の情報について皆で分析する。
皆で話し合った結果、攻め込むのは明日ということに決まった。
理由は簡単。
皆の都合の良い日が明日だった、というだけだ。
カウンターの奥には、飲み物や食べ物を準備しているショボン。
カウンター席にはギコ、しぃが並び、一つ席を空けて流石兄弟が座っている。
彼らの背後にある、少し広い空間のテーブルと椅子に腰掛けているのはブーンとドクオだ。
- 14: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:00:56.91 ID:lv/dT/ug0
- ('A`)「しかしまぁ、何つーか……簡単には信じられねぇ話だよな」
( ^ω^)「うーん……確かに僕も未だに現実味を感じられないお」
菓子を頬張りながら、学生二人は口を合わせる。
ギコがその様子を半目で見ながら
( ,,゚Д゚)「事実は事実……いい加減、そののん気な空気は変わらんのか」
彼の左腕――上腕部分――には包帯が巻かれていた。
本来あるべき腕は無い。
結局、腕は元通りの位置に戻ることは無かった。
時間が掛かりすぎたのもあるかもしれないが、ギコはこうも言っている。
( ,,゚Д゚)「これは自分に対する戒めだ……少し、俺はしぃに依存しすぎていたようだからな」
ブーンには、その心境が理解出来なかった。
己の腕を失ってまで……とも思ったが口に出すことはしなかった。
『依存』
それが自分の心に何らかの制動をかけているような気がしたからだ。
人は誰しも何かに依存している。
それに抗おうという姿勢を、ギコは腕を失うという行為で表そうとしたのか。
解らぬが、本人に聞いてもはぐらかされるだけだろう。
そして思う。
( ^ω^)(僕は……僕も、何か依存しているのかお……?)
おそらくは――
- 16: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:04:52.92 ID:lv/dT/ug0
- そこまで考えた時。
突如、バーの扉が開かれた。
ξ゚听)ξ「汚いわね、ここ」
入ってきたのは金髪ツインテール。
(;´・ω・`)「はぐぁ」
辛辣な第一声に、ショボンはいつもの挨拶をする前に撃墜される。
(;^ω^)「ツン……どうしてここに?」
ξ゚听)ξ「あぁ、アンタらもいたのね。
フサギコがどうしても行きたいっていうから、着いて来てあげたのよ」
ミ,,"Д゚彡「――こんばんは」
ツンの背後から現われたのは、フサギコだ。
その右目はもはや開かれることが無いように、縫い付けられるように閉じられていた。
右手は包帯とギプスで固定されているという痛々しい格好。
( ,,゚Д゚)「アンタら、アストクルフ家の……あの指輪を返してほしい、か?」
(*゚ー゚)「ちょ、ちょっとギコ君……」
あの戦いの後、フサギコが気絶してしまったので黒い指輪はドクオが回収していた。
アレは元々はアストクルフ家の物。
戦闘行為に紛れて盗んできたようなもので、それをフサギコが返せと言う道理も理解出来る。
- 19: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:08:06.06 ID:lv/dT/ug0
- しかし彼は異なる返答を発した。
ミ,,"Д゚彡「いえ、そういうつもりで来たわけではありません」
(´<_` )「では何故?」
ミ,,"Д゚彡「……話を、聞かせて欲しいんです」
( ,,゚Д゚)「……どういう意味だ?」
満身創痍の彼は、途切れ途切れに言葉を発していく。
ミ,,"Д゚彡「漆黒の指輪……いえ、貴方達が持つ指輪に呼ばれた、とでも言うのでしょうか。
おそらく貴方達は今、戦える人材を欲している……そうでしょう?」
ξ゚听)ξ「え、フサギコ……?」
( ,,゚Д゚)「確かに戦力は多い方が良いが――」
ミ,,"Д゚彡「では、話を聞かせてください。
私でも力になれることがあるのならば、それを私は手伝いたいと思っています」
(´・ω・`)「右腕と右耳、そして右目が機能していないのに、かい?」
ショボンがすぐさまフサギコの怪我の具合を察知し、問いかける。
その言葉に、一瞬、彼の表情に暗い影が射す。
- 20: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:10:32.73 ID:lv/dT/ug0
- ミ,,"Д゚彡「しかし――」
しかし再度顔を上げた時には、もはや表情に闇は存在しなかった。
ミ,,"Д゚彡「協力したくて……そして、知りたいんです。
クルト博士とミーディ様が、何処で何故知り合ったのか、を」
(´<_` )「そういえば、そういう因縁もあったな」
思い出したように弟者が手をポン、と叩く。
その言葉を聞き
( ,,゚Д゚)「じゃあ、アンタもクルトの因縁に巻き込まれてるってわけか……なら、好きにしろ」
呆れたように吐息。
(´・ω・`)「僕らのリーダーの許可が出たよ。
さぁ、そこは寒いだろうから中に入って入って」
( ,,゚Д゚)「……いつからリーダーになった?」
ミ,,"Д゚彡「ありがとうございます……お嬢様、ここからは私一人で」
ξ゚听)ξ「え、でも……」
ミ,,"Д゚彡「あとは外で待っている部下達に屋敷まで送ってもらって下さい。
私は一仕事終えてから、そちらに戻りますから――」
- 22: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:14:22.08 ID:lv/dT/ug0
- ξ゚听)ξ「あー……却下」
ミ;,,"Д゚彡「は?」
ξ゚听)ξ「どうせ死ぬ覚悟云々――そんな漫画みたいな感じで行くつもりなんでしょ?
十年以上も一緒にいるんだから、それくらい解るわよ」
ミ;,,"Д゚彡「えーっと、その……」
ξ゚听)ξ「だから、私は最後まで貴方に抗うわ。
明日まで嫌というほど説得してあげる……やめておきなさい、戻ってきなさいって」
ミ,,"Д゚彡「お、お嬢様……」
(´・ω・`)「うん、別に客が一人増えたからって僕らの方は問題ないし……。
何より、主人に逆らうのはよくないよね?」
ミ,,"Д゚彡「……解りました」
フサギコは諦めたように肩を落とす。
外で待機している者達にまだもう少し待つように告げ、店の中に入ってきた。
ブーンとドクオの座っているテーブルに、二人は着席する。
- 24: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:16:27.52 ID:lv/dT/ug0
- ミ,,"Д゚彡「ドクオさん……ですよね。
あの時はありがとうございました」
('A`)「いやいや、俺の力なんて微力なもんスよ」
少し照れながら謙遜するドクオ。
かつての戦友にまた会えて嬉しいのだろうか。
そんな親友の様子を見て、ブーンは一人取り残された気分になる。
( ^ω^)「…………」
ドクオとフサギコとツン。
兄者と弟者。
ギコとしぃとショボン。
それぞれの組み合わせを見るが
どれもこれも、ベストな組み合わせだと再確認させられるだけだ。
(;^ω^)(な、何だか居づらいお……)
その様子を知ってか知らずか、ショボンが声を上げた。
(´・ω・`)「さて……フサギコさんのためにと、確認のためにもう一度説明するね」
- 25: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:19:21.17 ID:lv/dT/ug0
- 黒の部屋がある。
かつて、クーと兄者が足を踏み入れた地。
広い空間の中心にカプセルがあり、そして――
(-_-)「さて……彼らがそろそろ動き出そうとしているね。
昨日、流石兄弟あたりだろうが、ハッキングした痕跡が残っている。
これで私が適当に作った『兵』のことを知ったはず……。
つまり彼らは悠長に逃げ続けることは出来なくなったわけだ」
まるで独り言のように呟くリトガーと――
川 ゚ -゚)「……そうだな」
それに静かに答えるクーだ。
(-_-)「君はどうする?
どこかに隠れて完成品の行く末を見届けるかね?」
川 ゚ -゚)「……彼らの目的は」
(-_-)「『完成品』の破壊だろう」
川 ゚ -゚)「――ならば、私も出よう」
(-_-)「解らんね……今更だが何故、君は敢えてこちらに残った?
彼らから敵扱いをされるのは目に見えていたはずだ」
- 27: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:21:36.17 ID:lv/dT/ug0
- 質問に対し、クーはやはり静かに答える。
川 ゚ -゚)「微かにだが、記憶が……戻ってきているんだ」
(-_-)「クルト博士との記憶が、かね? 『かつて』のこの場所にいることで?」
川 ゚ -゚)「……あぁ、おそらくは」
(-_-)「記憶のために、今までの絆を断ち切ったわけか」
解らん、解らんね、とリトガーは呟く。
しかしクーは無視。
先ほどから続けている『カプセルの凝視』という作業に戻った。
食事は摂っているものの、あれ以来、一日のほとんどの時間をカプセルの凝視に費やしている。
まるで何かにとり憑かれたかのように。
(-_-)「まぁ、良いか……私の命も、次の戦いで尽きるだろう。
後は『アレ』に託すとして――」
小さなモニターに目を向ける。
そこには『ある形』をした同じモノが延々と並んでいる。
ある種、不気味さを感じさせる光景だった。
(-_-)「……『鍵』も『壁』も『矛』も全て揃った」
その様子を見ながら、ほんの少しニヤリと口の端を浮かべるのだった。
- 29: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:24:04.48 ID:lv/dT/ug0
- ブーンは『バーボンハウス』の外にいた。
付近に人影は無く、しかし人の気配を感じる。
おそらくはフサギコの部下だろう。
しかし敵意は感じられぬので、ブーンは気楽に壁に身を預けていた。
もうすぐ12月。
空は曇天で、今にも雪か雨が降りそうだ。
ショボンと兄者の考察を含めた説明が終わった後、改めてフサギコは戦闘の意思を明確にした。
それを今夜中にツンが説得するつもりらしい。
無駄だと解っているのに、どうしてそんなことをするのか。
ブーンにはイマイチそれが理解出来なかった。
流石兄弟も、ギコとしぃも、フサギコとツンも、ドクオとショボンも、今店内のそれぞれの場所で話しこんでいる。
おそらく明日にでも突入を掛けるための再確認……またはその緊張・恐怖を忘れよう、とかいうモノだろう。
ブーンは一人取り残され、そして居心地も悪かったので外に出ていた。
吐息。
白い息が立ち上り、そして消えていく。
( ´ω`)「……ハァ」
ため息のような、しかし違うような、そんな吐息が勝手に漏れる。
明日。
おそらく、皆は行くのだろう。
そして自分も――
- 30: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:27:42.22 ID:lv/dT/ug0
- そこで思考が止まる。
( ^ω^)「……何で、僕も行くんだお?」
独り言。
しかし自分へ問いかけた疑問。
自分もついて行って、何になるのだろうか。
単なる戦力増加の駒として数えられるだけなのだろうか。
解らない。
自分は、何故戦いに行く?
もはや逃げられないから?
もはや戦う以外の選択肢が無いから?
ありえない。
世界は基本的に自由だ。
自分がどんな選択をしようとも、それを咎める人間はいても、しかし禁じられているわけではない。
( ^ω^)「……やっぱり、僕はクーに――」
('A`)「おっ、こんなところにいたか」
ドクオ。
彼がバーの扉を開き、外に出てきた。
- 33: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:30:09.70 ID:lv/dT/ug0
- ( ^ω^)「ドクオ……」
('A`)「おぉ、寒い……何やってんだよ、こんなとこで」
( ^ω^)「……何でもないお」
('A`)「そっか。 なら、俺の話でも聞いてくれや」
何を言い出すのかと思えば、何だこの親友は。
そんなブーンの心境を知らずにドクオは語りだす。
('A`)「俺さ……人を殺しちまったんだ」
知っている。
クックルを一撃で葬ったのはギコやツンの証言で解っていた。
親友が人を殺したと聞いたとき、意外と冷静な自分がいることに驚いたものだ。
('A`)「でも俺、意外と冷静でさ……どうなってんだろうな?」
同じことを言う親友。
しかし、それは解らない。
誰もドクオの気持ちなんて知るわけがないし、それは自分のみが知る絶対領域での話だ。
沈黙を答えと受け取ったのか、彼は話を切り替える。
('A`)「……俺がツンのことを好きだって知ってるよな?」
(;^ω^)「今更何を言ってるんだお。 前から知ってたお」
(*'A`)「やっぱなぁ」
- 35: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:32:46.60 ID:lv/dT/ug0
- 頬をポリポリと掻きながら、照れたように笑うドクオ。
しかし次の瞬間には表情を一転させた。
('A`)「でも、さ」
( ^ω^)「お?」
('A`)「ツンって……人を殺した人でも好きになってくれるのかなぁ」
(;^ω^)「え……」
無茶苦茶な問いかけだ。
答えなんて本人しか知らないし、そんなの自分に聞かれても困る。
(;^ω^)「そんなの……僕には解らないお。
本人に聞いた方が早いお?」
('A`)「だよな」
ドクオはその答えに満足したのか、ブーンの肩を叩いた。
('A`)「ま、そういうこった。
お前もウジウジ悩むんじゃなくて、心機一転した方が楽だぜ?」
そう言い残し、彼は再びバーの中へと戻っていった。
- 37: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:35:26.91 ID:lv/dT/ug0
- しばし呆然としていたブーンだが、彼の真意に気付く。
(;^ω^)(やられたお)
ドクオはこう言いたかったのだろう。
一人で悩むんじゃなくて、とにかく本人に会っちまえ、と。
( ´ω`)「まぁ……ね」
それしか無いのだろう、と思う。
その方法が己の気持ちを一番納得させ、そして後悔がないだろう、と。
ただ、自分は恐れているのだ。
クーに会うことを。
その恐怖を乗り越えた先には、何があるのだろうか。
空を見上げる。
相変わらずの曇天だ。
白い息が立ち上るのが見える。
( ´ω`)(……他の人は戦う理由があるんだろうかお?)
見上げなら、ふとそんなことを思った。
- 38: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:37:56.13 ID:lv/dT/ug0
- 『バーボンハウス』内。
ドクオが「寒い寒い」と言いながら戻ってきたの同時。
ショボンは捕虜に食事を与えるべく、カウンター奥の隅に向かって歩いていた。
その隅の暗がりには――
(´・ω・`)「はい、どうぞ」
(;゚∀゚)「テメェ……手足縛られてんのに、どうやって食えってんだよ」
(´・ω・`)「知恵を使いなよ、知恵を」
柱に縛り付けられたジョルジュが唸るが無視。
まぁ、捕らえた当初に比べれば静かになったものだ。
今、彼は諦めているような様子で、時々こちらの話に耳を傾けているのが確認されている。
そんな彼の足元に食事を置いて、ギコ達の元へ戻っていった。
(´・ω・`)「……嬉しそうだね」
カウンター席で、仲良く喋るギコとしぃに向かって語りかける。
- 40: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:40:16.16 ID:lv/dT/ug0
- それに気付いたギコが
( ,,゚Д゚)「あぁ、そうだな」
と、カウンター上のある場所に目を向ける。
そこには計十一個の指輪が無造作に、しかしまとめて置かれていた。
青色に輝く、1st−W『グラニード』
黒色に輝く、3rd−W『ウィレフェル』
桃色に輝く、4th−W『アーウィン』
紫色に輝く、5th−W『ミストラン』
赤色に輝く、6th−W『ギルミルキル』
茶色に輝く、7th−W『ガロン』
白色に輝く、8th−W『クレティウス』
灰色に輝く、9th−W『ユストーン』
橙色に輝く、10th−W『レードラーク』
金色に輝く、12th−W『ジゴミル』
緑色に輝く、13th−W『ラクハーツ』
それらが、まるで会合を喜んでいるかのようにそれぞれ輝きを放っている。
擬似精神同士が会話でもしているのだろうか。
- 42: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:43:24.18 ID:lv/dT/ug0
- しぃが、その虹色に近い輝きを目に入れながら
(*゚ー゚)「足りないのは2nd−W『ロステック』と11th−W『ミシュガルト』……。
そして、未だ誰も姿さえ見たことがない14th−Wね」
( ,,゚Д゚)「明日が勝負の日……足りない分は仕方ないだろう。
ロステックはともかく、ミシュガルドは向こうの手にあるしな。
そして今から14th−Wを探そうにも時間が足りない」
(´・ω・`)「だろうね……リトガーがシビレを切らして、こちらに攻めてくるかもしれないし。
昨日に流石兄弟さんが調べてきたデータが本当ならば
リトガーが作り上げたと思われる大量の黒衣の兵士が攻めてくるはずだからね」
もしそうなれば
( ,,゚Д゚)「……都市ニューソクはおそらく甚大な被害を被る。
行動が遅いせいでそうなってしまったら、俺達はともかくアイツらは耐えられないだろう」
ふと背後に視線を向ける。
そこにはテーブルを囲んで座り、騒がしく会話をしている三人の姿。
ツン、フサギコ、そしてドクオ……そして今この場にはいないブーン。
( ,,゚Д゚)「彼らはまだ若く、そして心が弱い。
明日の戦い、出来ればあまり参加してほしくないのだがな……」
- 45: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:45:38.71 ID:lv/dT/ug0
- (´・ω・`)「随分と弱気……っていうか、過小評価してるね。
でもさ、決めるのは彼らだから――」
( ,,゚Д゚)「解っている……もし、そうなれば俺は全力でアイツらを護る。
誰も死者なんか出すものか」
( ゚∀゚)「ハッ、ツーを殺した野郎が何言ってんだか」
ジョルジュの軽口が耳に入る。
( ,,゚Д゚)「おい、ショボン……アイツも外に放り出しておけ」
(´・ω・`)「だね。 ついでに外にいる彼と、ちょっと話してくるよ」
(;゚∀゚)「え、ちょ、待てって……今のは俺様が悪いのか!?
冗談じゃねぇぞ、おい――あぁぁぁぁ!」
叫び声を上げながら放り出される。
それを見届けたギコは、満足したかのように一気に酒を喉に流し込んだ。
- 48: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:47:48.53 ID:lv/dT/ug0
- ( ,,゚Д゚)「さて、と……」
(*゚ー゚)「?」
( ,,゚Д゚)「他に聞く奴がいなくなったから丁度良い。
お前に聞いておきたいことがある」
(*゚ー゚)「何?」
( ,,゚Д゚)「明日……本当に戦うつもりか?」
ストレートな質問。
その言葉を受け止めたしぃは、少しの沈黙の後に
(*゚ー゚)「……うん」
と、力強く頷いた。
(*゚ー゚)「私は今までギコ君の足手まといだったけど……今はそうじゃないわ。
10th−Wという立派な力がある」
10th−W『レードラーク』。
飛翔と羽片攻撃、そして防御を得意とし、主にかく乱や援護に使えそうな能力だ。
その戦闘能力は対ツー戦で立証されている。
- 51: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:50:20.67 ID:lv/dT/ug0
- (*゚ー゚)「これで私はギコ君と同等の位置に立てる。
だから……おそらく最後の指輪戦闘になる明日の戦いには、参加したい」
( ,,゚Д゚)「今までの清算をする、と言いたいわけか」
(*゚ー゚)「気持ち的にはそんな感じかも。
でも、それ以上にギコ君を手伝いたいって気持ちが大きいと思う。
それにほら、片腕無くしちゃったのも私のせいみたいなものだし……サポートしたいなって」
( ,,゚Д゚)「……そうか」
ギコはそれ以降言葉を発しない。
考えているのか、それとも諦めを自分に言い聞かせているのか。
それが数十秒続いた時。
今度はしぃが問いかけた。
(*゚ー゚)「ギコ君は……どうして戦うの?」
( ,,゚Д゚)「俺か? 俺は――」
(*゚ー゚)「私のせいで左手を失って……それでも、戦うの?」
辛辣な、そして自虐ともいえる試すような質問。
ギコは答えを吐き出すことが出来ない。
( ,,゚Д゚)「…………」
- 52: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:52:29.85 ID:lv/dT/ug0
- (*゚ー゚)「ギコ君と私は、いつでも退ける立場なんだよ?
それでも戦う理由って……何?」
( ,,゚Д゚)「……俺は」
俺は、何なのだろうか。
『VIP』という組織は、事実上もはや存在しない。
しぃの両親を奪った奴らは、事実上もはや存在しない。
仇討ちという本来の目的はアストクルフ家での戦闘で終わったはずだ。
なのだが、未だ自分は指輪を持ち、そして明日にはリトガーとの戦いに備えてバーボンハウスに居る。
何故だろう。
ここで降りても問題はない。
しかし何故、俺はここにいる?
( ,,゚Д゚)「俺は――」
少しの思考。
答えは意外と簡単に見つかった。
( ,,゚Д゚)「……ただ単に護りたいんだ、と思う」
(*゚ー゚)「護りたい?」
- 53: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:55:55.38 ID:lv/dT/ug0
- ( ,,゚Д゚)「考えてもみろ。
内藤、ドクオ、流石兄弟、ショボン、そしておそらくフサギコ……どうだ?」
(;*゚ー゚)「……え、えーっと?」
彼の意図が解らず、首を傾げる。
( ,,゚Д゚)「今言ったメンバーが、『完成品』を破壊しに明日突撃するわけだ。
何かこう、心配というか放っておけなくないか?」
(;*゚ー゚)「……皆には悪いけど、確かに」
何とも失礼な二人である。
( ,,゚Д゚)「……最後まで面倒を見ようと思う。
それからのことは、明日が終わった後でゆっくりと……。
それに、明日の戦いが終われば指輪のことも考えなくて良いしな」
(*゚ー゚)「……うん、それが良いかもね。
でも、最初の時……あの時のギコ君は――」
そんなしぃの口を、ギコが手で塞いだ。
( ,,゚Д゚)「わざわざ過去を語る必要は無い……そんな話など、二人だけが知っていればそれでいい」
(*゚ー゚)「……そうだね」
二人の決意は固まったようだ。
さて、後の問題は――
- 56: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:58:45.77 ID:lv/dT/ug0
- 『バーボンハウス』の外。
未だ壁に身を預けているブーン。
その隣の扉が、突如として開かれる。
( ^ω^)「お?」
(;゚∀゚)「いってぇ!」
飛び出してきたのは、縄で縛られたジョルジュだった。
そのままゴロゴロと冷たい道路を転がり、向かい側の壁に激突する。
(;^ω^)「な、何だお……?」
(´・ω・`)「店の中に置いておくには、あまりにアレなんでね」
続いてショボンも出てくる。
ギャアギャアと喚くジョルジュを無視し、ショボンはブーンの隣で壁に背中を預ける。
(´・ω・`)「…………」
( ^ω^)「…………」
沈黙。
よくよく考えれば、あの一年前の一件以来まともに話すのは初めてだ。
アストクルフ家での時は、戦いに集中していて落ち着いている暇はなかった。
心を落ち着かせていざ向き合ってみると、やはり緊張する。
- 59: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:01:48.02 ID:lv/dT/ug0
- ブーンが何か言おうと口を開きかけたとき――
(´・ω・`)「……ブーン」
(;^ω^)「お?」
(´・ω・`)「君は、僕と別れた後……何をしていたんだい?」
素朴な疑問。
しかし、互いの心の間にある壁を壊すには丁度良いのかもしれない。
( ^ω^)「僕は相変わらずだお。
あれから、何も変わらず学校で色々とやってきたんだお」
(´・ω・`)「ふぅん……」
( ^ω^)「ショボンは? アレからどうなったんだお?」
(´・ω・`)「僕の方は、まぁ色々と。
色々とあったけど……今は君の知ってる通りだよ。
それに、『かつて』の僕はもういないから」
どうやら語る気はあまり無いらしい。
責任を感じている結果か、ただ単に言いたくないだけなのか。
- 60: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:04:35.67 ID:lv/dT/ug0
- 解らぬが、とりあえず質問を変える。
( ^ω^)「あの戦いの技術はどうして?」
(´・ω・`)「この御時勢、裏の仕事なんてやってると命を狙ったりする奴が現われるんだよ。
最初は弟者さんに護ってもらってたけど……やっぱり、それじゃあ納得出来なくてね」
( ^ω^)「それで?」
(´・ω・`)「最初に出した結論は、情報の制限。
途中から弟者さんが関心を持っていた指輪関係の情報のみに限ることで
自然と命を狙われる確率は減ったんだ」
ちなみに
(´・ω・`)「弟者さんが持ってる12th−Wは、その制限された情報屋を始めたときに手に入れた。
ガセだと思ってた情報が真実で……詳しいことは省くけど、偶然手に入れたようなものだよ」
( ^ω^)「じゃあ、君の5th−Wは?」
(´・ω・`)「モララーさんからもらったんだ。
ギコさんの情報を頼まれて流したときに、そのお礼にって」
(;^ω^)「あの人が……?」
(´・ω・`)「自分はもう既に持ってるし、これ以外使うつもりはないって言って無理矢理渡されたよ。
そりゃあ、僕だって拒否したけど……いや、あの人ホント押しが強いね」
(;^ω^)「まぁ、確かに……」
- 62: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:09:01.14 ID:lv/dT/ug0
- 当初、二つのウェポンは二人を主と認めなかった。
しかし諦めずに、いつも指にはめて生活していたところ、
段々と心を開いた……というか、こちらを理解してくれていったらしい。
それからショボンは、己の身を護れるよう訓練を開始した。
幸いにも弟者が重度の格闘技ヲタだったので、練習方法などには不便しなかったとか。
(´・ω・`)「ちなみに弟者さんが格闘技ヲタっていうのは秘密だよ。
兄者さんさえ知らないことになってるから」
(;^ω^)「解ったお」
人は見かけに……よるのだろうか。
隠すほどでもないように思えるが、しかし言えば酷い目に遭うだろうとは容易に予想出来た。
(´・ω・`)「それを半年くらい続けて……まぁ、普通に戦えるくらいの実力はつけたつもりだよ。
でもまぁ、ミストランが力を貸してくれているっていうのもあるかもしれないけどね」
( ^ω^)(まぁ、半年くらいで強くなれるわけないし……ショボンの言う通りだおね)
- 65: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:13:15.95 ID:lv/dT/ug0
- (´・ω・`)「それでね、ブーン」
( ^ω^)「何だお?」
(´・ω・`)「あの時は……ごめん」
頭を下げながら放ったのは、対ジョルジュ戦の時と同じ台詞。
その姿を見て、慌てながら
(;^ω^)「あ、頭を下げることないお!
僕だって君を殴ってしまって悪いと思ってるんだお! 僕こそ謝るべきだお!」
(´・ω・`)「その原因を作ったのは僕だよ。
だから、僕が謝るべきだ……ケジメをつける意味でもね」
(;^ω^)「い、いや、そんなこと言われても――」
会話はグルグルと悪循環にはまっていく。
それがしばらく続いた、そんな時。
( ゚∀゚)「テメェら……馬鹿か?」
ジョルジュだ。
道路の端っこで全身を縄で縛られ横たわっているジョルジュが、こちらに向かって口を開いた。
( ゚∀゚)「どっちが悪いだの、悪くないだの……馬鹿かってんだよ」
(´・ω・`)「……どういう意味だい? 変なこと言ったら変態さん呼ぶよ?」
(;゚∀゚)「なんかスゲェ嫌な脅しだな、おい……」
- 68: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:16:39.67 ID:lv/dT/ug0
- 冷や汗を流しながら、ジョルジュは続ける。
( ゚∀゚)「テメェら、くだらねぇんだよ。
どっちもどっちで、両方悪いってことにすりゃいいじゃねぇか。
話を聞いた限りだと、どうせ喧嘩別れなんだろ?
それなら、そもそもどっちが悪いとかじゃねぇだろーが」
続ける。
( ゚∀゚)「それに、もう互いに憎みあったりしてねぇんだろ?
だったら難しい話なんて放ってよ、素直になりゃいいじゃねぇか」
(;^ω^)「ジョ、ジョルジュ……?」
その言葉に、ジョルジュはハッと慌てるような表情で
(;゚∀゚)「う、うるせぇ!
暇だったからテメェらをちょっとからかっただけだ!」
(;^ω^)「ここに妙なツンデレを見たお……蟹沢きぬっぽいお」
(#゚∀゚)「馬鹿野郎! オススメは祈先生に決まってんだろ!
あのボインボインのおっぱい嘗めんな!! ボインボインだぞ!?」
(;^ω^)「知ってるのかお……」
半ば呆れ気味にジョルジュを見つめるブーン。
- 73: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:19:09.10 ID:lv/dT/ug0
- そんな彼を見つつ
(´・ω・`)「確かに彼の言う通り……少し過去に固執してたかもしれないね。
喧嘩別れしてたかが一年、と考えるのが得策かな?」
( ^ω^)「でも、君とこうして友情を深められたのは、その喧嘩別れのお陰かもしれないお」
(´・ω・`)「何事も前向きに、か……それも良いかもしれない」
ショボンは納得したかのように、何度か頷く。
( ^ω^)「ところで、明日の戦いはどうするんだお?」
(´・ω・`)「僕も行くよ。
君達を巡り合せたのは僕だし、クーさんにも謝りたいしね」
( ^ω^)「そうかお……」
(´・ω・`)「ところで聞き返すようで悪いけど、明日が無事に終わったらどうするんだい?」
( ^ω^)「うーん……特に変わることは無いと思うお。
普通に学校へ行って――」
- 77: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:20:58.13 ID:lv/dT/ug0
- あ、とブーンは気付いたように付け足した。
( ^ω^)「もちろん、ショボンにも戻ってきてほしいお」
(´・ω・`)「え……?」
( ^ω^)「昔みたいに、僕とドクオとショボン、ツン……そしてクーとで楽しくやっていきたいんだお」
その言葉に、ショボンはしばし呆然とする。
そして――
(´・ω・`)「……うん、そうだね」
コクリ、と確かに頷いた。
( ^ω^)「そうだお。 この御時勢、高校くらい卒業してないと困るお」
(´・ω・`)「それはそうだけど、君、随分と現実的だね……」
(;^ω^)「そ、そうかお?」
(´・ω・`)「まぁ、君らしくて良いと思うけど。
じゃあ、僕は明日の用意があるから店に戻るよ」
壁から身を剥がし、扉を開けるショボン。
- 78: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:23:38.68 ID:lv/dT/ug0
- そんな彼の耳に親友の声がかかる。
( ^ω^)「ショボン」
(´・ω・`)「ん? 何だい?」
( ^ω^)「明日からもよろしく……そして、ありがとうだお」
(´・ω・`)「……僕の方こそ、ありがとうだよ。
こっちもずっと悩んでたことが吹き飛んだ……これでミストランも扱えるしね」
バタン、と扉が閉まる。
その様子を見届けたブーンは、改めて空を見上げた。
相変わらずの曇天。
しかし、だ。
己の心は晴れているような――否、晴れたような気がする。
自分には仲間がいて、大切な親友がいて……会いたいと焦がれる人もいる。
それはとても贅沢なことなのだろう。
だから
( ^ω^)(だから……僕は絶対にクーに会うんだお)
硬く握る拳。
明日。
明日、全てが決着する。
皆の思いも、自分の方向も、彼女の意思も、そして――
- 83: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:27:48.04 ID:lv/dT/ug0
- 決意を新たにしたブーンが店の中に入ってから数分。
道路の向こう岸にうち捨てられたような格好のジョルジュは
(;゚∀゚)「なぁなぁ……俺、凍死しちゃうよ? なぁ?」
答える声はない。
しかし、視線を感じた。
見る。
『バーボンハウス』の物陰……そこから、逞しい身体の男がこちらをチラチラ見ているのが見えた。
何だか頬が赤いようにも見えるが――
(;゚∀゚)「……いや、何でこっち見るんだよ。
ショボンの野郎は呼んでねぇぞ? な? な?」
言葉が聞こえたのかは解らないが、男は寂しそうな表情で去っていった。
(;゚∀゚)「……何か今、人生の大事な分岐点を見事突破したような気がするぜ」
冷たい道路に身を置きながら、ジョルジュがため息を吐くのが聞こえた。
- 88: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:29:52.84 ID:lv/dT/ug0
- 『バーボンハウス』内のカウンター席。
その奥の方で、兄弟がそれぞれのPCを操っていた。
(´<_` )「どうだ、兄者……他に何か解ったことは?」
( ´_ゝ`)「ふぅむ……いや、これは難しい」
(´<_` )「どうした兄者、助けが必要ならばいつでも俺が力を――」
言いつつ、兄者のPCを覗き込む。
画面には某有名掲示板。
そこにはアドレスが張られた書き込みが――
( ´_ゝ`)「いや、最近目覚めたんで魔法少女系の画像集めてるんだけどさ。
このアドは本当に信用出来るのか、と……」
(´<_` )「そんなもん」
カチリと、マウスを引っ手繰ってクリックする。
途端、ガガガと音を立てながらPCが振動を始める。
( ´_ゝ`)「OK、ブラクラGET」
(´<_` )「流石だな、兄者――ところで」
- 92: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:32:06.11 ID:lv/dT/ug0
- 言いつつ弟者がハリセンを背後から取り出す。
(´<_`#)「人が真剣にやっている隣で何を遊んでいる!」
( ´_ゝ`)「落ち着くんだ、弟者。
というかハリセンでは迫力がないとマジレスしてみる」
(´<_` )「俺達は皆が有利になるよう、更なる情報を得ないといけないのだぞ」
( ´_ゝ`)「いらんだろ、そんなもの」
(´<_`;)「何と! 兄者、アンタは本当に俺の尊敬する兄者か!?」
まぁまぁ、と兄者が嗜める。
( ´_ゝ`)「いくら敵が多かろうが、どんなトラップがあろうが――
俺達はそれを突破する必要があり、そしてする突破する力もある。
敵戦力の情報が得れただけでも良しとしろ……おそらくアレはわざと寄越されたはずだ。
そして次のハッキングは通用しないはず」
(´<_`;)「しかし前情報くらいは――」
( ´_ゝ`)「無理して偽情報つかまされてかく乱されるよりも、ぶっつけ本番で行ったほうが良いときもあるさ。
それに敵のやりそうなことくらい予想がつくしな。
俺達はその『やりそうなこと』を予想し、全てに対応出来るようにしておくのが仕事だろう」
- 94: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:34:26.54 ID:lv/dT/ug0
- 兄者のその意外と真剣な表情に、弟者はつい気圧される。
顎に手をやりながら真剣に考え込み――
(´<_`;)「ふむ……一理あるかもしれん」
( ´_ゝ`)(まぁ、ぶっちゃけ面倒ってのが九割なんだけど)
(´<_` )「兄者、何か言ったか?」
( ´_ゝ`)「いや、何も?
さぁ、魔法少女捜索の旅に出るぞ!
俺の戦いはこれからだぜ! 兄者の来世にご期待下さい」
(´<_` )「何か綺麗に収めようと……否、魔法少女の時点で綺麗ではないな」
何か妙に納得したようで弟者はPCに向き直る。
そして、口を開いた。
(´<_` )「そうなると俺も暇だな……そうだ、どちらが魔法少女画像を多くGET出来るか勝負しないか?」
( ´_ゝ`)「ふはは、俺に適うと思ったら――結構適っちゃうんだぜ?」
(´<_`;)「そこは自信持とうな、兄者?」
二人の兄弟は、昔からやっていた遊びのような勝負を始める。
もはや明日の戦いは見えていないのか。
ただの通過点としてしか見ていないのか。
解らぬがしかし、この兄弟愛は何事にも屈しない、という説得力がそこに在った。
- 95: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:37:48.20 ID:lv/dT/ug0
- バーの割と広い空間。
そこにはテーブルと椅子が存在し、そこに三人の人影が座っている。
左からツン、フサギコ、ドクオの三人だ。
ξ゚听)ξ「だーから、アンタは別に行く必要ないでしょ?
どうせこの人達が情報集めて帰ってくるわよ」
ミ,,"Д゚彡「いえ、確かにそうかもしれませんが……」
('A`)(…………)
先ほどからこの繰り返しだ。
ツンが行くなと説得し、しかしフサギコが反論する。
何故、ツンがフサギコをこうも執拗に引き止めるのか。
何故、フサギコはそれに反抗してまで戦いたいのか。
実はドクオにもよく解っていない。
二人には二人なりの考えがあるのだろう、と思いながら菓子を頬張る。
- 96: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:41:15.60 ID:lv/dT/ug0
- そんな時だ。
ミ,,"Д゚彡「そういえば――」
思い出したように、フサギコがドクオに話しかける。
どうやらツンの説得から逃げるための策らしい。
ミ,,"Д゚彡「ドクオさんは、指輪をどうやって?」
どうやって手に入れたのか、という質問だろうか。
('A`)「えーっと……言いにくいんスけど……」
頭を掻きながら続ける。
('A`)「あれ……実は買ったんスよ」
ミ;,,"Д゚彡「か、買った……?」
('A`)「俺、アクセサリー類を集めるのが趣味で……中学の頃だったかな。
ちょっと怪しい露店でこの指輪を見つけたんスよ」
妙で見たことも無いアクセサリーが売ってあって、当時のドクオは驚いた。
これがアクセサリー収集という趣味に加速を掛けたと言っても過言ではないだろう。
その露店で、ふと手に取ったのが――あの指輪だ。
('A`)「普段ならもっと格好良いのが欲しいって思うはずなんスけど……。
どうも、何か惹き付けられたっていうか……」
- 98: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:43:46.72 ID:lv/dT/ug0
- どうやら自分にもよく解らないらしい。
果たして指輪が彼を呼んだのか。
それとも彼が指輪に惹き付けられたのか。
解らぬが、しかし運命じみたモノを感じる、とドクオは一人思う。
それを聞いたフサギコが、少し焦ったような表情で
ミ,,"Д゚彡「重い宿命みたいなものがあると思ったんですが……人それぞれなんですね」
('A`)「そうッスね……それにもしかしたら、俺が一番戦う理由が弱いかもしれねぇッス」
ミ,,"Д゚彡「そうなんですか?」
('A`)「何せ、戦う理由は『ブーンのため』ッスからね」
ミ,,"Д゚彡「己のためではない、と?」
('A`)「俺はブーンみたいに会うべき人もいないし
ギコさん達みたいな使命感っていうか、そんなものもないし
流石兄弟みたいに指輪やクルト博士に興味があるわけでもない。
……ただ、ブーンが行くっていうなら、俺はそれの手伝いをしたいんス」
ドクオは素直に自分の思いを綴っていく。
ミ,,"Д゚彡「死ぬという可能性もあるんですよ?
それで死んだり怪我しても、納得出来るんですか?」
('A`)「俺はブーンとクーに命を助けてもらったんスよ。
だから……借りを返したいっていうか、見捨てて逃げるわけにはいかないっていうか」
- 101: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:45:36.41 ID:lv/dT/ug0
- 使命感とは違い、しかし使命感に似たような感情だ。
逃げ出したいがやらねばならぬという切迫感……それがドクオを動かしている。
ξ゚听)ξ「そんなの結局自分の都合でしょ?
嫌ならやめればいいじゃない……誰も文句は言わないわよ、きっと」
('A`)「まぁなぁ……でも、親友を放って自分だけのうのうと生きるつもりはねぇってことだよ」
今のブーンは、精神的に少し危うい状態にある。
それはドクオにも理解出来ていた。
だからこそ支えたい。
心が折れてしまわないよう、邪魔な火の粉は自分が払う。
ブーンには己のすべきことに集中してほしい。
それが、今のドクオの戦いの原動力であった。
弱いけど、頼りないけど……それでも力になりたい。
命を救ってくれた恩人が悩み、そしてなお戦おうという姿勢を見せているのだ。
何の不自由も無い自分がそれを放って逃げて……それでは納得が出来ない。
自分勝手な理由だと思う。
しかし、自分の感情は抑えきれない。
それだけだ。
('A`)「ただ俺は、自分のしたいことをしたいだけ……ッスよ」
- 108: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:47:41.00 ID:lv/dT/ug0
- ミ,,"Д゚彡「……しかし、それはとても立派なことだと思いますよ」
('A`)「ハハ、褒めても何も出ねぇッスよ」
ミ,,"Д゚彡「いえ、本気でそう思います。
私もこの仕事に従事しているので多少理解できますが
人のために尽くすという行為は、並大抵の覚悟では出来ません」
彼は真剣な表情で語っていく。
ミ,,"Д゚彡「はっきり言いましょう……私は貴方を尊敬します。
契約された主人のためでもなく、金や名誉のためでもなく……
ただ友のために、と言い切るのは凄いと思います」
(*'A`)「いや、だから、そんな褒めても――」
と言いつつ、彼の顔は真っ赤だ。
頭を忙しなくポリポリと掻きながら、ひたすら赤面。
ξ゚听)ξ「っていうか、私の話はどうなったわけ?」
ミ,,"Д゚彡「お嬢様」
言葉と同時に、フサギコがマジメな表情でツンに向き直る。
そのいつもとは少し違う、強気な態度に少しツンはたじろいだ。
ξ;゚听)ξ「え、な、何?」
- 111: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:49:56.47 ID:lv/dT/ug0
- ミ,,"Д゚彡「戦う理由がもう一つ出来ました。
私はドクオさんを、そして内藤さんを支え、彼らが進むべき道を作るために戦いたい」
そう語る目は真剣そのものだ。
主のツンでさえ、滅多に見たことが無い表情。
ミ,,"Д゚彡「明日、私は行きます……命令違反で解雇するならば、ご自由に。
やるべきことを見つけました。
男として、ここは引き下がれません」
戸惑うツンを見ながら、しかしとフサギコが付け加える。
ミ,,"Д゚彡「しかしもし……明日の戦いで無事に戻ってこれたならば
もし、その時に貴女の側にいても良いのなら……それ以降はもうワガママを言いません。
貴女を一生賭けて護り通すことを誓います」
ξ゚听)ξ「フサギコ……」
呆然と見つめる。
まさか自分の部下が、あの彼が、こんな熱い部分を持っていたとは。
これはツンにとって新発見であった。
ξ゚听)ξ「…………」
これは、彼にしか解らぬ覚悟なのだろうか。
自分の立ち入れる世界ではないのだろうか。
そうだとすれば、自分のしていることは焼け石に水なのだろうか。
他に言うべき言葉があるのではないか。
様々な思惑が頭を駆け巡り、そして遂に結論が――
- 116: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:52:37.31 ID:lv/dT/ug0
- ξ゚听)ξ「フサギコ」
ミ,,"Д゚彡「はい、お嬢様」
二人は真剣な目つきで相対する。
その様子を、半ばハラハラしつつ見つめるドクオ。
立ち込め始めた緊張の雰囲気を吹き飛ばすように、ツンは口を開いた。
ξ゚听)ξ「もう、私から言える言葉は一つよ」
ミ,,"Д゚彡「……はい」
ツンは一息吸う。
そして、力強く彼に言い放った。
ξ゚听)ξ「生きて帰ること。 それが私からの願いであり……約束よ」
ミ,,"Д゚彡「お嬢――」
ξ゚听)ξ「返事は!?」
ミ;,,"Д゚彡「は、はい! 絶対に生きて戻ることを誓います!」
慌てて敬礼をするフサギコ。
('A`)(執事って敬礼もするんだ……)
その姿を見つつ、何か妙な納得をしたドクオだった。
- 125: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:55:34.25 ID:lv/dT/ug0
- 日付が変わり、更に朝日が差し込む時間。
もはや『バーボンハウス』に人影は存在しなかった。
空虚な空間。
ただ、カチコチと時計の音が響くのみの空間だ。
内藤ホライゾン、ドクオ、ショボン、ギコ、しぃ、兄者、弟者、フサギコ――
グラニード、ウィレフェル、アーウィン、ミストラン、ギルミルキル、ガロン、クレティウス
ユストーン、レードラーク、ジゴミル、ラクハーツ――
計八名、十一個の指輪が、全ての決着をつけに行った結果だ。
もはやこの空間には後悔など残されてはいない。
- 126: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:57:56.44 ID:lv/dT/ug0
- いや――
(;゚∀゚)「…………」
残されている人物がいた。
(;゚∀゚)「なんかフツーに無視されてったけど……今日の食事とか抜きだったりする?」
全身を縛られているのはジョルジュだ。
もはや『VIP』は存在せず、しかしブーン達に味方もしない彼は結局ここへ置いていかれた。
彼の処分は帰ってきてから決めるらしい。
(;゚∀゚)「……腹減った」
呟く。
が、その言葉を聞く人間はここにはいない。
そんな時だ。
突如、バーの扉が開かれる。
- 133: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 22:59:49.22 ID:lv/dT/ug0
- ( ゚∀゚)「あ?」
外からの光、つまり逆光で姿はよく見えないが……おそらく男であろう人物が入り口に立っていた。
「おや……誰もいないのかね?」
( ゚∀゚)「だーれもいねぇぜ」
「君は?」
( ゚∀゚)「テメェに名乗る名はねぇんだな、これが」
「ふむ、そうか……で、ここにいたはずの彼らは?」
( ゚∀゚)「あー、何か無謀な戦いに行ったみたいだぜ?」
「それはそれは……少し到着が遅れてしまったようだ。
私も急がねばならんね」
踵を返し、店から出て行こうとする。
しかしその身を止め、首から上だけを振り返りつつ問う。
「ところで君は……何をしているのかね?」
(;゚∀゚)「見りゃ解るだろ……捕らえられてんだよ」
- 144: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 23:01:45.80 ID:lv/dT/ug0
- 「結構……では、君はそのままの状態を望むかね?」
(;゚∀゚)「は?」
「行くかね? 私と共に全ての終わりを見届けるために。
そして優秀作君……君は全ての真実を知る必要があると思うのだが、どうかね?」
( ゚∀゚)「テメェ……何者だ?」
「その問いに答える気はないよ。
ただ私が得たいのは一つの答え。
一緒に来るかね?
それとも皆が帰るまで腹を空かしたまま待ち続けるかね?」
( ゚∀゚)「…………」
「自らここに閉じこもって、真実を得る機会を永遠に失うか……。
それとも私の力を借り、そして己の目で真実を見るか……選びたまえ」
声は凛とした問いかけとなり、ジョルジュの耳に入る。
彼は思考した。
己のこと、己の対となる失敗作のこと、そして完成品のこと――
( ゚∀゚)「俺は――」
答えは、果たして――
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