( ^ω^)ブーンが戦い、川 ゚ -゚)クーが護るようです

22: ◆BYUt189CYA :2006/11/23(木) 21:28:00.34 ID:01CtKWjz0
  
第十八話 『開戦』

そこは思ったよりも遠い地にあった。
電車を乗り継ぎ、バスに乗り、山道をひたすら歩き――
到着したのは、人気がまったくといっていいほど皆無な森の中。
朝出発したはずなのだが、ここへ辿り着いたのは夕日が美しい時間だった。

( ^ω^)「ここが――」

( ´_ゝ`)「あぁ、クルト博士の元・研究所……その門前だ」

ブーン達の目の前にあるのは、もはや機能していないゲートだ。
強固な黒い門が全ての侵入者を阻むかのように固く閉ざされている。
その奥に見えるは、おそらく幅百メートルはありそうで
おそらく滑走路というイメージを受けるコンクリートの床。
その周囲には木々が生い茂っている。

おそらく、と言ったのには理由がある。
ほぼ見えないのだ。
コンクリートの床が。
それは何故か。
答えは簡単だ。



28: ◆BYUt189CYA :2006/11/23(木) 21:31:31.30 ID:01CtKWjz0
  
(  )「――――」

黒いローブを羽織った不気味な人影。
それが広大な滑走路らしき道の全てを埋め尽くしている。
数にして千や万を超えそうな勢いだ。
しかし攻撃してくるような意思は感じられない。
どうやらゲートを越えたら攻撃をするよう、命令及びプログラムされているらしい。

(´・ω・`)「あまり見てて気持ちの良い光景じゃないね」

異常ともいえる様子を眺めながら、ショボンがのん気にコメントする。
その隣で、弟者が双眼鏡を覗きながら

(´<_` )「ふむ……この道を数キロ行った先に、目的地があるな」

( ,,゚Д゚)「見れば解る」

ギコが言う。
黒い兵士達がひしめく道の遥か先――そこにクルト博士の元・研究所が存在する。
本来は見えないはずなのだが、今のブーン達にはそれがはっきりと確認出来た。

( ,,゚Д゚)「悪趣味な塔だ……」

吐き捨てるように言ったギコの視線の先には、遠くに見える白色の巨塔。
いつの間に建てたのか、はたまた最初から機能として存在していたのか解らぬが
堂々とそびえるその巨塔は、今から攻め込むブーン達にとっては良い目標となる。

( ^ω^)「遠目からじゃ解らないけど、結構大きそうな塔だお……」



29: ◆BYUt189CYA :2006/11/23(木) 21:36:06.05 ID:01CtKWjz0
  
と、上空から偵察していたしぃが降り立ってきた。

( ,,゚Д゚)「どうだった?」

(*゚ー゚)「凄い数ね……あと、ちょっと気になる点を発見したわ」

(´<_` )「気になる点?」

(*゚ー゚)「よくは見えなかったんだけど、左右の森に巨大な何かが二体いると思う。
     それと彼らの統率者らしき兵も見えたわ」

彼女の話によると、その統率者は黒い集団の一番奥に陣取っているらしい。
一人だけ白銀の色をした何かを纏っていて、すぐ見分けがついたとか。

ミ,,"Д゚彡「情報から推測すると、敵の数としては想定以上と考えた方が良いですね……。
      そしてそれを今から私達八人で突破する、と」

('A`)「はは、正気の沙汰じゃねぇな」

( ,,゚Д゚)「だが……やるしかない」

( ^ω^)「解ってるお。 ここまで来て引き下がるわけにはいかないんだお」

そして

( ^ω^)「僕はクーと絶対に会って……そして絶対に連れて帰るんだお」

拳を握りながら呟くブーン。
その彼の姿を見つつ、他の七名が頷いた。



32: ◆BYUt189CYA :2006/11/23(木) 21:38:50.48 ID:01CtKWjz0
  
( ,,゚Д゚)「皆、戦う理由はそれぞれだとは思うが……覚悟は良いな?」

再び頷く各人。
その様子を見て満足したのか、ギコは口元に笑みを浮かべた。

( ,,゚Д゚)「開戦だ」

ギコが右手を掲げる。
青い発光の次に現われたのは、やはり青い巨剣。
それを振り回し、肩に担う。

(*゚ー゚)「皆、行きましょう」

しぃも右手を掲げる。
橙色の発光、そして現われるは鉄鋼の翼。
鈴を鳴らすような音と共に微かに羽ばたかせる。

('A`)「しゃーねぇ、いっちょやってやるぜ」

言葉と共に発光。
出現した茶色の、しかし巨大な銃器を脇に固定する。

(´・ω・`)「終わらせよう」

紫色の発光。
そして出現するやはり紫色の槍。
軽く振り回し、構える。



37: ◆BYUt189CYA :2006/11/23(木) 21:41:49.37 ID:01CtKWjz0
  
( ´_ゝ`)「敵に『流石だな』と言わせるのが今日の目標」

珍妙発言、そして発動。
桃色の光の中から出てきたのは、やはり珍妙だ。
その手には分厚い桃色の書物。

(´<_` )「行くか」

対して真面目発言。
金色の発光の後には、彼の右手に巨大な盾が握られていた。

ミ,,"Д゚彡「全ての決着のために――」

左手を掲げ、黒の発光。
次の瞬間には彼の左手に巨大な大鎌が刃を光らせている。

( ^ω^)「……行くお」

右手を前方へ突き出す。
そして白色の発光。
両手にグローブを装着させた彼は、拳を握り締める。

残った指輪の行方は次の通りだ。
6th−W『ギルミルキル』→弟者
9th−W『ユストーン』→ギコ
13th−W『ラクハーツ』→ショボン
使いこなせるかは解らないが、しかし有効に使えそうな人物に預けられている。



44: ◆BYUt189CYA :2006/11/23(木) 21:44:57.76 ID:01CtKWjz0
  
八人の人影が横一列に並び、ゲート前に立つ。
敵は沈黙したまま――
いや。

( ^ω^)「お?」

動きがあった。
敵が、敵の全てが同時に同じ動きを開始する。
黒いローブを身から剥ぐ動作。
中から現われたのは――

【゜E゜】「…………」

(;'A`)「!?」ミ"Д゚,,彡

ドクオとフサギコが驚きに目を見開いた。
そして各人も続いて思い出す。
『VIP』のクックル。
いや、あのクックルとは違う。
似ているのだが、しかし硬質なイメージを受ける。
黒い装甲のようなモノで覆われ、身体の節々は明らかに機械だ。
その目は不気味な赤色の光が灯っており、機械的にギョロギョロと動いている。

(´・ω・`)「皆同じ顔をしてるってことは……量産機なんだろうね。
      よくもまぁ、人型サイズの機械なんてわざわざ作ったものだ」

クックルの量産機。
ということは――



52 : ◆BYUt189CYA :2006/11/23(木) 21:47:36.60 ID:01CtKWjz0
  
ミ,,"Д゚彡「あの大男も機械だった……?
      だから銃弾を弾き、刃を通さず、そして出血も無かったんですね。
      彼は最初からリトガー側にいた、と……そういうことだったんですか」

納得したようにフサギコが言う。
それを聞いたブーンは嬉しそうに

( ^ω^)「もしかしたら、ドクオは人殺しじゃないかもしれないお!」

嬉しそうに言うが、しかし台詞は意外と残酷だ。

('A`)「ツッコむのも疲れるからスルーするとして……まぁ、良かったぜ」

ほんの少しの笑みを口に浮かべるドクオ。
その姿勢というか、覇気というか……そんなモノが彼に蘇ったような横顔に
ブーンは素直に喜びを憶えた。

( ,,゚Д゚)「さて、これで敵の正体もはっきりと解ったな」

あのゲートを越えた瞬間、全ての敵が襲ってくるのだろう。
数から見れば絶望とも言える状況だ。
しかし彼らは諦めず、そして逃げるつもりも無い。
何故ならば、勝つという確固たる意思を全員が持っているからだ。

その八人が各々の武器を構え――

( ,,゚Д゚)「行くぞッ!!」

もはやリーダーであるギコの声が響く。
その声に呼応するように、八人が足を踏み出した。



60 : ◆BYUt189CYA :2006/11/23(木) 21:50:42.28 ID:01CtKWjz0
  
疾駆。
ひとまずの目標はゲートだ。
アレを壊した瞬間が戦闘開始の合図。

( ,,゚Д゚)「フサギコッ!!」

鋭い声と同時、フサギコが呼応するように叫ぶ。

ミ,,"Д゚彡「ウィレフェル! 力を――」

一列に並んだ線から一人飛び出し、大鎌を持つ左手を左方向へ伸ばした。

ミ,,"Д゚彡「力を貸してください!」

言葉と同時、黒の発光と共に変化が起きた。
大鎌の柄が、その身を一瞬で伸ばす。
その長さは数十メートルを超えそうな勢いだ。

ミ,,"Д゚彡「ッ!!」

押し殺した気合の声。
左手のみでその長身の大鎌を振るう。
轟、という風を切る音と共に、漆黒の刃が速度を上げながらゲートに迫り――

一閃。

フサギコが右方向へ腕を振るい終わった瞬間。
ガコン、という硬質な音を立てながらゲートが真一文字に切り裂かれた。
ついでにゲート付近にいた敵が犠牲になったが、これは僥倖というものだろう。



62: ◆BYUt189CYA :2006/11/23(木) 21:53:57.16 ID:01CtKWjz0
  
それを合図にしたかのように、黒ローブの兵士達がこちらに向かって銃器を構え始める。
狙われたのは、一歩飛び出しているフサギコだ。

ミ,,"Д゚彡「!」

弾丸が飛ぶが、しかしフサギコの身を貫くことは無い。

(´<_` )「その程度の銃器……ジゴミルは通さん!」

金色の盾で防御をするのは弟者。
そしてその両脇から、ブーンとショボンが飛び出す。

( ^ω^)「おぉぉぉぉ!!」

剣を構えて向かってくる敵を、ブーンが片っ端から殴り飛ばしていき

(´・ω・`)「っ!」

銃器でこちらを狙おうとしている敵を、ショボンが的確な刺突で処理していく。
しかし敵の数は圧倒的だ。
すぐに前線に出たブーンとショボンは扇状に囲まれてしまう。

多少のダメージを覚悟した瞬間。
空から流星が降り注いだ。
橙色の羽片。
上空へ飛んだしぃだ。
彼女がブーン達の真上から、周囲の敵に対して羽片を撒き散らしていく。
ブーン達の周囲にいた敵は上から殴り倒されるように、次々とその身を地に沈めていく。



68: ◆BYUt189CYA :2006/11/23(木) 21:56:42.25 ID:01CtKWjz0
  
それによって出来た空間に更に抉りこむように飛び込むのはギコだ。
片腕でグラニードを器用に振り回しながら、最前線の敵の壁を薙ぎ倒していく。

ギコの奮闘を視界に収めたブーンとショボンは
彼が先ほどの自分らのように囲まれぬよう、それぞれ左右の敵を倒しに走った。

ブーンの後にはドクオ、ショボンの後にはフサギコが続く。
ギコの背後周囲を護るようにして四人は次々と敵を撃破していき――

兄者は戦っている味方の中心点に立ち、書物を広げる。

( ´_ゝ`)「魔法少女兄者・第二話!
      『兄者大暴れ! やだやだ、ぶっ殺す!』」

言葉と同時に連続でページをを破る。
ばら撒いた途端、紙が舞ったそれぞれの場所で魔方陣が生成された。
それは地だけに留まらず、宙にも描かれていき――まるで兄者が魔方陣に包まれるような光景だ。
展開された陣の絵柄と色は多種多様。
それぞれの魔方陣から光と風が漏れ始める。

( ´_ゝ`)「ゆけぃ!!」

途端、各魔方陣から炎、水、雷などの様々な種類の攻撃が発射された。
それは一旦上空へ飛び上がる。
戦っている味方の頭上を飛び越え、次々と敵のひしめき合っている地点へ直撃した。
敵密集地帯の各地から火柱や水柱、稲妻が立ち上る。



74: ◆BYUt189CYA :2006/11/23(木) 22:00:37.04 ID:01CtKWjz0
  
( ^ω^)「おぉぉぉぉ!!」

ブーンが殴り、蹴り、投げ飛ばし――

( ,,゚Д゚)「敵はそんなに強くはない……いけるぞ……!」

ギコが最前線で群れる敵を一気に薙ぎ切り――

(´・ω・`)「ッ!!」

ショボンが的確に厄介な敵を選別して処理し――

('A`)「……!」

ドクオの光弾が黒き壁を押していき――



75: ◆BYUt189CYA :2006/11/23(木) 22:02:52.08 ID:01CtKWjz0
  
ミ,,"Д゚彡「はぁぁぁ!」

フサギコの斬撃が敵を一瞬で真一文字に切り裂き――

(´<_` )「ふん!」

弟者が戦う皆の文字通り盾となり――

(*゚ー゚)「行って――!」

しぃの上空からの援護攻撃が敵の陣形を崩し――

( ´_ゝ`)「そぉい! そぉい! そぉぉぉい!!」

兄者の魔法じみた攻撃が敵密集地点を連続で破壊し――



83: ◆BYUt189CYA :2006/11/23(木) 22:05:15.04 ID:01CtKWjz0
  
八人は進み続ける。
もはや誰も弱音を吐かず、そして誰も諦めはしない。
自分に出来ることを精一杯に続けていくのみだ。

今まで、ほとんどウェポン同士の戦闘しか描かなかったが
ここにきてようやくウェポンの本当の強さが証明されるかのように、敵を次々と撃破していく。

敵の持つ武器など紙切れに等しい。
ぶつければ折れ砕け、防御をしても叩き砕かれる。
銃はすべからく防御及び回避され、更には銃弾を発する前にやられていく者も多数だ。

「おぉぉぉぉ――――!!」

誰かの声か、はたまた複数の声が重なったのか。
戦場に雄叫びが木霊した。



85: ◆BYUt189CYA :2006/11/23(木) 22:08:25.60 ID:01CtKWjz0
  
白く高くそびえる巨塔――円形で、高さ数百メートル、直径五十メートルほどか。
その天辺とも屋上ともいえる場所に、リトガーは一人立っていた。
彼の立ち位置は屋上の淵。
上空特有の突風を身に受けながら、下方に展開されている戦場を眺める格好だ。

(-_-)「壊せ壊せ……『壁』は壊すために在るのだから」

一人呟く。
無論、その言葉を聞く者は己以外に存在しない。

(-_-)「だが知れよ……『壁』を壊した先にある恐怖を……」

視界を下に移す。
黒い軍団の根元にあたる部分。
そこに、銀の甲冑を着込んだ何者かが堂々と立っているのが見える。

更に今度は右方に視線を移した。
森の中に、何か巨大な物体が鎮座している。

次、左方。
やはり森の中に、巨大な何かが存在している。

(-_-)「『壁』など所詮は『壁』……『矛』との戦いが本番だ。
     ここまで君達が来れるか楽しみだよ。
     『矛』にやられるならば、それも運命……どちらにせよ、指輪は頂く」

クク、と肩を揺らしながら笑う。
ふと戦場を見れば、当初は激進していた八人の勢いが弱まっていく瞬間であった。



89: ◆BYUt189CYA :2006/11/23(木) 22:12:33.14 ID:01CtKWjz0
  
(#^ω^)「あーもう!」

向かってくる黒衣の男を殴り飛ばしながら、ブーンは文句を言う。

(#^ω^)「いい加減多すぎるお! 何とかならないのかお!?」

('A`)「無茶言うなよ……っていうか、もう飽きたのかよ。
   そもそも戦闘開始時点でこうなるの解ってただろうに」

ブーンが取り残した敵を撃破しながら、ドクオがため息混じりに返した。

もはや最初の方の勢いも衰えており、向かってくる敵を次々と迎撃するような状態だ。
なかなか先へ進めない憤りか、皆に少々の疲れ、もしくは焦りの色が微かに見え始める。

( ´_ゝ`)「大変だわ、弟者! 私疲れた!」

(´<_` )「ページ破るだけなのにか?」

この二人は何気に問題なさそうだが。



92: ◆BYUt189CYA :2006/11/23(木) 22:15:31.11 ID:01CtKWjz0
  
そんなこんなをしている間にも、黙々と作業のように敵を切り裂いていく姿もある。
ギコとフサギコとショボン。
この三人は根が真面目ゆえか文句も愚痴も言わずに、ただただ敵を処理している。
たまに

(´・ω・`)「ふぅ」

と、ショボンが息を吐くだけだ。

上空ではしぃが休むことなく羽片をばら撒いている。
彼女のおかげで敵の行動が鈍り、ブーン達も会話をする余裕が出来るのだ。
感謝の意を込めつつ、ブーン達も敵の掃討作業に戻る。

( ^ω^)(この調子で行けば、結構楽勝かもしれないお)

と、のん気に思った瞬間。
轟音が左右の森から響いた。

(;^ω^)「!?」



94: ◆BYUt189CYA :2006/11/23(木) 22:17:51.07 ID:01CtKWjz0
  
しぃは上空で浮遊しつつ攻撃を続けていた。

ギコと弟者が前線で道を作っているのが見えるし
彼らを囲ませないよう、左右の敵をブーン達が倒しているのが見える。

戦況としては、黒の壁を四分の一を突破し掛けている状況。
当初のような怒涛の勢いはないものの、ゆっくりと確実に道を切り開いている。
このままいけば何事も無く塔まで――

(*゚ー゚)「……?」

見る。
前方。
戦場を挟むように生い茂る森。
その中間地点の左右の森から――

(;*゚ー゚)「なっ――!?」



133: ◆BYUt189CYA :2006/11/23(木) 23:06:30.42 ID:01CtKWjz0
  
(´<_`;)「な、何だアレは!?」

( ,,゚Д゚)「これは……!」

同時刻、ギコ達もそれを視界に収める。
突如、森の中から――

(《・>ω<・》)「フォォォォォ!」

┝━━◎┥「――――」

生物(?)と機械。
全長十メートルほどの巨大な人型の生物(?)と機械が
木々を押し倒す音と共に左右の森から姿を現した。

(´<_`;)「何と奇怪な……」

( ,,゚Д゚)「ちっ、どうもおかしい思ったら……流石に楽には進ませてくれないか」

しかし、とギコは続ける。

( ,,゚Д゚)「この程度で俺達を止められると思うなよ――!!」



143: ◆BYUt189CYA :2006/11/23(木) 23:09:46.66 ID:01CtKWjz0
  
(;^ω^)「うおぉぉぉ!? 何じゃありゃ!?」

(;'A`)「でっけぇなぁ……」

巨大な身体はそれだけで威圧の対象になりえる。
先ほどまでブーン達側に傾いていた戦況は、ここにきて遂に覆された。
それを感じとり、余裕が生まれたのか敵の動きも緩くなったように思える。

ミ,,"Д゚彡「あんなものまで……勝てるんでしょうか」

(´・ω・`)「誰も勝てないと思って来た人はいないよ」

でも、と彼は付け足す。

(´・ω・`)「流石にこの量を相手にしながら、アレを倒すのは厳しいかもね」

(;^ω^)「でも、やるしか――!」

向かってくる黒い敵と巨大な敵に対して構えた瞬間――

「伏せたまえ!!」

声が響いた。
疑問に思う間もなく言葉の意味を理解する。
上空を飛ぶしぃを除いた七名が一斉にその場に伏せたその瞬間。

連続した撃音が場に響いた。



154: ◆BYUt189CYA :2006/11/23(木) 23:12:39.27 ID:01CtKWjz0
  
(;^ω^)「おっおっお!?」

うつ伏せなので何が起こったのか解らない。
前方からは、金属を弾き、穿ち、打ち鳴らすような音が場に響き
後方からは、大量の足音と怒号の声と共に銃声のような音が聞こえる。

(;'A`)「え、え、何が起こってんだ!?」

走るような音を立てる足音が段々と近付き、しかし金属を打ち鳴らすような音は途絶えない。

(;´_ゝ`)「ひゃぁぁぁ! お助けぇぇぇぇ!」

遂に足音はブーン達の元へ辿り着く。
と、同時に耳障りな金属音が途絶えた。
数瞬の沈黙。
伏せていた七人は、恐る恐るといった様子で身体を起こした。
見れば――

(;^ω^)「え……?」

さっきまでアレほど存在した敵がかなりの規模で消滅していた。
前方約百メートルは、もはやスクラップの床のような光景である。
先ほど出てきた巨大な生物と機械も大量の敵も、呆然とした様子でこちらを見ている。

否、こちらではない。
背後だ。

振り向く。
そこには――



158: ◆BYUt189CYA :2006/11/23(木) 23:14:42.04 ID:01CtKWjz0
  
(;^ω^)「!!」

白。
白い装甲服を纏った、屈強な男達がそこに整列するように立っていた。
全員が鋭い目つきでやはりこちらを見ている。

(´<_`;)「これは……」

状況が理解出来ない七人。
そこに、上空から全てを見ていたしぃが降り立ってきた。

ミ,,"Д゚彡「な、何が起きたんですか?」

(*゚ー゚)「この人達が……いきなり私達の背後から突入してきて――」

彼女も信じられないといった様子で途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
その台詞に被さるように、ギコが声を発した。

( ,,゚Д゚)「この服装――」

言葉と同時に新たな音が場にやってきた。
この音は――

('A`)「ヘリ……?」

断続的な爆音が近付いてくる。
このシチュエーション……ブーン、ドクオ、ギコ、しぃの四名には覚えがあった。

(;^ω^)「まさか――」



164: ◆BYUt189CYA :2006/11/23(木) 23:17:02.38 ID:01CtKWjz0
  
そうこうしている内に、ヘリがブーン達の上空で制止する。
ガラリと側面のドアが開き、中からは――

( ・∀・)「――諸君、元気かね?」

(;,,゚Д゚)「やはりモララー、貴様か!」

モララー。
かつてギコの前に姿を現し、ウェポン無しでギコを圧倒した男。
軍事会社『フィーデルト・コーポレーション』の社長で、グラニードを狙っていた人物。

その彼が今、ブーン達の目の前に降り立とうとしている。
相変わらず藍色のスーツを着込んでいる彼は、地に降り立ったと同時に声を発した。

( ・∀・)「やぁ、諸君……見たことも無い人もいるが『久しぶり』と言っておこうかね」

(;,,゚Д゚)「何故、貴様がここに!?」

グラニードを構えながら、警戒を露わにしつつ問うギコ。
対するモララーは涼しい顔で一言。

( ・∀・)「手伝いに来たよ、君達を」



169: ◆BYUt189CYA :2006/11/23(木) 23:19:21.39 ID:01CtKWjz0
  
その言葉に、ギコはもちろんブーン達も驚愕する。
あれほどギコとの決着に執着していた男が、逆に味方をするとは――

( ,,゚Д゚)「……本当の目的は何だ?」

( ・∀・)「おやおや、何てことだ。
     私の誠心誠意が伝わらないとは……世界は意外と冷たいものだね」

スーツをビシッと決めながら

( ・∀・)「私はただ、そこの彼に頼まれて手伝いに来ただけなのだよ」

その視線の先には、ショボン。

(´・ω・`)「別に隠すつもりは無かったんだけどね……戦力的に一番魅力的だったのが彼だったんだ」

彼が言うには、どうやら前日には連絡を取っていたらしい。
『最高の戦力を持ってきてほしい。 報酬は望むとおりのものを払おう』と――
その報酬とやらが気になるが、しかしショボンは口には出さない。

( ・∀・)「さて……諸君、驚かせてすまなかったね。
     今、私の背後にいる彼らは、我が『フィーデルト・コーポレーション』が誇る戦闘部隊だ」

モララーの背後で綺麗に整列した彼らは、ニヤリと口に笑みを浮かべていた。
まるで『俺達に任せろ』と言わんばかりの自信溢れる笑顔。



172: ◆BYUt189CYA :2006/11/23(木) 23:21:46.48 ID:01CtKWjz0
  
( ・∀・)「雑魚の対処はこれで良いだろう。
     後は私達が一気に突破し、塔内にいると思われる完成品とやらを叩き壊せば良い」

(;,,゚Д゚)「簡単に言うがな――」

( ・∀・)「私の兵を甘く見ないでほしいね……これからの結果を見れば解るさ」

どうやら相当の自信があるようだ。
こちらがモララーを信用するかどうかも含めて。

彼は疑念を含めた視線をその身に浴びながら

( ・∀・)「さて、そろそろ戦闘再開しようか」

( ,,゚Д゚)「……信用は出来るのだろうな?」

ブーン達の中で一番疑いの色が濃いギコが問う。
対し彼は、意外な質問で切り返した。

( ・∀・)「君としぃ君は……今でもあの時の関係のままかね?」

(;,,゚Д゚)「何……?」

( ・∀・)「答えたまえ」

何故か有無を言わせない迫力を醸し出すモララー。

( ,,゚Д゚)「……悪いが、答えはNOだ」



179: ◆BYUt189CYA :2006/11/23(木) 23:24:20.35 ID:01CtKWjz0
  
( ・∀・)「ほぅ?」

( ,,゚Д゚)「あの時よりも遥かに良い関係だ……お前が羨むほどの、な」

少し赤い顔をしながら至極マジメに答えるギコ。
それを見たモララーは、満足そうに頷きつつ

( ・∀・)「それはそれは、とても良いことだ。
     ならば、私はかつて以上の祝福をしなければいけないね」

同時に指を鳴らす。
音と共に白い装甲服の戦士達が一斉に移動を始めた。

モララーを追い抜き、そしてブーン達とすれ違い――

前方――クルト博士の元・研究所――を向きながら再び整列し、硬質な金属音を響かせる。
それぞれが己の得物を構えた。



185: ◆BYUt189CYA :2006/11/23(木) 23:26:51.13 ID:01CtKWjz0
  
( ・∀・)「互いの信じるものは何であれ、それは真実となる。
     故に私は真実を愛そう……。
     『かつて』の記憶を『これから』の未来で彩るために」

そして

( ・∀・)「君達も構えたまえよ……これから戦が始まるのだから。
     そして思う存分吼えたまえ、己の正義を、望みを、そして願いを。
     そのための舞台への道は我々が切り開くことを約束しよう――」

( ^ω^)「モララーさん……」

( ・∀・)「何、礼を感じる必要はないさ。
     私も2nd−Wを持つが故に、ここへ来るのは必然だと思っているのでね」

( ,,゚Д゚)「相変わらずよく解らん奴だ……」

ギコが肩を落としながら言う。
しかし、一応は信用したようで、グラニードを敵に向けて構える。
それに倣いブーン達も各々の武器を構えた。

訪れたのは沈黙。
風が吹く音だけがその場に響く。



189: ◆BYUt189CYA :2006/11/23(木) 23:29:09.00 ID:01CtKWjz0
  
戦の合図を告げるのは、もはや場を完全に手中に収めたモララーだ。

( ・∀・)「諸君――」

彼の声が戦場に響く。

( ・∀・)「我々は今宵、『完成品』という馬鹿げたモノを破壊するために戦う」

それは凛とした声で――

( ・∀・)「おかしな話だ……この世に完成されたものなど、在りはしないというのに」

堂々と己の意思を発し――

( ・∀・)「奴らはその矛盾を世界に押し付けようとしている。
     言わば世界の反逆者だ」

声は衰えることなく――

( ・∀・)「そして我々は、勇気ある八名の勇者の援護に駆けつけたというわけだ」

その言葉全てが――

( ・∀・)「道を切り開けよ、諸君……今まさに勇者達が悪の矛盾に抗おうとしているのだ」

皆の胸に刻まれていき――

( ・∀・)「その行為の礎となれることを、大いに喜べ!」

叫ぶ。



195: ◆BYUt189CYA :2006/11/23(木) 23:32:23.96 ID:01CtKWjz0
  
( ・∀・)「叫べよ、諸君! 己の正義を! 己のエゴを! 己のために!」

一息。

( ・∀・)「諸君らはまだ若い!
     人生は『かつて』の三倍以上は続くのだぞ!
     こんなところで歩みを止めるな! 彼らを止めさせるな!」

装甲服の兵士達の肩に力が入る。
ググ、と膝に力を入れ、突撃の姿勢を作り出し――主の命令を待つ。

対し――
モララーの奇行に目を奪われていた黒い軍団も同じような姿勢をとった。

戦場に白と黒が相対する。



201: ◆BYUt189CYA :2006/11/23(木) 23:34:50.56 ID:01CtKWjz0
  
( ・∀・)「総員――」

応えるように風が鳴る。
もはや夕日は沈みかけ、闇の色が支配しようかというギリギリの時間。
まるで計ったかのように、彼は夕日が消えると同時に命令を発した。

( ・∀・)「突 撃 !!」

声と同時。
白の兵が足並みを揃え、言葉通りに突撃する。
途中にある足元のスクラップは踏まれ、砕かれ、蹂躙された。

対し半数近くに減った黒の兵が迎撃に入り、白の兵の侵入を阻まんと動き出す。

( ^ω^)「行くお……!」

白の壁を前に、ブーン達も己の武器を構えて走り出した。

向かう先は『世界に矛盾を発する塔』。

指輪を待ちわびるリトガー。
胸の内に狂気を孕んだクー。
最愛の人と会わんとするブーン。

様々な思惑を抱え、遂に最終決戦が始まった――



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