( ^ω^)ブーンが戦い、川 ゚ -゚)クーが護るようです

11: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:02:23.50 ID:QKJP9sTH0
  
最終話 『とりあえずの結末』


――戦おう、君のために―――――――――――

――――――護ろう、貴方のために――――――

――――謳おう――――――――――――――

――――――――――――己の正義を――――

――叫ぼう――――――――――――――――

―――――抵抗の証を拳に籠めて――――――



14: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:04:35.69 ID:QKJP9sTH0
  
白い巨塔の屋上部。

そこでは最終決戦という抗いの戦が、遂に終わりを告げようとしていた。

終わらせるモノの名は『限界突破』。
それが狙う標的の名は『完成品・ハインリッヒ』。

両足を切断されたハイリッヒを囲うように、十一の指輪の戦士達が円状に構える。



16: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:06:34.04 ID:QKJP9sTH0
  
まず力を発したのは――

('A`)「『OVER ZENITH』――ッ!!」

7th−W『ガロン』の使い手であるドクオだ。
その限界を超えるための命令と共に動き始めるのは、その長大な銃身。

前部の銃身が開き、更なる力を発するための新たな銃身が内部から伸び出る。
それが固定された次の瞬間には、新たな、そして巨大な銃口がその姿を現していた。

続いて後部が展開される。
内部からは細長いミラー状の板が――以前とは違い、八枚出現する。
二倍にその姿を増やした板は、ドクオの背後で八方向に展開。

そして中部。
変形し掛けているガロンの各部が開き、その内部からは球体状の物体が四つ。
それらは不安定に揺れながらも浮遊し――しかし銃口の周囲に集う。
高速回転。
銃口の先で輪を描くようにそれを始めた球体は、遂にその姿が判別出来なくなるほどの速度を発す。

その瞬間。
ガロンの各部から光が漏れ出始め――



19: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:08:58.91 ID:QKJP9sTH0
  
(#'A`)「何が最強だ! 何が人体の限界突破だ!!」

言葉は更なる発光を促す。

(#'A`)「あぁ、そうだよ! 俺は弱くてヘタレで臆病者だ! 悔しいさ!!」

だが

(#'A`)「それがどうした!? 弱くちゃ駄目なのか!?
    ヘタレだと、臆病者だと生きてちゃ駄目なのか!?」

声と共に発光、そして何かを充電するような電流音が響きだす。

(#'A`)「そんなことあるわけがねぇだろ!
    俺は生きてやる!
    俺だって、こんな俺だけどやれることはあるんだ!
    親友を少しくらい支えてやることくらい、絶対に出来るんだ!!」

それは甲高く鳴り響き、そして――

(#'A`)「ヘタレでも弱くても!
    それは力に成りえるってことを証明してやらぁぁぁ!!」

叫びと共にトリガーを引く。
次の瞬間。
強烈な発光と共に、戦いを終わらせる初撃が咆哮する。



23: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:11:42.41 ID:QKJP9sTH0
  
レーザー、という以外に説明が不可能なほどの一撃が発射された。
それは地を、空気を、空間を抉りながら、一瞬でハインリッヒを捉える。
轟、という音がした時には、既にハインリッヒは黄色い光に飲まれて消えていた。

その強烈な衝撃と光と威力を受けたハインリッヒの身体は屋上部を飛び出し、宙へと身を投げ出される。

( ´_ゝ`)「『OVER ZENITH』――!!」

兄者の声と共に現われるのは魔方陣。
それは宙に投げ出されたハインリッヒを助けるように掬い上げる。

( ´_ゝ`)「リトガー……アンタが何を企んでいたのかは知らんが
      他人のフンドシで戦うようなことはすべきではなかった」

もはや彼の手に書物は握られていない。
しかしその周囲には、書物に収まっていた全てのページが規則正しく並んで浮遊していた。

( ´_ゝ`)「残ページ数で威力が変動するという、少々使い勝手が悪い限界突破だ。
      今の状態では威力MAXに程遠いが――」

片腕を上げ

( ´_ゝ`)「足りない分は俺の怒りで補うさ」

指を鳴らした。



25: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:14:08.04 ID:QKJP9sTH0
  
それを合図としたかのように魔方陣が光を発する。
撃音と共に出てきたのは腕だ。
明らかに人外の、そして桃色の巨大な腕はハインリッヒの存在を叩き上げる。
殴られ飛んだハインリッヒが、屋上部の真上まで来た時。

甲高い音と共に、三種の魔方陣が更に展開される。
それらは無抵抗のハインリッヒを囲うように色を、音を発した。

まず一枚目の魔方陣から出てきたのは足だ。
どう見ても人外の、そして桃色の巨大な足は無抵抗のハインリッヒを蹴り飛ばす。

続いて二枚目の魔方陣から出てきたのは尾だ。
蹴られて飛んだハインリッヒを、また元の位置へ戻さんという勢いで振られる。
高速で風を切る尾の先端が轟音と共にぶつかった。

最後の三枚目の魔方陣から出現したのは顎だ。
どう見ても桃色のドラゴンにしか見えないそれは、向かってくるハインリッヒ目掛けて大口を開けた。

噛み砕く。

ブチブチ、と繊維が切れるような音と共に、ハインリッヒの右腕がその存在を失った。
それを見届け満足したのか、桃色のドラゴンは魔方陣の中に消えていく。



29: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:16:22.15 ID:QKJP9sTH0
  
( ´_ゝ`)「あー……やっぱり全身召喚は無理だったか」

舌打ちをしつつ限界突破を解除する。
魔方陣が消え去り、その場に残るは右腕を失ったハインリッヒ。
落下。
その身体を狙うのは――

( ・∀・)「次は私がやろうかね」

声と共に2nd−W『ロステック』を構える。
そして発せられる言葉は一つ。

( ・∀・)「『OVER ZENITH』――!」

瞬間、変化。
先ほどまでの鉄槌が姿を変える。
巨大な頭部を持った、明らかに規格外の鉄槌。
その周囲には電流が尾を引いて――

( ・∀・)「地味目なのがロステックの良いところでね……その代わり効果は保証しよう」

稲光。
掲げた鉄槌にそれが煌く。



32: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:18:15.43 ID:QKJP9sTH0
  
( ・∀・)「非論理的なのは重々承知」

稲妻が光り、鉄槌を纏い――

( ・∀・)「承知はしているが、足を伸ばせばそれは明確な一歩。
     その積み重ねこそが……私達の抱き続ける明日への願いだよ!」

高く跳躍し、稲妻を纏った巨大な鉄槌を振りかぶった。

( ・∀・)「喰らえよ、雷神の一撃を!!」

雷光。
それが落下途中のハインリッヒに襲い掛かる。
凄まじい電流が身体を蹂躙し、焼き、そして内部で暴れ狂う。
それらの破壊動作は一瞬だ。

刹那という時を以って雷光は己の役目を果たす。



40: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:19:59.40 ID:QKJP9sTH0
  
光が消えた後には、更に焦げ痕を増やしたハインリッヒの姿。
それを狙った一つの影。

( ,,゚Д゚)「『OVER ZENITH』!!」

地で巨剣を構え、限界突破命令を発す。
しかし、いつかのような限界突破とは姿勢が違った。

以前のように、跳躍はしない。
以前のように、振り回さない。
以前のような、左腕は無い。

( ,,゚Д゚)「グラニード! 今度こそ決めるぞ!!」

声と同時。
足元にギコを中心とした青い魔方陣が生成された。
円の内部に小さな○が更なる円を作り、その中心部に模様が描かれている。

( ,,゚Д゚)「『かつて』と『これから』に、どんな過ちを犯そうと――」

足を引き、その手に持つ青い巨剣を天に掲げた。

( ,,゚Д゚)「この一歩だけは間違えはしない!!」

ギコ咆哮に応えるかのように、1st−W『グラニード』の新たな限界突破が発動した。



50: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:22:26.85 ID:QKJP9sTH0
  
青い発光。

その光は天へと昇り、夜空に僅かながら浮かぶ雲を掻き乱した。

一瞬の沈黙。
そして轟音。

空を砕き、大気を切り裂きながら落ちてくるのは青い剣。
もはやその大きさは『デカい・大きい』などという範疇には入れない。
巨人が持つようなその剣は、一気に巨塔の屋上を目指し――

激震。

青い光で構成された本当の意味での巨剣が、ハインリッヒの頭上に墜落する。
光塔が立ったのかと見間違える光景だ。
それを見つめながら

( ,,゚Д゚)「ちっ……片腕が無い分、遠距離にしてみたが
     思ったほどの威力ではないな」

掲げ、そして広げていた右手を握る。
ガラスが砕ける音。
巨剣が一筋の光となって天に昇った後には、破壊された白い床と倒れているハインリッヒだけが存在していた。



52: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:24:05.37 ID:QKJP9sTH0
  
从 ゚∀从「オォォォ……!!」

ググ、と身を震わせながらも起き上がろうとする。
四人分の限界突破を喰らってもなお、身体はその形を残し、そして意識は途絶えていない。

完成品たる所以か。
最強たる所以か。

その震える身体に、灰の色が墜落する。

激音。
そして、金属を打ち鳴らす音。

( ゚∀゚)「『OVER ZENITH』っと……!」

落ちてきた物とは巨大化したユストーンだった。
その巨大で長大な鉄の連鎖が、頭から一気にハインリッヒの元へと落ちたのだ。



55: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:26:06.73 ID:QKJP9sTH0
  
( ゚∀゚)「なぁにが完成品だ、なぁにが最強だぁ!?
     この世の中に完璧なモンなんてあるわけねぇだろうが!!」

声が続く中、なおも鎖の落下は終わらない。

( ゚∀゚)「完璧なモンはねぇのに、テメェは『完成品』とかぬかしやがる!
     よってテメェは存在がおかしい! 矛盾存在だ!!
     だから『優秀』である俺様がテメェをぶっ殺すッ!!」

激音、激音、激音。

( ゚∀゚)「そして最終的には俺様の一人勝ち!
     どいつもこいつも黙らせて、風通しの良い未来を作ってやろうじゃねぇか!!」

最後の鎖が直撃した。
そして灰色の発光と共に、その姿を消す。

( ,,゚Д゚)「次ッ! 近接攻撃開始――!!」

(*゚ー゚)「『OVER ZENITH』!!」

言葉と同時に、しぃの身が一気に浮上する。



62: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:28:26.14 ID:QKJP9sTH0
  
眼下。
両足を切断され、右腕さえも失くしたハインリッヒは、しかしその身を上げようと左腕を動かしていた。

飽くなき闘争心とでもいうのだろうか。
それとも、自分達と同じく『諦め』の言葉が無いのだろうか。

その哀れと言える姿を視界に収めながら、しぃは呟いた。

(*゚ー゚)「――ごめんね」

来世というモノがあるのなら、是非とも幸せになってほしい。

身勝手な理論。
これから本人を殺すのだというのに。

望まれぬ最強。
それがハインリッヒという存在の理由。
あまりにも理不尽な命。

だから

(*゚ー゚)「せめて、祈らせて……」

次の命では幸福でありますよう――

祈りと共に動きは起こる。
翼の展開だ。
限界まで広がった二対の骨格は、しかしその身を伸ばし続け――そのまま天を向く。
まるで橙色の翼が彼女の背後で円を描くようだ。



67: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:30:47.34 ID:QKJP9sTH0
  
橙の色が吠える。
キィン、という金属を打ち付けるような音が鳴り響いた。
更に硬質な音が響いた瞬間、身を天に伸ばしていた骨格が地と水平に向く。
そこから生まれるのは幅数十メートルという巨大な翼だ。

(*゚ー゚)「行きます!!」

声と共に動作。
身を落とすようで、しっかりとハインリッヒを狙った軌道だ。

ヒ、とも、キ、とも聞こえる高速で風を切り裂く音。
しかしそれは一瞬の出来事だ。
その一瞬という時を以って、彼女の翼はハインリッヒにぶつかった。

橙色の衝撃。

翼ごと地面に叩きつけられたハインリッヒは、しかしその身を反動によってバウンドさせる。

しかし未だ意識は残っている。
残っている限りは、動く限りは、たとえ卑怯と言われようとも容赦を止めてはいけない。
確実に、機能的に動かなくなるまで――

(´・ω・`)「『OVER ZENITH』!」

紫色の発光。
その光は槍から発せられる。



72: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:33:00.87 ID:QKJP9sTH0
  
(´・ω・`)「……人は変わる。
      己を省みず、そして他人さえも見ようとしなかった僕でも
      護るべき何かを見出す事が出来るんだ!」

構える。
先端をハインリッヒへ向け

(´・ω・`)「人が強いのは、修行の練度や武器の強さなんかじゃない!
      その身に背負う重荷の価値によって決まるんだ!!」

声と共にそれが発射された。
元々も一つだった穂先から、一瞬で数百とも言える槍が伸びたのだ。

(´・ω・`)「僕はこれから戦い続ける!
      この一撃の向こうに、ほんの僅かな輝きでも良い
      敬愛する親友や弱い人達の安息が待っているというのならッ!!」

発射された多量の小さな刃は、様々な方向からハインリッヒへと向かい――

連続した刺突音。

身体の各部を刺されたハインリッヒが小さな悲鳴を上げた。
それを見届けたショボンは、目を逸らしながら攻撃の手を収める。

ミ,,"Д゚彡「『OVER ZENITH』!!」

黒い発光。
それはフサギコが持つ大鎌が、彼の叫びに呼応した証拠だ。



77: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:34:53.09 ID:QKJP9sTH0
  
ミ,,"Д゚彡「『最強』とは強さではありません!
      命を捨ててでも、誰かを護る覚悟です!」

ほとんどその姿を変えない3rd−W『ウィレフェル』を構え、最強へと向かって疾走する。

ミ,,"Д゚彡「他人と寄り添い、信頼・敬愛・愛情へと意思を昇華する事が出来るのなら
      誰もが『最強』に成りえる……!!」

振りかぶり

ミ,,"Д゚彡「貴方は『最強』ではない……力のみという『強さ』を持った、ただの怪物です!」

一閃。
その一撃は、しかしハインリッヒを切り裂くことなく吹き飛ばした。

ミ,,"Д゚彡(やはり、私とウィレフェルの知らない物質で構成されている……!)

本来ならば、ジェイルと同じく胴体を両断出来たはずだ。
だがそれは叶わない。
フサギコの限界突破は『知る物質を切り裂く』だからだ。
ハインリッヒを構成する『ある細胞』は、ハインリッヒという『最強』のみが持っている物質なのか。

从 ゚∀从「ッオォォアァァァ!!」

強烈な一撃を喰らったが、そのまま着地。
切断された足で地を滑走する。



81: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:36:41.37 ID:QKJP9sTH0
  
その背後から走りこんでくる人影があった。

( ゚ω゚)「おぉぉぉぉ!!」

彼の腕には白きグローブ。
しかし、それは右拳にだけ装着されていた。

( ゚ω゚)「『OVER ZENITH』!!」

白い発光と共に変化。
その拳を包んでいたグローブは、一瞬の後に手甲へと姿を変えた。

( ゚ω゚)「『強化符・腕部』――全展開ッ!!」

瞬間、手甲の各部が一気に開かれる。
その多量に開いた穴から噴き出るのは、やはり多量の符だ。



89: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:38:36.31 ID:QKJP9sTH0
  
今までの、どの場面よりも多く出現した符は

( ゚ω゚)「ハインリッヒィィィィ!!!」

どの時よりも多く、その右腕に纏い

( ゚ω゚)「誰も望まない『最強』なんて要らない!
     もう、誰もそんなモノは望まないお!!」

それはどの時よりも多くの光を発し

( ゚ω゚)「喰らえぇぇぇぇぇぇ!!!」

振られた拳は音速を超える勢いで突き出される。

从 ゚∀从「!!」

しかし、それは残った左腕で阻まれた。
ギリ、という絞られる音。

( ゚ω゚)「まだ抵抗する意思が……ッ!?」



98: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:41:29.39 ID:QKJP9sTH0
  
( ゚ω゚)「うぉぉぉぉ!!」

咄嗟に繰り出した右回し蹴りが、ハインリッヒの脇腹を捉える。
ゴキリ、という骨が粉砕する音が断続的に響いた。

( ゚ω゚)(皆の攻撃で確実に力が弱ってる……!
     これならクーの刀も通じるお!!)

思ったが直後。
無理矢理、力任せに掴まれていた右拳を引き抜く。

( ゚ω゚)「ッ!!」

空気を切り裂き、空間さえも穿つそれは、ハインリッヒの横顔を捉えた。

从 ゚∀(#从「ッ!!?」

もはや音は無い。
一瞬だけ首がありえない方向へ向けられ、そのまま弾き飛ばされる。

内藤ホライゾン、人生最大の一撃が炸裂した。

衝撃に耐える間も無くハインリッヒは宙を飛び、慣性に身を任せるままに地を滑った。
砂煙が舞い、そのまま動かなくなる。



103: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:43:20.87 ID:QKJP9sTH0
  
( ゚ω゚)「クー……!
     ハインリッヒはもう動けないし、身体硬化も出来てない!
     これで君の血と刀も通用するはずだお!」

戦いを終わらせる人の名を呼ぶ。
その彼の横を、14th−W『ハンレ』を持って歩いていくのは

川 ゚ -゚)「あぁ……任せてくれ」

『失敗策』クー。
クルト博士によって仕込まれた、ハインリッヒ暴走時の後始末を任された人造人間。
その血はハインリッヒの『ある細胞』を死滅させるらしいが――

从 ゚∀从「グッ……ウゥゥゥ……」

もはや立つ力も無いのか、ブーンの一撃が脳を揺さぶったか。
いずれにせよ、ハインリッヒも生物の範疇を逃れられなかった。
その姿をクーは静かに見つめる。



107: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:45:14.51 ID:QKJP9sTH0
  
川 ゚ -゚)「…………」

今まで、随分と間違ってきた。
今まで、随分と遠回りをしてきた。
今まで、随分と皆に迷惑を掛けてきた。

だがしかし――ここで全てを清算しよう。

許されないかもしれない。
甘いと、情けないと、勝手だと言われるかもしれない。

川 ゚ -゚)(でも――)

信じてくれる人もいる。
支えてくれる人もいる。
更には己を好んでくれる人だっている。

川 ゚ -゚)(私には、それだけで充分過ぎる……)

从 ゚∀从「ア、アァ……ウォォ……ォ……」

川 ゚ -゚)(ハインリッヒ……お前にはそんな人さえ存在しないのだな)

クーは思う。
完成品とは、果たしてそれで良いのだろうか、と。



112: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:47:06.39 ID:QKJP9sTH0
  
川 ゚ -゚)「今、終わらせてやる」

手に持ったクリアカラーの刀を、己の腕に当て

引く。

淀み無い綺麗な白い腕に一筋の赤い線が入った。
そこから少量だが、真っ赤な血液が流れ出て――

川 ゚ -゚)「…………」

落ちる先に刀を持ってくる。
ポタポタと音を立てながら、己の血が刀身を塗らしていった。

川 ゚ -゚)「……さよなら、だ」

構える。
相手は、曲がりなりにも己の分身とも言える関係。
しかし彼女はそれを断ち切るかのように――

从 ゚∀从「ッ――!!」

胸部に一突き。
軟質な抵抗を感じるが、すぐにそれを貫通した。



123: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:48:50.07 ID:QKJP9sTH0
  
从 ゚∀从「ガッ……ア、アァ……」

苦しみながらも残った左腕を、クーの顔に向けた。

川 ゚ -゚)「…………」

冷たい目が見つめる。

从 ゚∀从「――ァ――ウォ――ゥ――」

その左手が彼女の頬に触れる寸前に

从 ∀从「――――」

ドサリ、と崩れ落ちるようにハインリッヒが身を倒した。

…………

………

……





128: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:50:31.96 ID:QKJP9sTH0
  
場を、長い間沈黙が支配する。

(;'A`)「……お、終わった、のか?」

耐え切れなくなったか、ドクオが沈黙を破るように問いかけた。

(;゚∀゚)「もう復活ってこたぁ……ねぇよな?」

それに便乗するようにジョルジュも問いを発する。

( ´_ゝ`)「あぁ、十中八九間違いない……そして復活することも無いだろう」

(´・ω・`)「兄者さんが言うと復活しそうで怖いけど――」

ミ,,"Д゚彡「言葉は真実、のようですね……」

再度、確認するように皆の視線がハインリッヒに集まる。

不動。

崩れ落ちた身体は微動だにすることはなく
その口からは酸素の入れ替えが行われることもない。

( ・∀・)「と、いう事は、つまり……?」

口元に笑みを浮かべたモララーが、皆を見る。
まるで『さぁ、喜ぼう』とでも言いたげな表情だ。



134: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:52:56.96 ID:QKJP9sTH0
  
( ゚∀゚)「ッしゃああぁッ!!」

(;'A`)「ほ、本当か? 本当に俺達が勝ったのか!?
    本当に、本当に勝ったんだよな!?」

( ,,゚Д゚)「念入りに聞かなくとも、この状況で下衆な冗談を言う奴はいないだろう。
     一切の嘘は無く、全てが事実だ」

(´<_`;)「おぉ、おぉぉ! 兄者、遂にやったぞ!!」

(;´_ゝ`)「メチャクチャ疲れる戦いだったけどな……」

ミ,,"Д゚彡「この疲れも、努力した結果の証ですね」

(*゚ー゚)「……こんな充実した安堵感は久しぶりだわ」

皆が歓喜と安堵の声を上げる。
そんな中、ブーンは一人佇む彼女の元へと近付いていった。

( ^ω^)「クー……」

川 ゚ -゚)「……ん」

返答は来たものの、その視線は未だハインリッヒから離さない。



144: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:54:51.56 ID:QKJP9sTH0
  
川 ゚ -゚)「妙な気分だ……役目を果たしたのに素直に喜べない」

( ^ω^)「喜ぶ必要はないお。
      ただ、クーは自分の役目を果たした……それだけ解ってれば良いんだお」

川 ゚ -゚)「ん……そう、だな」

小さな頷きと同時。
倒れたハインリッヒの身体から変化が。

(;^ω^)「お……?」

煙。
それがハインリッヒの身体の各部から染み出し始める。
同時にジュ、という肉が焼けるような音も発する。

(;^ω^)「溶けてる、のかお?」

川 ゚ -゚)「私の血がハインリッヒの細胞を消滅させているのか……?」

音は一定の音階で鳴り続け、そして何時しか消えていった。
同時に纏うように発生していた煙も薄らいでいく。
後に残ったのは――

(;^ω^)「!」

川 ゚ -゚)「これ、は――」



151: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:56:28.34 ID:QKJP9sTH0
  
暗い部屋がある。
それは小さな部屋だ。
微かな光が内部を照らしている。
光の名はディスプレイ。
周囲には用途不明なコードや機械類が、狭い部屋を更に狭くしている。

そんな中に、二つの人影。
片方は椅子に座り、ディスプレイに映し出された映像を見ている。
片方はその隣に立ち、同じくディスプレイに視線を向けている。

その画面が映し出す映像は、先ほどの巨塔での決戦だ。

「あ〜あ……ハインリッヒ負けちゃったね」

「イェス、マスター」

二つの声が響く。
片方は女性の声だ。
そしてもう片方も女性の声。
のんびりした口調と、硬質な口調が会話を紡いでいく。



158: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 21:58:18.72 ID:QKJP9sTH0
  
「クルトとリトガーの合作っていうのが面白そうだったんだけどなぁ。
 まぁ、目的はまったくの逆方向だったけど」

「しかし、マスターはハインリッヒに期待していたのでは?
 過去の記録を見るに、当初の貴女はアレを使おうと画策していたようですが」

「ふふ、もう貴女がいるから関係ないよ〜」

「嬉しい限りです、マスター」

「感情って素晴らしいよね?
 ハインリッヒにも、そういう心が無いと駄目だと思うよ」

「ですが、アレは世界交差に備えてのリトガーの策です。
 感情などというモノは不要かと」

「うんうん、それも解るんだけどね〜……」



168: ◆BYUt189CYA :2006/12/05(火) 22:00:11.24 ID:QKJP9sTH0
  
キィ、と、椅子からか細い音を立てながら片方の女が立ち上がった。

「やっぱり、クルトもリトガーも駄目駄目だよ。
 特にリトガーは、私に対抗するためにハインリッヒを起こしたんだと思うけど
 そのために必要な生贄に逆にやられるなんて……情けないよねぇ」

「仰る通りです、マスター」

立ち上がった女が部屋から出ようと、扉を開く。
差し込む光によって暗い部屋にいる二人の表情が明らかになった。

从'ー'从「『世界交差』まで残り一年半……楽しみだね、お祭」

川 -川「イェス、マスター」



戻るエピローグ