( ^ω^)ブーンが戦い、川 ゚ -゚)クーが護るようです
- 40: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 23:16:23.97 ID:wd1GrU6H0
- 第一話 『少年と彼女』
朝だ。
陽の光が差し込む部屋で、彼は目を覚ました。
( ^ω^)「ふぁ〜……今日もいい天気だお」
寝起きの良い彼は、すぐに身支度を済ませ部屋のドアを開ける。
階段を下る音。
静寂が残る部屋。
その一角にある机の上には、真新しいトロフィーと賞状が無造作に置かれている。
賞状には彼の名が刻んであった。
『内藤ホライゾン』
その下には功績が。
『高校生大会……優秀賞』
- 42: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 23:18:41.09 ID:wd1GrU6H0
- 階下に降りた内藤は、いつも通りに母親に挨拶をする。
( ^ω^)「かーちゃん、おはようだお」
J( 'ー`)し「おはよう、ブーン」
( ^ω^)「ブーンじゃないおー」
J( 'ー`)し「いいじゃないかい……あだ名の方が格好いいと思うよ?」
(;^ω^)「実の親が息子をあだ名で呼ぶのはどうかと思うお……」
いつも通りの朝。
いつも通りの、母が作る美味しい朝御飯をたらふく食べる。
いつも通りの時間に、鞄とスポーツバッグを持って出かけようとするブーン。
その彼を、母が呼び止めた。
J( 'ー`)し「大丈夫なのかい?
先週末の大会でちょっと怪我したって……」
( ^ω^)「これくらいへっちゃらだお!
んじゃ、行ってくるお!」
玄関のドアを開け、自転車にまたがり猛スピードで飛び出すブーン。
これが彼の日常だった。
- 43: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 23:20:50.74 ID:wd1GrU6H0
- ニューソク高校。
都市ニューソクの中心部に近い位置にある高校だ。
ブーンの家からは自転車で20分ほどの距離にある。
途中に坂があるのが不満だが、文句を言っても仕方ない。
やっとのことで坂を上り終え、運動後の気持ちの良い汗をかきながら
ブーンは学校へと辿り着いた。
( ^ω^)「やっぱり運動は気持ちいいお!」
昇降口で靴を脱ぎ、上履きと履き替える。
ふと、自分の足元に目が行った。
( ^ω^)「お?」
赤い、点々とした液体。
昇降口からここまで、そして更に校舎内に続いている。
(;^ω^)「なんだお、これ……気持ち悪いお」
触ってみる。
ザラリとした感触に、既にそれは乾いているのだと判断できた。
(;^ω^)「き、きっと絵の具か何かだお。 気にすることはないお!」
そう結論付け、彼はさっさと教室へ向かうことにした。
- 45: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 23:22:52.19 ID:wd1GrU6H0
- 2−Aの教室。
( ^ω^)「おはようだおー」
('A`)「お、やっと来たな」
ξ゚听)ξ「待ちくたびれたわよ」
口々に言うクラスメート。
制服を崩して着ている不良風なのがドクオ。
金髪ツインテールで真面目そうなのがツン。
この二人は、高校入学時からのブーンの親友だ。
( ^ω^)「僕はいつも通りに来たお?
そっちこそ、いつもより早いと思うお」
('A`)「まぁ、ちょっとお前に用があってな」
ξ゚听)ξ「見たわよ、昨日の新聞」
ツンが昨日の夕刊を広げてみせる。
- 46: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 23:24:40.85 ID:wd1GrU6H0
- ( ^ω^)「お?」
('A`)「とぼけるんじゃねぇよ。
お前、何気にやってんじゃねぇか」
ξ゚听)ξ「少林寺拳法ニューソク大会・高校生の部・優秀賞・内藤ホライゾン。
小さいけど、しっかり名前入りで新聞に載ってるわよ」
( ^ω^)「おっおっ、新聞にまで載っちゃったかお!」
('A`)「お前、凄いよな。
優秀賞ってのが何かよく解らねぇけど」
( ^ω^)「あー、それは――」
- 48: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 23:26:28.26 ID:wd1GrU6H0
- 少林寺拳法の大会には、優勝や準優勝などの概念は無い。
そもそも空手や柔道のような強さを競う試合が無いのだ。(乱取りという競技はあるが)
代わりに演武という、型を如何に上手く出来るかを競う競技がある。
単独演武、組み演武の2種類があり、今回ブーンは単独演武で賞をもらっている。
ちなみに、優秀賞とは2番目に良かった者――つまり銀賞、または銀メダルに匹敵する賞だ。
('A`)「来月には昇段試験もあるんだろ?
お前、最近調子いいなぁ」
( ^ω^)「今は2段だから、次に狙うは3段だお!
でも実技や学科が大変なんだお……」
ξ゚听)ξ「同時に学生もやってるわけだしね。
ま、焦らずのんびりやりなさいな」
( ^ω^)「ありがとうだお、ツン!」
- 50: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 23:28:15.76 ID:wd1GrU6H0
- その時、教室のドアがガラリを開く。
( ´∀`)「ういーっす、みんな席に着くモナー」
担任のモナー先生だ。
温厚な性格でノリも良く、多数の生徒から好かれている。
皆、のんびりとした様子で席に着き、その様子をやはりのんびりと眺めている担任。
皆が静かになった頃、モナー先生はホームルームを開始した。
( ´∀`)「えとー、今日は委員会があるから
学級委員長は放課後、第二会議室に行くモナー」
ξ;゚听)ξ「げっ……今日は早く帰ろうと思ってたのにぃ」
('A`)「ご愁傷様」
( ^ω^)「委員長は大変だお」
窓際の席に3人は集まって座っている。
最奥の机にドクオ、その前にブーン、ツンと並んでいる。
- 51: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 23:30:02.71 ID:wd1GrU6H0
- ( ´∀`)「あと、来月は定期テストがあるモナー。
皆、一ヶ月くらい前から準備しておくをオススメするモナー」
('A`)「テストかよ……マンドクセ」
( ^ω^)「いい加減、クラス最下位の汚名を晴らした方がいいお?」
('A`)「やだよ、めんどくせぇ。
それに俺には陸上があるから、問題ねぇよ」
ドクオは陸上部所属だ。
テストの成績は最悪に近いものの、部活での成績は上々。
いつかスゲェ陸上選手で食っていく、というのが彼の口癖だった。
( ´∀`)「えーっと、後の連絡事項は……。
あ、今日は保健室の先生が休みだモナー。
何か怪我とかしたら、職員室の先生に言うモナー」
- 53: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 23:31:50.16 ID:wd1GrU6H0
- ('A`)「いや、昨日の『笑って逝くとも!』はマジで爆笑だったぜ」
( ^ω^)「僕も見たおwww ミルナコッチは最高だおww」
ξ;゚听)ξ「ねぇ、それって感動モノのドラマじゃなかったっけ、ねぇ?」
( ´∀`)「そこの三人ー。
あんまり話を聞かないんなら、モナー百烈拳が火を噴くモナよー?」
(;^ω^)「す、すいませんお……」
こう見えてモナー先生は空手部の顧問だ。
部活の時だけ鬼軍曹と呼ばれるほどの豹変を見せるらしい。
ちなみにブーン所属の少林寺拳法部の顧問を敵視しているとか。
だからといってブーン達をひいきするようなことはしない、良い先生だった。
( ´∀`)「んじゃー、今日も皆がんばるモナー」
全員「はーい」
何やかんやありながらも、その日も普通通りに授業は進んでいく。
- 56: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 23:33:37.17 ID:wd1GrU6H0
- 4時間目の体育の時間。
今朝はあれほど晴れていたのだが、今の空の色は灰色だ。
今にも雨が降りそうな、不気味な曇天が空を覆っていた。
( ^ω^)「サッカーの予定が天気のおかげで、体育館でドッジボールすることになったお」
('A`)「えー、ドッジって手ぇ抜けねぇからめんどくせぇんだよなぁ」
ワクワクしたり文句を言ったりと、彼らは体育館に集っていく。
体育館。
教室や廊下より少し冷えた空気の中、2−Aの面々は試合を開始する。
( ^ω^)「勝負だお、ドクオ!
負けた方が来週の学食おごるんだお!」
('A`)「負けたときのことを考えるなんざ、5流のやることだぜ」
と、ブーンとは敵のチームがボールを投げる。
軌道は鋭くブーンを狙っているが
( ^ω^)「何の! イナバウアー!!」
ブーンが身を逸らす。
外野に飛んだボールをキャッチしたのはドクオだ。
- 57: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 23:35:39.63 ID:wd1GrU6H0
- 彼は隙だらけのブーンを狙い、表情を一変させながら
(`A')「テメェの腹には、何が入ってますかぁぁぁぁ!?
ぶちまけられる臓物の奥に意気が入ってねぇと、3流にもなれねぇぞ!」
(;^ω^)「そんな、5流とか3流とか……!
アンタは1流だとでも言うのかお!?」
(`A')「俺ぁ、ドクオ様だぜ!?
なぁに人間の尺度で計ってんだぁ!?」
それにしてもこのコイツら、授業中でありながらノリノリである。
掛け声と共に投じられるボール。
無論、ブーンを外野送りにするためだ。
対するブーンは、拳を構える。
( ^ω^)「僕の! 拳は!」
足を引き、腰を落とす。
- 58: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 23:37:22.92 ID:wd1GrU6H0
- (#);^ω^)「たとえ隕石でも貫けぶるぁぁぁぁ!?」
顔面にボールがヒット。
敗因は、そのセリフの長さだった。
暗転する視界で、ブーンは思う。
(#)´ω`)(そもそも拳で殴ったらアウトだったお……)
ドサッ、と冷たい体育館の床に倒れるブーン(スローで)。
ξ;゚听)ξ「ブーン!」
('A`)「敵が弱いと……戦った後、虚しくなるんだ……」
ξ#゚听)ξ「いつまでくだらない芝居してるのよ!
鼻血出して倒れてるじゃない!」
(;'A`)「正直スマンカッタ……」
- 61: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 23:39:16.94 ID:wd1GrU6H0
- クラスメート達が、倒れたブーンの側に駈け寄る。
(#)´ω`)「こ、これくらいへっちゃらだお……」
鼻血をドバドバ流しながら爽やかな笑顔で言うブーン。
へっちゃらなわけがないのは一目瞭然だ。
ξ゚听)ξ「ったく、不用意にはしゃぐからこうなるのよ?
ほら、一緒に保健室に行ってあげるわ」
(#)´ω`)「一人で行けるから大丈夫だお。
ツン達は体育を続けるといいお」
ヨタヨタと歩いていくブーン。
それを心配そうに見送るツン。
それを複雑そうに見つめるドクオ。
何とも微妙な関係が出来上がっているようである。
- 64: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 23:41:06.86 ID:wd1GrU6H0
- (#)´ω`)「保健室ー、保健室ー」
呻きながらフラフラと誰もいない廊下を歩く。
その姿はもはやゾンビだ。
保健室のドアを開ける。
(#)´ω`)「おいすー、鼻血が出ちゃったおー」
川 ゚ -゚)「む、それは大変だな。
ほら、ここにティッシュがあるから使え」
(#)´ω`)「どうもだおー」
ティッシュを受け取り、鼻血の処理をするブーン。
彼女はその様子を見ながら
川 ゚ -゚)「しかし、何があったのだ? 喧嘩か?」
( ^ω^)「ドッジボールしてたんだお」
川 ゚ -゚)「ほぅ、それは元気で良いことだ。 子供は風の子といって――」
( ^ω^)「ところで……」
川 ゚ -゚)「なんだ?」
- 65: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 23:42:41.00 ID:wd1GrU6H0
- 数秒の沈黙。
ブーンは深く息を吸い、言い放った。
(;^ω^)「ア ン タ 誰 !?」
対する彼女も堂々と言い放つ。
川 ゚ -゚)ノシ「保 健 の 先 生 だ」
(;^ω^)「保健の先生は、黒いコートなんて着ないお!」
川;゚ -゚)「まぁ、それは、その……最近の流行でな。
ばい菌の味方のフリをして、背後から暗殺するという意味があって……」
( ^ω^)「お? それは知らなかったおー。
最近の医療は進んでるおー」
どちらの頭のネジが飛んでいるのか、それは誰にも解らない。
- 67: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 23:45:10.99 ID:wd1GrU6H0
- と、その時。
( ^ω^)「……? 何の音だお?」
甲高い音が、小さくも何処かから鳴り響き始めたのだ。
保健の先生(自称)が、コートの胸元を押さえながら立ち上がり、鋭い視線で外の様子を伺いだす。
(;^ω^)「ど、どうしたんだお?」
川;゚ -゚)「いや、何でもない……」
そのままブーンの傍らを通り過ぎ、保健室のドアに手を掛ける。
(;^ω^)「何処に行くんだお?」
川 ゚ -゚)「所用が出来た」
( ^ω^)「もしかして、ばい菌が暴れてるんだお?」
川 ゚ -゚)「まぁ、そんなところだ」
ドアが閉まる。 一人残されたブーンは、鼻に詰めたティッシュを抜きながら
( ^ω^)「保健の先生も大変だお……」
と、のん気にコメントするのだった。
- 69: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 23:47:00.81 ID:wd1GrU6H0
- 保健室を飛び出した彼女は焦っていた。
まさか、もう見付かるとは。
怪我の応急処置は済んだものの、体力はまだ完全に戻ってはいない。
川 ゚ -゚)「どうするべきか……」
この学校内で戦闘を起こせば、それこそ被害が甚大になりかねない。
かと言って逃げようとすれば執拗に追いかけられ、いずれは仕留められるだろう。
己の体力・戦闘力、相手の戦力を考えれば――
川 ゚ -゚)「『8th』を使える者が近くにいれば……」
もしそれが叶うのならば、現状打破は可能になるかもしれない。
だが、そんなに簡単に『適合者』は見付かるのだろうか……?
そこまで考え、昇降口から外へ出ようとした時だ。
「やーっと現われやがったか」
- 72: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 23:49:01.94 ID:wd1GrU6H0
- 川 ゚ -゚)「!?」
瞬間、身を投げる。
鋭い金属の音と共に、鎖が襲い掛かってきた。
間一髪で回避。
見れば、昇降口の入り口に誰かがいる。
( ゚∀゚)「よぉ……昨日は世話になったなぁ」
川 ゚ -゚)「くっ……」
( ゚∀゚)「俺様から逃げられるとでも思ったのかよ?
『9th』を持つ俺様は、『8th』を持っているテメェなんて簡単に見付けられるんだぜ?」
つまりだ、と彼は続ける。
( ゚∀゚)「テメェが『8th』を手放さない限り、テメェに命はねぇ……俺様が殺すからな。
それが嫌だっつーんなら、さっさと出しな」
川 ゚ -゚)「……断る」
( ゚∀゚)「死刑けってーい」
- 73: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 23:50:54.95 ID:wd1GrU6H0
- ニヤリと笑い、鎖を振り回し始める。
対する彼女は、隠し持っていた刀を抜き構える。
男は銀光鋭いその刃を半目で睨みながら
( ゚∀゚)「お前、頭悪ぃなぁ……昨夜ボコボコにされたの忘れたぁ?」
川 ゚ -゚)「…………」
( ゚∀゚)「ま、仕方ないかぁ。
失敗作だもんなぁ!」
川 ゚ -゚)「っ!」
その言葉と、彼女の疾駆は同時。
相手の鎖が放たれる前に接近を試みる。
( ゚∀゚)「ひゃは! ノロマのグズがぁ!」
地を蹴り、昇降口の外に後退。
結果的に、彼女と男の距離はさほど変わりはない。
その出来た空間と時間を用い、鎖を振る。
- 77: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/03(佐賀県と汚職) 23:52:40.82 ID:wd1GrU6H0
- 川;゚ -゚)「!」
振るう刀身に、鎖が蛇のように巻きつく。
昨夜と同じ状況だ。
( ゚∀゚)「死ねよ!」
男が、思い切り鎖を引いた。
凄まじい力。
女の身体は、一瞬で宙に浮き投げ出される。
川;゚ -゚)「っ……!」
昇降口を飛び出し、男を飛び越え、更には地面に叩きつけられる。
肺から酸素が強制的に漏れ、小さな嗚咽が鳴る。
場所は校門の側のロータリーだ。
その中心付近に叩きつけられた彼女に、男は悠然と歩いてくる。
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