( ^ω^)ブーンが戦い、川 ゚ -゚)クーが護るようです
- 409: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 20:54:31.98 ID:9/BxHOlA0
- 第十六話 『限られた界を突き破る意思』
玄関前。
限界突破したジョルジュから発せられる光が、ようやく止んだ。
現われたのは――
(;^ω^)「……!!」
( ゚∀゚)「ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
――龍。
いや、ただの龍ではない。
鎖の龍だ。
ジョルジュの頭上――つまり宙――を巨大な鎖が這い回っている。
太さは通常の鎖の数十倍、全長五十メートルを越えるかもしれない。
もはや動くだけで、轟音ともとれる鎖が擦れる音が木霊する。
(;´・ω・`)「これは……」
隣のショボンも、あまりの巨大さに絶句していた。
( ゚∀゚)「ヒャハハハ! いつかの時とは違うんだよ、ボケが!」
狂気の笑い。
どうやらユストーンは完全にジョルジュを認めているようだ。
気圧されるように、ショボンが一歩下がる。
- 413: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 20:57:05.43 ID:9/BxHOlA0
- (´・ω・`)「少しまずいかもしれないね……」
(;^ω^)「ど、どうするお」
あまりの巨大さに、腰を抜かしかけたブーンが問う。
返答は簡単な結論だった。
(´・ω・`)「限界突破に対抗するには……限界突破だと思わないかい?」
( ^ω^)「なるほど! ってことはショボンは使えるのかお?」
その言葉に、ショボンは暗い表情で
(´・ω・`)「いや、悪いけど……」
(;^ω^)「えー!?」
(´・ω・`)「ちょっと自分で制約をかけていてね。
僕自身の罪が許されるまで、5th−W『ミストラン』は力を貸すことはない」
( ^ω^)「罪って――」
(´・ω・`)「互いが生き残った後で話すこと、だよ」
(;^ω^)「そ、そうなのかお……」
- 414: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 21:00:01.16 ID:9/BxHOlA0
- (´・ω・`)「だから、君が限界突破するんだ。 そのための時間稼ぎと囮は僕が務めるから」
(;^ω^)「いきなりかお!?」
(´・ω・`)「ブーン、やるしかないんだ。
ここで生き残らなきゃ、お互い言いたいことも言えなくなる」
( ^ω^)「ショボン……」
(´・ω・`)「君が僕に期待してくれたように、僕も君に対して期待を送る。
だから……だから応えて欲しい」
(;^ω^)「で、でも……僕は限界突破の方法なんて――」
(´・ω・`)「君は知っているはずだよ」
(;^ω^)「え?」
(´・ω・`)「じゃあ、行ってくる。
とりあえず、すぐにはやられないようにするからブーンも頑張って」
そう言い、返事を待たずに走り出すショボン。
(;^ω^)「ショボン……」
呟き、己の両手を見る。
白いグローブ、8th−W、クレティウス、己の力の象徴。
答えは――
- 418: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 21:04:48.78 ID:9/BxHOlA0
- ( ゚∀゚)「行けや、ユストーン!!」
声と共に力の塊が動き出す。
走ってくるショボン目掛けて、己の巨大な鉄の身体を突進させてきた。
(´・ω・`)「悪いけど……!」
跳躍。
その足元を巨大な鉄の連鎖が、地面を削りながら高速で滑り這った。
着地。
繋がる鉄鎖の上を、ショボンは走る。
狙うとすれば、術者。
己の武器――5th−W『ミストラン』――は、ショボンが制約をかけているせいで力を貸すことはない。
つまり能力が一切使えず、それはただの強固な槍だ。
対しジョルジュは、もはや9th−Wの全ての力を解放している。
まともに戦って勝てるわけが無い。
いや、勝つ必要はない。
要は時間を稼げればよいのだ。
更に言えばジョルジュに一矢報いれば、その限界突破を崩せる可能性もある。
限界突破――特にジョルジュのような巨大なタイプは、その力ゆえに常識外れの集中力と体力を必要とする。
その限りなく揺れているバランスを崩せれば、それはユストーンにも多大な影響を与えるはずだ。
- 426: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 21:07:45.89 ID:9/BxHOlA0
- (´・ω・`)「僕は――」
轟、と巨大な鎖の龍の頭部が向かってくる。
回避。
身の側を、ギリギリというタイミングで突き抜けていった。
身を起こし、更に走る。
(´・ω・`)「僕は――!」
喰らえば死に直結するといわんばかりの強力な一撃がショボンを狙う。
対し彼は、そのユストーンに対する身の小ささを利用し、潜り抜けるように回避。
攻撃はしない。
する余裕は無い。
しかし避ける余裕はある。
鎖龍は巨大な身体を持つゆえに、行動が読みやすいのだ。
そして攻撃方法も、頭部突撃、尾薙ぎ、身体で押し潰す、くらいしか出来ない。
確かに強力ではあるが、弱点も多く露呈している。
ショボンは思う。
これは一対一で用いる技ではない、と。
一体多数で初めて効果を発揮するタイプだ、と。
ならば、己が負ける要素は少ない。
- 427: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 21:11:17.18 ID:9/BxHOlA0
- いける。
ショボンは走り、飛び、転がり、そして疾駆する。
体力の続く限りは走る。
精神が続く限りは飛ぶ。
意思が続く限りは抗う。
(´・ω・`)「おぉぉぉぉぉ!!」
若きバーの主が吠えた。
いや、もはやバーの主ではない。
友を――大切なものを護らんとする騎士。
守護の騎士が巨大な鎖龍に立ち向かう。
その姿は、さながら神話の一場面のようであった。
- 430: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 21:14:27.52 ID:9/BxHOlA0
- (;^ω^)「ショボン……!」
友が舞い、そして飛び、更に走り、しかし転がっている。
巨大な鎖龍の攻撃を間一髪で回避しているところを見ると、あまり長くは持たないだろう。
(;^ω^)「早く、早く限界突破を……!」
両手を見る。
しかしクレティウスに反応は無い。
(;^ω^)「どうすれば……どうすればいいんだお!?」
焦り。
早くしなければ、大切な友が死んでしまう。
しかしクレティウスは何も語らず、何も反応を寄越さない。
何故?
ふと、思う。
指輪には意思があるとクーが言っていた。
つまり現状を少なからず把握しているはずだ。
しかし何故、力を貸してくれないのだろうか。
こんなに主人が焦り、力を欲しているというのに。
- 431: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 21:18:24.49 ID:9/BxHOlA0
- (;^ω^)「――!」
ブーンは己の失言に気付いた。
『主人』
いつの間に、人間が指輪の主人になったのだろう。
クーは『指輪は力を託す』とも言っていた。
つまり使役されるわけではない。
つまり術者に良いように扱われるわけではない。
つまり指輪は人間の奴隷ではない。
まさか――
――対等な関係。
それが、指輪の望む――
(;^ω^)「!?」
途端、視界が白に包まれた。
時間が止まったような感覚。
周りは白一色だ。
己の姿さえ見えないという、奇妙な状況にブーンは叩き込まれる。
- 433: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 21:21:10.95 ID:9/BxHOlA0
- (;^ω^)「これは――」
( )「内藤ホライゾン」
(;^ω^)「き、君は……さっきの……?」
疑問に答えず、声は続く。
( )「お前は力を欲すか?」
( ^ω^)「力……」
( )「破壊――相手を、全てを傷つける力を欲すか?」
(#^ω^)「そ、そんな力なんていらないお!」
( )「何故?」
(;^ω^)「ど、どういうことだお?」
( )「力、とは本来そういうものだ。
壊し、砕き、破り、殺め、斬り、穿ち、貫き――そして傷つけるものだろう」
(;^ω^)「……それは」
( )「お前がやっている武道なども、そうだとは思わないか?
自衛や他人のためと言いながら人を傷つける術を習い、実践している」
(;^ω^)「…………」
- 437: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 21:23:24.31 ID:9/BxHOlA0
- ( )「力とは破壊の象徴だ。
それを欲さずして、どう戦おうというのだ」
確かに声の言う通りだ。
力とは破壊。
しかし、と思う。
しかしと思い、そしてしかしと思った。
ブーンは自然と口を開く。
( ^ω^)「……違うお」
( )「何がだ?」
( ^ω^)「確かに力は破壊を呼ぶかもしれないんだお」
( )「その通りだ」
( ^ω^)「でも……でも、本当に力ってそれだけなのかお?」
そして
( ^ω^)「力って……戦い、傷つけるモノだけなのかお?」
( )「……聞こうか」
- 441 名前: ◆BYUt189CYA [オーバーペニスワロタヨ] 投稿日: 2006/11/21(火) 21:26:09.21 ID:9/BxHOlA0
- ( ^ω^)「クーという女性がいるお。
彼女はたまに悲しそうな目をしていたんだお。
僕にはそれが何でか理解出来なかったし、今も理解してないんだお」
( )「…………」
( ^ω^)「でも……彼女はきっと戦ってたんだと思うんだお。
何が理由なのか解らないけど、きっと自分の中の何かと戦ってたんだお」
( ^ω^)「それに……力なんているのかお?」
( )「心の強さという力は必要だ」
( ^ω^)「それに破壊は付加されないお」
( )「…………」
( ^ω^)「力に定義なんて無いんだお。
あるとすれば、それは自分で決めた覚悟なんだお。
そしてクーはそれを見つけていないだけなんだお」
( )「力を、か?」
( ^ω^)「それはクーにしか解らないお……理解し合える人間なんていないんだお」
( )「力ではなく……お前は、彼女が何を望んでいると思う?」
( ^ω^)「……負けない、諦めない……そういう抗いの意思だと思うんだお」
- 444: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 21:29:01.29 ID:9/BxHOlA0
- ( )「それは破壊の力ではないのか?」
( ^ω^)「負けなければ勝ちしか無いのかお?
諦めなければ殺すしか無いのかお?
そうじゃなくて……それは絶対じゃないんだお」
( )「つまり……お前は何を叫び、訴え、そして謳うのだ?」
( ^ω^)「僕は――戦いたいんだお」
( )「やはり力を欲すか」
( ^ω^)「違うお」
( )「何がだ?」
( ^ω^)「戦いを終わらせるため――
抗いの、そしてそのために戦う力が欲しいんだお……!」
( )「…………」
声が途切れた。
一見すれば矛盾だらけのブーンの言葉。
この一連の意思を、この声はどう受け取ったのか。
しばらくの沈黙が流れる。
- 445: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 21:31:50.61 ID:9/BxHOlA0
- ( ^ω^)「…………」
( )「内藤ホライゾン」
( ^ω^)「……何だお?」
( )「君は……抗いたいのか?」
( ^ω^)「戦いたくて、護りたくて、抗いたいんだお」
( )「随分と欲張りなことだな」
( ^ω^)「それを可能としてくれるのが……君なんだお?」
( )「……気付いていたか」
( ^ω^)「力に関してあんなに詳しい問いかけ、そしてあんな質問が出来る人なんて限られてるお。
君はずっと僕を見ていてくれたんだおね?」
ブーンはその名を口にした。
( ^ω^)「――8th−W『クレティウス』」
- 452: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 21:35:56.35 ID:9/BxHOlA0
- (´・ω・`)「くっ!」
( ゚∀゚)「おいおいおい! 避けてばっかで大丈夫かよぉ!?」
回避。
回避回避回避。
横転、跳躍、そして疾走、更に回避。
そろそろ自分の体力も厳しいレベルまで達したと感じ始める。
(´・ω・`)(ブーンは――)
見る。
彼は目を瞑り、微動だにしていない。
(´・ω・`)(どうやら……指輪の真意に気付いたようだね)
しかしまだ安心は出来ない。
彼が指輪とどう言葉を交わすかによって、結果は大きく異なるだろう。
(´・ω・`)「頼むよ、ブーン……!」
呟く。
余所見をしている場合ではない。
目の前の巨鎖龍が、その身をうねらせながらも迫ってくる。
もはやそれは暴力的なまでの存在感だ。
一撃でも喰らえば即死、もしくは致命傷。
その生と死の狭間で、ショボンは走り続けている。
- 454: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 21:38:56.85 ID:9/BxHOlA0
- ( ゚∀゚)「いい加減ウゼェな!
そろそろ使わせてもらうぜ!」
(´・ω・`)「奥の手、ってやつかい?
さっさと使えば良いのに……出し惜しみする敵はやられる運命だよ?」
( ゚∀゚)「余裕ぶっこいてられんのも今の内だ!」
ジョルジュが勢いよく右手を上げた瞬間。
(´・ω・`)「!?」
割れた。
いや、分離した。
鎖龍の身体が、構成する鎖の一つ一つが、一瞬にして分離したのだ。
共に訪れるは金属の鳴り響く音。
ショボンは突然の出来事に驚く。
( ゚∀゚)「降れよ、鎖の豪雨! 全てを破砕する暴力の嵐!」
右手を一気に下げる。
途端、それを合図にしたかのように、宙に浮いていた鎖が落下を始めた。
(´・ω・`)「これは――!」
回避運動を始めるが、これは厳しい。
何しろ広範囲に渡って、メートル級の鎖が合計50近くもの群れを成して落ちてくるのだ。
一瞬の沈黙の後に響くは破壊の音。
ド、という音を重ねた衝撃の嵐が地を襲った。
- 457: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 21:41:53.65 ID:9/BxHOlA0
- ( ゚∀゚)「ヒャハハハハハハハハ! 死ね死ね死ねぇぇぇぇぇ!!」
狂気の笑いが響くが、それさえも鎖の落下の音にかき消される。
次々と地に墜落する鎖の群。
もはや範囲は円状数十メートルにも及ぶだろう。
それは数十秒間続いた。
後に残るは大量の砂煙。
カラカラ、と小石が崩れる音が響く。
しかし他に音も動きも無い。
ただ響くはジョルジュの狂気を表した笑い声だ。
( ゚∀゚)「ヒャハハハハ!」
限界突破を使用したというのに、未だ体力は残っているようにも見える。
ジョルジュは、クーと同じく人造人間だ。
その戦闘に対する体力と精神力は、並の人間を軽く凌駕するのであろう。
声が止み、音も止んだ。
砂煙も晴れていく。
現われたのは鎖の山。
そして――
(;´・ω・`)「う、うぅ……」
ショボンだ。
鎖の山のすぐ側、うつ伏せで倒れている。
何とか直撃は避けたものの、その衝撃によって脳と身体が麻痺を起こしているようだ。
意識はあるのか、呻き声が聞こえる。
- 461: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 21:44:57.17 ID:9/BxHOlA0
- その声の元にジョルジュがゆっくりと近付いていく。
( ゚∀゚)「やーっと動き止めたか……ったく、チョロチョロすんなウゼェ」
ジョルジュが右手を上げ、握った。
瞬間、鎖の山が消滅し指輪に戻る。
( ゚∀゚)「さて、と……どう料理してくれようかねぇ?」
(;´・ω・`)「うっ!」
腹を蹴り飛ばす。
抵抗出来ないショボンは、ただただ呻くのみだ。
( ゚∀゚)「オラオラ!」
蹴り、そして蹴り、更に蹴る。
(;´・ω・`)「……うぁ」
口の端から血を流しながらショボンは身を震わせ呻く。
その姿を見て更に昂ぶったのか、蹴りは多く強くなっていく。
(;´・ω・`)「ブ、ブーン……」
( ゚∀゚)「あぁ!? 遂にお仲間に助けを求めるか!?
情けねぇんだよ、このクソミソヤロウが!」
- 468: ◆BYUt189CYA :2006/11/21(火) 21:47:58.56 ID:9/BxHOlA0
- (;´・ω・`)「違う……僕は……」
( ゚∀゚)「はぁ!?」
(;´・ω・`)「僕は……信じてるんだ――!」
( ゚∀゚)「誰を――」
瞬間、身の毛が弥立つ。
殺気――いや、これは闘気か。
ジョルジュは全身でそれを感じとった。
思わず背後を振り返る。
( ^ω^)「…………」
いる。
奴が、立っている。
ジョルジュは頬を冷や汗が一つ流れるを感じた。
(;゚∀゚)(なんだ……この気配は……?)
( ^ω^)「……ショボン」
(;´・ω・`)「やぁ……ブー、ン……」
( ^ω^)「少し待ってるお。 すぐに、すぐに終わらせるから……」
まるで朝飯前だといわんばかりの口調。
二人はジョルジュを無視して会話を続ける
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