( ^ω^)ブーンが戦い、川 ゚ -゚)クーが護るようです
- 8: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 20:54:48.83 ID:lv/dT/ug0
- 第十七話 『それぞれの決意』
――アストクルフ家での戦いが終わって三日が経過した。
ギコとしぃは、その間に病院へ行き腕の治療を。
ブーンは腕の怪我を治療するために、ギコ達と共に病院へ行った後で学校へ。
ドクオは本来やるべき学業のために学校へ。
流石兄弟とショボンは、リトガーと完成品の情報を得るために情報収集を。
フサギコとツンはアストクルフ家から出てこず、その様子は解らない。
ブーンが倒したジョルジュはその場で捕縛され、今はショボンが管理している。
つまりは、皆この三日間で色々とやるべきこと――事後処理等――をこなしたというわけだ。
- 9: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 20:57:33.19 ID:lv/dT/ug0
- そして――
夜の闇が支配する都市ニューソクの郊外。
もはや定番であろう『バーボンハウス』に、普段よりも多くの人影が存在していた。
(´・ω・`)「つまり、僕らの敵はクルト博士の元・研究所に存在するわけだね」
( ´_ゝ`)「うむ、そういうわけだ。
昨日得た情報によると、リトガーは『完成品』の他に大量の兵隊を用意しているらしい。
こちらも早めに動かんと、向こうから仕掛けてくる可能性もある。
リトガーの目的は、『経験値を得た指輪の回収』だからな」
( ,,゚Д゚)「となると……やはり明日、ということになるか」
兄者が収集してきた『完成品』と『リトガー』の情報について皆で分析する。
皆で話し合った結果、攻め込むのは明日ということに決まった。
理由は簡単。
皆の都合の良い日が明日だった、というだけだ。
カウンターの奥には、飲み物や食べ物を準備しているショボン。
カウンター席にはギコ、しぃが並び、一つ席を空けて流石兄弟が座っている。
彼らの背後にある、少し広い空間のテーブルと椅子に腰掛けているのはブーンとドクオだ。
- 14: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:00:56.91 ID:lv/dT/ug0
- ('A`)「しかしまぁ、何つーか……簡単には信じられねぇ話だよな」
( ^ω^)「うーん……確かに僕も未だに現実味を感じられないお」
菓子を頬張りながら、学生二人は口を合わせる。
ギコがその様子を半目で見ながら
( ,,゚Д゚)「事実は事実……いい加減、そののん気な空気は変わらんのか」
彼の左腕――上腕部分――には包帯が巻かれていた。
本来あるべき腕は無い。
結局、腕は元通りの位置に戻ることは無かった。
時間が掛かりすぎたのもあるかもしれないが、ギコはこうも言っている。
( ,,゚Д゚)「これは自分に対する戒めだ……少し、俺はしぃに依存しすぎていたようだからな」
ブーンには、その心境が理解出来なかった。
己の腕を失ってまで……とも思ったが口に出すことはしなかった。
『依存』
それが自分の心に何らかの制動をかけているような気がしたからだ。
人は誰しも何かに依存している。
それに抗おうという姿勢を、ギコは腕を失うという行為で表そうとしたのか。
解らぬが、本人に聞いてもはぐらかされるだけだろう。
そして思う。
( ^ω^)(僕は……僕も、何か依存しているのかお……?)
おそらくは――
- 16: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:04:52.92 ID:lv/dT/ug0
- そこまで考えた時。
突如、バーの扉が開かれた。
ξ゚听)ξ「汚いわね、ここ」
入ってきたのは金髪ツインテール。
(;´・ω・`)「はぐぁ」
辛辣な第一声に、ショボンはいつもの挨拶をする前に撃墜される。
(;^ω^)「ツン……どうしてここに?」
ξ゚听)ξ「あぁ、アンタらもいたのね。
フサギコがどうしても行きたいっていうから、着いて来てあげたのよ」
ミ,,"Д゚彡「――こんばんは」
ツンの背後から現われたのは、フサギコだ。
その右目はもはや開かれることが無いように、縫い付けられるように閉じられていた。
右手は包帯とギプスで固定されているという痛々しい格好。
( ,,゚Д゚)「アンタら、アストクルフ家の……あの指輪を返してほしい、か?」
(*゚ー゚)「ちょ、ちょっとギコ君……」
あの戦いの後、フサギコが気絶してしまったので黒い指輪はドクオが回収していた。
アレは元々はアストクルフ家の物。
戦闘行為に紛れて盗んできたようなもので、それをフサギコが返せと言う道理も理解出来る。
- 19: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:08:06.06 ID:lv/dT/ug0
- しかし彼は異なる返答を発した。
ミ,,"Д゚彡「いえ、そういうつもりで来たわけではありません」
(´<_` )「では何故?」
ミ,,"Д゚彡「……話を、聞かせて欲しいんです」
( ,,゚Д゚)「……どういう意味だ?」
満身創痍の彼は、途切れ途切れに言葉を発していく。
ミ,,"Д゚彡「漆黒の指輪……いえ、貴方達が持つ指輪に呼ばれた、とでも言うのでしょうか。
おそらく貴方達は今、戦える人材を欲している……そうでしょう?」
ξ゚听)ξ「え、フサギコ……?」
( ,,゚Д゚)「確かに戦力は多い方が良いが――」
ミ,,"Д゚彡「では、話を聞かせてください。
私でも力になれることがあるのならば、それを私は手伝いたいと思っています」
(´・ω・`)「右腕と右耳、そして右目が機能していないのに、かい?」
ショボンがすぐさまフサギコの怪我の具合を察知し、問いかける。
その言葉に、一瞬、彼の表情に暗い影が射す。
- 20: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:10:32.73 ID:lv/dT/ug0
- ミ,,"Д゚彡「しかし――」
しかし再度顔を上げた時には、もはや表情に闇は存在しなかった。
ミ,,"Д゚彡「協力したくて……そして、知りたいんです。
クルト博士とミーディ様が、何処で何故知り合ったのか、を」
(´<_` )「そういえば、そういう因縁もあったな」
思い出したように弟者が手をポン、と叩く。
その言葉を聞き
( ,,゚Д゚)「じゃあ、アンタもクルトの因縁に巻き込まれてるってわけか……なら、好きにしろ」
呆れたように吐息。
(´・ω・`)「僕らのリーダーの許可が出たよ。
さぁ、そこは寒いだろうから中に入って入って」
( ,,゚Д゚)「……いつからリーダーになった?」
ミ,,"Д゚彡「ありがとうございます……お嬢様、ここからは私一人で」
ξ゚听)ξ「え、でも……」
ミ,,"Д゚彡「あとは外で待っている部下達に屋敷まで送ってもらって下さい。
私は一仕事終えてから、そちらに戻りますから――」
- 22: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:14:22.08 ID:lv/dT/ug0
- ξ゚听)ξ「あー……却下」
ミ;,,"Д゚彡「は?」
ξ゚听)ξ「どうせ死ぬ覚悟云々――そんな漫画みたいな感じで行くつもりなんでしょ?
十年以上も一緒にいるんだから、それくらい解るわよ」
ミ;,,"Д゚彡「えーっと、その……」
ξ゚听)ξ「だから、私は最後まで貴方に抗うわ。
明日まで嫌というほど説得してあげる……やめておきなさい、戻ってきなさいって」
ミ,,"Д゚彡「お、お嬢様……」
(´・ω・`)「うん、別に客が一人増えたからって僕らの方は問題ないし……。
何より、主人に逆らうのはよくないよね?」
ミ,,"Д゚彡「……解りました」
フサギコは諦めたように肩を落とす。
外で待機している者達にまだもう少し待つように告げ、店の中に入ってきた。
ブーンとドクオの座っているテーブルに、二人は着席する。
- 24: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:16:27.52 ID:lv/dT/ug0
- ミ,,"Д゚彡「ドクオさん……ですよね。
あの時はありがとうございました」
('A`)「いやいや、俺の力なんて微力なもんスよ」
少し照れながら謙遜するドクオ。
かつての戦友にまた会えて嬉しいのだろうか。
そんな親友の様子を見て、ブーンは一人取り残された気分になる。
( ^ω^)「…………」
ドクオとフサギコとツン。
兄者と弟者。
ギコとしぃとショボン。
それぞれの組み合わせを見るが
どれもこれも、ベストな組み合わせだと再確認させられるだけだ。
(;^ω^)(な、何だか居づらいお……)
その様子を知ってか知らずか、ショボンが声を上げた。
(´・ω・`)「さて……フサギコさんのためにと、確認のためにもう一度説明するね」
- 25: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:19:21.17 ID:lv/dT/ug0
- 黒の部屋がある。
かつて、クーと兄者が足を踏み入れた地。
広い空間の中心にカプセルがあり、そして――
(-_-)「さて……彼らがそろそろ動き出そうとしているね。
昨日、流石兄弟あたりだろうが、ハッキングした痕跡が残っている。
これで私が適当に作った『兵』のことを知ったはず……。
つまり彼らは悠長に逃げ続けることは出来なくなったわけだ」
まるで独り言のように呟くリトガーと――
川 ゚ -゚)「……そうだな」
それに静かに答えるクーだ。
(-_-)「君はどうする?
どこかに隠れて完成品の行く末を見届けるかね?」
川 ゚ -゚)「……彼らの目的は」
(-_-)「『完成品』の破壊だろう」
川 ゚ -゚)「――ならば、私も出よう」
(-_-)「解らんね……今更だが何故、君は敢えてこちらに残った?
彼らから敵扱いをされるのは目に見えていたはずだ」
- 27: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:21:36.17 ID:lv/dT/ug0
- 質問に対し、クーはやはり静かに答える。
川 ゚ -゚)「微かにだが、記憶が……戻ってきているんだ」
(-_-)「クルト博士との記憶が、かね? 『かつて』のこの場所にいることで?」
川 ゚ -゚)「……あぁ、おそらくは」
(-_-)「記憶のために、今までの絆を断ち切ったわけか」
解らん、解らんね、とリトガーは呟く。
しかしクーは無視。
先ほどから続けている『カプセルの凝視』という作業に戻った。
食事は摂っているものの、あれ以来、一日のほとんどの時間をカプセルの凝視に費やしている。
まるで何かにとり憑かれたかのように。
(-_-)「まぁ、良いか……私の命も、次の戦いで尽きるだろう。
後は『アレ』に託すとして――」
小さなモニターに目を向ける。
そこには『ある形』をした同じモノが延々と並んでいる。
ある種、不気味さを感じさせる光景だった。
(-_-)「……『鍵』も『壁』も『矛』も全て揃った」
その様子を見ながら、ほんの少しニヤリと口の端を浮かべるのだった。
- 29: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:24:04.48 ID:lv/dT/ug0
- ブーンは『バーボンハウス』の外にいた。
付近に人影は無く、しかし人の気配を感じる。
おそらくはフサギコの部下だろう。
しかし敵意は感じられぬので、ブーンは気楽に壁に身を預けていた。
もうすぐ12月。
空は曇天で、今にも雪か雨が降りそうだ。
ショボンと兄者の考察を含めた説明が終わった後、改めてフサギコは戦闘の意思を明確にした。
それを今夜中にツンが説得するつもりらしい。
無駄だと解っているのに、どうしてそんなことをするのか。
ブーンにはイマイチそれが理解出来なかった。
流石兄弟も、ギコとしぃも、フサギコとツンも、ドクオとショボンも、今店内のそれぞれの場所で話しこんでいる。
おそらく明日にでも突入を掛けるための再確認……またはその緊張・恐怖を忘れよう、とかいうモノだろう。
ブーンは一人取り残され、そして居心地も悪かったので外に出ていた。
吐息。
白い息が立ち上り、そして消えていく。
( ´ω`)「……ハァ」
ため息のような、しかし違うような、そんな吐息が勝手に漏れる。
明日。
おそらく、皆は行くのだろう。
そして自分も――
- 30: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:27:42.22 ID:lv/dT/ug0
- そこで思考が止まる。
( ^ω^)「……何で、僕も行くんだお?」
独り言。
しかし自分へ問いかけた疑問。
自分もついて行って、何になるのだろうか。
単なる戦力増加の駒として数えられるだけなのだろうか。
解らない。
自分は、何故戦いに行く?
もはや逃げられないから?
もはや戦う以外の選択肢が無いから?
ありえない。
世界は基本的に自由だ。
自分がどんな選択をしようとも、それを咎める人間はいても、しかし禁じられているわけではない。
( ^ω^)「……やっぱり、僕はクーに――」
('A`)「おっ、こんなところにいたか」
ドクオ。
彼がバーの扉を開き、外に出てきた。
- 33: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:30:09.70 ID:lv/dT/ug0
- ( ^ω^)「ドクオ……」
('A`)「おぉ、寒い……何やってんだよ、こんなとこで」
( ^ω^)「……何でもないお」
('A`)「そっか。 なら、俺の話でも聞いてくれや」
何を言い出すのかと思えば、何だこの親友は。
そんなブーンの心境を知らずにドクオは語りだす。
('A`)「俺さ……人を殺しちまったんだ」
知っている。
クックルを一撃で葬ったのはギコやツンの証言で解っていた。
親友が人を殺したと聞いたとき、意外と冷静な自分がいることに驚いたものだ。
('A`)「でも俺、意外と冷静でさ……どうなってんだろうな?」
同じことを言う親友。
しかし、それは解らない。
誰もドクオの気持ちなんて知るわけがないし、それは自分のみが知る絶対領域での話だ。
沈黙を答えと受け取ったのか、彼は話を切り替える。
('A`)「……俺がツンのことを好きだって知ってるよな?」
(;^ω^)「今更何を言ってるんだお。 前から知ってたお」
(*'A`)「やっぱなぁ」
- 35: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:32:46.60 ID:lv/dT/ug0
- 頬をポリポリと掻きながら、照れたように笑うドクオ。
しかし次の瞬間には表情を一転させた。
('A`)「でも、さ」
( ^ω^)「お?」
('A`)「ツンって……人を殺した人でも好きになってくれるのかなぁ」
(;^ω^)「え……」
無茶苦茶な問いかけだ。
答えなんて本人しか知らないし、そんなの自分に聞かれても困る。
(;^ω^)「そんなの……僕には解らないお。
本人に聞いた方が早いお?」
('A`)「だよな」
ドクオはその答えに満足したのか、ブーンの肩を叩いた。
('A`)「ま、そういうこった。
お前もウジウジ悩むんじゃなくて、心機一転した方が楽だぜ?」
そう言い残し、彼は再びバーの中へと戻っていった。
- 37: ◆BYUt189CYA :2006/11/22(水) 21:35:26.91 ID:lv/dT/ug0
- しばし呆然としていたブーンだが、彼の真意に気付く。
(;^ω^)(やられたお)
ドクオはこう言いたかったのだろう。
一人で悩むんじゃなくて、とにかく本人に会っちまえ、と。
( ´ω`)「まぁ……ね」
それしか無いのだろう、と思う。
その方法が己の気持ちを一番納得させ、そして後悔がないだろう、と。
ただ、自分は恐れているのだ。
クーに会うことを。
その恐怖を乗り越えた先には、何があるのだろうか。
空を見上げる。
相変わらずの曇天だ。
白い息が立ち上るのが見える。
( ´ω`)(……他の人は戦う理由があるんだろうかお?)
見上げなら、ふとそんなことを思った。
戻る/携帯用2ページ目