( ^ω^)ブーンが戦い、川 ゚ -゚)クーが護るようです
- 555: ◆BYUt189CYA :2006/12/01(金) 21:03:27.02 ID:ZKsPX9dI0
- 第二十三話 『進化する最強』
そこは白と黒の支配する場だった。
上を向けば黒。
下を向けば白。
黒とは夜空。
白とは床上。
リトガーは、そんな場所に一人立っていた。
ここは『世界に矛盾を発する塔』最上階――屋上部だ。
彼はその淵で下方を見ている。
下で展開されていた戦闘は、ほぼ終了していた。
黒い残骸が山を作り、白い兵士が歓喜の声を上げている。
巨大な生物が血まみれで横たわり、巨大な機械は火花と共に黒い煙を上げている。
塔の根元では金髪の戦闘人形が回収されている。
そんな状況を、リトガーは静かに眺めていた。
(-_-)「愚かなことを……」
小さな呟き。
- 557: ◆BYUt189CYA :2006/12/01(金) 21:06:25.34 ID:ZKsPX9dI0
- 『世界交差』の時は近い。
彼女が行動を開始する前にハインリッヒを完成させておきたいというのに
あの者達は、どうしても己の邪魔をする。
己の代わりに世界を背負うとでも言うのだろうか。
馬鹿な。
背負えるものなら背負ってみろ。
ハインリッヒが倒されるようなことがあれば――
(-_-)「君達が世界の責任を負うことになるのだぞ……」
呟きは風に乗り、何処かへと消えていく。
今、何が決着しようとしているのか彼らは一つも解っていないだろう。
兄者が唯一知っている可能性があったが、当時の彼はまだ幼少だった。
日記を読んだことにより何か記憶が蘇ることも考えられるが、心配は無用だろう。
つまり何が決められるのか解らずに彼らは進軍しているのだ。
馬鹿らしい。
そもそもこの戦いに意味などあるのだろうか。
否。
くだらない、そしてまったくの無駄な戦いだ。
- 559: ◆BYUt189CYA :2006/12/01(金) 21:09:42.07 ID:ZKsPX9dI0
- (-_-)「無駄、か……」
全てを知るのは己と彼女だけだ。
クルト博士でさえ、おそらくは知らないまま死んだのだろう。
生きていれば。
彼が生きていれば――
(-_-)(もし、の話は無駄だな……)
思考を改める。
まずは指輪の回収だ。
クルト博士の最後の狂気によってバラ撒かれた指輪が、今ここに集合しようとしている。
自分が悪を演じれば来るとは思っていたが、まさか全てが揃うとは。
こんなチャンスはこれ以降は無いと思っていいだろう。
クルト博士の遺したハインリッヒを利用するのは少々心が痛む。
しかし、やらねばならないのが事実。
完成させねば、この世界に未来は無い。
- 561: ◆BYUt189CYA :2006/12/01(金) 21:12:15.81 ID:ZKsPX9dI0
- (-_-)「――そのためならば幾らでも罪を被ろう」
もはや迷いは無い。
それによって己が殺されても仕方ない。
しかし、この世界だけは――
くだらない愛界心。
しかしやれるのは自分だけだ。
他の人間に任せるわけにもいかない。
くだらない、本当にくだらない方向へ捻じ曲がってしまった人生。
恨むべき人も、恨むべき事象も無い。
ただ曲がるべくして曲がってしまった人生。
まるで、そうなることが決められていたかのような――
ガコン、と音が背後から響いた。
(-_-)「…………」
音源の方向を無言で振り向く。
そこには――
- 564: ◆BYUt189CYA :2006/12/01(金) 21:14:54.52 ID:ZKsPX9dI0
- 巨大床式エレベーターを動かして数分。
皆がその激しい振動と音に慣れ始めた頃。
突如、轟音がしたかと思えば、天井が開いていく光景が目に入る。
( ゚∀゚)「おっ、もうすぐ着くみてぇだな」
声と共に最上階へ到着する。
ガコン、という音が響き、遂にエレベーターは停止した。
風の音。
そして風の感覚。
屋上だ。
見上げれば満天の星、そして空虚な夜空が広がっている。
( ・∀・)「いい眺めだ……こんな場所で戦えることを幸運に思わねばね」
( ,,゚Д゚)「……いるぞ」
ギコの声と共に全員がある方向を向く。
(-_-)「来たか」
リトガー。
クルト博士の元・助手にして、彼の遺した『完成品』を何かに使おうとしている男。
そしてギコ達が持っている指輪を欲している男。
- 569: ◆BYUt189CYA :2006/12/01(金) 21:17:47.91 ID:ZKsPX9dI0
- ( ・∀・)「やぁ、こんばんは。 ずっと待っていてくれたのかね?
風邪でもひいたら大変だろうに」
(-_-)「そんなものは、もはや関係ない」
冷たく言い放たれる言葉。
モララーはその言葉から、一つの事実を確認する。
( ・∀・)(思ったとおり……彼はその後のことを視野に入れていない。
やはりここで死ぬつもりか……?)
解らぬが警戒は薄めない。
屋上へ到着した九人は、慎重にリトガーの元へと近付いていく。
いつでもウェポンを解放出来る心構えだ。
ジリジリと近寄る彼らを見て
(-_-)「随分と警戒されているね……安心したまえ、私は何もするつもりはない」
( ,,゚Д゚)「信じられんな」
(-_-)「ならば信用させよう」
動きは同時。
側にあるコンソールに手を掛け、何かのスイッチを押す。
- 572: ◆BYUt189CYA :2006/12/01(金) 21:20:08.76 ID:ZKsPX9dI0
- (´<_`;)「何をした!?」
(-_-)「そう慌てるな……君達の相手を用意するだけだよ」
瞬間、リトガーのすぐ傍らの床が小さく左右に割れた。
中からは――
(*゚ー゚)「カプセル……?」
培養液が満たされた緑色のカプセルがせり上がってくる。
( ´_ゝ`)「あのカプセルに『完成品』が入っている、か」
(´・ω・`)「ここは話の通りだね……」
ミ,,"Д゚彡「彼の言葉からすると、私達はこれからアレと戦うことに……?」
( ・∀・)「完成していない『完成品』を戦わせるわけかね。
ははは、ジョークしては面白くないし……どうやら本気のようだ」
せり上がる動きが止まった。
鎮座したカプセルは明らかに異質な空気を放っている。
その空気を一番近くで浴びながら、リトガーは更にコンソールを操作する。
途端、ガボガボと音を立てながらカプセル内部の培養液が抜けていった。
( ´_ゝ`)「……アレが『完成品』か」
見る。
カプセルのガラス色に紛れて見辛いが、確かに人型の何かが入っているのを。
- 576: ◆BYUt189CYA :2006/12/01(金) 21:22:24.17 ID:ZKsPX9dI0
- (-_-)「――解放」
言葉と同時、カプセルのガラス部が遂に開く。
そこから出てきたのは――
(∵)「…………」
宇宙人。
グレイ。
そんなイメージを受ける顔と胴体を持った生物。
目は何を見ているのか解らず
下半身は妙に短く
両腕は妙に長く
宇宙人、と言えば大体の人が想像するような形が、目の前に現われた。
(;´・ω・`)「……どう見ても『完成品』じゃないよね」
ミ;,,"Д゚彡「いえ、見た目で判断しては――」
(*´_ゝ`)「……可愛いかも」
ボソボソと輪を作って話を始める九人。
それが終わるまで律儀に待つリトガーと『完成品』。
- 583: ◆BYUt189CYA :2006/12/01(金) 21:25:18.50 ID:ZKsPX9dI0
- ( ・∀・)「一つ聞くが……それがまさか『完成品』かね?」
(-_-)「あぁ、間違いなくそうだ。
それと『完成品』などという呼び方はやめてもらおうか」
(´<_`;)「名前でもあるのか?」
(-_-)「『ハインリッヒ』という」
少々の沈黙が流れる。
(;゚∀゚)「それって完全に名前負けしてねぇか? っつか、名前の意味もわかんねぇし」
(-_-)「知る必要はあるまい……名は体を表すのだから」
( ゚∀゚)「んー……意味は『貧弱』とか?」
(-_-)「勝手に思っていろ」
ふと、右腕がポケットへと入る。
それを見たギコ、モララー、ショボン、弟者が一斉に構えた。
(-_-)「何回言えば解る……相手をするのは私ではない」
取り出したのは――
- 588: ◆BYUt189CYA :2006/12/01(金) 21:28:23.30 ID:ZKsPX9dI0
- (;*゚ー゚)「指輪……?」
彼の右手に指輪が握られていた。
その色は何とも表現しにくい色である。
虹色――が蠢いているという表現が一番近いか。
様々な色が一定の場所に留まることなく、指輪を這い回っているような光景。
(;'A`)「気持ち悪っ!!」
ドクオが心底気持ち悪そうに言う。
(;,,゚Д゚)「指輪、だと……? それは何だ!?」
(-_-)「私が『ハインリッヒ』用に、クルト博士の遺した研究資料から私が作り出したウェポンだ。
裏のウェポンとも言えるその名は15th−W『ラークレイング』」
( ・∀・)「自分で指輪が作れるのかね……ならば我々の指輪を狙う必要もないように思えるが?」
(-_-)「生憎『ルイル』が一つしか残っていなかったのでね。
だが、これで『ハインリッヒ』は更に力を向上させることが出来る」
(´<_` )「『ルイル』……?」
( ´_ゝ`)(やはりか……!)
- 592: ◆BYUt189CYA :2006/12/01(金) 21:31:08.68 ID:ZKsPX9dI0
- (´・ω・`)「これ以上武器を増やしてどうするつもりだい?
操作する身体は一つだろうに……まさかジェイルにみたいに腕を増やすとか?」
(-_-)「アレは機械知能でないと同時処理が出来ないという欠点がある。
だからね、増やすのは腕でも武器でもないのだよ」
そう言いつつ、彼は自然な動きで指輪をはめる。
瞬間。
ゴキリ、という生々しい音と共に両肩の関節が外れたかのように落ちた。
(;*゚ー゚)「!?」
(-_-)「さて、ここまでわざわざ御苦労だった……後は『ハインリッヒ』に全てを託すことにするよ」
( ,,゚Д゚)「どういうことだ!?」
(-_-)「所詮、貴様らは何も知らない。
『ハインリッヒ』に全てを任せ、ここで消え行くが良い」
- 596: ◆BYUt189CYA :2006/12/01(金) 21:32:40.40 ID:ZKsPX9dI0
- 次の瞬間。
いつの間にかリトガーの背後に居た『ハインリッヒ』が
(;'A`)「う、うわぁ!?」
大口を開けた。
もはや己の身体さえ凌駕する大きさの口内は、血のように赤々としている。
そのままリトガーを――
(;・∀・)「待ちたまえ!!」
(-_-)「時は満ちたのだよ……君達が来たことによってね。
世界は『ハインリッヒ』が背負うのだ」
バクン、という音と同時にリトガーの身体が飲まれて消えた。
(;´・ω・`)「……!!」
(;´_ゝ`)「食すとは、そのままの意味か……!」
『ハインリッヒ』の口内から骨が砕けるような音が響く。
モゴモゴと動かしたかと思えば、ゴクリとその塊を飲み込んだ。
- 599: ◆BYUt189CYA :2006/12/01(金) 21:35:10.17 ID:ZKsPX9dI0
- (∵)「…………」
(;,,゚Д゚)「化け物め――!」
ミ;,,"Д゚彡「ま、待って下さい! まだ変化が!」
見る。
『ハインリッヒ』の身体から、強烈な光が漏れ始め――
(;'A`)「何だ!? 何が起きてるんだ!?」
( ・∀・)「おそらくは食すことによって得たのだよ。
リトガーの脳内情報と、11th−W『ミシュガルド』――
そして15th−W『ラークレイング』とかいう指輪の使い方をね」
( ´_ゝ`)「新たな情報を得れば、身体がそれに適応する……!
常に進化する生物が『ハインリッヒ』の完成品たる所以の一つだ!」
(´<_`;)「兄者……何を知っているんだ?」
(;゚∀゚)「み、見ろ! 光が消えてくぞ!」
『ハインリッヒ』から出ていた、もはや目を開けておくのも難しい光が消えていく。
その中には、先ほどとは違う人影が確認出来た。
(;´・ω・`)「あ、あれは……」
( ,,゚Д゚)「……!!」
- 604: ◆BYUt189CYA :2006/12/01(金) 21:37:07.88 ID:ZKsPX9dI0
从 ゚∀从「――――」
そこにいたのは、先ほどまでの宇宙人ではなかった。
白いロングコート、白長髪、雪のように真っ白な皮膚。
その瞳は血のように赤く、ギコ達の方をジッと見つめている。
まるで――
(;゚∀゚)「し、失敗作……?」
そう、まるで彼女の真逆とも言える格好と雰囲気。
それが『奴』の身体から滲み出ていた。
(;'A`)「え……? さっきの奴はどこに行ったんだ?」
( ・∀・)「アレが今の『ハインリッヒ』だ。
おそらくはリトガーの遺志を継いだ、化け物だよ」
从 ゚∀从「…………」
ハインリッヒが一歩こちらに踏み出す。
対して、全員がウェポンを解放しながら構えた。
- 609: ◆BYUt189CYA :2006/12/01(金) 21:39:37.05 ID:ZKsPX9dI0
- (;゚∀゚)「15th−Wとかいう指輪の能力もロクに解っちゃいねぇ……油断してっと殺されるぞ!」
( ,,゚Д゚)「解っている……!」
从 ゚∀从「……ヒ」
声。
女のようで、しかし違うような……中性的な声だ。
それは突如として激変した。
从 ゚∀从「――ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!」
瞬間。
妙な生々しい音と共に、前方へ突き出した腕から――
(´<_`;)「指!?」
十本の指。
それらが同時に放射線状に、高速で『発射』された。
一本一本が的確にギコ達を狙っている軌道だ。
(;゚∀゚)「うぉ!?」
連続した金属音が響く。
- 612: ◆BYUt189CYA :2006/12/01(金) 21:41:39.73 ID:ZKsPX9dI0
- (;'A`)「な、何が……!?」
ガロンの銃身を盾にして攻撃を防いだドクオが呟く。
ふと周囲を見渡せば、全員が各々の武器を盾にして構えていた。
その武器に突き刺さっているのは指。
赤い爪を鋭く光らせた、鋭利な槍を連想させる指だ。
十本の白槍ともいえるそれを束ねるのは二本の腕。
そしてその両腕を統括するのは――
从 ゚∀从「……ヒヒ」
ハインリッヒ――完成品。
(;,,゚Д゚)「な、何だ、この攻撃方法は――」
グラニードを盾代わりに突き立てたギコが疑問を口にする。
( ・∀・)「15th−Wとやらに関係がありそうだね。
体力が高いだけでは説明出来ない能力だ」
(;´・ω・`)「武器じゃ、ない……?」
言葉と同時。
ズルリ、と十の指が音を立てながら元の位置へ戻っていく。
从 ゚∀从「…………」
戻った手を開き、閉じる。
まるで己の腕の感触を確かめるかのような行為だ。
- 616: ◆BYUt189CYA :2006/12/01(金) 21:43:40.40 ID:ZKsPX9dI0
- ( ゚∀゚)「おいテメェ、その能力は何なんだよ?」
ミ;,,"Д゚彡「素直に言ってくれるとは思えませんが……」
( ゚∀゚)「馬ッ鹿、聞くに越したこたぁねぇだろ。
ここで情報得られりゃ、儲けモンだぜ」
(´<_`;)「お前はその『楽観的思考』っていう情報を封鎖しておけ」
(#゚∀゚)「あんだとぉ!?」
ジョルジュの怒号。
そして声が聞こえたのはその次の瞬間だった。
从 ゚∀从「……ノーリョク?」
ミ;,,"Д゚彡「え?」
从 ゚∀从「テメェ? ナンダヨ?」
まるで問いかけのような発言。
その妙な声を聞いていたモララーが、何かに気付いたような表情で
( ・∀・)「まさか……まだ情報が着床していないのか?」
(;'A`)「ど、どういうことッスか?」
- 620: ◆BYUt189CYA :2006/12/01(金) 21:45:41.38 ID:ZKsPX9dI0
- ( ・∀・)「リトガーを食したことにより、彼の知識や情報
そして付けられていた指輪の経験がハインリッヒの中に入ったと思っていたが……。
もしかすると、その情報は未だ脳内に根付いていないのかもしれない」
( ,,゚Д゚)「まだ奴は『本能』だけで存在していると?」
( ´_ゝ`)「だろうな……。
時間が経てば経つほど、得た情報がハインリッヒに浸透していくだろうが」
( ゚∀゚)「何かよく解らねぇが、さっさとぶっ殺した方がいいってことだよな?」
(´<_` )「その『馬鹿』という情報も封鎖しておけ……だが、同意だ」
ミ,,"Д゚彡「行きましょう!」
各々のウェポンを構えた九人が一斉に走り出す。
向かう先は、赤ん坊のような状態であるハインリッヒ。
情報と経験が完全に根付く前ならば、倒せるかもしれない。
全員がそれを思っていた。
『倒せるかもしれない』と。
その逆意は――
从 ゚∀从「アァァァァァ!!」
叫び声とも雄叫びともとれる、鼓膜を劈く甲高い声。
戻る/携帯用2ページ目