( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

8: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:18:41.34 ID:r+btzLdX0
  
第六話 『Welcome to This World』

暗闇に染まっていた視界が開く。

最初に見えたのは白い天井だった。
自分が仰向けで寝ているということに気付いたのは、次の瞬間。

( ^ω^)「お……?」

鼻で空気を吸えば、清潔な匂いを感じた。

しばらくの間、あまり働かない頭で現状を感じ取ろうとする。
すぐ隣に人の気配があるのに気付いたのは、その直後。

( ^ω^)「……クー?」

川 ゚ -゚)「目が覚めたか」

椅子に座り、こちらを見ているのはクーだった。
いつものように黒コートを着込んでいるが、その額には包帯が巻かれている。



11: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:20:35.73 ID:r+btzLdX0
  
( ^ω^)「……どうしたんだお? 怪我でもしたのかお?」

川 ゚ -゚)「忘れたのか?」

その言葉で、沈黙を放っていた頭にエンジンが掛かる。
闇に落ちる前の記憶が徐々に蘇ってきた。

(;^ω^)「お……思い出したお」

川 ゚ -゚)「やれやれ、君は相変わらずだな」

苦笑しつつ吐息。
よくよく見れば、その表情に疲労が見て取れた。
ブーンは少しなまった身体に鞭を打ちながら、上半身を起こす。

( ^ω^)「えっと……どうなってるんだお?」

川 ゚ -゚)「あの夜から三日が経過している。
     戦いの後、FCの連中が倒れている私達を回収して、この病院まで運んでもらったというわけだ」

( ^ω^)「渡辺達は?」

その言葉に、クーは俯いて首を振る。

川 ゚ -゚)「いや……あれから行方不明らしい。
     私の意識が戻ったのが昨日で、情報を小耳に挟んだだけだから何とも言えんがな」



13: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:22:41.54 ID:r+btzLdX0
  
彼女の話によれば多少の怪我はあれど、他の皆も大体は無事らしい。
現状確認が終わった後、クーは備え付けられた電話機で誰かと連絡を取った。

川 ゚ -゚)「立てるか? 下のロビーで皆と合流しようと思っているのだが」

( ^ω^)「ちょっとクラクラするけど、大丈夫だお」

川 ゚ -゚)「まともに食事を摂っていないから腹が減っているのだろう。
     とりあえず一階ロビーに集まって、それが終わったら食事へ行こう」

口元に笑みを浮かべ、手を差し出してくる。
ブーンは素直にそれを掴み、身体を支えてもらいながら階下を目指して歩き出した。



17: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:24:04.42 ID:r+btzLdX0
  
一階ロビー。
事務員と看護士以外に、人影はほとんど無かった。
起きた時には気付かなかったが、どうやら今は早朝らしい。

まだ少し肌寒い空間。
ロビーに並べられた椅子に、幾つかの人影があった。

从 ゚∀从「あ、内藤さん!」

( ,,゚Д゚)「……起きたか」

ハインリッヒ、ギコ、モララーの三人だ。
それぞれ腕や頭に包帯を巻いているものの、特に重傷者はいないらしい。

( ^ω^)「皆、無事で良かったお……って、あれ? しぃさんは?」

その言葉に、ギコを始めとした面々が少しだけ暗い表情を作る。

( ・∀・)「彼女の意識はまだ戻っていない。
     少し頭の打ち所が悪かったらしくてね……しばらくは安静にしなければならない」

(;^ω^)「そうですかお……」



18: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:26:05.64 ID:r+btzLdX0
  
( ,,゚Д゚)「……その話はもういい。
     モララー、それよりも――」

( ・∀・)「あぁ、解っている」

読んでいた新聞を折りたたみながら

( ・∀・)「現状を確認、そして報告しようか。
     まず渡辺のことに関してだが……」

( ^ω^)「行方不明って聞きましたけど……」

( ・∀・)「そう、その通りだ。
     あの夜から完全に姿をくらましている。
     『見限った』という言葉から判断するに、もうこちらに接触する気はあまりないようだ」

ギコやブーンは戦いの終盤に参加していなかったので、モララー達が適当に説明する。
封印された世界、世界交差、天敵。
幾つかのワードが出てきたが

(;^ω^)「……ちんぷんかんぷんだお」

川 ゚ -゚)「クルト博士は世界交差を恐れていた……そのような文章が日記にはあった。
     そして渡辺がそれを発動させたと考えるならば」

( ,,゚Д゚)「敵、か?
     断定は出来んと思うが」



20: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:28:25.66 ID:r+btzLdX0
  
从 ゚∀从「そもそも世界交差って何なんでしょう?
      言葉から想像出来るのは、世界が交わるって感じですけど……」

川 ゚ -゚)「となると、私達の世界に何か影響が出ないとおかしいな」

クーがモララーを見る。
彼は肩を竦めて首を振り

( ・∀・)「いや、そんなニュースは聞いたこともないね。
     私もその線が濃いと思って調べたのだが……」

渡辺の言う世界交差が発動して七十二時間。
それだけの時間が経過しているのにも関わらず、何も起きていない。

( ,,゚Д゚)「失敗に終わった……と見るべきか」

( ・∀・)「では、渡辺達は失敗が恥ずかしくて逃亡したと?
      ありえない話ではないが、あれだけの自信を見るに可能性は低い」

川 ゚ -゚)「何処かに潜伏した、と考えるのが正しいかもしれないな」

腕を組み、思考するクー。

川 ゚ -゚)「では、何故潜伏した……?
     それは天敵を相手にするため……?」



23: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:30:30.03 ID:r+btzLdX0
  
( ・∀・)「その天敵の正体が解らない限り、私達も迂闊には動けないだろう」

( ^ω^)「どういうことだお?」

( ・∀・)「もし、彼女が本当に世界を救おうとしていたら。
     もし、その天敵が世界を滅ぼそうとしていたら。
     その邪魔をする我々は一体どうなのだろうね……立場的に」

悪なのだろうか。
それとも別の何かなのだろうか。

不明だが、不明だからこそ

( ・∀・)「あまり無責任には動けない。
     これからの行動は、慎重に決めなければなるまい」

というわけで、と続け

( ・∀・)「私とFCは、しばらくの間……この件への関与を控えようかと思っている」

(;^ω^)「え?」



26: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:32:11.19 ID:r+btzLdX0
  
( ・∀・)「渡辺の動向は不明で、その目的もはっきりと解っていない。
     正直言って手出しし辛いのだよ。
     彼女達が悪なのか、それとも本当の正義なのか。
     それすらも解らないというのに、胸を張って堂々と行動など出来ない」

川 ゚ -゚)「そうか……まぁ、今まで随分と猪突猛進だったからな」

( ・∀・)「これからは少し行動を考えねばならないと思う。
     それにジェイル君の修理も終わっていない今、私のテンションはガタ落ちだ」

そこでやっと気付いた。
モララーの隣で控えているはずのジェイルの姿がないことに。
秘書兼護衛をしている彼女がいない光景は、何ともいえない違和感を発している。

( ・∀・)「もう三日もジェイル君が淹れてくれたコーヒーを飲んでいない……!
     あぁ、私の心はもう限界突破だね!?」

( ,,゚Д゚)「さっさと帰れ」

( ・∀・)「言われなくとも」

溜息を吐きながら背を向ける。
片手をヒラヒラと掲げながら

( ・∀・)「何かあったら相談に乗るよ。
     道は王道ばかりじゃない……君達も無理に行動することなく、自分の信じた道を歩みたまえ。」

振り返ることなく、外へと出て行った。



29: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:35:29.49 ID:r+btzLdX0
  
それを半目で見送ったギコ。
彼に対し、クーが質問をぶつけた。

川 ゚ -゚)「ギコ、貴方はこれからどうするんだ?」

( ,,゚Д゚)「俺か……返すようで悪いが、お前達はどうする?」

( ^ω^)「ジッとしてるなんて……出来るけど、したくないお
      微力かもしれないけど情報を探るんだお」

从 ゚∀从「僕も手伝います」

ギコは軽く目を伏せ、『そうか』と呟いた。

( ,,゚Д゚)「俺はしぃの目が覚めるまで、そばで看たいと思っている」

川 ゚ -゚)「そうか……」

( ^ω^)「ギコさんの大切な彼女だお。
      そっちを優先しても誰も文句は言わないお」

( ,,゚Д゚)「あぁ、悪いな……ああ見えても俺にとっては最高の女だ。
     その代わりと言っては難だが――」



31: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:37:08.25 ID:r+btzLdX0
  
右腕をポケットに突っ込む。
取り出されたのは

从 ゚∀从「指輪……しかも二つも?」

ギコの無骨な掌に乗っているのは指輪だった。
それぞれ青と桃の色を発している。

(;^ω^)「これは、1st−W『グラニード』と4th−W『アーウィン』……」

( ,,゚Д゚)「これをお前達に預けておく」

从;゚∀从「えぇ!?」

川 ゚ -゚)「いいのか?」

( ,,゚Д゚)「しばらく戦闘があっても参加しないだろうしな。
     兄者と二人で決めたことだ、遠慮せずに有効に使って欲しい」

( ^ω^)「あれ? でも、持ち主以外は使えないんじゃ――」

( ,,゚Д゚)「既に擬似精神とは話をつけている。
     流石に本来ほどの性能は出せないし、限界突破も使えないだろう。
     それでも使い方次第では、充分に戦力となるはずだ」

故に、意識が戻らぬ弟者としぃの分は(当たり前だが)無い。



35: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:39:30.89 ID:r+btzLdX0
  
( ,,゚Д゚)「ただし、慣れない指輪の使用は精神力も体力も大幅に消費する。
     使う時はよく考えろよ」

川 ゚ -゚)「あぁ、解った。 ありがとう」

( ,,゚Д゚)「礼を言われるほどじゃあない。
     結局は要らぬモノを押し付けるという形だしな」

言いながら、ハインの左手に二つの指輪を落とす。

( ^ω^)「しぃさん、早く意識が戻ると良いお……」

( ,,゚Д゚)「心配は無用だ。
     あの女はお前達の想像以上に強い」

口元を軽く吊り上げ、ギコはしぃの病室へと歩いていった。

( ´ω`)「……とりあえずお腹空いたお」

川 ゚ -゚)「近くのファミレスにでも行こうか。
     モララーの計らいで、君は今日のすぐにでも退院出来る。
     食事を摂ったら家に帰ろう」

从 ゚∀从「…………」

( ´ω`)「ハイン、早く行くおー」

从 ゚∀从「あ、はいはいー」

ハインリッヒは二つの指輪から視線を外し、先に歩く二人を追った。



37: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:41:37.19 ID:r+btzLdX0
  
ブーン達がいる病院から、少し離れた位置。
周囲の住宅群とは雰囲気がまったく違う建物がある。

アストクルフ家の豪邸だ。

周囲は全て高壁に囲まれ、その敷地は広大。
外から見ても解るほどの巨大な家屋が、その豪華さを物語っていた。

正門前。
強固な門の前で、執事服姿で箒を掛けているのはフサギコ。

ミ,,"Д゚彡「〜♪」

鼻歌を鳴らし、枯葉や塵を掻き集めていく。
と、そこで人が近付く気配を感じ取った。

ミ,,"Д゚彡「あれ、ドクオさん?」

('A`)「えっほ、えっほ……フサギコさん、おはようございます」

黒のジャージを着込んだドクオ。
軽く汗を流しながら、こちらに向かって走ってくる。



40: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:43:46.62 ID:r+btzLdX0
  
ミ,,"Д゚彡「こんな朝からランニングですか? 御苦労様です」

('A`)「これでも元・陸上部エースなんで。
   こうやってたまに走らないと、どうにも落ち着かないんスよ。
   それにフサギコさんも朝から掃除、御苦労様ッス」

ミ,,"Д゚彡「右手のリハビリも兼ねてますから、楽しいものですよ。
      あ、そういえば……お嬢様をお呼びましょうか、まだ寝てますけど」

(;'A`)「遠慮しておくッス。
    寝起きの不機嫌を俺のせいにされたら、たまったもんじゃないッスから」



42: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:45:08.51 ID:r+btzLdX0
  
ミ,,"Д゚彡「はは、お嬢様はそんな人では――」

少し沈黙して

ミ,,"Д゚彡「……ありえるので、ドクオさんの意見を尊重しましょう」

('A`)「流石フサギコさん、話が解る。
   んでは、さよならッス」

軽く手を振り、駆け出す。
その姿を見送り、掃除の続きを再開しようとした時。
懐に入れていた小さな通信機から声が発せられた。

ξ--)ξ『フサギコぉ〜、朝御飯はぁ〜?』

ミ,,"Д゚彡「はいはい、すぐ準備しますよー」

今までののんびりした動作とは真逆の、素早い動きでチリトリに塵を叩き込む。
そのまま箒を肩に担ぎ、駆け足で豪邸へと戻っていくフサギコであった。



45: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:46:53.03 ID:r+btzLdX0
  
( ^ω^)「ぱくぱくむしゃむしゃ」

川 ゚ -゚)「擬音を口にするのはどうかと思うぞ」

ブーンが二杯目のカツ丼を美味しそうに食べている。
鳥天定食を食べ終わった彼女は、御茶を啜りながら溜息を吐いた。
その隣ではカレーライスを前にしているハインリッヒ。

从 ゚∀从「ところで、これから僕達はどうするんですか?」

川 ゚ -゚)「ん? 家に帰るはずだが……寄り道でもするか?」

从;゚∀从「いえ、そうではなくて渡辺さん達のこととか……」

川 ゚ -゚)「ふむ、まだ何とも言えないな」



48: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:48:22.03 ID:r+btzLdX0
  
湯呑みをテーブルに置き、腕を組みながら

川 ゚ -゚)「何せ、まったく情報が無い。
     渡辺達の位置も、正体も……計画の意味も、成否も、規模も解らない現状で
     私達に出来ることなど、ほとんど皆無だと言っても過言じゃない」

( ^ω^)「ショボンも情報屋を辞めてるし……流石兄弟さんは機能してないに等しいお」

川 ゚ -゚)「加えてFCも件に対しての活動を停止。
     あるのは、私達の足と『少しだけの情報』のみだ」

从 ゚∀从「少しだけの情報……これですか」

ポケットから取り出されたのは、ボロボロの紙だ。
兄者が見つけてきた謎の文章。

川 ゚ -゚)「実際問題、私達が頼れるような人間・組織は無いに等しい。
     となれば、自分達の足で探すしかないが……」

( ^ω^)「正確な位置も範囲も解らないのに
      たった三人でがむしゃらにやったって時間の無駄だお」

川 ゚ -゚)「あぁ、私もそれは解っている」

从 ゚∀从「八方塞というわけですね……」



50: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:49:44.17 ID:r+btzLdX0
  
川 ゚ -゚)「今のところは出来ることなど少ないだろうな。
     不本意ではあるが、事が動くまでは待機ということになりそうだ」

从 ゚∀从「……そうですか」

ハインリッヒが少しだけ落胆した様子を見せる。
その頭に、クーの手が乗せられた。

川 ゚ -゚)「だが、このまま何も無ければ……それはそれで良いと思うんだ。
     真実は確かに知りたいが、怪我をしたり命を奪われたりまでして得たいとは思わない。
     結局のところ、知らずとも生きていけるしな」

( ^ω^)「平和が一番かお……」

从;゚∀从「むぅー……」



53: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:51:23.90 ID:r+btzLdX0
  
まだ納得出来ていない様子。
クーがその髪を丁寧に撫でながら

川 ゚ -゚)「今の状況で何を言っても仕方ないだろう。
     気持ちは解るが、気分転換でもしてストレスを溜めないようにしなくてはな。
     そうだ……今日は帰りに本屋にでも寄るか?」

その言葉を耳に入れたハインリッヒは、パァッと目を輝かせた。

从*゚∀从「本当ですか!?
      『ぶっかけ三人組』の最新刊が、この前発売してたんですよ!」

( ^ω^)「僕も週刊ジャンポウが買いたかったところだお」

川 ゚ -゚)「よし、なら決まりだな。
     丁度内藤も食べ終わったことだし、そろそろ行こう」

立ち上がり、三人で店を出る。

帰り道を歩く足取りは軽かった。
クーの前で、ハインリッヒとブーンが楽しそうに話している。
それを見る彼女の顔には、幸せそうな微笑が張り付いていた。



56: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:53:35.61 ID:r+btzLdX0
  
('A`)「…………」

午前十時。
ドクオは、道路の真ん中で立ち竦んでいた。


時間は数分前に遡る。
朝から、かれこれ二時間ほど走っていたドクオは疲労困憊で帰ってきた。
高校を卒業して一人暮らしを始めていた彼は、昼食の内容を考えながら走っていたのだが――

自分の住むアパートが見えた時。

('A`)「……え?」

その入り口に最も近い道路に、何かが横たわっているのが見えた。

(`-д-')「――――」

どう見ても人です、本当にありがとうございました。



58: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:55:07.09 ID:r+btzLdX0
  
('A`)「…………」

(`-д-')「――――」

(  )彡クルッ 「…………」

(`-д-')「――――」

('A`)彡クルッ 「…………」

(`-д-')「――――」

何度見ても現実は変わらない。
やはりドクオの前方には、どう見ても人が倒れている。

とりあえず状況分析を開始。

うつ伏せで地に伏せており、身体を見るに男だと解る。
その服装は

(;'A`)「……野戦服?」

灰の色をしており、それは素人目にも野戦服に見えた。
その腰には妙な形をした金属製の何かが付属されている。



60: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:56:43.77 ID:r+btzLdX0
  
恐々と近付き、そもそも命が在るのかを確認。
背中が軽く上下していることから、どうやら生きているらしい。

(;'A`)「……どうしよう」

周囲を見るが、こんな時に限って誰もいない。
さて、どうしたものかと思った時だ。

(`・д・')「!!」

突如、男が跳ね上がるように身を起こした。

(;'A`)「うぉ!?」

(`・д・')「ここは……何処だ……」

フラリと身を揺らし、周囲を見る。
その目には明らかな疲労が見て取れた。

(;'A`)「あ、あの……大丈夫ッスか?」

(`・д・')「君は……?」

(;'A`)「え? えっと、ドクオって名前ッスけど」

(`・д・')「名前を聞いてるんじゃない。
     何処の人間だと聞いているんだ……まさか連合軍か?」

本当に不思議そうな表情で、わけの解らないことを問う男。



64: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:58:26.41 ID:r+btzLdX0
  
(;'A`)「ちょ、ちょっと待って下さい!
    連合軍とか言われても、俺は一般人ッスよ!」

(`・д・')「一般人?
     俺以外にも『リフレクション』を出た奴がいるのか……?」

男の手が腰の金属片に伸びる。
危険を察知するも、身体が動く前に男は行動を開始していた。
汗を流すドクオの首筋に、冷たい感触が当てられる。

(`・д・')「答えろ、どうやって出た?
     亀裂を見つけたとしても、一般人が『GIF』を扱えるわけがない……!」

(;'A`)「ちょ、待っ! 何が何だか解らないッスよ!!」

(`-д・')「とぼけるな、知らないで済むと――」

男の眼球が揺れる。
そのまま膝が折れ、ドクオに寄りかかるように身を崩した。

(;'A`)「え? え?」

慌てて抱きとめる。
揺り動かすも反応はなく、どうやら気絶したようだった。



70: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:59:47.03 ID:r+btzLdX0
  
(;'A`)「んだよ、朝から……どうしろってんだ……」

救急車か警察を呼ぶべきか。
思い、男の身体を支えながら携帯電話を取り出そうとした時。

グゥ、という間抜けな音が響いた。

(;'A`)「そういや、朝から飯食ってなかった」

グゥ、と、またもや間抜けな音が響く。
音源はどう見ても、目の前で気絶している男の腹からだった。

(;'A`)「…………」

時が止まったかのようにドクオの動きが無くなる。
しばらくして、彼は『やれやれ』と首を軽く振った。

('A`)「ったく、しゃーねぇなぁ……」

男の身体を軽く引き摺りながら歩き出す。

向かう先は病院や警察、ゴミ捨て場などではなく、目の前の古いアパートだった。



71: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 22:01:38.95 ID:r+btzLdX0
  
暗闇がある。
光源は、高い天井に幾つかがあるだけ。
そこは巨大な倉庫のような空間だった。
大きめのコンテナが無造作に置かれ、廃材や木材が地面に横たわっている。

冷えた空気が充満し、否が応にも背筋を振るわせる。
そこはまるで、腹を空かせた猛獣がいる檻の中のようだった。

コツ、とヒールがコンクリートの地面を叩く音。
それは丁度十歩目で音を潜める。

从'ー'从「…………」

渡辺だ。
少しの間、沈黙を放つ。
おもむろに右手を軽く掲げた。

それを合図としたかのように、照明から発せられる光が強くなる。
今まで闇で隠していた部分を強制的に照らした。



74: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 22:03:08.73 ID:r+btzLdX0
  
部屋の大部分が視認出来るようになったことを確認した渡辺は

从'ー'从「久しぶり、かな?」

と、誰に話しかけるのでもなく声を発する。
その先には、複数の人影があった。

<ヽ`∀´>「……とんでもないことをしてくれたニダ」

軍服を着た屈強な男。

[゚д゚]「落ち着け、ニダ坊。
    まずは嬢ちゃんの話を聞こうじゃねぇか」

頭に鉢巻を巻き、煙草をくわえた中年の男。

*(‘‘)*「渡辺ちゃん、とうとうやっちゃったんですか? か?」

ゴスロリチックな衣装を着た、小柄な女性。

服装・雰囲気・年齢がバラバラな三人が、射抜くように渡辺へ視線を向ける。



77: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 22:05:05.23 ID:r+btzLdX0
  
从'ー'从「まぁまぁ、とりあえずは再会の挨拶といきましょう。
      十年振りだね、皆」

<ヽ`∀´>「こっちからしてみれば五年ニダ」

[゚д゚]「皆って、まだ全員は揃ってねぇぞ」

*(‘‘)*「再会するたぁ、思ってなかったですよ」

口々に文句を垂れる。
その否定的な態度を、笑顔で受け止めながら

从'ー'从「あ、そっちはまだ五年なのかぁ……懐かしいね。
      ちなみに全員が揃うまでは、もう少し掛かりそうだから先着組に挨拶という事で。
      ヘリカルちゃんは残念だったね」

順番に軽く流す。

[゚д゚]「んじゃ、挨拶はそこくらいで終わって、次は俺達の質問タイムな。
    とりあえず、お嬢ちゃんがこっちの世界にいた間のことを産業くらいで頼むわ」

从'ー'从「十年掛けて準備
      世界交差成功」

<ヽ`∀´>「二行……」



80: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 22:06:52.12 ID:r+btzLdX0
  
从'ー'从「ま、それだけ準備に集中していたってことで。
      こっちは二人だけの行動だったし……そこらは許してね、ニダー雑戦副長さん」

<ヽ`∀´>「五年も経って生きていれば、地位だって変わるニダ。
      今のウリは陸戦軍長ニダ」

从'ー'从「へぇー、昇進したんだねー」

クスクスと笑う渡辺を、中年の男が半目で睨んで溜息。

[゚д゚]「しかしまぁ、諦めてなかったとはな……気丈なお嬢ちゃんだ。
    まさか本当に世界交差を実現させるとは思わなかったぞ」

从'ー'从「何せ私は正しいからね。
      そういう正しきロジックは好きでしょ、デフラグさん」



83: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 22:08:36.11 ID:r+btzLdX0
  
<ヽ`∀´>「アンタが護国院に提出した『秩序崩壊論』……確かに理論上は正しかったニダ。
      臭いモノに蓋をしてきたウリ達や他世界とは違うニダ」

*(‘‘)*「でもでも、だからこそ却下されたんですよねー?
     大前提となっていた秩序の崩壊が根元にあったからこそ」

从'ー'从「そういうこと……だから、この世界で行おうって魂胆なのさ」

肩を竦めて首を振る。
そんな様子に対し、ニダーが手を挙げ

<ヽ`∀´>「ちょっと待つニダ。
      世界交差を成功させたってことは、もうこの世界の秩序は無いニダ?」

从'ー'从「まだ残してるよ。 いわば第一段階だね、今は。
      よっぽど下手しない限り、私達が死ぬことはありえない。
      もちろん最終段階まで移行すれば、その先はどうなるか解んないけどね
      とりあえず、詳しい説明は後でするとして――」

軽く両手を広げる。
そのままの姿勢で笑顔を生み

从'ー'从「さてさて、貴方達はどうしますか?」

問うた。
それに対して、三人は沈黙を発する。
ニダーは俯き、デフラグは目を瞑り、ヘリカルは唇に人差し指を当てて。
それぞれ思考を始めたようだ。



85: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 22:10:09.31 ID:r+btzLdX0
  
まず声を発したのは

*(‘‘)*「ま、私は前々から渡辺ちゃんの理論に賛成だったですし
     正直言って、護国院のやり方じゃ時間が掛かりすぎると思ってましたです。
     というわけで……私は渡辺ちゃんの味方をするです!」

从'ー'从「ありがとう、ヘリカルちゃん」

続いて

[゚д゚]「アンタがここまで強情だとは思ってなかったぞ。
    感服したってのもあるが……とりあえず俺は機械をイジれればそれで良い。
    戦争には興味ねぇが、手を加えた機械が役立つんなら手伝うぜ」

从'ー'从「ありがとう、デフラグさん。
      貴方の技術力は是非とも欲しいと思ってたんだ」



89: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 22:11:47.02 ID:r+btzLdX0
  
そして

<ヽ`∀´>「……ウリは『秩序崩壊論』に反対だったニダ。
      理論上では正しいと思っていたが、他世界まで巻き込むのは何か違う気がしていたニダ」

从'ー'从「…………」

<ヽ`∀´>「しかし、もう世界交差は始まってしまったニダ。
      こうなったら個人的な感情は捨てて、最優先目的である天敵排除を目指すニダよ」

从'ー'从「協力してくれるってことで良いかな?」

その言葉に、ニダーが頷く。
そして言葉を放った。

<ヽ`∀´>「ここまで状況が進んでるのなら、文句を言っても仕方ないニダ。
      本来の任務の形が変わっただけだと判断するニダ」

从'ー'从「流石、ただの軍人さんじゃないだけあるね。
      その調子だと『第二の軍神』って呼ばれても良いんじゃない?」

<ヽ`∀´>「冗談が過ぎるニダよ、渡辺元科研長。
      そんな称号をもらったとしても、あの女と比べられて永遠に恥を掻くだけニダ」

と、軽く苦笑する。



93: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 22:13:28.16 ID:r+btzLdX0
  
その横で、吸い終えた煙草を投げ捨てたデフラグが声を上げた。

[゚д゚]「とりあえずメンバーはどうすんだ?
    まさか俺達と、残りの奴らだけで仕掛ける気なのか?」

*(‘‘)*「そりゃ自殺行為ですよ。
     『軍神』がいて、GDFがあって、英雄がいて、EMAがあったとしても
     駒となる兵隊がいなくちゃ話にならないです」

从'ー'从「うん、そこは私も流石に承知してる。
      だから第二段階移行時に引き込もうと思ってるんだ」

<ヽ`∀´>「では、当面の目的は?」

从'ー'从「個人個人の戦力増強。
      同志の召集と、強者の仲間への勧誘。
      各世界の技術吸収、転用、応用……くらいかな?」

技術、という言葉を聞いたデフラグが笑みを浮かべる。

[゚д゚]「異世界の技術か、面白そうじゃねぇか。
    いい加減GDFばっかで飽きてたんだよな……出来ればEMAってのをイジってみてぇ」

嬉しそうに言う彼は、懐から新たな煙草を取り出した。
おそらくは自分の技術に絶対の自信を持っているのだろう。
そう思わせる笑みだった。



97: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 22:14:53.51 ID:r+btzLdX0
  
从'ー'从「それはちょっと待って欲しいかな。
      接続した世界はまだ一つだけだし」

*(‘‘)*「一つだけ……ってことは、私達の世界だけなんですか?」

从'ー'从「一気に全部繋いだら混乱が起きるでしょ?
      それに人数が少ない今の状態で、効率よく増強するなら一つずつが良いの」

<ヽ`∀´>「考えてるニダね」

从'ー'从「私達の世界を最初にしたのは、その世界を解っているから。
      だから回収すべきモノも解ってるだろうし
      この世界に馴染むための行動として見ても、難易度的に考えて低いでしょ?
      とは言え、私は五年間いなかったから
      優先して回収すべきモノを教えてもらいたいわけだけど――」



99: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 22:16:25.00 ID:r+btzLdX0
  
都市ニューソク。
その郊外に位置する、小さなスラム街に近い地域。
荒くれ者や裏の人間が集い、秩序が秩序として成り立っていない場所だ。

その裏路地の暗い広場。

一陣の轟風と光が発せられた。
円状に展開したそれは、一時的に膨らんだ後に収束して消える。

直後、その光が消えた場所に一人の人間が立っていた。



101: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 22:17:46.00 ID:r+btzLdX0
  
直後、その光が消えた場所に一人の人間が立っていた。

(#゚;;-゚)「…………」

顔に複数の傷跡を持つ女性。
痛々しいほどの数を誇り、未だに治りきっていないものもある。

目に輝きは無く、ただただ景色を目に入れているのみ。

周囲をゆっくりと見渡し、次に地面を見る。
そのまま首を上げて空を見上げ、鼻から息を吸って匂いを嗅ぎ

(#゚;;-゚)「……あぁ」

納得したかのような吐息の後、言った。

(#゚;;-゚)「何や……世界を越えてしもうただけか」

身を翻し、何処へ行くでもなく歩き出し

(#゚;;-゚)「まぁええわ、ウチがやることは変わらん……」

歯噛みの音が、ギリ、と鳴り

(#゚;;-゚)「――待っとれよ、異獣共が」



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