( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです
- 2: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:21:41.95 ID:mv9d85ga0
- 活動グループ別現状一覧
( ・∀・) 爪゚ -゚)
所属:??世界
位置:FC十四階・社長室
状況:良からぬことを企み中
( ゚д゚ ) ( ゚∀゚) ('A`)
所属:??世界・Aチーム@
位置:隣都市
状況:僕達は餌
川 ゚ -゚) 从 ゚∀从
所属:??世界・AチームA
位置:FC五階・会議室
状況:私達は釣り人
(´・ω・`)
所属:??世界・Bチーム
位置:FC九階・情報管理課
状況:情報収集
- 3: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:23:04.83 ID:mv9d85ga0
- ( ^ω^)
所属:??世界・Cチーム@
位置:FC七階・訓練室
状況:8th−Wと会話中
( ,,゚Д゚) (#゚;;-゚) <_プー゚)フ (`・ω・´) ('、`*川
所属:??世界・CチームA
位置:FC四階・総合兵軍課
状況:防衛の日々
从'ー'从 ( ´_ゝ`) [゚д゚] (-@ハ@)
所属:??世界・Dチーム
位置:FC地下二階・資料室
状況:量産体制
( ФωФ) (´・_ゝ・`) ( ・ω・)=つ <ヽ`∀´> *(‘‘)*
川 -川 ξ゚听)ξ (,,^Д^) (゜3゜) ,(・)(・),
所属:機械世界・アギルト連合軍
位置:連合軍アジト
状況:不明
ミ,,"Д゚彡
所属:??世界・アストクフル家執事
位置:FC別棟・病室
状況:意識不明
ノハ#゚ ゚)
所属:英雄世界
位置:不明
状況:不明
- 7: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:24:25.89 ID:mv9d85ga0
- 英雄世界編
第十九話 『終わりへの第一歩』
約二十年前、この世界で一つの大規模な戦争が起こった。
歴史に残った名は『第三次世界大戦』。
国同士ではなく大陸同士が争った、まさに世界全てを巻き込む戦争だった。
その傷跡は今でも各地に残っており
都市ニューソクの隣に広がる『戦跡荒野』も、その一つだ。
しかし後半では、ミサイルや戦闘攻撃機を用いた『破壊的戦闘』はあまり行われなかった。
では何が主だったのかと問われれば
形無き戦いである『電子戦』である、と答えるしかないだろう。
- 9: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:25:53.66 ID:mv9d85ga0
- 互いに相手の『穴』を見つけ、情報を持ち出し、それを元に相手を貶める。
戦力を削っていくのではなく国力を削り合うような戦い。
それは人を殺すことを主に据えない、ある意味クリーンな戦争だった。
これは『リアルネット』や『パラライフ』といった
『擬似的な現実世界』が流行っていた時代背景があったからだろう。
元よりインターネットは当初、軍事目的で作られていたことから
発展型の『リアルネット』を使用するのは当然と言えば当然だった。
- 11: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:28:01.20 ID:mv9d85ga0
- 電子上の戦争は五年ほど続き、これによってかなりの数の国が機能を失った。
そして二○三五年、イクヨリの『世界運営宣言』によって終結する。
名残として現在、各大陸を統治する七大国が残り
それらを政治的にまとめる『世界運営政府』が作られた。
あれから二十数年。
表向き、世界は平和に見えるが
政治的な観点から見れば、決してそうとは言えない状況にあった。
もはや大国同士に信頼関係などない。
利益上の理由から貿易は普通に行われているが
世界で協力して行われるようなイベント――例えばオリンピック――が皆無となっている。
全世界が冷戦状態のようなものだった。
だからこそ、非戦国であるはずのJAPANの中で
フィーデルトコーポレーションという軍事目的の企業が容認されている。
もちろん警察や自衛隊も、それなりの軍隊レベルの装備と練度を誇っている。
故に例えば、いきなり街中に戦車や銃を持った兵士が現われても、それほど大きな騒ぎにはならない。
特にJAPAN以外の大国では、それが日常茶飯事とさえ言える。
それがこの世界の『普通』だった。
- 13: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:30:03.83 ID:mv9d85ga0
- 「こちらB小隊コミュ支援班。
現在『戦跡荒野』を……順調に横断中」
『了解』
ザ、とノイズが混じった応答。
簡単な定時報告をこなした後、その兵士は通信機のスイッチを切った。
そのまま周囲を見渡す。
ガタガタと揺れる視界。
彼は今、軍用車両の助手席に座っている。
隣には陰鬱な表情を浮かべてハンドルを握る友人の姿。
窓の外を見れば、周囲は闇に閉ざされている。
そして同じような軍用車両がいくつか目に入った。
最新の高速移動型戦車も確認出来る。
- 15: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:31:37.64 ID:mv9d85ga0
- 「……やだねぇ、望まない戦いってのは」
運転していた男が呟くように言った。
「馬鹿らしいよな。
あのロマネスクの仲間になるのを拒否ったら殺される。
でも仲間になったらなったで、こんな風に戦闘に放り出されるんだぜ?
どっちにしても死ぬようなもんじゃねぇか」
「お前はまだマシさ、自分の事だけ考えてりゃいいんだから。
俺なんて十になる娘の命が掛かってんだ」
彼らは機械世界から、この世界へ降り立った兵士だった。
世界政府から譲り受けた兵器や武器を携え、今まさにFCへの襲撃を仕掛けるために移動している。
そういう旨の命令をロマネスクから受けたからだ。
おそらくFCは、既にこちらの動きを察知しているだろう。
待ち構えもしているだろう。
しかし、それは完全に無駄だと判断する。
彼らにはどう転んでも勝ち目など無く
この襲撃も、結局は建前のようなものなのだから。
- 16: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:33:08.40 ID:mv9d85ga0
- 街中で戦闘をしても困ることはなかった。
それがこの世界での『非日常』とは、一概に言えないからである。
そういう世界なのだとロマネスクが言っていた。
責任問題についても心配はないらしい。
むしろ、それこそがFCに対する切り札となるのだ。
死なない程度にドンパチ騒ぎを起こして、適当なタイミングで逃げ帰れば良い。
異獣討伐に比べれば、これは安全な任務なのだ。
そうなのだと、今の今まで思っていた。
「……ちょっと待て、前見ろ」
「あ?」
前方。
戦争の傷跡が生々しく残る荒野の中。
そこに、微かに見える程度だが一本の棒が立っている。
- 19: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:34:45.89 ID:mv9d85ga0
- 「……?」
いや、棒ではない。
あれは
「!?」
立っていたのは人間だった。
黒色の何かを着込んでいるだけの、紛れもなく人間だった。
「ちょ、待てよ……何でこんな場所に……?」
現在位置、『戦跡荒野』のド真ん中。
都市ニューソクからもFCのある都市からも、最低でも十km以上はある地点だ。
そんな場所に一人で突っ立っている。
構うな、という旨の通信が小隊長から入った。
つまり『そのまま直進し、避けなければ轢き殺せ』ということである。
幸い、あの人間がいるのは自分達の進路上ではなかった。
轢き殺す役は、二台左隣の車両だ。
- 22: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:36:10.32 ID:mv9d85ga0
- 一瞬で通過する。
ちょっとした興味本位で、どうなったのかと背後を見た。
目に飛び込んできたのは死体ではなく、猛烈な光。
「――!?」
爆発だと理解するのに数瞬。
同僚がブレーキを踏み、反動で頭を打ちつけたのは次の瞬間だった。
周囲の仲間達も慌てて車両を停めるのが、揺れる視界で確認出来た。
「な、何だ!?」
銃を引っ掴み、慌てて車両から降りる。
まず向かってきたのは
/ ゚、。 /「下らんな」
爆音に混じった女性の声だった。
身を黒色の甲冑で包み込み、右手に巨大な剣を握っている。
背後で巻き起こる爆炎に照らされ、その姿は神秘ささえ感じさせられた。
- 23: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:37:42.47 ID:mv9d85ga0
- 「何者だ……!」
ようやく事態を飲み込んだ小隊長が震える声で問う。
女性は少しだけ視線を向け
/ ゚、。 /「……解らんか?」
風を切る音。
巨剣が回り、重々しく彼女の肩に担われる。
/ ゚、。 /「勝手な都合で悪いのだが、FCへ向かうのを止めてもらいたい」
「それは出来ない……俺達にだって事情がある」
/ ゚、。 /「そうか」
右足を踏み出す。
動作と共に、兵達が一斉に銃を構えた。
/ ゚、。 /「ならば足を切断してまでも止まってもらう。
丁寧に言ってやった時に従わなかったことを後悔しろ」
「う、撃て!」
得体の知れない何かを感じ取ったのか、上擦った声で小隊長が叫んだ。
同時、銃声が連鎖する。
- 24: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:39:23.53 ID:mv9d85ga0
- キュ、という銃弾が地面を抉る音の中に、キン、という金属音が混じった。
舞い上がった砂煙で見え辛いが
「あの剣で防御しているのか!?」
「囲め! 一方だけの防御など多方攻撃で潰せる!」
今は慌てているが、周囲の兵達は決して素人ではない。
小隊長の言葉を聞いた途端、弾けるように各々のポジションへ走った。
「え――」
しかし隣の男の声と同時、金属音が消えていることに気付く。
「いない、だと!?」
いつの間にか射線上に女の姿がなかった。
/ ゚、。 /「自らの所業で視界を潰すとは愚頂だな」
声は周囲からはではない。
それが上空から飛ばされたと気付く時には、既に彼女の姿勢は攻撃を示していた。
見上げた瞬間、すれ違うように黒い何かが高速で落下する。
- 25: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:40:54.69 ID:mv9d85ga0
- 形容し難い、生々しい音が響いた。
緊張で痛みを感じる首を無理矢理に動かすと
少し前まで生きていたはずの小隊長が、丁度頭の頂点から真っ二つに両断されているのが見えた。
血など噴き出す暇など与えられない速度だ。
どぷ、と溢れ出すように断面から何かが漏れ出る。
一瞬後に両断された身体が崩れるように倒れた。
「う、うわぁぁぁぁ!?」
誰かが叫ぶ。
大の大人達が威厳もなく怖がる様子を、ダイオードが静かに見渡す。
そして軽い溜息を吐いた。
/ ゚、。 /「かつては異獣を相手にしていた……にしてはリアクションが大き過ぎるな。
この程度に驚いていては世界など救えはしないぞ?」
不気味に薄笑いし、皮肉を籠めて言葉を投げる。
しかしそれに怒りを発する者も、そして反応する者さえいなかった。
つまらなそうに目を伏せ
/ ゚、。 /「ワカッテマスも随分と妙なことを言う。
漁夫の利を狙うのではなかったのか……発言の撤回は信用を失うというのに」
- 27: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:42:26.47 ID:mv9d85ga0
- そんな独り言の後、まぁいいと呟く。
/ ゚、。 /「とりあえず一つ言えるのは、貴様らがFCへ行かれると邪魔になるということだ。
漁夫の利とは本来、二つの争いの利を得ることだからな。
三つ目の勢力には御引取り願おう」
「三つ目、だと……?」
疑問の声。
しかしその音色は震えてなどいない。
つまり、彼女の周囲で怖がっている兵達ではないということだ。
それに気付いたのか、ダイオードは興味深げに声の方向を見る。
(,,^Д^)「つまり俺達とFC以外の、第三勢力が動いているというわけか」
車両からゆっくりと降り立ったのはプギャー。
今の今まで、身動きせずに事を見守っていたのだろう。
- 30: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:44:17.80 ID:mv9d85ga0
- その行為の名を、ダイオードは静かに口にした。
/ ゚、。 /「臆病、だな」
(,,^Д^)「このことを臆病だと言うのならば、戦争を生き抜いた軍人らは臆病の集団となるが。
まさかお前は、死して最上とでも言うつもりか?」
/ ゚、。 /「成程、それは済まなかった」
だが、と言い、巨剣を肩から下ろす。
見た限りでも相応の重さを持っていると思われるそれを、片手で水平に掲げた。
/ ゚、。 /「死して下衆、生きて最上とも言えまい。
時に死することが英雄たる所以となることもあるだろう?」
(,,^Д^)「……だから躊躇無く殺すのか」
/ ゚、。 /「必要があるのならば」
沈黙。
周囲の兵達も、その問答の行方を見守るばかりだ。
- 32: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:45:48.46 ID:mv9d85ga0
- しばらくし、プギャーは背を向ける。
/ ゚、。 /「逃げるか、それとも殺せというサインか?」
(,,^Д^)「前者だ」
/ ゚、。 /「愚かな……易々と逃がす程度の力なら、お前達の前には立たん」
(,,^Д^)「殺される程度の力なら、お前に背などを向けはしない」
言葉と共に走り出した。
他に比べて少し大きめの車両に飛び乗り、素早い動作で積荷を解く。
中から現われたのはバイクのような機体。
細かい戦場を高速で駆け回るための、地上用小型戦闘機だ。
すぐさま走り出す。
/ ゚、。 /「逃がすと思って――」
一歩踏み出した時。
プギャーのいる先から、一筋の鋭い何かが飛来する。
甲高い音を立て、それは巨剣によって真っ二つとされた。
- 33: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:47:03.60 ID:mv9d85ga0
- / ゚、。 /「これは……」
黒塗りの鞘。
先ほどまでプギャーが腰に差していたモノだ。
つまり今の彼の手には、抜き身の剣が握られているはず。
もはや必要がないと判断したのか
それとも別の理由――例えば爆薬が仕込んであったり――があるのか。
一瞬ではあるが、その思考の隙が大きかった。
次に顔を上げた時には、既に小型戦闘機の姿は小さくなっているのが確認出来る。
/ ゚、。 /「機敏な男だ」
この時点で追う気など湧かない。
そもそも自分の役割は、この周囲で震えている兵の処理。
小義のために大義を落とすのは馬鹿がやることだ。
- 35: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:48:08.89 ID:mv9d85ga0
- ふン、と鼻を鳴らし
/ ゚、。 /「いいだろう……。
何かが貴様を駆り立てるのならば、それを結果として私に見せてみろ。
壊れつつある秩序を塗り替えるというのならば、証明として未来を変えてみろ。
そう――」
一息吐き、虐殺が再開される。
悲鳴が連なる中心にて、ダイオードは微かな笑みをこぼして呟いた。
/ ゚、。 /「あの男……モララーの死を証拠として」
- 38: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:49:50.19 ID:mv9d85ga0
- 社長室の扉を開いたのは女性。
いや、女性の形をした機械だった。
爪゚ -゚)「御主人様」
( ・∀・)「あぁ、解っている」
珍しく、彼は椅子から離れていた。
いつもは社長用の椅子に腰掛けてふんぞり返っているはずなのだが
その身は窓の傍まで移動している。
視線は南東へ。
戦跡荒野に当たる地点から、濛々と煙が上がっているのが確認出来た。
爪゚ -゚)「……こちらに向かっていた世界政府の戦力が
たった一人の人間によって殲滅させられたそうです」
( ・∀・)「もはや人間とは呼べまい。
どうやら、私達はとんでもない相手を敵に回しているようだ」
秩序守護者と異獣の、戦力としての尺度は渡辺から聞いていた。
が、やはりこうして現実になっているのを見ていると、自らの認識の甘さが悔やまれる。
- 40: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:51:19.74 ID:mv9d85ga0
- ( ・∀・)「向こうが攻撃されたという事は、こちらにも来るだろう。
皆に最大警戒命令を――」
爪゚ -゚)「既に発しております」
( ・∀・)「よろしい」
爪゚ -゚)「御主人様に判断して頂きたくは、連合軍へ攻め入るという策です。
現状、世界政府はこちらに攻撃して来れませんが……」
( ・∀・)「だが好機でもある……これ以上は時間を無駄にするわけにもいくまい。
さらわれたツン君も気になるところだしね」
爪゚ -゚)「彼女はもはや生きてはいないかと……おそらく皆様も同一の思いでしょう。
その証拠に、誰もその話題を出したがりません」
( ・∀・)「出したがらない、の部分は正解だろうが
きっと彼らは希望を望んでいないわけではないはずだよ」
爪゚ -゚)「では、何故――」
( ・∀・)「焦りは隙を生み、隙は敗北を呼び、敗北は絶望を運ぶ。
そして僅かながらに、ドクオ君への気遣いもあるのだろう」
爪゚ -゚)「そして貴方はその意図を敢えて汲まなかった、と」
( ・∀・)「たった一人のために無謀な攻めを仕掛けるわけにもいくまい。
これは世界を賭けた戦いだと言っても過言ではない。
私の決断次第では……この世界の未来は大きく変わるはずだからね」
- 41: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:53:02.13 ID:mv9d85ga0
- 闘争か。
平穏か。
それとも、別の何かか。
その選択権を、今現在はロマネスク側が握っている。
まずは権利を奪い取らなければ、少なくとも未来への選択肢は一つのみだ。
( ・∀・)「ただ、一つだと感じるのは我々だけなのだがね」
爪゚ -゚)「悲しい世界ですね」
( ・∀・)「どの世界においても必定だよ。
例えば正義のヒーロー。
弱者を救うという得はあるが、悪者の得を奪うという所業も同時に行ってしまう」
爪゚ -゚)「得られる側と得られない側は共存を不可能とする……まさに表裏一体ということですか」
( ・∀・)「だからこそ人は悩む。
全てを救えぬかと、全てを幸福に出来ぬかと
……全て誰も傷付けずに終わらせられはしないのか、と」
その時だ。
社長室、いや、FC全体に警報が鳴り響く。
敵襲撃を示す緊急の音。
それを聞いたモララーは、ほら、と肩を竦め
( ・∀・)「人はその願いが叶うことを奇跡と言う。
その実、起きないからそう呼ばれているだけなのだがね」
- 42: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:54:42.44 ID:mv9d85ga0
- ただ最初から居たかのように。
違和感さえ持たせずに。
一陣の突風のように。
それらは現われた。
展開されたのは一方的な攻撃。
一階に集っていたFC兵の大半は、敵の姿を視認する前に意識を奪われた。
エントランスホールには人の山。
防衛機材も、高額な銃器や武器も、培ってきた訓練の勘も経験も。
全てはたった三人の男によって叩き伏せられていた。
「な、んだと……」
微かに意識を保つ一人の兵が呻く。
多少なりとも抗戦することが出来ると思っていたのが、この結果だ。
圧倒的な戦力差。
いや、戦力というレベルでは量れない何かが在る。
そうでなければ、この結果はありえないはずだ。
- 44: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:56:05.07 ID:mv9d85ga0
- ――役立たずの愚図。
ホールに響く沈黙が、そう囁いているかのように聞こえた。
それを肯定するかのように声がする。
声源は戦場の中心だ。
┗(^o^ )┓「――この程度ですか」
剣を片手に持つ、身長一メートルほどの男。
\(^o^)/「人と英雄を比べるべきではありません。
これは当然の結果」
槍を肩に担う、髪を一つにまとめた男。
| ^o^ |「…………」
巨大な弓を握る、巨躯の男。
三者三様の格好、言動。
しかし表情はまったくの同一だ。
三つ子とでも言うのだろうが、その身長差はあまりにも大き過ぎる。
- 45: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:57:41.36 ID:mv9d85ga0
- その時。
( ,,゚Д゚)「チッ――」
タ、と階段を駆け下りる音。
そして現われたのはいくつかの人影。
(`・ω・´)「これはまた一方的なやられ方だな。
監視カメラの映像にも、残像くらいしか映っていなかったし
当然と言えば当然なのかもしれないが」
( ゚д゚ )「…………」
防衛組のギコやペニサス、シャキン。
そして監視カメラの映像を見て飛び出したミルナだ。
('、`*川「アイツら……」
ミルナとペニサスが、それぞれ微妙な表情で襲撃者を見る。
( ,,゚Д゚)「やはり知っているのか」
('、`*川「私達の世界の住人だよ」
( ゚д゚ )「クン三兄弟、と……そう呼ばれていた」
- 48: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:59:08.29 ID:mv9d85ga0
- クン三兄弟。
英雄世界にて、彼らはそう呼ばれていた。
身長順に、ジュカイ=クン、オワタ=クン、ブーム=クン。
『近』『中』『遠』と、それぞれの担当が決まっており、互いが互いを補い合う戦法を得意とする。
もちろんその戦法を支えている実力も非常に高い。
単体でも強いが、三兄弟集うと更に手が付けられなくなる。
厄介な相手だ。
( ゚д゚ )「そして最も英雄神に近しい存在だと聞いている。
おそらくだが、業名の儀式ができて以来の最初の英雄ではないだろうか」
(`・ω・´)「ということは――」
( ,,゚Д゚)「英雄神がいるロマネスク側というわけか。
奴らの戦力が戦跡荒野で殲滅させられたと聞いたが
あれはフェイクだったのか……?」
言葉に、ジュカイが首を振る。
┗(^o^ )┓「いえ、あの襲撃は私達と何の関係もありません」
('、`*川「……ってことは味方?
いやでも、FC兵をこんなにしたってことは違うよね」
- 49: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 15:00:51.07 ID:mv9d85ga0
- \(^o^)/「道は二つだけではありませんよ」
( ゚д゚ )「まさか――」
| ^o^ |「私達は貴方達、そしてロマネスク達のどちらにもつきません。
そういうことです」
彼らの言葉が意味するのは、たった一つの真実しかなかった。
( ,,゚Д゚)「……秩序守護者についたか」
| ^o^ |「御名答」
(;゚д゚ )「何故だ!? 英雄が英雄神への恩義を忘れたとでも!?」
英雄とは名前だけではない。
自身の誇りによって形成されている部分が大きいからだ。
だからこそ悪の英雄など、芯を曲げる英雄などいない。
ミルナは、目の前にいる三人の英雄も同じだと信じていた。
- 51: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 15:02:37.08 ID:mv9d85ga0
- ┗(^o^ )┓「別に恩義を忘れたわけではありません」
(;゚д゚ )「ならば――」
\(^o^)/「ただ、私達は芯を折ることが出来なかった。
英雄神の恩義よりも、己が進むべき道を優先しただけのこと」
| ^o^ |「異獣、という言葉以前の話ですよ。
混乱が起きるくらいならば、その混乱が起きる原因を断ち切ろう、と」
つまり
| ^o^ |「世界交差など、させはしません」
( ,,゚Д゚)「……今後の俺達もその考えに辿り着く可能性がある。
それくらいは解っているはずだ」
| ^o^ |「えぇ」
( ,,゚Д゚)「だったら何故ここを襲撃した? 場所を間違えているだろう?」
主導権を握っているのはロマネスクだ。
三兄弟が狙うとすれば、まずはFCよりも向こう側のはずである。
┗(^o^ )┓「えぇ、当初はそのつもりだったのですが……」
\(^o^)/「ここへ面白い客が来るそうなので」
( ,,゚Д゚)「客、だと……?」
- 54: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 15:03:59.36 ID:mv9d85ga0
- 異常な静けさを醸し出すFC。
その建物を、更に上から見つめる影があった。
メ(リ゚ ー゚ノリ「どうよ、姉貴」
ル(i|゚ ー゚ノリ「あぁ、面白いことになりそうだな、兄上」
赤髪の男と青髪の女。
所属不明かつ、能動的な行動を見せていなかった二人がFCを見下ろしていた。
コソコソ隠れるわけでもなく、ビルの屋上から身を乗り出している。
そこにあるのは自信。
完全に確立された、ある種の圧倒的な高位にいると確信している表情だ。
ふと、青髪の女が視線を逸らす。
ル(i|゚ ー゚ノリ「東の方角から二つほど。
南の方角から一つ、か」
メ(リ゚ ー゚ノリ「役者は揃いつつある……ってね」
ル(i|゚ ー゚ノリ「その結果は?」
メ(リ゚ ー゚ノリ「FCの消滅」
まるで予め決められていた台詞を吐き出すかのような、そんなリズムを伴った会話。
もし二人に表情が無ければ、機械人形と判断されても仕方なかっただろう。
- 56: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 15:05:24.69 ID:mv9d85ga0
- 青髪の女が、クク、と喉を震わせて笑う。
ル(i|゚ ー゚ノリ「迷っている者達が
現状維持を望む者達、そして現状打破を望む者達に消されるとは」
メ(リ゚ ー゚ノリ「潰し合いってのは醜いねぇ」
ル(i|゚ ー゚ノリ「だが確実に洗練されている」
メ(リ゚ ー゚ノリ「あー、たまんねぇたまんねぇ。
英雄や軍神……抗う奴らはまだまだ増えるだろうなぁ」
ル(i|゚ ー゚ノリ「だが、そろそろ一旦落ち着くべきだ……混沌は余計なモノさえも削ってしまう」
メ(リ゚ ー゚ノリ「んじゃ、行きますか」
ル(i|゚ ー゚ノリ「行こう、FCへ。
我々の背後から追跡してくる『彼女』を、彼に会わせなければならんしな」
メ(リ゚ ー゚ノリ「ちなみに殺しちゃ駄目?」
ル(i|゚ ー゚ノリ「好きにしろ……余興で倒れるくらいならば、未来に生きる資格などないからな」
突如、二人はフェンスを飛び越える。
そのまま落下。
二対の化物が、混沌と化すFCへと忍び寄り始めた。
- 57: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 15:07:01.73 ID:mv9d85ga0
- 戦闘が始まっていた。
ギコ達四人に対し、襲い掛かる影は三つ。
剣を携えた男。
槍を振り回す男。
巨大な弓を構える男。
三人の連携は、鋭く、そして速い。
戦闘に慣れているはずのギコ達でさえ、その速度に翻弄されていた。
(;,,゚Д゚)「くっ……」
( ゚д゚ )「下がれ!」
('、`*川「よぉっし! 久々に本気出しちゃうよー!」
グラニードで防御していたギコが素直に下がる。
入れ替わるように飛び出したのは二人の英雄だ。
- 59: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 15:08:17.57 ID:mv9d85ga0
- \(^o^)/「そこです」
ボ、という大気を穿つ音。
超高速の刺突がミルナを狙うが
( ゚д゚ )「ぬん!」
両腕を盾にするようにし、その恵まれた動体視力で回避していく。
しかし流れる冷や汗は隠せない。
一撃一撃が致死の臭いを撒き散らしているのだ。
もし身体の何処かに当たることがあれば、おそらくはその空間ごと突き抜かれるだろう。
オワタの放つ槍は、それほどの威力があった。
その根底を支えるのは速度。
突き出しから引きという二連動作は、どうしても僅かな隙を生じてしまう。
槍を持つ相手と戦う場合、如何にその隙を突くかという一点が重要なのだ。
しかしオワタの槍の速度は人知を超えている。
一撃を往なしたと思えば、次の一瞬で追撃が来る。
そこにリズムなど関係ない。
ほぼ同時に五連ほどの刺突が向かってくるのだから。
- 61: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 15:10:04.27 ID:mv9d85ga0
- だがミルナも馬鹿ではない。
真正面から立ち向かうのは愚行だと解っている彼は、後退しながらチャンスを伺っていた。
押しの攻撃に対して有効なのは、引きの防御。
押しに対して押すのは素人がやることだ。
タイミング良く計画的に足を下げつつ、ミルナが待っているのは
('、`*川「ほいさっ!」
ペニサスの奇襲。
轟、と風を巻き上げながら接近する。
しかし
┗(^o^ )┓「敵は一人ではありません」
オワタとペニサスの間にジュカイが駆け込んだ。
その低身を活かしての高速の割り込みである。
('、`*川「どりゃぁぁ!!」
構わず蹴りを放つ。
大気がうねり、空間が引き伸ばされる攻撃。
直後、重々しい金属音が響き、周囲に衝撃波を撒き散らした。
- 62: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 15:11:23.80 ID:mv9d85ga0
- (`・ω・´)「とんでもないな……」
アサルトライフルを物陰で構えたシャキンが溜息を漏らす。
ペニサスの足は、別に特別な加工を施しているわけではない。
しかし高速でぶつかった剣を受け止めていた。
普通ならば切断されているはずなのだが。
(`・ω・´)(流石は英雄、といったところか)
その言葉は、彼らの行動を見てから吐かれたもの。
周囲には気絶したFC兵達が倒れている。
正直言って戦闘の邪魔になるだろう。
しかし三兄弟は、その彼らを一度たりとも踏まずに戦っている。
つまり敢えて避けているのだ。
敗者に唾を吐きかけるようなことはしない、とでも言いたいのだろう。
そして、自己を支え立てる誇りが許さないのだろう。
だからこその英雄なのだ、とシャキンは理解した。
- 63: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 15:13:50.30 ID:mv9d85ga0
- と、そこで殺気がこちらに向けられたことを肌で感じ取る。
(;`・ω・´)「チッ!」
全身を投げ出すように飛び出した瞬間、先ほどまでいた場所に光の矢が突き刺さった。
| ^o^ |「コソコソと隠れるのは気に入りませんね」
(;`・ω・´)「生憎だが、俺は普通の人間なんでな!」
銃口を向けて発砲。
この距離と姿勢では、まず当たることはないだろうが
それでも牽制の意味で撃っておくべきである。
案の定、ブームが数歩だけ下がった。
その間に体勢を整えて――
( ,,゚Д゚)「油断するな!」
ギコが飛び出した。
シャキンを庇うように巨剣を突き出す。
閃光。
グラニードの刀身に光の矢がぶつかった。
- 65: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 15:15:01.11 ID:mv9d85ga0
- (`・ω・´)「馬鹿な……いつの間に撃った!?」
( ,,゚Д゚)「あの矢はただの矢じゃない……上を見ろ」
視線の先。
そこには、まるで氷柱のように光の矢がこちらに向いて静止していた。
いつでも撃ち出せるのか、その尾に光が渦巻いている。
(`・ω・´)「……放った矢も、ある程度は操れるというわけか」
射程範囲から逃れるように柱の陰に隠れる。
( ,,゚Д゚)「弓だけが発射装置ではない、気をつけろ」
周囲を見渡す。
もはや何処に矢が仕掛けられているか解らないからだ。
全包囲攻撃とでもいうのだろう。
ブームの放つ矢は、もはや何処から飛んできてもおかしくない。
- 67: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 15:16:14.48 ID:mv9d85ga0
- ( ,,゚Д゚)「英雄の力を甘く見ていた、か?」
(`・ω・´)「……正直な」
( ,,゚Д゚)「運動性も、戦闘に対する嗅覚も、経験も、そして持つ武具も。
全てが俺達を凌駕している」
(`・ω・´)「仕掛けて勝てるか?」
( ,,゚Д゚)「悪いが絶対に無理だ……勝てる気がしない」
(`・ω・´)「ならば――」
( ,,゚Д゚)「モララーが何かを企んでいる。
俺達に出来るのは、その企みを成功させるための時間稼ぎくらいだ」
油断無く巨剣を構え
( ,,゚Д゚)「いいか、勝とうなどと考えるな。
時間を稼ぐ……いや、生き残ることを考えろ」
(`・ω・´)「やれやれ……無力は罪だ」
その言葉にギコは、違うさ、と答え
( ,,゚Д゚)「アイツらが異常なだけだ」
と、兄弟と互角に渡り合うペニサス達の方へ向けて言い放った。
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