( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

2: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 16:57:55.58 ID:fanoE2fO0
活動グループ別現状一覧

( ^ω^) 川 ゚ -゚) 从 ゚∀从 ('A`) (´・ω・`) 从'ー'从
爪゚ -゚) ('、`*川 ( ゚∀゚)
所属:不滅世界
位置:不明
状況:不明

( ФωФ) (´・_ゝ・`) ( ・ω・)=つ  <ヽ`∀´> *(‘‘)*
川 -川 ξ゚听)ξ (゜3゜) ,(・)(・),
所属:機械世界・アギルト連合軍
位置:連合軍アジト
状況:不明



7: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:01:44.01 ID:fanoE2fO0
第二十四話 『強制された奇襲』

爪゚ -゚)「……ここは」

ジェイルは見覚えのない場所に立っていた。
周囲に明かりは無く、空を見上げれば月が不気味に薄光を放っている。

ほんの数分前まではFCの最上階に位置する社長室にいたはず。
では何故、こんな場所に立っているのか。

答えは簡単だ。
FC内に出現した黒衣の男により、強制的に空間転移されたためである。
おそらく一緒に呑み込まれたブーンやクー、渡辺やジョルジュ達も付近にいるのだろう。

視界を暗視モードへと切り替え、周囲を確認。
建物が乱立していることから、どうやらここは市街地のようだ。
詳しい場所を特定するため、ある機能を用いて自身が立つ位置を調べ始める。

爪゚ -゚)「!」

その時だ。
軽い足音、そして金属がぶつかり合う硬質な音と共に、複数の人間がこちらに近付いてくる気配。

しかし彼らに見付かる直前に、ジェイルは自分がいる位置を知ることに成功した。



9: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:03:59.33 ID:fanoE2fO0
爪゚ -゚)「……成程」

状況を理解したジェイルは、すぐさまリュックサックを下ろして特殊兵装を装着する。
『DF(デリートフォース)−ブレイク』という多数の敵を相手にする広域殲滅兵装だ。

通称『A〜E兵装』の内の四つ目である『D兵装』である。

両腕に大型ガトリングガン。
両肩には連装グレネードミサイル。
両腰からはラッパのような砲口を持つ銃身。
背中には充分な量の弾薬と、まだ正体を見せない謎の兵器群。

総重量数百kgのそれらを軽々と担ぎ、ジェイルは道の先に現われた兵士達に視線を向けた。

爪゚ -゚)(この場所がそうならば秩序守護者の目的は……成程、理に適っていると言えますね。
    ならば私の出来ることは、それを逆手にとるための派手な囮でしょう)

判断し、そして口を軽く開く。
勝手にプログラムされた『言ってもらいたい決め台詞』をランダムチョイスし、言う。

爪゚ -゚)「――参ります敵々様。 弾薬の貯蔵は充分でしょうか」

直後、弾薬踊る無慈悲な戦闘が開始された。



13: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:06:01.31 ID:fanoE2fO0
(;^ω^)「……おっおっ」

気まずい空気。
それがこの場を支配していた。

周囲はコンクリートだ。
壁も天井も床も、全てがコンクリートで作られている箱型空間。
とはいえ何も見えないわけではなく、小さな電灯のおかげか周囲を確認出来る程度の明るさはある。

そしてブーンの他に、もう一人の人間。

从'ー'从「んー……」

壁に沿って歩いているのは渡辺だ。
何かを考えている素振りで、そして何かを探るように足を進める。
気まずい空気は、この女性といることによって発生していた。

(;^ω^)「…………」

ブーンにとって、渡辺とは異世界の人間である。
彼女の方は前々からこちらのことを知っていたようではあるが、実際に会って間もないのは事実。
しかも敵対していた存在だ。
軽々と接することなど、ブーンにはとても出来なかった。

从'ー'从「成程、何となく解ってきた」

そんなブーンの心境など知ってか知らずか、渡辺は笑顔で彼の方へ向き直る。



15: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:08:06.96 ID:fanoE2fO0
(;^ω^)「な、何が解ったんですかお?」

从'ー'从「この場所」

とん、と爪先で床を叩き

从'ー'从「ここは都市ニューソクみたいだよ」

(;^ω^)「お?」

从'ー'从「しかも連合軍がアジトとしている地下施設の一室だね。
      つまり私達、敵地のど真ん中にいるっぽい」

(;^ω^)「おぉ!?」

驚くのも無理はない。
現在、都市ニューソクは『都市閉鎖』指定を受けている。
『何人たりとも許可無しの進入を禁止する』という絶対命令だ。
都市住人も例外ではなく、だからこそブーン達はFCでの生活を強いられた。

渡辺が言うには、そんな絶対侵入不可の領域に潜り込んでしまった、ということらしい。



17: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:10:04.96 ID:fanoE2fO0
(;^ω^)「や、やばいお……もし本当だったら、見付かったりしたらアウトだお」

都市閉鎖の命令は世界運営政府が発している。
世界最高の権力者の命令に背く=大罪だ。
つまり今ここで見付かれば、殺されても文句を言えない状況なのである。

(;^ω^)「しかも、他の皆も都市ニューソクに飛ばされてるってことですかお!?」

从'ー'从「多分そうなるんじゃないかな」

(;^ω^)「大変だお! すぐに合流しなk」

从'ー'从「落ち着いて、内藤君。
      この状況は逆にチャンスでもあるんだから」

(;^ω^)「お?」

从'ー'从「並の力じゃ突破出来ない都市閉鎖を、秩序守護者のお陰で突破している。
      しかも私達は連合軍アジトの中枢に近い位置にいる」

( ^ω^)「……奇襲出来るってことですかお?」

从'ー'从「そういうこと」



20: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:11:48.85 ID:fanoE2fO0
でも、と言い

从'ー'从「秩序守護者は、おそらくそれを狙って私達を送り込んだと思うの」

( ^ω^)「kwsk」

从'ー'从「私達の見立てでは、秩序守護者に属している人間の数は極端に少ない。
      おそらく三人くらいじゃないかな。
      そんな彼らがいくら強くても、大軍には太刀打ち出来ないのは解るよね?」

ブーンは素直に頷く。
一騎当千とまではいかないが、それなりの力を持つ彼も同じ意見だった。

人である以上、無限に動けるわけではない。
必ず補給を必要とする。

過去を見れば、確かに質が数を圧倒する場合もあるだろう。
しかしそれでも限度は存在した。
結局のところ質は個であり、数は数なのだ。

从'ー'从「つまり秩序守護者からしてみれば、FCや連合軍は厄介な相手なわけ。
      それでも彼らに余裕があるのは、その大軍を何とかすることが出来る力を持っているから」

(;^ω^)「それが、この状況ということですかお?」



21: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:13:19.10 ID:fanoE2fO0
从'ー'从「敵に大軍が二つあるのなら、その二つがぶつかるように仕向ければいい。
      比較して弱いFCの戦力を二つに分断し、片方をもう一つの大軍にぶつける……」

(;^ω^)「な、成程……両方の戦力を同時に削るって魂胆なわけかお。
      しかも半減させられた方のFCは確実に潰される……」

ということは

(;^ω^)「モララーさん達が危ない!?」

从'ー'从「落ち着いて。 彼らがそんな簡単に死んじゃうと思う?」

想像する。
モララーやギコ、シャキンやミルナ。
そんな一筋縄ではいかない連中がいるのならば

(;^ω^)「何か大丈夫な気がしてきましたお……」

从'ー'从「いくつか解せない点はあるけど……ま、大体はそんな感じじゃないかな」



24: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:14:41.37 ID:fanoE2fO0
(;^ω^)「でも……ということは、僕らがここの中枢を制圧したりすれば
      秩序守護者の思い通りになるんじゃないんですかお?」

从'ー'从「ううん、そこまでは出来るとは思ってないんじゃないかなぁ。
      こっちは戦力半減させられてるし……ダメージを与えれば良好ってくらいじゃない?」

( ^ω^)「じゃあ、中枢制圧は……」

从'ー'从「うん、そういう意味では狙ってみるべきだと思う。
      このままここで隠れてても意味がないし、いくつかの理由で死ぬだけだよ」

中枢を制圧するということは、リーダーであるロマネスクを倒さなければならないということだ。
かつてフルボッコにされた悔しさを思い出し

( ^ω^)「解りましたお……やってみるお」

ポケットから指輪を取り出しつつ、ブーンは力強く頷いた。

世界のためだとか、平和のためだとか言うつもりはない。
そんな重荷は誰か他の適任者が負えば良い。

ブーンが見ているのは、ただのリベンジ――復讐だけだった。



25: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:16:10.69 ID:fanoE2fO0
('、`*川「うぉらー」

何とも気合の抜けた声。
しかし繰り出された蹴りは、下手すれば致死の威力を持つほどの強力な攻撃だった。

激音が闇に染まった道路に響く。
吹き飛んで倒れた兵士は、そのまま起き上がることをしなかった。

('、`*川「ふぅむ」

顎に手をやり、物足りなさそうに溜息を吐くペニサス。
気付けばここにいて、何故か謎の兵士から狙われたのが納得いかないらしい。

('、`*川「あー、やっぱり『解んない』ってのはイライラするわねぇ。
     ここは何処ー、貴方はだぁれー?」

気絶した兵士に問いかけるも返事はない。

('、`*川「あっちはあっちでド派手にやってるし……どうしたもんかね」

視線の先は騒々しかった。
ここからでは遠くて視認することが出来ないが
響いてくる銃声や悲鳴のおかげで、何者かが派手に暴れているのは解っていた。



27: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:17:41.91 ID:fanoE2fO0
('、`*川「ったく、興味出ちゃうじゃないのさー」

ペニサスはブーン達に比べて、後から送られてきている。
故に仲間達が周囲に散らばっていることなど知らない。
もちろん、彼女の興味の先でジェイルが暴れていることなども知るはずがない。

どうしたものかと思案する。
状況が解らない限り、迂闊に動くのは危険だろう。

ただ、それは常人に限っての話である。
ペニサスは英雄であり、それを裏付けるほどの力と来歴を持っている。
先ほど倒した兵士の実力を勘案しても、単独行動は何ら問題のない行為と言えた。

('、`*川「なら、私の好きに動いてもスペシャルオーケーだねー」

結論し、一歩足を踏み出した時。

「――『二極』」

闇夜に声が響いた。



29: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:19:07.12 ID:fanoE2fO0
('、`*;川「……その声」

振り返る。
建物と建物の間にある、小さな路地。
そこから聞き覚えるのある、そして聞きたくなかった声が響いていた。
出てきたのは

,(・)(・),「ややっ! 思った通り、ペニサスちゃんじゃないナリだすかー!」

誰が見ても『タマネギ』だと思えるタマネギだった。

('、`*;川「げぇっ!? 英雄神!?」

慌てて二歩ほど下がる。
あのペニサスでさえ警戒心を持たねばならぬほどの存在。
説得力は皆無だが、それが英雄神なのだ。

,(・)(・),「何か嫌われてるナリだすなぁー」

('、`*川「あったりまえでしょーが! 自分の過去を振り返ってセリフ吐けっつの!」

,(・)(・),「……素晴らしいナリだすなぁ」

('、`*川「ねぇ何を思い出したの? ねぇ?」



32: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:20:23.79 ID:fanoE2fO0
イライラと貧乏揺すりを始めたペニサスを傍目に、それはともかく、と英雄神は話を打ち切った。

,(・)(・),「ちょーっち話があるナリだすよ」

('、`*川「ないない。 だから私は自由のm――」

,(・)(・),「二極」

ぞくり、と。
背を向けかけたペニサスの背筋に悪寒が走る。

('、`*;川「……ぬぉっ」

苦し紛れに出た声は、ひどく心細いものだった。

,(・)(・),「なぁ、ペニサスー。 おいどん、お前と戦わんといけないらしいナリだすよ」

('、`*川「そりゃあ勘弁だわ」

動けない。
いや、動きたくない。
動けば、おそらく殺されるだろう。
それも『死』を感じるゆとりさえなく。



34: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:21:51.62 ID:fanoE2fO0
,(・)(・),「勘弁って言われてもなー。
     そういう約束っていうか、そんな感じだしー?」

('、`*川「ウゼェ……」
     (約束……?)

,(・)(・),「何か色々と逆になっとりゃせんか?」

軽い笑みを見せ

,(・)(・),「まぁ正直言って、おいどんもお前と戦いたくないナリだす」

('、`*川「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない。 だったら私を自由にして頂戴」

,(・)(・),「それは無理な相談ナリだすなぁ」

('、`*川「アンタねぇ……」

,(・)(・),「だからこうするナリだす」

ガン、と。
頭をハンマーで殴られたかのような衝撃が走った。
それは幻痛に等しく、しかし効果は現実となる。

('、`*;川「お……な、何を……ッ?」

金縛り。
そうとしか思えない精神的束縛が、ペニサスの身体の自由を奪った。



36: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:23:19.56 ID:fanoE2fO0
,(・)(・),「ちょっとおいどんの殺気をぶつけてみたナリだすよ。
     あぁ、もちろん手加減してるから死ぬことはないナリだす」

身体が無条件で震えるのを自覚し、ペニサスは戦慄の汗を流す。

この身が受けているのは殺気だというのか。
いや、これはもう殺気というレベルではない。

――純粋な死気だ。

もはやペニサスは死んでいる。
身体の感覚が消え失せ、その意識さえも一点に固定されていた。
今感じているこの悪寒は、死後のものだろうと思わせるような冷たさを持つ。

動けば『殺される』ではない。
動けば『殺されている』だ。

('、`*;川「くっ……!」

彼女の持つ技術と経験を総動員すれば、傷を負いつつも逃げ切ることは出来るはずだ。
現にペニサスもそう思っているし、そうやってまで逃げなければならないと本能で悟っている。
しかし英雄神の気はそれを許さなかった。

理屈など無く、理由など無く、道理など無く。

ただ純粋にペニサスの身体に対し、動くことを拒否させる。
あの視線にそこまでの強制力が働いているのだ。



37: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:25:06.32 ID:fanoE2fO0
('、`*;川「……こ、れ……だか、ら……英雄神は、きら、い……なの、よ……!!」

,(・)(・),「でもおいどんはペニサスが好きナリだす。
     ミルナもクン三兄弟も、みんなみんな大好きナリだす。
     でも戦うっていう条件ナリだす」

('、`*;川「だ、から……こんな、ムカ、つく……真似を……」

,(・)(・),「殺さずとも足止めくらいで充分だと、そういう判断からナリだす。
     だからせめて、この騒動が終わるまでは大人しくしててもらうナリだすよ」

優しく微笑むタマネギを見て、ペニサスは歯噛みする。

('、`*;川(これから長時間、あの顔を見続けなけりゃならんのか……!?
      普通の拷問受けたほうがマシだわ……!!)



40: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:26:41.03 ID:fanoE2fO0
( ゚∀゚)「おい、失敗作」

川 ゚ -゚)「何だ、失敗作」

二人はビルの屋上に立っていた。
光源は夜空に輝く月のみであるが、その屋上全てを見渡せるほどの視界は確保出来ている。

( ゚∀゚)「ありゃ一体何なんだ?」

ジョルジュとクーは、その隅の方に立っていた。
視線の先には、二人が訝しげに見つめる妙な存在がいる。

( ・ω・)=つ 「シュシュッ! シュシュシュッ!」

シャドーボクシングをしている小人が一人。
クン三兄弟のジュカイよりも小さそうに見える彼は、見えない敵との戦闘に勤しんでいた。
半目で睨むジョルジュとクーなど、一瞥もしない。

川 ゚ -゚)「見た限り、お前と同類の気もするが」

( ゚∀゚)「俺はあんな阿呆じゃねぇ」

川 ゚ -゚)「そうだったな、馬鹿だったな」

殴り合いの喧嘩を始めた二人を余所に、小人はシャドーボクシングを続ける。



44: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:28:42.81 ID:fanoE2fO0
その拳は一定の速度で放たれていた。
殴打というよりも槍の一撃に等しい俊敏さで、目の前の見えない敵の急所を突いていく。
フットワークも軽く、腰も的確なタイミングで捻られていた。
もしここに武道家がいれば、その完璧なフォームに感嘆の息を漏らしていただろう。

彼の名は『ボッコス松本』といった。
ロマネスク配下であるデミタスの作り上げた『人型機械人形』である。
究極汎用型のジェイルとは違い、その身やプログラムは全て戦闘用となっている。

ただ、自分から仕掛けることはしない。
完全に護衛型として作られているためか、攻撃されるまでは何者をも敵と見なさないのだ。
逆に攻撃されれば、その者が死ぬまで敵と見なすほどの執念深い性格を持っている。

つまりボッコスを前にした場合、最も有効なのは『無視』することである。
しかしそんなことを知り得ない二人は

(メ゚∀゚)「おい、そこのちっこいの!」

ようやく味方同士の争いを不毛だと感じたのか、ジョルジュはボッコスへ声をかけた。

( ・ω・)=つ 「シュシュッ!」

(メ゚∀゚)「おーい」

川メ゚ -゚)「無視されているな」



49: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:30:29.06 ID:fanoE2fO0
(メ゚∀゚)「俺様の言葉に振り向かねぇとは……ちょっと調教してやる必要があるな!」

川メ゚ -゚)「調教……で合っているのか?」

(メ゚∀゚)「シラネ」

川メ゚ -゚)(内藤の部屋で見た本の内容から考えるに――)

何やら深い思考を始めたクーはさておき、ジョルジュは足元にあったコンクリートの破片を手に取る。
それをボッコス目掛けて投擲。
流石は戦闘用に作られた人間と言うべきか、それは見事にボッコスの頭にヒットした。

( ・ω・)=つ 「シュ……っ!」

(メ゚∀゚)「イェスッ! 流石俺様!」

川メ゚ -゚)(いや、しかし縄や拘束具を用いて、こう、抉るように――)

ボッコスの手が止まった。
その横顔に変化は見られない。
しかしその首が『ギギギ』と音を立てつつ、こちらを向いた。

( ・ω・)=つ 「…………」

(メ゚∀゚)「……お?」

川メ゚ -゚)(ここか? ここが良いのか? ん?)



53: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:32:49.06 ID:fanoE2fO0
( ・ω・)=つ 「――インターセプトモード、ON」

ピ、という電子音。
それはボッコスの起動を示した音だ。
無論、ジョルジュとクーはそんなことを知るはずもなく

(メ;゚∀゚)「おっ!?」

轟、と風が動いた時には

( ・ω・)=つ 「ボッコスッ!!」

激音と共に、ジョルジュの身体が吹き飛んでいた。

(メ;゚∀゚)「へぷぁ!?」

その拳は神速。
その圧は苛烈。
その撃は強力。

咄嗟に防御した腕ごと打ち抜かれ、ジョルジュは隣のビルの中へと突っ込んでいった。
ガラスを割る破砕音が響き、そこでようやく

川メ゚ -゚)「……む? ジョルジュ?」

空想の世界から帰ってきたクーが、隣にいたはずの男が消えたことに気付く。
そして代わりとして、拳を突き出した小人がこちらを向いて立っていた。



55: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:34:25.57 ID:fanoE2fO0
( ・ω・)=つ 「ボッコス、迎撃する!」

川メ゚ -゚)「は?」

きゅ、という軽い音を響かせ、ボッコスがその場でロールした。
その身から放たれたのは回し蹴り。
低身の回転は予想以上に早く、クーが完全に反応する前に足が叩き込まれる。

川メ゚ -゚)「ぬっ……!?」

重い。
蹴りの威力を殺し切ることが出来ない。
浮いた身体を押さえつけるように着地し、ボッコスから距離をとる。

川メ゚ -゚)「!」

飛んでいったジョルジュの安否を気遣う暇もない。
蹴り飛ばした足を、そのまま軸に持ってくるような動きをとるボッコス。
それはつまり突撃を示し

川メ゚ -゚)「――12th−W『ジゴミル』ッ!」

その進撃を阻む透明の盾が出現する。
斥力を発する間もなく、構えた右手に強烈な衝撃と痺れが走った。



58: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:36:02.88 ID:fanoE2fO0
( ・ω・)=つ 「ボッコス、頑張る!」

川メ゚ -゚)「何が頑張るだ、このッ!」

ボッコスの攻撃範囲から逃れるようにサイドステップ。

川メ゚ -゚)「7th−W『ガロン』!」

透明色の巨銃を作り出した。
地を滑りつつ銃口を向けてトリガーを引き込む。
発射された光弾の数は十を越え、一直線にボッコスに襲い掛かった。

連続した着弾音が響き、それと同時に煙が発生する。
しかし攻撃は止めない。
その煙へ向け、更に光弾を叩き込んでいく。

大気の壁を貫く音が聞こえた。
視界の端に映るのは、姿勢を低くして煙を突き破るボッコスの影。

川メ゚ -゚)「ッ!」

巨銃が消え、今度は機械翼が出現する。
接近するボッコスに対して空への離脱を試みたのだ。



60: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:38:15.08 ID:fanoE2fO0
( ・ω・)=つ 「ボッコス、追う!」

ズドン、という轟音が響いた。
見れば、その華奢な足を地面に打ちつけて上空へ飛ぶ姿。

川メ゚ -゚)「デタラメだな……!」

たった一足で二十メートル以上を跳ぶなど、人間には不可能な所業だ。
そう思っている間にも、ボッコスの拳が高速で迫る。

川メ゚ -゚)「ちィッ!」

やられた。
翼を出している状態では他の武装を使うことが出来ない。
それを見越しての上空離脱だったのだが、逆手に取られたのだ。
迎撃のためにラクハーツやグラニードを出したいところだが、下手すればこのまま地面へ一直線だろう。

いくら戦闘用の人造人間といえど、この高さから落ちて無事では済まない。
ボッコスの速度から考えるに体勢を整える暇さえも与えてはくれないはずだ。

ここは一発賭けになるが、このままの姿勢で何とか回避するしか――

( ・ω・)=つ 「!?」

ボッコスの姿勢が崩れた。
今にも腕を突き出しそうな格好が、突如として足元から崩されたのだ。



61: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:39:37.86 ID:fanoE2fO0
見る。
その華奢な足に灰色の鎖が巻き付いているのを。

(メ゚∀゚)「喰らえやぁ! 俺様リベンジアタァァァック!!」

何とか復帰したらしいジョルジュのサポートだ。
もはやボロボロとなった服はさておき
彼の無事に対して安堵の息を漏らすと同時、その行動に軽く目を見開くクー。

ボッコスをそのまま地面へ叩き付ける。
それと時を同じくし、クーはジョルジュの隣へと身を降ろした。

川メ゚ -゚)「……どういう風の吹き回しだ?」

(メ゚∀゚)「馬鹿かテメェは」

やれやれ、と呆れるように肩を竦めるジョルジュ。
そして言う。

(メ゚∀゚)「一応、俺達は味方同士だろーがよ」



63: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:41:08.90 ID:fanoE2fO0
川メ゚ -゚)「ふむ」

そういえばそうだった。
味方同士であるのならば、戦闘時には手を組むのは当たり前である。
たとえ普段は喧嘩ばかりしていても、仲間は仲間なのだ。

(メ゚∀゚)「テメェは気に食わねぇが……共闘といこうじゃねぇか」

川メ゚ -゚)「味方同士で使う言葉ではない気もするが良いだろう」

それに、と続け

川メ゚ -゚)「こうやってお前と肩を並べて戦うのも、悪くはない」

(メ゚∀゚)「素直じゃねぇなぁ。 俺様と一緒に戦えるのが嬉しいって言えよ」

川メ゚ -゚)「お前もな」

クーとジョルジュは同じような境遇の人間だ。
『完成品』と名付けられたハインリッヒに対して補助的な意味を持つ二人。

今回奇しくも、初めてタッグを組んで戦いに望むこととなった。



67: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:42:47.24 ID:fanoE2fO0
静かな空間に足音が響く。
コンクリートで構成された通路を走るのは二人の男女だ。

( ^ω^)「本当にこっちで合ってるんですかお?」

从'ー'从「一応、ここを根城にしてたんだけどなぁ……そんなに信用ない?」

(;^ω^)「い、いや、そんなことは」

とはいえ、誰にも会わないというのも不思議な話である。
敵の本拠地だというのに敵兵の姿がほとんど見えないのだ。
断片的に得た情報によれば、外で暴れている存在に手を焼いているらしいのだが。

( ^ω^)「ところで……」

軽い駆け足で走りつつ、ブーンはふと思った疑問を口にした。

( ^ω^)「さっきの話なんですけど
      FCの戦力を分割して連合軍へぶつけるのが、秩序守護者の策だお?」

从'ー'从「うん」

( ^ω^)「じゃあ、何でFCの方を分割したんですかお?
      戦力的に考えて連合軍の方が強い気がするんだお。
      弱いFCよりも強い連合軍を分割した方が、効率的に双方の戦力を削れそうな気がしますお」



70: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:44:20.43 ID:fanoE2fO0
从'ー'从「……なかなか良いところに目をつけたね、内藤君」

( ^ω^)「お?」

从'ー'从「多分だけど、それはちゃんとした理由があるんだと思う」

渡辺が歩速を緩めた。
ブーンもそれに倣うように緩め、彼女の隣に並ぶ。

从'ー'从「これは推測なんだけど……連合軍を分割したくないんじゃないかな」

( ^ω^)「お?」

从'ー'从「最初は、確実に潰せるからFCを選んだんだと思ってたんだけど
      それにしては不自然な要素が多いし、何よりタイミングがおかしい」

もっと効果があるタイミングがあったはずだと言う。
そういう戦略的な話を理解出来るわけもなく、ブーンはただただ頷くのみだ。

从'ー'从「まぁ、あくまで推測だよ。
      現状では解らないことだらけだし、今は前へ突き進むのが近道だと思う」

( ^ω^)「把握しました、お?」

ブーンと渡辺の前に鉄扉が姿を見せた。
この地下施設内で見てきた中でも一際大きな扉だ。



72: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:45:34.57 ID:fanoE2fO0
从'ー'从「この先が倉庫で、以前は集会場所としても使われてた広い空間だよ。
      で、その奥に重要な機材を置いた部屋がある」

( ^ω^)「その部屋が……」

从'ー'从「世界交差の根本となるシステム持つ、連合軍の中枢だね」

(;^ω^)「ってことはロマネスクが……って、あれ?」

疑問の声を発し、ブーンはキョロキョロと周囲を見渡した。

(;^ω^)「それにしては警備が薄過ぎませんかお?」

目の前には地下施設の中枢。
一番警戒が厳重なはずなのだが、ブーン達の周囲に人の気配はない。
まさか外で暴れている存在に、ここを守る兵までもを使っているのだろうか。



74: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:46:40.95 ID:fanoE2fO0
(;^ω^)「……何か嫌な予感がしますお」

从'ー'从「この場合の理由は二つくらい考えられる」

人差し指を立て

从'ー'从「本当に人手が足りないのか」

中指を立て、余った腕を鉄扉に当てる。

从'ー'从「もしくは――」

押し開く。
ギギ、と小うるさい音を響かせながら口を開けていく。

内部は薄い明かりが存在していた。
その広大な空間全てを見通せはしないが、中で歩き回るには充分な光だ。
見えるのは、大小のコンテナが無秩序に放置されている光景。
そしてその中央に

从'ー'从「――わざわざ守る必要が無いから」

川 -川「…………」

貞子が立っていた。



75: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:48:10.03 ID:fanoE2fO0
(;^ω^)「あいつは……」

覚えがある。
研究所での戦闘で見たことがある。
元々は渡辺の作った戦闘用機械人形であったが――

从'ー'从「迂闊に近付いちゃ駄目だよ」

(;^ω^)「お、おk」

言わなくとも近付きたいなど思わない。
貞子の気配は非人間が故に『無』に近く、人間であるブーンが強烈な違和感を持つのは当然。
否が応にも押し付られる無の気配は不気味の一言だ。

从'ー'从「彼女が最初で最後の門番みたいだね。
      守護に割く人員が足りないんじゃなくて、必要がない後者の方だったってわけか」

(;^ω^)「渡辺さんのロボットなら、言うことを聞かせられるんじゃないんですかお?」

从'ー'从「ロマネスクに奪われた後、確実にマスタープログラムの書き換えが為されてる。
      つまり今は私じゃなくてロマネスクの思い通りに動く人形だよ」

(;^ω^)「じゃあ……」

从'ー'从「うん、何とかするしか道はないね……難しいけど」



79: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:50:06.50 ID:fanoE2fO0
完全な戦闘用として作られた機械人形に対し
ブーンは8th−W『クレティウス』のみ、渡辺にいたっては丸腰だ。
無謀にも程がある。

ブーンは思い出す。
研究所跡での戦闘で、あのジェイルがあっさりと倒される光景を。
ジェイルの強さを知っているが故に、貞子から発せられる圧はブーンの身を震わせた。

从'ー'从「大丈夫だよ、内藤君。 私にちょっとだけ作戦があるから」

(;^ω^)「お?」

渡辺はブーンに耳打ちする。
伝えられた作戦とは

(;^ω^)「……無茶じゃないですかお? 成功するんですかお、それ?」

从'ー'从「でもそれが手っ取り早いよ」

(;^ω^)「だからって――」

抗議しかけたその時だった。
今まで無の気配を放っていた貞子に動きが入る。
垂らしていた首を上げ、その無機質な視線がブーンと渡辺と捉えた。

(;^ω^)「ヤバスwwwwwオワタwwwwwwww」



80: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:51:49.49 ID:fanoE2fO0
从'ー'从「とにかく言う通りにね。
      あの子を作ったのは私なんだから、私が何とかするよ」

断固として譲らない渡辺に、ブーンは反論など思いつかなかった。
そして観念したような息で

(;^ω^)「……解りましたお」

クレティウスを装着。
しかしこの身体強化を以ってしても、貞子と対等に戦えるかは自信がない。
雑念に塗れた人間と、戦闘のみに特化した人形とでは天地の差があるのだ。

川 -川「……排除開始」

貞子が動き出す。
一見すれば無手のようにも見えるが、その身体中には様々な武装を隠している。
何も考えずに突っ込めば、不意打ちは免れないはずだ。

ベストは迎撃。
しかも相手の武器が確認出来るような、という都合の良いもの。

(;^ω^)(とりあえず、やってみるしかないお……)

貞子から目を背けず、いつでも身を飛ばせるように構えた。

前へと向かうしかない二人に最大の危機が降りかかる。
連合軍中枢を目の前にして、しかし援軍などまったく望めない地にて。



82: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:53:45.36 ID:fanoE2fO0
都市ニューソクの中心街も闇に閉ざされていた。
道路にも、立ち並ぶビルにも明かりは灯されていない。
月明かりだけが頼りの、ほとんど黒色に近い世界がそこにあった。

しかし光がある。
人工的なそれは、一つの場所に留まることをしない。
上下左右縦横無尽に走る様は、まるで生命を持っているかのようだった。

そして声がある。
話し声や笑い声などといった、いわゆる日常で聞けるような声ではない。
罵倒、苦悶、悲鳴などといった、いわゆる非日常という部類に入る声だった。

更に音がある。
バシュ、という聞き慣れない音が響き
そして人が転がるような鈍い滑走音に、アスファルトを蹴り飛ばす軽快な音。

それら全てが示すものとは

*(#‘‘)*「待ちやがれですッ!」

从;゚∀从「待てと言われて待つのは本物の馬鹿だって、朱子さんが言ってましたよ!」

戦闘という行為だ。
一方はハインリッヒという丸腰の少女で、もう一方はヘルカルという魔砲少女。
ヘリカルが一方的にハインリッヒを追い回している状況だ。
大通りのど真ん中で、走ったり跳ねたりを繰り返している。



86: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:55:08.01 ID:fanoE2fO0
*(#‘‘)*「特定の人にしか解らねぇネタ使ってんじゃねぇですよ!
     せめて地方妖怪オオアリクイとかに抑えとけです!」

从;゚∀从「それも微妙――うわっとぉ!?」

足元で光が弾ける。
一瞬だけ周囲の景色が浮かび上がり、そしてまた一瞬で闇の中へと消えていく。
その微かな情報を頼りに、ひたすらハインは逃げ続けていた。

*(#‘‘)*「はははは! 戦闘用とはいえ所詮は丸腰丸腰ィ!
     武器が無けりゃ何も出来ないんですよ!」

从;゚∀从「全面的に同意です……!」

*(#‘‘)*「何でテメェが突然現われたのかは知らねぇですが
     ここでぶっ倒しゃ問題ねぇですよ!」

从;゚∀从(彼女も理由を知らない……やはり秩序守護者単独の仕業みたいですね)

ヘリカルがステッキを巧みに操り、光弾を連発する。
その上で引力操作を用いての低空飛行していることを考えるに、相当量の魔力を持っているらしい。
それがステッキの内部なのか、別の場所に持っているのかは解らないが。



89: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:56:30.59 ID:fanoE2fO0
从;゚∀从「くっ……!」

走り、跳びながら逃げる。
悔しいが反撃の手段は皆無だ。
たまに拾える石などを投げてはみるが、簡単にあしらわれるだけ。

何か武器があれば。
近接攻撃が可能で丈夫な武器さえあれば。

从;゚∀从「うわぁ!?」

光弾が左足を掠った。
その衝撃で足が縺れ、前転をするように倒れこむ。

*(#‘‘)*「チェーックメーイト!!」

ははは、と狂ったように笑いながら光の雨を降らすドSヘリカル。

从;゚∀从「わっわっわっ!」

無理に起き上がることせず、そのまま横転するようにして回避する。
判断としては間違っていないが状況が悪かった。
背中に衝撃を感じた瞬間、その回転がピタリと止まってしまった。

从;゚∀从「ほわっ?」

いくら大通りが広かろうと限界がある。
ハインは転がり過ぎたが故に、ビルの壁に到着してしまったのだ。



92: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 17:58:18.17 ID:fanoE2fO0
*(#‘‘)*「オーケー、オーケーだ!」

ジャキン、と小気味良い音を響かせながらステッキを向けてきた。
その先端に桃色の光が集中し、今にも破裂しそうなほどに膨張していく。

从;゚∀从「ちょ、待っ――」

*(#‘‘)*「はい問答無用ー!!」

無慈悲に発射される。

从; ∀从「うわぁぁぁぁぁ!?」

*(#‘‘)*「あははははははは! あはははははははははははは!!」

一瞬で視界が桃色に染まる。
次の瞬間には身体全体に痺れるような衝撃が走った。
爆音が身を包み、その衝撃で吹き飛ばされたハインリッヒは道路の上を転がっていく。

*(#‘‘)*「チィ、これだからタフガイはウゼェんですよ」

从;゚∀从「いててて……」

黒煙を上げる身体に鞭打ち、ハインリッヒは上半身だけを何とか起こした。
痛いな、と思い、そしてそれが生きている証拠だと安堵する。



95: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 18:00:14.02 ID:fanoE2fO0
从メ゚∀从(前の時と同じになっちゃいましたね……)

戦跡荒野での戦いでもヘリカルの一撃でダウンした。
あの時と同じ悔しさが、沸々と心の底で踊り始める。

自身の力だけで立つんだ、と。
もう一人で立てるんだ、と。

そう誓って剣を取った。
しかし今、握るべき剣はない。

決意と強さは別のところにある。
心が強くなったからといって、ヘリカル相手に素手で戦えるわけがない。
戦闘とは、己の意思を攻撃に変換して競い合う行為に等しい。
何かしらの攻撃力を持つ武装が無ければ、自分の意思を押し通すことなど出来ない。

从メ;゚∀从(何かないか……戦える武器が……!)

揺れる視界で見るが、何も見つからない。
周囲に広がるのはアスファルトの地面のみだ。

もう駄目なのか。
このまま逃げ回るしか、何も出来ずに負けるだけなのか。



98: ◆BYUt189CYA :2007/06/20(水) 18:01:12.40 ID:fanoE2fO0
――違う。

ここで負けたら駄目だ。
諦めるなんて駄目だ。

从メ;゚∀从「諦めたら、そこで全部終わるんですよ……!」

*(#‘‘)*「はぁ!? 諦めも何も、お前はここで私に負けるんですよ!
      そもそも戦う力がないってのにどうするつもりですかァ!?」

从メ゚∀从「戦う力なら――ある!」

叫び、右腕を掲げる。
袖の長い服に紛れて見難いが、それは包帯に包まれていた。
一年半前の残滓の証拠である。

从メ゚∀从「ッ!」

その包帯を、力任せに剥ぎ取った。

*(#‘‘)*「!? それは……!」

姿を見せたのは――



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