( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

6: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 18:52:10.28 ID:xv3lMgtl0
活動グループ別現状一覧

( ・∀・) (,,゚Д゚) (*゚ー゚) ミ,,"Д゚彡 ( ´_ゝ`) (´<_` )
(`・ω・´) <_プー゚)フ (#゚;;-゚) [゚д゚] ( ゚д゚ ) ノハ#゚  ゚) 
从・∀・ノ!リ ( ><) (*‘ω‘ *) |゚ノ ^∀^) lw´‐ _‐ノv ハ(リメ -゚ノリ
所属:四世界
位置:オーストラリア・世界政府本部
状況:強襲中

( <●><●>) |(●),  、(●)、| / ゚、。 /
( ̄ー ̄) ( ^Д^) (゜3゜) ,(・)(・), ┗(^o^ )┓ \(^o^)/ |  ^o^ |
( ^ω^) 川 ゚ -゚) ('A`) (´・ω・`) ( ゚∀゚) ('、`*川 从'ー'从 川д川 ( ´∀`)
所属:世界運営政府
位置:オーストラリア・世界政府本部
状況:迎撃中

(メ _) キオル
所属:魔法世界
位置:オーストラリア・世界政府本部
状況:ミツキ捜索中

メ(リ゚ ー゚ノリ ル(i|゚ ー゚ノリ
所属:???
位置:???
状況:???



10: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 18:53:58.73 ID:xv3lMgtl0
第三十六話 『8th』

「侵入者め!」

叫ばれた言葉は、しかしそれで終わりを告げる。
抱えた銃を向けようとした時には既に、レモナの接近を許していた。

|゚ノ ^∀^)「どきなさい!」

「ぐぁ!」

薙ぐような軌道の巨剣が、三人の男を一撃で吹き飛ばす。

そのまま壁に激突。
項垂れるように頭を落とした兵は、そのまま意識を剥ぎ取られる。

ここは世界政府本部の内部だ。
正面入口とは別の場所から侵入したのはレイン達。
迎撃する兵を、持ち得る力で弾き飛ばしながら歩を進める。

从・∀・ノ!リ「ううむ、流石というべきか……」

ハ(リメ -゚ノリ「元々レモナは戦士としての素質は持っていた。
       もしかしたらシューよりも強くなるかもしれないね」

この場にシュー本人がいたら、きっと軽く頬を膨らませていただろう。
しかし彼女はジョルジュ達と戦闘を行っており、だからこそレイン達はここまで進むことが出来ていた。



12: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 18:55:38.93 ID:xv3lMgtl0
目指すはEMA。
故に格納庫、もしくはそれに準ずる場所。

ハ(リメ -゚ノリ「この建物は縦に長い。
      EMAのような機動兵器を置くなら、きっと地下だ」

从・∀・ノ!リ「ならばミツキ、お前は階下への階段か何かを探せ。
      我らは世界交差装置を止めるために上を目指す」

ハ(リメ -゚ノリ「レモナは?」

|゚ノ ^∀^)「レインさんには悪いけど、私はミツキについて行きます」

从・∀・ノ!リ「ほぅ……どういった心境の変化だ?
      まぁ、そちらを選んだのならそちらに行くがいい」

|゚ノ ^∀^)「はい」

頷いたミツキが駆け出し、レモナが追従する。
それを見送ったレインは

从・∀・ノ!リ「ならば、そろそろ我も戦うとするか。
      ビロード、チン、アレを出せ」

( ><)「把握なんです!」

(*‘ω‘ *)「ぽ!」



15: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 18:58:12.80 ID:xv3lMgtl0
チンが背負っていたリュックサックから、次々と金属パーツを取り出した。
それらを床に並べ、二人は仲良く座って組み立てていく。

完成されたのは、この世界では銃器と呼ばれるものだ。

( ><)「GU−12/Lo『イスカ』なんです!
     ロングバレルの大型EWタイプで云々――に小型のショックアブソーバー云々――
     キャリングバンド型サイト上に21mm云々――なんです!!」

(*‘ω‘ *)「ぽぽぽ! ぽぽぽっぽぽぽっぽ!」

从・∀・ノ!リ「うむ」

それは巨大な銃だった。
ライフルというよりもバズーカと言った方がしっくりくる大きさは、しかし魔法世界では常識的なサイズである。
小柄――むしろ幼女的体型であるレインは、その巨大な銃を肩に軽々と乗せ

从・∀・ノ!リ「さぁて、行くか。
      もう侵入は知られておるだろうからな……ビロードとチンにも働いてもらうぞ」

( ><)「了解なんです!」

(*‘ω‘ *)「ぽぽ?」

从・∀・ノ!リ「ははは、そうじゃなぁ。 チンは偉いぞ」

残念ながら、ツッコんでくれる人間はこの場にいない。



16: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:00:07.32 ID:xv3lMgtl0
从・∀・ノ!リ「上階を目指すとなると、敵は英雄と秩序守護者か。
       下手すると死ぬと思うがどうかのぅ?」

(;><)「死ぬのは嫌なんです!」

从・∀・ノ!リ「うむ、正直でよろしい。
      我らは世界交差に関しては、どちらかと言えば反対派だからのぅ……。
      無理して世界政府を止めることもあるまい」

世界政府の目的は『世界交差の阻止』である。
秩序守護者と手を組んでいる時点で、それは明らかだ。

前提だけで言えば、魔法世界と世界政府の目的は同じようなものなのである。

从・∀・ノ!リ(我らの中で世界交差推進派は、英雄世界と機械世界の連中。
       そしてモララー辺りも、世界政府に任せることを不服としておるだろうなぁ……)

そして、もう一つの懸念。
四世界の内、三世界が抱える大きな問題だ。
それは

从・∀・ノ!リ「……どうやって、元の世界に帰還するか」



18: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:02:07.46 ID:xv3lMgtl0
問いに対する答えはハッキリとしない。

ただ、指標はある。

世界交差によって放り込まれたのならば、やはり世界交差によって帰ることが出来ると考えるのが普通だ。
その方法を模索するためにも、世界交差装置の制圧と、渡辺の救助は必要不可欠である。

从・∀・ノ!リ(結局はそこなんじゃなぁ)

やれやれ、と肩をすくめて走り出す。
リュックサックの中身を片付けていたビロードとチンが、それを慌てて追っていった。



結局、彼女達は気付かないまま走り去っていく。



『それ』を見逃したのは、状況的に考えて最悪だった。
しかし、不幸ではない。


メ(リ゚ ー゚ノリ「…………」


背後に人ではない何かがいたという事実に気付かなかったこと。
それは、他の何より幸運なことなのである。



22: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:04:40.04 ID:xv3lMgtl0
(#^ω^)「ってぃりゃ!!」

(,,゚Д゚)「遅い!」

森の中で激音が響く。
魔力を籠めた攻撃は物理法則を歪めようとし、しかし互いの魔力によって相殺。
その消滅音が、凄まじい勢いで周囲空間を震わせた。

先に着地したのはギコ。
すぐさまグラニードを隙無く構える。

(,,゚Д゚)「成程、速度よりも力の方が上がっているようだな」

(;^ω^)「っていうかギコさん、アンタえらい攻撃的になりましたお……!?」

今までのギコだと思って挑んでいたブーンは、彼の変わり様に心底驚いていた。

まず気迫からして違う。
そして戦闘への意気込みが違う。

ブーンの知るギコは、己のペースを大事にする男であった。

攻めるべき時は攻め、守るべき時は守る。
相手が退けば追わず、相手が攻めてくれば退かず。
受動的に自分の間合いを図るタイプだったはず。

大地に根を張ったかのような戦い方は、その巨剣の様から大樹のようだった。



23: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:06:46.92 ID:xv3lMgtl0
(;^ω^)「でも、これは……!」

(,,゚Д゚)「っつぁぁぁ!!」

違う。
何もかもが違う。
ブーンの記憶にあるギコは、これほどまでに――

(;^ω^)「うわぁっと!?」

振り上げられたグラニードが落ちる。
たったそれだけのことなのだが、ブーンにとっては何よりも恐ろしい光景であった。

地面が叩き割られる。
土色の破片が、ブーンの視界を覆っていく。
段々と狭められるそれに比例するように、嫌な悪寒がジリジリと増していった。

『内藤ホライゾン! 背後へ!』

(;^ω^)「ッ!!」

声に反応――いや、反射するように足を動かす。
遠ざかる景色の中、青い斬閃が真一文字に刻まれたのを見る。

(;^ω^)(何つー速さだお……クレティウスが言ってくれなきゃ、まずかったお)

動体視力には多少の自信がある。
しかしギコは、それを読んだ上で視界外からの攻撃を仕掛けてきていた。



26: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:09:06.36 ID:xv3lMgtl0
懸念は止まらない。

今までのギコならば、この時点で相手の出方を見るために足を止めただろう。
しかし今の彼は違った。

(,,゚Д゚)「次だ……!!」

(;^ω^)(もう、追撃の姿勢――!?)

振り抜いたグラニードを背後に持っていき、自身は深い前屈姿勢を作り出している。
巨剣の重さと、前屈分の荷重が釣り合っていた。

完璧といえるバランスから生まれるのは

(;^ω^)「!! やばっ!?」

爆発的な初速。
そこから派生する突撃は高速の一言。

構えられた巨剣の重量は、引力操作によって何倍にも膨れ上がっており
ギコ自身の迫力も比例するように巨大になっていた。

(;^ω^)「――クレティウス! OVER ZENITHだお!!」

そしてそれが、ブーンにとって最善策の限界突破を誘発させる結果となる。



27: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:11:19.42 ID:xv3lMgtl0
一瞬の発光。
現れたのは

(,,゚Д゚)「腕か……!」

ブーンの周囲に、合計二つの白い手甲が浮遊していた。
ロマネスクと戦っていた時よりも数が増え、そして拳自身も強化されている。

(,,゚Д゚)「それがお前の新しい限界突破だな!
     ならば、その性能を俺が推し量ってやろう!」

身体ごと投げ出すような横薙ぎ。
ブーンから見て右から、迫る巨剣は死神の鎌に等しい。

(;^ω^)「くっ――おっ!」

腰を落として迎撃姿勢を作り出す。
同時、彼の意思通りに二つの手甲が前方へ出て盾となった。

激突する。

青い閃光が、白い衝撃波を打ち破らんと輝きを増す。
白い衝撃波が、青い閃光を押さえ込むために吼える。

二人は青と白の火花を散らせ、周囲を二色に染め上げた。



29: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:14:12.25 ID:xv3lMgtl0
その膠着は数秒。

結局、勝負がつかなかった巨剣と両拳は、力を出し切った後に沈黙する。

(;^ω^)「ぶはっ!」

力を溜め込むために呼吸を止めていた結果、そのツケが回ってくる。
軽い酸欠を自覚しつつも、ブーンは肺を一生懸命脈動させて酸素を吸った。

(,,゚Д゚)「ふむ……面白い限界突破だな、内藤。
    防御にも攻撃にも使え、遠近構わず効果を発揮するのか。
    以前のような一点突破ではなく、万能さを優先させた……というわけだな?」

(;^ω^)「……!」

たった一手で、ギコはブーンの切り札の全容を言い当てた。

ブーンが選んだ限界突破コンセプトは、いわば『柔軟性』である。
それまで設定していた限界突破『強化符』は、爆発的な攻撃性を発揮する代わりに
ベクトルが単一に限られていた。

一撃必殺、一撃必倒を前提とした攻撃は確かに強い。

しかし、見極められればそれで終わりという危険性も秘めていた。
戦いの素人であるブーンの動きなど、生死を生業としている者から見れば児戯に等しい。
前回よりも敵が格段に強くなっている現状、『強化符』では深さがあっても幅が足りないのだ。

そして編み出されたのが自動攻防機能を持つ手甲。
ブーンの意思通りに動き、しかし主の危機には自動的に対処する。
敵を倒すことよりも生き残る方に天秤を傾ける今のブーンにとって、これほど相性の良い形態はなかなか無いだろう。



33: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:18:13.21 ID:xv3lMgtl0
(,,゚Д゚)(だが、何か違うな……)

そう、違うのだ。
思い出すのは、会議室でのしぃの言葉。

――私、8th−Wだけは何か違うなって感じる時があって。

今なら彼女の言葉の意味が解る。
クレティウスは、ウェポンと同一にして何かが異なっていた。
あくまで感覚から得たものなので、確かである、とは言えないが。

(,,゚Д゚)(モララーも言っていたが、8thは十五の指輪の内の中間数字。
    そしてその能力も――……どうにもキナ臭いな)

疑念を向けられているとは露知らず。
酸素を求めて呼吸するブーンに、クレティウスが話しかけてくる。

『しかし……君も強くなったが、彼も強くなっているようだ』

( ^ω^)「強くなってるっていうより、強くあろうとしてる感じがするお」

(,,゚Д゚)「……?」

( ^ω^)「多分、一ヶ月間にギコさんの内面に何か変化があったんだお。
     そうでなければ、あそこまで戦闘スタイルを変えるわけないお」

『成程』

クレティウスが頷いたのを感じる。



34: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:21:11.28 ID:xv3lMgtl0
ギコは変わった。
先ほど述べた通り、従来の彼の戦闘スタイルは受動的だった。
相手の出方を伺い、それに応じて手を変えるといった戦い方である。

しかし今のギコはまったくの逆。
つまり、能動的な戦い方を実践していた。

相手に合わせるのではなく、自ら飛び込み相手を合わせる戦闘スタイル――いわゆる攻め系なのである。

基本は先手必勝で、それから追撃と迫撃が並ぶ形。
身の危険よりも、敵が存在するという危険を排除する戦い方だ。

( ^ω^)「……でも」

『ん?』

( ^ω^)「でも、それこそがギコさんらしい戦い方だと僕は思うお」

『ふむ……内藤ホライゾンが言うのならばそうなのだろう』

(;^ω^)「あの、前から思ってたんだけど、あんまり僕を買い被らないでほしいお。
     時折、何か凄いプレッシャー感じるんだお……」

『そうか。 ならば良し』

(;^ω^)「酷いお」

一連の会話を見ていたギコは、何故か首を傾げていた。



35: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:23:38.03 ID:xv3lMgtl0
(,,゚Д゚)「……なぁ、内藤」

( ^ω^)「はい?」

(,,゚Д゚)「お前、一体誰と話してるんだ?」

( ^ω^)「え……」

(,,゚Д゚)「さっきから独り言をブツブツと言っているのが気になってな。
     耳に小型通信機でも装着させられているのか?」

本当に何も知らない表情をしている。
というか、むしろブーンを不審者扱いしている目だった。

(;^ω^)「えっと、クレティウスさんと話してるんですお」

(,,゚Д゚)「何だと? お前まさか、いつでも8th−Wと会話出来る状態なのか?」

(;^ω^)「は、はいですお……」

戸惑いの色が混じった答えに、ギコは何かを考える素振りを見せた。
グラニードを掲げ、少しの間だけ目を瞑る。

しかし首を振ったギコは、どうやら何かが納得出来ていないらしい。



36: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:26:11.32 ID:xv3lMgtl0
(,,゚Д゚)「内藤、お前今……クレティウス『さん』と呼んだな?」

( ^ω^)「その通りですお」

(,,゚Д゚)「つまりそれは8th−Wに人格があるということか?」

( ^ω^)「……そうですけど」

何を言いたいのだろう、と思う。
ウェポンには、術者とシンクロするために擬似精神が組み込まれている。
それは前回の戦いで知ったことだし、むしろギコの方が詳しいはずだ。

(;^ω^)「何かおかしいんですかお?」

(,,゚Д゚)「いや、おかしいというか何というか」

未だ煮え切れない様子のギコ。
グラニードとクレティウスを交互に見やり、やはり納得出来ないのか深い唸り声を上げた。

(;^ω^)「あの、ハッキリ言ってほしいですお……怖いですお」

(;,,゚Д゚)「あ、あぁ、すまんな。
     これは俺だけかもしれんのだが――」

言い淀み、そして言った。

(,,゚Д゚)「グラニードには、人格なんて無いんだ」



39: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:29:03.67 ID:xv3lMgtl0
(;^ω^)「へ?」

(,,゚Д゚)「機械音声、あるだろう? あれと同じだ。
    他の連中のは聞いたことがないので知らんのだが、少なくともグラニードは感情など無い声だぞ」

(;^ω^)「じゃ、じゃあ、普通に会話することなんて……?」

(,,゚Д゚)「意識を深く同調させた時には可能だ。
    だが、俺はあんな無感情な声に『さん』付けは出来ない」

思えば、他の指輪使いから疑似精神の人格の話など聞いたことがなかった。
現状で判明している例は二つ。

8th−W『クレティウス』のような、確かな感情を持った男の声。
1st−W『グラニード』のような、無機質で無感情な機械の音声。

聞かずとも、同じだと思っていた。
ギコも同一の思いだったのだろう、他の指輪使いに話を聞いたことはないと言っている。
ウェポンという一括りになっている以上、その全てが等しいのだと思い込んでいたのだが。

(;^ω^)「クレティウス……?」

どういうことなのか、という問いかけは

『――――』

沈黙によってスルーされることとなった。



42: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:31:05.58 ID:xv3lMgtl0
ギコとブーンが戦う地点から少し東。
英雄世界の部隊が、戦術的優位を得ようとしているここでは剣撃の音が響いていた。

それだけではない。

草を掻き分ける音、木を蹴り飛ばす音、澄んだ鈴のような音、短い吐息。

それらは連鎖し、一つの音楽を奏でているようだった。

地面を叩く靴の音をベースに、甲高い音や鈍い音が踊り回る。
修飾するのは女性二人分の吐息で、それは聞くだけならば官能的にも感じられた。

ジャンルとしてはクラシック。

時に流麗に、時に寂寥に、時に激流に表情を変える。
そして今、流麗なリズムから激流へと変わろうとしていた。

ノハ#゚  ゚)「そこだッ!!」

木々の挟間からヒートが飛び出す。
右手には包丁刀が握られているが、それもすぐに放たれることとなった。

槍投げに似た格好から繰り出される投擲。
それは、柄尻の鎖を蛇のようにうねらせながら飛ぶ。



45: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:32:45.31 ID:xv3lMgtl0
切断。

阻むように立ち並ぶ樹木を、たった一閃で切り裂いていく。
その先にいるのは

川 ゚ -゚)「12th−W『ジゴミル』!」

透明色の盾を構えたクー。
雷撃の如く迫る包丁刀を、その面に触れる直前に弾き飛ばした。
斥力を操る盾にかかれば、表面を傷つかせずに攻撃を逸らすことなど朝飯前だ。

ノハ#゚  ゚)「でも、それで七つ目……!」

現状、1st、5th、6th、7th、9th、10th、12thを引き出すことに成功している。

川 ゚ -゚)「まさか本当に実行するつもりか……」

ノハ#゚  ゚)「もちろん」

流石に全てを引き出すと言った手前、その攻撃には怒涛という言葉が相応しい。
持てる技術を総動員し、クーの手札を次々と明らかにしていく辺り、ヒートという英雄の戦闘力の程が解る。



46: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:35:29.82 ID:xv3lMgtl0
ノハ#゚  ゚)「さぁ、次は――」

鎖を引っ張る。
じゃらり、という金属音と共に、草木の挟間から包丁刀が姿を見せた。
それを空中でキャッチ。

川 ゚ -゚)「見事なものだ」

ノハ#゚  ゚)「自分の武器さえ扱えない戦士なんて、それは戦士とは呼ばないでしょ?」

振り回す。
手に持った鎖が回転し、その先にある包丁刀がプロペラのように円転を始めた。

川 ゚ -゚)「ふむ、まるで週刊ジャンポウに出てくる武器みたいだな」

ノハ#゚  ゚)「じゃんぽー?」

川 ゚ -゚)「あぁ、私と内藤がよく読んでいる雑誌だ。
     この戦いが無事に終わったら貸してやろう。 面白いぞ」

ノハ#゚  ゚)「? ……うん」

何やらよく解らないが、とりあえず的に頷いた感じだ。
クーはそんな様子に軽い笑みを浮かべ

川 ゚ -゚)「ならば、次はこれでいこうか」

一瞬の輝きの後、クーの両手にはクリアカラーのグローブが装着された。



47: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:38:29.14 ID:xv3lMgtl0
ノハ#゚  ゚)(今度は格闘戦仕様のウェポン? 能力は何だろう?)

今まで見てきたウェポン能力から推測する。
推測に値する材料は得ていた。

ウェポンの能力には共通する項目がある。

それに気付いたのは、五つ目に出されたウェポンである1st−Wを相手にした時。
これまで見たウェポン能力と共通項目を勘案し、ヒートは一つの法則性に気付いていた。
そしてその法則性から導き出された8th−Wの能力とは

ノハ#゚  ゚)(ヒット時の衝撃力増大……!)

もしくはそれに準ずるもの、とヒートは判断した。

ノハ#゚  ゚)「その正体、見極めさせてもらう!」

左手に持っていた刃の無い中脇差『飛燕』を納刀し、新たな武器を取り出す。
銀に染められた短弓――付けられた名は『梟』。

ノハ#゚  ゚)「ふっ!」

瞬間的に引き絞られた弦が細い音を立てて弾かれる。
射出されたのは、やはり銀色の矢。

川 ゚ -゚)「!」

対し、クーは身を前に倒すような姿勢で避ける。
そのまま勢いで駆け出した。



49: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:41:06.41 ID:xv3lMgtl0
ノハ#゚  ゚)「やはり接近戦か!」

川 ゚ -゚)「今までと同じだと思ったら怪我をするぞ……!」

両拳を握り締めるクー。
その姿に、ヒートは僅かな違和を感じた。

速い。

ノハ#゚  ゚)(いや、これは――)

川 ゚ -゚)「はぁっ!」

引き寄せた包丁刀で防御。
硬質な音が腕に響き、衝撃がヒートの身体を微かに押す。

川 ゚ -゚)「つg――」

ノハ#゚  ゚)「でやぁぁぁ!!」

連撃に持ち込まれる前に、ヒートが反撃の手――いや、足を出す。
ハイキック気味の一撃はクーの首へと吸い込まれるように走り

ノハ#゚  ゚)「!?」

思っていた以上の手応えが骨に響いた。



52: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:42:51.85 ID:xv3lMgtl0
川;゚ -゚)「痛っ――」

ダメージを示す苦痛の声を漏らし、クーは数歩後退する。
しかしヒートはそれを追うことをせずに呆然と見送った。

ノハ#゚  ゚)「…………」

川;゚ -゚)「油断した。 やはり8th−Wは万能が故に慢心を呼ぶな。
     自重せねば」

ノハ#゚  ゚)「万能?」

川 ゚ -゚)「ん? あぁ、この8th−W『クレティウス』の能力は身体強化なんだ。
     筋力上昇に加え、身体自体の耐久度も上がるし、神経伝達速度もそれなりに――
     ……何か気になることでも?」

ヒートの微妙な反応に、クーは首をかしげた。

ノハ#゚  ゚)「んー……あの、一つだけ聞いてもいいかな?」

川 ゚ -゚)「?」

構わない、と首を振ったクーに、ヒートは思いがけない疑問を吐く。


ノハ#゚  ゚)「それ、本当にウェポンなの?」



55: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:44:35.53 ID:xv3lMgtl0
一方その頃、世界政府本部の地下を目指す人影があった。

ミツキとレモナだ。

男の方は、トリガーの付いたブレードを。
女の方は、やはりトリガーの付いた無骨な剣を。
それらを用いて二人は、たまに立ちはだかる敵を撃退していく。

ハ(リメ -゚ノリ「…………」

|゚ノ ^∀^)「…………」

無言だ。
どちらとも話しかけることはなく、黙々と目的の場所を目指して走る。

「止まれ!」

廊下の角から武装した世界政府兵が飛び出した。
影を見るや否や、二人はその兵士に殺到する。

「止ま――!? ちょ、え!?」

銃口を向ける間もなく、ミツキが懐に潜り込む。
トリガーを引き込み

ハ(リメ -゚ノリ「ごめんね」

一閃。
青白い光を放つ刃が切り裂く。
斬撃を受けた銃器は、中身をぶち撒けながら破砕した。



59: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:47:51.39 ID:xv3lMgtl0
続いてレモナが、その岩のような剣の柄でこめかみをブン殴る。
兵士は結局、何も出来ずに沈むこととなった。

|゚ノ ^∀^)「近いわね」

ハ(リメ -゚ノリ「あぁ」

敵の数が減ってきてる。
まさかここまで踏み込まれるとは予想していなかったのだろうか。
先ほど倒した兵士など、丸腰だったほどだ。

ハ(リメ -゚ノリ「レモナ、ここからは僕一人で充分だ。
       君は上階へ上がったレインの方へと――」

|゚ノ ^∀^)「嫌よ」

ハ(リ;メ -゚ノリ「え……っと、このままついて来ても面白いことはないよ?」

|゚ノ ^∀^)「子供扱いしないで。
      私、全て知ってるのよ」

言葉に、ミツキが軽く目を見開いた。

|゚ノ ^∀^)「御父様を殺したのは貴方じゃない……ダイオードとかいう、妙な女騎士だってね」

ハ(リメ -゚ノリ「誰に聞いた?」

|゚ノ ^∀^)「貴方に」

ハ(リ;メ -゚ノリ「……あの時か。 流石に迂闊だったな」



61: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:50:49.40 ID:xv3lMgtl0
すぐに心当たりが出るところから、あの時以外に喋ったことはないらしい。

ハ(リメ -゚ノリ「でも、ここから一緒について来ても何もないのは確かだ。
       僕はEMAとモナーさんを奪還して、そのままミカヅキに挑むつもりだから」

|゚ノ ^∀^)「死ぬつもり、の間違いじゃなくて?
      それに、やっぱりミカヅキ様は近くにいるのね?」

ハ(リメ -゚ノリ「キオルがいただろう?
       彼女はミカヅキの傍を絶対に離れない……彼の代わりに人を殺す役を担っているからね。
       あと死ぬつもりじゃなくて、ちゃんと『説得』はしてみるつもりだよ」

|゚ノ ^∀^)「なら、その説得は私がする。
      私の言葉なら聞き入れてくれるかもしれない」

ハ(リメ -゚ノリ「意味がないんだよ、それだと」

|゚ノ ^∀^)「……どういうことよ」

ハ(リメ -゚ノリ「もし仮に、ミカヅキが『僕が犯人じゃない』という言葉を信じたとしよう。
       しかし隊長を崇拝していた彼が、それで終わると思うかい?」

言葉に、今度はレモナが目を見開いた。

|゚ノ;^∀^)「今度はダイオードを狙う……?」

ハ(リメ -゚ノリ「そうなればミカヅキは必死だ。
       あれはEMAを用いたからといって勝てる相手じゃない」



64: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:53:12.40 ID:xv3lMgtl0
|゚ノ;^∀^)「で、でも、だったら私達みんなで挑めば――」

ハ(リメ -゚ノリ「勝てないことはないだろうけど、多くの犠牲が出るだろうね。
       僕が望む結果じゃない」

首を振るミツキ。
つまり彼の本望とは

|゚ノ;^∀^)「ミカヅキ様に殺されて、御父様の仇をとらせてあげる……?」

ハ(リメ -゚ノリ「それが一番犠牲の少ない方法なんだ」

|゚ノ;^∀^)「ふ、ふざけないでよ! 貴方はそれでいいの!?」

ハ(リメ -゚ノリ「嫌ならやっていないさ。
       それに僕はあの時に死んだ――死んでいたはずなんだ」

|゚ノ;^∀^)「だからって殺されに行くの!?」

搾り出すような声で

|゚ノ;^∀^)「ミカヅキ様を一生騙すつもりなの……!?
      偽の仇を討たせて、偽の喜びを植えつけるの!?」

ハ(リメ -゚ノリ「知らなければ同じだよ」

|゚ノ;^∀^)「でも私が知った!」

ハ(リメ -゚ノリ「……解っているとは思うけど、この事実は伏せておいてほしい」



65: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:55:19.07 ID:xv3lMgtl0
|゚ノ#^∀^)「ふざけないでよ! 解らない! 解るわけがないわ!
      何で貴方が死ぬ必要があるのよ!」

ハ(リメ -゚ノリ「…………」

|゚ノ#^∀^)「間違ってる! 絶対に間違って――」

ハ(リメ -゚ノリ「ごめん、レモナ」

ミツキの腕が動いた。
それは柔らかい声とは真逆の、ナイフを思わせる鋭い動き。

|゚ノ;^∀^)「――ッ」

首筋に衝撃が走った。
同時、意識が急速に闇へと落ちていく。

レモナは、そのまま抵抗する暇もなく気絶した。



67: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:57:01.48 ID:xv3lMgtl0
ハ(リメ -゚ノリ「っと」

倒れかけたレモナを支える。

ハ(リメ -゚ノリ「正しいとか、間違いとかいう問題じゃない。
       犠牲は少なければ少ないほど良いんだ。
       何人かの死よりも、一人の死の方が圧倒的に軽いんだよ」

華奢な身体を抱きかかえ、

ハ(リメ -゚ノリ「それに必ず殺されるわけじゃあない。
       ミカヅキの怨恨の度合いによっては、もしかしたら――」

言いかけ、止まる。
己の言っていることの馬鹿らしさに気付いたのか、微かに笑みを浮かべた。

ハ(リメ -゚ノリ「まぁ……生きられるわけがない、な。
       生かすつもりだという程度の恨みなら、ここまで追ってはこないだろうし」

と、苦笑混じりに歩き始めた。



69: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:58:22.70 ID:xv3lMgtl0
しばらく行くと、大きな通路に出る。
右を向けば巨大なシャッターのような扉。
その脇には、人間が通るようなサイズの鉄のドア。

ハ(リメ -゚ノリ(……となると、あの巨大なシャッターは人間以外のモノを通すためか)

そんなもの決まっている。

ハ(リメ -゚ノリ(EMA、かな。 元々は戦闘機やヘリを搬出するためのものだろうけど)

と、そこで足を止め

ハ(リメ -゚ノリ(モナーさんも近くにいるはず。
      彼がEMAのパイロットだと勘違いされているならば、だけど)

見渡し、何処かに扉がないかを見る。

しかし見つからない。
仕方がない、と肩を竦めたミツキは、その足で格納庫へと入ることにした。



73: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:59:56.06 ID:xv3lMgtl0
内部に明かりは少ない。
非常事態に移行しているせいか、微かな赤い電灯が光っているのみだ。

その中に、在った。

ハ(リメ -゚ノリ「…………」

見上げる先には青い巨人であるEMA。
ミカヅキのEMAに比べ、重厚な印象を与えてくる。

彼の機体を『武者』と呼ぶのならば、ミツキの機体は『騎士』が相応しいだろう。

ハ(リメ -゚ノリ「最後の仕事だよ。 待っていてくれ」

すぐに動かすことが出来る状態であることを確認し、今度は付近にあった扉へと足を向ける。
ノブに触れるが、鍵が掛かっているせいか回らない。

ハ(リメ -゚ノリ「失礼」

レモナを担ぎ直し、その動きで腰のブレードを引き抜く。
軽い音と共に切り裂き、傾いた扉を蹴り飛ばした。
そこには

(;´∀`)「ひゃぁぁ! 命だけは御勘弁をー!」

突然の音に身を震わせ、命乞いをするモナーの姿があった。



78: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 20:01:38.52 ID:xv3lMgtl0
飛び交うのは光。

北東から飛ぶのは拳大の光弾だ。
連射こそないものの、的確な狙いを以って放たれるそれは高速。

対し、南西から走るのは橙色の光閃。
小さいながらも、それは弾幕といえる数と圧で壁を作っていた。

いわゆる射撃戦だ。
しかも濃い森の中で行われているため、自然と相手の姿が見えない中での戦闘となる。
となれば、この局面で重要なのは培われた勘と経験だろう。

幸か不幸か、両者ともにそれらが少し欠けているわけだが。

('A`)「あの、ちょっといいッスか?」

(*゚ー゚)「何かしら?」

言葉と同時に羽片が来る。
いくつかが、ドクオの周囲に突き刺さった。

(;'A`)「……割と本気?」

(*゚ー゚)「ううん? 普通よ?」

(;'A`)「はぁ、そうッスか」

どう見ても本気で戦っているようにしか思えないのは、どう説明すべきか。
人質の命が掛かっている状況で、それは間違いないわけであるが。



80: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 20:03:36.53 ID:xv3lMgtl0
('A`)(まぁいいや。 こっちもそれなりに経験積んでるし)

以前のような恐怖感は払拭されている。
ブーンと行った訓練の成果が出ているのだ。
ああ見えてブーンはスパルタ気質で、他人に厳しく自分にはちょっと甘い、を地でいく困った君であったりする。
その御陰で、こうして何とか戦えている分には文句を言い様もないのだが。

しかしドクオはドクオである。

恐怖感は払拭されたが、また別の恐怖感が彼を襲っていた。

('A`)(俺、ちょっと前までは学生だったんだけどなぁ……)

陸上部で、しかも割とエースだった。
女子に好かれることはなかったが、嫌われ者とまではいかない微妙なポジション。
素敵な青春ではなかったが、それでもドクオは充実感を感じていた。

どこからだろうか。
あの日常が崩れたのは。

いつからだろうか。
自分にまったく自信を持てなくなったのは。

――そして、自分の中の何かがおかしくなったのは。

('A`)(あぁ、そうだ)

忘れていた。
聞いておかなきゃならないことがあった。



83: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 20:04:58.00 ID:xv3lMgtl0
('A`)「あの、しぃさん」

(*゚ー゚)「?」

('A`)「ツンってどうなりました?」

(;*゚ー゚)「……そっか。 一ヶ月の間は情報も何もなかったわね」

('A`)「…………」

(*゚ー゚)「ツンさんはロマネスクに拉致された。 ここまでは知ってるよね?
    だから私達は、都市ニューソク地下にあるアジトに監禁されてると思ってたの」

思っていた、ということは

(*゚ー゚)「でも見つからなかった。
     隈なく探して、潜伏中にも情報を集めたりしたけど……」

('A`)「じゃあ、やっぱり――」

(*゚ー゚)「……えぇ。 こちらではもう『死亡扱い』になってるわ」

死、という言葉が頭を巡る。
あまりに現実離れで、しかし現実的な単語。

('A`)「…………」

(*゚ー゚)「…………」



84: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 20:06:09.30 ID:xv3lMgtl0
互いに言葉は無くなった。

当然だ。
しぃは、ドクオがツンを好いていることを知っている。
その相手が死んだとなれば、どういう言葉を掛けて良いのか解らないのだろう。
そもそも『死んだ』という事実を伝える時点で、内心に大変な苦労があったはずだ。

('A`)(ハァ……)

心配を掛けたな、と思う。

しかし心のどこかで、そもそも俺はそんな重要な位置にいないだろ、とも思う。

ネガティヴだ。
相変わらずの後ろ向き思考に関しては、既に諦めがついている。

自分はこういう人間なのだとよく解っている。



90: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 20:07:49.86 ID:xv3lMgtl0
('A`)(でも……おかしい、よな)

自覚はある。
言葉にすることは出来ないが、自分はどこかおかしい。
何故ならば

('A`)「何で、悲しくないんだろ」

(*゚ー゚)「……え?」

('A`)「変だよな」

(*゚ー゚)「ドクオ、君……?」

('A`)「おかしいや。 アイツが死んだってのに何とも思わない。 何でだろう?」

はは、と笑いながら問い掛けた。
ドクオ自身は自然な、そして爽やかな笑顔で言ったつもりである。
実際その通りだったのだが

('∀`)「何でだろう、何で……ねぇ、知ってる、しぃさん?」

(;*゚ー゚)「…………」

真上から降り注ぐ太陽光の仕業か。
木々の揺れによる影の仕業か。
熱気による陽炎の仕業か。
それこそ悪魔の仕業か。

何故かしぃには、その表情が酷く歪に見えてしまった。



97: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 20:09:32.86 ID:xv3lMgtl0
( ゚∀゚)「ところでよー」

激しく動いていたジョルジュが足を止め、のん気な声を発したのは
戦い始めてから十分程が経過した頃だった。

( ゚∀゚)「何で俺達が戦ってんだ……?」

lw´‐ _‐ノv「は?」

(;´・ω・`)「君って奴は……何も知らずにここへ来てたのかい?」

同じく動きを止めたショボンが溜息を吐く。

(´・ω・`)「イクヨリとかいう偉そうな奴に言われただろう?
      ハインや渡辺さん達を殺されたくなければ、敵の足止めをしろって。
      ついでに敗北すれば命はないと思えって」

( ゚∀゚)「……おぉ!」

手を叩き、電球か何かを頭の上に出現させる。
しかし残念ながら、その表現が完全に間違っていることにツッコむショボンではなかった。
何故ならば

( ゚∀゚)「つまりどういうことだ?」

(´・ω・`)「うん、想定の範囲内だよ」

と、完全にジョルジュの思考を読んでいたりするからだ。



101: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 20:12:10.66 ID:xv3lMgtl0
そんな漫才じみた二人に、シューが冷静なコメントを発する。

lw´‐ _‐ノv「……仲、いいね」

(´・ω・`)「冗談は止してほしい。
      これは僕がジョルジュを馬鹿にしているだけだ」

(#゚∀゚)「んだとぉ!?」

(´・ω・`)「まぁまぁ、落ち着くんだ。
      僕が君を馬鹿にしようとしているだけで、まだ君は馬鹿じゃないんじゃない?」

( ゚∀゚)「はっ、そ……それもそうか!
     だが俺様を馬鹿にすることは出来ねぇぞ! 俺様は優秀なんだからな!」

(´・ω・`)「……というわけなんだけど」

lw´‐ _‐ノv「何となく理解。
       つまり馬鹿は馬鹿だから馬鹿だと気付かないわけだ」

(;゚∀゚)「んん? 馬鹿が……カバ? 何だって? 何語だ?」

(;´・ω・`)「君、まさかとは思うけど、わざとやってないよね?」

やれやれ、と肩をすくめるショボン。
こりゃ駄目だ、と半笑いで首を振るシュー。



103: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 20:13:46.48 ID:xv3lMgtl0
(´・ω・`)「で、まぁ……こうして僕達に付き合ってもらってるわけだけど」

lw´‐ _‐ノv「うん」

言葉に、シューは刀を構え直す。
既に指はトリガーに掛けられていた。

(´・ω・`)「やっぱり。 君は相当に強いよね?
      ちょっと聞きたいんだけど……僕らの戦闘力、どうなのかな?」

lw´‐ _‐ノv「別に悪くはないと思うけど」

(;´・ω・`)「うわ、完全に上から目線だ。 もしかして君が本気になったら僕らなんて瞬殺?」

lw´‐ _‐ノv「うん」

即答され、ショボンは苦笑した。

(´・ω・`)「これでも一ヶ月暇だったから色々鍛えたつもりなんだけどな。
      嫌々だけど、ジョルジュともコンビネーションの訓練はこなしたし」

(#゚∀゚)「俺様の方が嫌だっての!!」

lw´‐ _‐ノv「嫌々なのに、どうして?」

(´・ω・`)「ブーンはドクオと、クーさんはペニサスさんと訓練を始めちゃったものだからね。
     ハインや渡辺さん、貞子さんは早々に別施設へと連れて行かれちゃったし。
     つまり余り者同士ってことさ」

lw´‐ _‐ノv「ふぅん……」



107: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 20:15:14.42 ID:xv3lMgtl0
手応えはある。
おそらく、そこらで暴れている世界政府兵よりも強いはずだ。
その理由として考えられるのは

lw´‐ _‐ノv(……物理法則を無視して自律する鎖に、距離を無視して穿つ槍。
       どちらも『空間』を無視する属性同士、とても相性が良い)

ウェポンの性能もあるが、それよりも彼らの才能の方が理由としては強いだろう。
そして更に大きな理由があった。

この二人、仲が悪いように見えて、実は互いをよく見ているのである。

ショボンはやんちゃなジョルジュを、出来るだけ視界内に収めて行動している。
ジョルジュは常に前へ前へと出るが、時折ショボンの位置を確認するように振り返っている。

前者は『足を引っ張られたくない』という心配。
後者は『背後からの誤爆の回避』という警戒。

そこに信頼はない。
しかし、確かな信用はある。
つまり互いに頼ってはいないが、その能力は認め合っているのだ。

lw´‐ _‐ノv(だから、自然なコンビネーションが確立している。
       計算された人工的な動きじゃなく、感覚から生まれる天然の動き……)

非常に読み難い、とシューは思う。
こればかりは知識や経験では予測出来ないからだ。

悔やむべきは、本人達にそのつもりはないという点だろう。



109: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 20:17:19.84 ID:xv3lMgtl0
もしこれに『信頼』が加わればどうなるだろうか。

lw´‐ _‐ノv「……そりゃあ」

面白いことになりかねないだろう。
想像し、シューの口元に微かな笑みが浮かんだ。

(;´・ω・`)「うーん、何か笑ってるけどアレは何を意味するんだろう」

( ゚∀゚)「思い出し笑いじゃね?」

(´・ω・`)「こんな時にかい? まさか、君じゃあるまいし」

( ゚∀゚)「あぁ? じゅざけんな――って昔こんなセリフあったよなwwwwwwうひゃひゃwwwwww」

(;´・ω・`)「…………」

コイツもう駄目だろ、とショボンが心の片隅で諦めかけた時。
空から高音が響いたのを聞く。

(´・ω・`)「?」

いや、音は高いものだけではない。
重厚な駆動音や、高熱が大気を焼く音も混じっている。



110: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 20:18:46.59 ID:xv3lMgtl0
lw´‐ _‐ノv「!!」

逸早く空を見上げたのはシューで、ジョルジュとショボンがそれに続く。

(´・ω・`)「あれは……?」

(;゚∀゚)「お、おいおい、今度は青色かよ」

今度は、ということは、以前にも同じようなものを見ているということだ。

それもそのはず。
彼らもまた、ミカヅキの駆る赤いEMAを目撃していたのだから。

lw´‐ _‐ノv「……ミツキ」

見上げ、シューは呟く。
おそらくは赤いEMAの下へ向かっている青いEMAを目で追う。

高速だ。
一度たりとも躊躇を見せない動き。
ただ真っ直ぐに、行くべき戦場を目指して空を走る。


その姿は、突き抜けるような青空に酷く霞んで見えた。



114: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 20:20:26.07 ID:xv3lMgtl0
反応があったのは、世界政府本部を出てから数分後。
まるでこちらを迎えに来るかのように、二機分の魔力反応がレーダーに表示された。

しばらく待つと、正面ウインドウに表示される景色に二機の機体が飛んでくるのが見える。

『――久しぶりだな』

『御久し振りです、ミツキ様』

ハ(リメ -゚ノリ「あぁ、久しぶりだね……ミカヅキ、キオル」

かつてと変わらない声に、ミツキは軽い苦笑を浮かべる。
しかしすぐに無表情へと変化し

ハ(リメ -゚ノリ「二人が相手かい?」

『いや……彼女は関係ない。
 キオル、ここから離れろ』

『畏まりました。 御武運を』

赤い機体の傍にいた黒色の戦闘機が、名残惜しむようにゆっくりと離れていく。
充分な距離をとったと見るや否や

『――さぁ、始めようか』



120: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 20:21:41.59 ID:xv3lMgtl0
その光景と言葉に、ミツキは小さな懐かしさを覚える。

同じだ。
この世界へ来る直前、あの焦げ付くような太陽の下で戦ったあの時と。
世界交差とやらが、あと数秒遅ければ自分は今ここにはいなかっただろう。

数奇な運命だ。
何せ死ぬと思った次の瞬間には、この世界の森の中へと放り込まれていたのだから。

ハ(リメ -゚ノリ「…………」

感謝すべきか、と思い、違うな、と首を振る。
あの時点で死ぬべきだった自分が生きているのは、確実に間違いだろう。
そして、その数奇な運命を終わらせるための言葉を吐いた。

ハ(リメ -゚ノリ「一ついいかな?」

『命乞いか?』

ハ(リメ -゚ノリ「いや……戦いを止める気はないかな、と思って」

『ふざけるなよ裏切り者。
 何のためにここまで追って来たと思っている』

ハ(リメ -゚ノリ「だろうね」

『貴様にはこの世から消えてもらう。
 かつての仲間だろうが何だろうが、貴様は俺達の隊長を殺したのだから』



122: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 20:23:19.71 ID:xv3lMgtl0
ハ(リメ -゚ノリ「あぁ、そうだ。 僕が殺した」

『ならば話は終わりだ。 以上も以降も何もない』

通信は繋げたまま、両腕に握った二本の剣を音立てて構えた。

『――EMA−02「ウルグルフ」、行くぞ』

ハ(リメ -゚ノリ「名乗られたからには名乗り返さないとね」

レバーを握し締める。
深い呼吸の後、ウルグルフと同じように構えをとりつつ

ハ(リメ -゚ノリ「EMA−01『リベリオン』。
      過去を清算するため、今一度駆ることを許してほしい」

身を動かす。
意思どおりに動くリベリオンの右腕が、前方へと突き出された。
同時、ウェポンパネルの中のある武装を選択する。

ハ(リメ -゚ノリ「空間転送――纏縛――固定――」

紫電が走った。
空の一部を染め上げ、一点に集中する。



124: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 20:24:35.50 ID:xv3lMgtl0
そこから生まれたのは柄。
まるで空間を割って出現したかのようなそれを、青い腕が掴んだ。

引き抜く。

き、というガラスを切るような音が、大空に木霊した。
不可思議な光景の中から出てきた武器の形は、薙刀のような刃を持っている。
準備完了を示すように動きを止めると、ミカヅキの暗い声が届いた。



『――始めようか』

ハ(リメ -゚ノリ「あぁ、終わらせよう――!」



赤と青の色が激突を開始したのは、その言葉の直後だった。



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