( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

5: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 21:18:15.56 ID:jpces/WK0
活動グループ別現状一覧

( ・∀・) (,,゚Д゚) (*゚ー゚) ミ,,"Д゚彡 ( ´_ゝ`) (´<_` )
(`・ω・´) <_プー゚)フ (#゚;;-゚) [゚д゚] ( ゚д゚ ) ノハ#゚  ゚) 
从・∀・ノ!リ ( ><) (*‘ω‘ *) |゚ノ ^∀^) lw´‐ _‐ノv
所属:四世界
位置:オーストラリア・世界政府本部
状況:強襲中

( <●><●>) |(●),  、(●)、|
( ̄ー ̄) ( ^Д^) (゜3゜) ,(・)(・), ┗(^o^ )┓ \(^o^)/ |  ^o^ |  ( ´∀`)
( ^ω^) 川 ゚ -゚) ('A`) (´・ω・`) ( ゚∀゚) ('、`*川 从'ー'从 川 -川 <ヽ`∀´>
所属:世界運営政府
位置:オーストラリア・世界政府本部
状況:迎撃中

ル(i|゚ ー゚ノリ メ(リ゚ ー゚ノリ 从ξ゚ -゚ノリ 〈/i(iφ-゚ノii
所属:異獣
位置:オーストラリア・世界政府本部
状況:???



6: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 21:20:38.07 ID:jpces/WK0
第四十話 『無限凌駕』

人が戦っている。
人と戦っている。

同じ形をしたそれは、しかし所属が異なるという理由で戦い合っている。

これを滑稽と呼ばず、何と言おう。

共通の敵を前にして何故争うのか。
生き物の本能としては正しいが、理性としてはまったく正しくないのだというのに。

何処の世界も似たようなものだった。
勝手に身内で滅ぼし合い、こちらが攻めてみれば動揺して自壊していく。
その内、異獣の中で一つの結論が生まれた。

――人間はプライドが高いだけの生き物である、と。

果たして、この世界にもそれは適用されるのか。
この点に関してのみ、異獣は今回の出来事に淡い期待を抱いていた。

四世界が繋がっているという希少なケースによって、何か劇的な変化があるのではないか、と。

しかし、その期待も今では落胆に変わりつつあった。
現状を――森の中や建物の中で、二つの勢力が争っている様を見ればすぐに解る。



8: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 21:22:59.96 ID:jpces/WK0
これでもマシな方だった。
当初など、四つの組織が入り乱れていた程なのだから。
それに比べれば、今の状態は決して悪いとは言えない。

しかし、その過程があまりにも愚か過ぎた。


ル(i|゚ ー゚ノリ「……ふむ」

青髪の女は巨大な扉の前に立っていた。
この扉の先には、彼女達が目的とする世界交差装置が在るはず。
それを作動させれば、この世界は『詰み』だ。

ル(i|゚ ー゚ノリ「存外つまらんものだな」

此度の戦いを一言で言うならば、それである。


とはいえ、土台は元から出来ていた。

機械世界という、異獣に多大な敵対心と経験を持つ世界。
英雄世界という、英雄という強大な闘争力を持つ世界
魔法世界という、魔力を利用した高度な技術力を持つ世界。

そして、滅びという未来を完全消去された不滅の世界。



10: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 21:25:27.94 ID:jpces/WK0
この四世界を繋げようとしている者がいると聞いた時、彼女達は喜びを隠せなかった。

何せ、いくつもの問題が一気に解決したようなものだったからだ。

不滅世界の秩序は、滅びを全て弾く非常に特殊なものである。
滅びの要因である異獣では、絶対に通ることの出来ない壁。
それを破壊してくれる人物がいると聞いた時、流石に神の存在を疑ったものだ。

一応、異獣側にも解決口はあった。
それが青髪の女であり、赤髪の男の存在ある。
しかし非常に面倒な手順を踏まなければならず、どうしようかと悩んでいた時、渡辺の存在を知ったのだった。

ル(i|゚ ー゚ノリ「最初は順調だったのだがな。
       まぁ、これも人間に頼ろうとした罰なのかもしれん」

結果的にこうして直接手を下さなければならなくなった事実に、青髪の女は溜息を吐く。
しかしすぐに気を取り直し、目の前にある巨大な扉を押して開いた。

重い音。

そして奥から、神々しいまでの白い光が差し込んできた。

ル(i|゚ ー゚ノリ「ほぅ」

白い床、白い壁、白い天井。
体育館ほどの広さを持つその部屋の最奥に、機械の群がある。
周囲には大小様々なカプセルが並び、その中に紫の色を放つルイルが見えた。



12: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 21:28:09.53 ID:jpces/WK0
「――来ましたね」

声に振り向けば、

( <●><●>)「貴女がここに来るのは解っていました」

と、そんな予言めいたことを言う黒衣姿の男――ワカッテマスがいる。
その隣には、決して友好的とは言えない笑みを浮かべる男が立っていた。

( ̄ー ̄)「貴女が……異獣ですか」

ル(i|゚ ー゚ノリ「秩序を統べる者に、この世界を統べる者か。
       迎えとしてはこれ以上の適任者もおるまい」

( <●><●>)「迎え? 迎撃の勘違いですか?」

ル(i|゚ ー゚ノリ「どちらにせよ、私にとっては同じようなものだよ。
      紅茶を御馳走されようが攻撃されようが、な」

やはり余裕の笑みを浮かべて言う女。
クン三兄弟、英雄神を突破してきた実力は決して嘘ではないのだ。

ル(i|゚ ー゚ノリ「さて、ゆるりとしたいところなのだが、こちらも少々時間が押していてね。
      貴様らには早々に御退場を願いたい」

( <●><●>)「何を馬鹿なことを」



13: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 21:29:52.21 ID:jpces/WK0
両腕が動く。
その先にはブラックホールのような黒い穴。

( <●><●>)「貴女はここで消えるんですよ」

ル(i|゚ ー゚ノリ「やれやれ……そういう類の台詞は聞き飽きたのだが」

( <●><●>)「ならば、これで最後にしましょう」

腕をかざした瞬間、青髪の女の下半身を闇が包み込んだ。
ブーン達を都市ニューソクへ移動させた、あの穴だ。

( <●><●>)「本来の使い方は空間転移ですが、これを途中で閉じれば――」

直後、青髪の女の身体が切断された。
下半身は穴の中へと封じられ、残った上半身が衝撃で吹き飛んだのだ。

( ̄ー ̄)「断頭台……いや、断胴台ですか。 相変わらず容赦がない」

( <●><●>)「ここまで彼女を通してしまったのは、その容赦が英雄達に残っていたのが理由です。
        侵入者は即刻排除が望ましい」

ル(i|゚ ー゚ノリ「確かに」

(; ̄ー ̄)「!?」

( <●><●>)「……どうやって」



16: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 21:32:38.65 ID:jpces/WK0
ル(i|゚ ー゚ノリ「なに、別に特別なことではない。
      貴様が今切断したのは、身代わりというヤツでね」

視線の先、甲高い音を立てて落ちる銀閃。
それは白い刀の束であった。
つまり黒衣の男が切断したと思っていたのは、いわば刀で作られた人型だったのだ。

ル(i|゚ ー゚ノリ「今度はこちらの番でよろしいかな?」

問答無用。
答えを聞く前に、女の周囲に変化が起きる。
白い床から、まるで植物のように刀が生えてきたのだ。

( ̄ー ̄)「あれは――」

( <●><●>)「下がってください。
         貴方が傍にいると、迎撃に無駄が出ます」

ル(i|゚ ー゚ノリ「良い判断だな」

続々と生み出される白い刃。

数にして二十余り。

その不気味な光景は、さながら刃の葦群であった。



19: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 21:34:30.46 ID:jpces/WK0
ル(i|゚ ー゚ノリ「参る」

放たれる。
白色の閃光が煌き、その切っ先を一斉に黒衣の男へと向けたのだ。

音もなく発射された白色の刀の群が、一斉に殺到し

( <●><●>)「ッ――!!」

黒色に染められた。

振られた腕に呼応するかのように穴が開き、刀が飛び込んでいく。

作成された穴の数は刃と同じく二十余り。
その全てが、刀を飲み込んで消滅していった。

ル(i|゚ ー゚ノリ「ふむ……やはり数ではそちらに分があるようだな。
      何せ秩序がある限り、貴様は無限の魔力を得ることが出来るのだから」

( <●><●>)「貴女も似たようなものでしょう」

ル(i|゚ ー゚ノリ「似てはいるが絶対的に異なる。
      貴様は無限から得られるが、私の場合は蓄えられた膨大な有限であるからな」

貯えがあるということは、限りがあるということだ。

それは、気の遠くなるような時間を掛けて得た貯蓄である。
もはや常人からすれば無限に等しい量だった。



22: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 21:36:44.74 ID:jpces/WK0
しかし有限は有限。
無限に適うことはない。

ル(i|゚ ー゚ノリ「貯蓄魔力の使用権限を与えられてはいるが、無限と根競べする意味はないか。
      ならば比べるべきは数ではなく、最大出力になるだろう」

言葉と同時、今度は一振りの刀が出現する。
見た目は今までのものと大差ないが、籠められた力は膨大だった。

( <●><●>)「ならば」

両腕を突き出すと同時、捻られた空間を穿つように一際大きな闇が生まれる。

それは穴ではなく別の形へと変貌し、無明の球体を作り上げた。

「「行け――!」」

両者の構えた武装が放られる。
直線の軌道を描き、そのまま真正面から激突した。

轟音。

互いの最大出力を競うための一撃が、ただそれだけのために牙を剥く。

(; ̄ー ̄)「っ……!!」

その衝撃たるや爆撃そのもの。
熱や破片はないが、生みだされた暴風は密閉空間である最上階に乱反射し
行き場を失った衝撃が、場にいるモノ全てに襲い掛かることとなる。



25: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 21:39:22.41 ID:jpces/WK0
(; ̄ー ̄)「御願いですから、世界交差装置には傷を入れないでくださいよ……!」

( <●><●>)「もちろんです」

黒衣の男の声は余裕だった。
生まれた衝撃を機械に当たらぬよう、巧みに操作する。

ル(i|゚ ー゚ノリ「成程……最大出力を放っておきながら尚も余剰があるか」

( <●><●>)「無限、と言ったのは貴女ですよ。
        力が無限ならば、一度に作ることが出来る力の数も無限なのが道理。
        貴女が如何に強力であろうとも、私に勝つことはないのです」

有限が無限に敵うわけがない。
唯一の勝てる見込みであった最大出力も、無限の一言であっさりと敗れ去る。

これは、曲げようのない事実だった。

青髪の女の力では、ワカッテマスを倒すことが出来ない。
それを一番理解しているのは、力比べをした張本人である女だけで

ル(i|゚ ー゚ノリ「しかし困ったな……これでは私に勝機など無いではないか」

と、彼女はあっさりと負けを認めた。



27: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 21:42:11.02 ID:jpces/WK0
( <●><●>)「では、諦めたらどうでしょうか?」

ル(i|゚ ー゚ノリ「戯言を……勝てぬのならば、勝てるようにすれば良いだけのことだよ」

その時だった。

( <●><●>)「――!」

女の声を合図としたかのように、白い壁が激音を立てて破壊される。
破片が内側に向かって爆砕したことから、つまり外側からの――

メ(リ゚ ー゚ノリ「おぉーっす」

白煙から身を出したのは赤髪の男、キリバだった。
機械腕からの放熱で景色を歪めつつ、のんびりとした口調と歩調で参上する。

室内の熱と煙が空いた穴へと吸い込まれる中、青髪の女が呆れるように手を腰へとやった。

ル(i|゚ ー゚ノリ「少し遅いぞ、兄上」

メ(リ゚ ー゚ノリ「これくらい大目に見てくれよ、姉貴。
      こっちは一仕事終えてきたばっかなんだぜ?」

その様は双子以外に他ならない。
ただ髪の色と型が異なるだけの二人は、性を別としながらも同じ顔だった。



29: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 21:44:51.63 ID:jpces/WK0
そしてもう一つ、気配が追加される。
大きな扉が控えめな音を立てて開いたのだ。

从ξ゚ -゚ノリ「…………」

滑り込むように入って来たのは、ダイオードを殺した銀髪の女。
右手に持った大鎌を身体全体で抱き締め、そして少し不安げな表情で二人の男女を見据えた。

メ(リ゚ ー゚ノリ「おう、お前も来たか――ってか、俺より遅いってどゆこと?」

从ξ゚ -゚ノリ「…………」

メ(リ;゚ ー゚ノリ「……は!? 邪魔だったからダイオードを殺してきたぁ!?
       おま、勝手にっつか下手に向こうの戦力を削るなよ!」

从ξ゚ -゚ノリ「…………」

メ(リ;゚ ー゚ノリ「いや、確かに四世界側の戦力は削ってねぇけど!
       だからってダイオードを殺すのはちょっと頂けねぇぞ!」

ル(i|゚ ー゚ノリ「ふむ……まぁ、そうまで怒るな兄上。
      逆を言えば、あのダイオードよりも強いという証明が出来たようなものじゃないか。
      この後のことを考えれば、私はある意味で安心出来るよ」

メ(リ#゚ ー゚ノリ「姉貴は甘ぇ! ぜってー甘ぇ!
       ダイオードの野郎に引導を渡すのは、生前世話になった俺達って言ってたろ!?」

ル(i|゚ ー゚ノリ「まだ生前の事を引き摺っているのか兄上は……それに女なのだから『野郎』ではないだろう」

メ(リ#゚ ー゚ノリ「いちいち揚げ足とんなっつーの!!」



32: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 21:47:15.36 ID:jpces/WK0
一言で言うならば異常な光景だった。

あの異獣が、人間のような格好で、人間のように怒り、笑い、話し合っている。
異獣の何たるかを多少ながらも知っているワカッテマスは、その光景に背筋が冷えるのを自覚した。

(; ̄ー ̄)「あれが……異獣なのですか?」

一方、イクヨリは拍子抜けしたような声を出す。
ただの人間であるが故に、あの異常さを感じ取れないのだろう。

ル(i|゚ ー゚ノリ「さて」

折り合いがついたのか、青髪の女がこちらを見る。

ル(i|゚ ー゚ノリ「ともあれ、そろそろ我々の目的を果たさなければな」

メ(リ゚ ー゚ノリ「うーっす」

从ξ゚ -゚ノリ「…………」

三対六眼が鋭くなった。
瞬間、周囲の景色が歪曲したかと錯覚を受ける。
処刑直前――いや、今まさに刃が額に落ちてきているような絶望感。
ワカッテマスは、その込み上げる吐き気と殺気を何とか振り払い

( <●><●>)「二つほど聞かせて欲しいことがあるのですが?」

と、場違いのようであり、そうでもない疑問を発した。



36: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 21:49:07.93 ID:jpces/WK0
ル(i|゚ ー゚ノリ「……ふむ、確かに納得出来ない部分もあるだろう。
      同じ死ならば、納得してからの方が安らかに逝けるかもしれん」

メ(リ゚ ー゚ノリ「長話なら俺ァ寝るぞ」

ル(i|゚ ー゚ノリ「すぐ終わるさ。 質問の如何によってはな」

良い、と許可を視線で送ってくる青髪の女。
微かに俯いたワカッテマスは、その爛々と輝く瞳を異獣へと向ける。

( <●><●>)「まず一つは貴女の名前です」

ル(i|゚ ー゚ノリ「成程、確かに名を知らずに会話するのも面倒か。
      私の名は……そうだな、『ミリア』とでも呼んでくれ。
      かつての名は憶えているのだが、あまり良い思い出がなくてな」

( <●><●>)「解りました」

では二つ目、と前置きし

( <●><●>)「……何故、今になって貴女達が?」

ル(i|゚ ー゚ノリ「時が来たからだ」

( <●><●>)「時とは?」

ル(i|゚ ー゚ノリ「貴様らも知っているとは思うが、当初から我々異獣はこの世界に踏み込んでいた。
      その理由から話してやろうか」



39: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 21:51:31.59 ID:jpces/WK0
頷いたワカッテマスに、ミリアは口だけの笑みを返す。

ル(i|゚ ー゚ノリ「これは、我らの身体が人間のモノであることの起因なわけだが、
      私達はいわば『突然変異』なのだよ」

( <●><●>)「突然、変異……」

ル(i|゚ ー゚ノリ「知っての通り、異獣とは白狼の形をとっている。
      これは今までの経験から『最も戦いに向いている』という理由でな。
      世界を渡り歩くにつれ、その世界を学習し、形を段々と変えていったのだ」

( <●><●>)「成程、経験進化ですね。
         しかし何故、それならば機能的に優勢な人間の形をとらなかったのです?」

ル(i|゚ ー゚ノリ「確かに人間の身体は優れている――が、それは技術的、生活的な面での話さ。
       戦闘的な面で見れば、これほど脆弱な存在もあるまい」

手や足などの機能を見れば理解出来るが、これ以上の利便性はなかなか類を見ない。
これが人間の長所の一つである。

しかし同時に、致命的な短所を孕んでいた。



41: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 21:54:13.37 ID:jpces/WK0
元から戦闘力の低い構造をしていた人間は、知能と機能的な身体を用いて生き残っていく。

知能から技術を生み、身体を用いて武器や機械を生み出していったのだ。
それらを用いれば当然、獲物を狩るのに身体を張る必要が無くなる。

結果、人間の身体は機能を重視し、皮膚は柔らかく、節々は細長く、身体の構造は脆く進化していった。
当初はあったはずの様々な筋肉は、楽に獲物を手に入れる度に退化する。

戦わなければ生き残れない肉食獣などに比べて、全体的に肉抜きをしたようなものであると言えよう。

ル(i|゚ ー゚ノリ「我々から見れば、人間など脆弱退化の窮みなのさ。
      もちろん、対するように秀でていた知能は学習させてもらったがね」

( <●><●>)「……その人間という遺伝子記録の残滓から、貴女達が生まれた、と?」

ル(i|゚ ー゚ノリ「あぁ、そういうことらしい。
      本来は白狼に生まれるべきはずなのだが、我ら――いや、私と兄上だけが人間の形を持って生まれた。
      それが何時のことなのかなど、流石に憶えていないがな」

( <●><●>)「しかし、異獣にとってみれば貴女達は異形かつ欠陥品でしょう。
        それが何故、ここにいるのです? 生きていられたのです?」

ル(i|゚ ー゚ノリ「簡単な話、突然変異は身体構造上だけに留まっていなかったのだ。
       何と変異は、あるルールさえも書き換えてしまったのだよ」

( <●><●>)「……ルールとは、まさか」



44: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 21:56:36.91 ID:jpces/WK0
ル(i|゚ ー゚ノリ「さて、少し話は変わる。
      数ある秩序によっては、異獣が侵入することが出来ない場合があるのは御存知だろう?
      まぁ当然だな。 我々は病原菌のようなモノなのだから。
      そういうわけでかつての我々は、侵入不可の世界に巡り合った時は諦めていたのだよ」

当たり前の話だ。
入れない扉を無理矢理こじ開けるより、開いている扉を開く方が早い。
拒絶されているのであれば、諦める他はないだろう。

ル(i|゚ ー゚ノリ「しかし、その問題は私達の誕生によって解消された」

言葉が意味する事実は一つ。

ル(i|゚ ー゚ノリ「私達姉兄は秩序のルールを受け付けない――つまり抗体を持った突然変異だったのだ」

( <●><●>)「なっ――」

ル(i|゚ ー゚ノリ「頷けない話ではあるまい?
      生物は敵性に対して抗体を生み出す能力を備えている。
      それは生物の範疇ギリギリにいる異獣とて、例外ではないのだよ」

( <●><●>)「……つまり、貴女達は単体が異獣ではなく」

ル(i|゚ ー゚ノリ「そう、我々全体が異獣そのものと言えようか。
       そして私達は、異獣の細胞の一種であり秩序抗体なのさ」



46: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 21:59:29.43 ID:jpces/WK0
秩序の効果を受けないということは、異獣の入り込めない世界が無くなることを意味する。

ル(i|゚ ー゚ノリ「まぁ、面倒なのは変わりないのだがな。
      何せ内側から秩序を破壊するため、私と兄上のみで世界内を暗躍しなければならなかった。
      無論、今回のケースも例外なく、だ」

( <●><●>)「だから我々の前に姿を現して牽制をしたり、裏から渡辺の手助けなどをしていたのですね」

ル(i|゚ ー゚ノリ「渡辺の存在は、我々にとってかなりの助けになったよ。
      世界交差という秩序を破壊する行為を自ら行ってくれるのでな。
      で、直接手を下すまでもなく自壊するのを知った私達は、その時を待つことにした」

しかし、と言い

ル(i|゚ ー゚ノリ「皮肉なことに、逆にすることが無くなり暇を持て余してしまってね。
      自壊するまでの間、少々、人間を使って実験開発などを行ってみたのだよ」

( <●><●>)「実験開発……?」

ル(i|゚ ー゚ノリ「いつまでも秩序抗体を持つ個体数が限られている状況は困る。
      かと言って突然変異体が生まれてくるのを期待するには、不確定要素が絡み過ぎる。
      というわけで、秩序抗体を持つ個体を我々の手で作り上げようと思った次第でな」

開発を行うには、まずベースとなる対象の全てを知る必要がある。

皮膚を剥ぎ、内臓を観察し、骨格の作りを知り、神経の道を理解し、脳のシステムを解析する必要が。
更に言えば感情や本能、そこから生まれる性格や思考などの人間的根本部分まで。



51: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:02:19.49 ID:jpces/WK0
ル(i|゚ ー゚ノリ「元々、秩序抗体を持つ個体実験構想は以前から成されていた。
      此度の暇を好機と見て、本格的な個体開発へと移ったわけだが
      それ以前に人間構造のデータを取得するため、当時攻め込んでいた機械世界の人間を捕らえたことがある」

( <●><●>)「……それが、後の軍神というわけですか」

ル(i|゚ ー゚ノリ「今ではそう呼ばれているらしいな。
      まさか私達も、全身の皮膚を剥離されて尚、生き残るとは思わなかったが。
      あぁそうえいば、軍神だけでは解らぬ部分もあったので、別世界からもサンプルを得たことがあったよ」

別世界とは英雄世界のことであろう。
そこで、行方不明となった英雄がいた。
『蜘蛛姫』の異名を持つ、四種の武具を扱う、可憐苛烈な英雄が。

ル(i|゚ ー゚ノリ「そうしてデータを得た我々は、遂に秩序抗体を持つ個体を作るまでに至った。
      ただ、我々とて全知全能の神ではない。
      当然の話ではあるが、0から1を作り出すことは不可能だった」

無いものから有るものは作ることが出来ない。
ならば、有るものを有るものへと作り変えるしかない。

( <●><●>)「貴女達が都市ニューソクでの戦いで『あの二人』を回収したのは、そういう理由があったのですね?
        そして、その結果が――」

ワカッテマスの視線が、背後の銀髪の女へと向けられた。

从ξ゚ -゚ノリ「…………」

見られるのが怖いのか恥ずかしいのか、身体を震わせた女は鎌を抱き締めて俯く。



57: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:04:17.94 ID:jpces/WK0
ル(i|゚ ー゚ノリ「まぁ、これが現在に至るまでの事の顛末だよ。
      私達は新たな秩序抗体を作るために、今まで潜伏していた、とね。
      納得頂けたかな、秩序守護者殿?」

( <●><●>)「……えぇ、解らなかったことがようやく解りました」

メ(リ゚ ー゚ノリ「うーっし! なら、さっさと続きやろうぜ!」

( <●><●>)「続き? まだ私と戦うというのですか?」

メ(リ゚ ー゚ノリ「あ?」

( <●><●>)「先ほど証明されたはずですが。
        いくら貴方達が無限に近い有限の魔力を持っていたとしても、
        正真正銘の無限を司る私には敵いませんよ」

先の攻防を見ても明らかだ。
二十余りの刀を、ワカッテマスは全て捌き切った。

更にはミリアの最大出力をも防ぎ、尚も余剰出力を残せる力を持っている。



61: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:05:36.60 ID:jpces/WK0
扱える力が無限であれば、扱える数もまた無限。
有限が無限を超えることが出来ないのは道理。

道理なのだが、しかし――

ル(i|゚ ー゚ノリ「ふっ……ならば一つ問おうか」

それがどうした、とばかりに笑みを浮かべる彼女に嫌な予感がしないわけがなく

ル(i|゚ ー゚ノリ「何故、それほどの力を持っている貴様が表舞台に出てこなかった?」

( <●><●>)「――!」

ル(i|゚ ー゚ノリ「答えはこうだ」

右手が走る。
それが合図だったのか、左右に控えていた二人の異獣が地を蹴った。
見届けたミリアも直進を開始する。

( <●><●>)「無駄なことだと、何故解らないのですか」

両腕をクロスさせ、己の周囲にいくつもの穴を作り出す。
左右からくるキリバと銀髪の女、そして正面のミリアに対する牽制だ。

メ(リ゚ ー゚ノリ「へっ、流石! だがよぉ!」

从ξ゚ -゚ノリ「…………」

ル(i|゚ ー゚ノリ「もう通用しないということが、何故解らないのか――!」



63: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:07:10.23 ID:jpces/WK0
三種三様の武具が襲いかかる。

右方からは赤髪の男の機械大腕が。
左方からは銀髪の女の黒い大鎌が。
正面からは青髪の女の白い刀群が。

同時というタイミングで、それぞれの方角から敵意が牙を剥く。

( <●><●>)「!!」

硝子が割れるような音が、ワカッテマスの周囲で連鎖した。
三方から来る攻撃を全て穴で防いだのだ。

メ(リ゚ ー゚ノリ「おぉっ、すっげー」

ル(i|゚ ー゚ノリ「だが貴様は一つ大切なことを見落としている。
      いや、上手く隠している、が正しいかな?」

从ξ゚ -゚ノリ「…………」

攻撃は止まなかった。
止まらないということは、繋がるということであり。
繋ぎ合わせれば連撃と、更に隙間を埋めれば乱撃となる。

( <●><●>)「これは……!」

ル(i|゚ ー゚ノリ「貴様が我々と同じく積極的に動かなかった理由。
      それは貴様がある重大な弱点、いや、無限ではない部分を抱えているからに他ならない」



65: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:08:58.23 ID:jpces/WK0
三種の音が合致する。

ル(i|゚ ー゚ノリ「いくら無限の力があろうとも、いくら無限の数を扱えようとも――」



――――貴様は一人であろう?



( <●><●>)「っ……!?」

押される。
無限を扱えるはずの男が、有限である三人に押され始めていた。
三方からの乱撃を防ぐために穴の展開を速めるが、それでもワカッテマスは徐々に後退していく。

解ってしまった。
このままでは確実に押し負ける、と。

ル(i|゚ ー゚ノリ「目は一対で、耳も一対。 脳は一つで、身体も一つ。 腕は二本で、足も二本。
      血潮が一人分なれば、神経も一人分に違わず。 更に言えば骨肉も言わずもがな。
      故に受け取れる感覚は有限であり、無限を扱うには貴様ではちと足りん」

つまり、ワカッテマスの処理が追いつかないのだ。
異獣の中でも別格に位置する存在が三人、三方向から神速の連撃を放ってくる。

常識的に考えて、それをたった一人で捌けるわけがないのだ。



69: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:11:04.09 ID:jpces/WK0
( <●><●>)「ですがその程度、百も承知なのですよ……!」

しかし、可能とするからこその秩序守護者。
この程度に押し負けるなど、司る無限の名が泣く。

メ(リ゚ ー゚ノリ「はン! だからこそテメェは表立って行動しなかったんだろ!?
      もうネタが上がってんだぜ!?」

ル(i|゚ ー゚ノリ「無限の力とはいえ扱う身体はただの一つ。 これが答えというやつさ」

速度が更に上がる。
左右の直接攻撃系を弾き、前方から飛翔する刀は全て穴の中へと吸収。

威力が高いことを示す火花が散り、衝撃波が周囲の塵を吹き飛ばす。

(; ̄ー ̄)「……大丈夫なんでしょうね?」

( <●><●>)「少し離れて頂けると嬉しいです」

言葉に頷いたイクヨリが、そそくさと場を離れる。
異獣が一瞥さえせずに攻撃を繰り返すことから、どうやら現在の目的はワカッテマスの無力化らしい。
確かに、戦力と言える彼を封じさえすれば邪魔者はいなくなるだろう。

( <●><●>)「望むところですがね……!」

それが、負け惜しみで出た言葉とは知らずに。



72: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:12:46.60 ID:jpces/WK0
メ(リ゚ ー゚ノリ「いいねいいねぇ!
      やっぱり力と力のぶつかり合いこそが男の戦いってもんよ!
      だよな、姉貴!?」

ル(i|゚ ー゚ノリ「まぁ、我々に男も女もないようなものなわけだが。
      あと五月蝿いから黙っておいてくれ、兄上」

メ(リ;- _-ノリ「……姉貴には夢がねぇ、いやマジで」

異彩を放つのは、このやり取りの中でも攻防が続いているという一点からだ。
響く衝撃音、煌めく光影を除外すれば、それはただの会話となる。

故に異常。
これが異獣との戦いなのだと、逆に納得させられる光景。

そしてこの光景こそが、異獣を相手にするということだった。

ル(i|゚ ー゚ノリ「成程、確かにそれだけの数を扱えれば、それこそ『一騎当千』と言えようか」

しかし、と言い

ル(i|゚ ー゚ノリ「千で勝てぬのならば万をぶつければ良い。
       万で勝てぬのならば億をぶつければ良い。
       億で勝てぬのならば――あとは解るな、秩序守護者?」



76: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:14:40.42 ID:jpces/WK0


左方からは力が来る。
殴りつけるような機械腕に、蹴り飛ばすような機械脚。
それらがテンポよく繰り出されることにより、打撃連音というBGMを奏で続ける。


右方からは黒が来る。
薙ぐ形の軌道で迫る大鎌は、一撃一撃がまさに必殺。
能力としてか、柄を伸ばしての攻撃は、ワカッテマスの距離感をジワジワと抉る。


正面からは刀が来る。
女の指示通りに殺到する刀は、既に数百を超えていた。
しかし尚も生み出され、片っ端から撃たれるそれはガトリングガンを彷彿させる。



それを捌く。
次々に展開する穴で封じ、己の身の安全を確立していく。

だが、

( <●><●>)「――ッ――つっ――」



79: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:16:54.28 ID:jpces/WK0
フル回転する脳。
生まれる幻想熱が神経を焼いていく感覚。
血液の循環速度に耐え切れない血管が次々と破られる。

脳裏にギチギチと、壊れた細胞や神経が跳ね回るのを自覚した。

限界など、疾うに超えている。
個人が処理し切れる情報量を超え、しかし尚も理性を保てるのは秩序守護者故か。

だが、足りない。

目で見て、耳で聞き、肌で感じ取った情報を脳へと転送。
対処法を経験と統計から編み出し、今度は身体へと指令を送る。
そうして腕や足が動き、無限から引き出した魔力を存分に行使する。

なんと愚鈍なことか。

いちいち受けた感覚を脳へと送る時間が勿体無い。
そこからまた身体へと指令を送る時間が勿体無い。


速度が、足りない。



83: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:18:33.99 ID:jpces/WK0
ならばどうすべきか――いや、答えなど最初から一つしかないだろう。

理性を捨てよ。
本能に委ねよ。

脳など要らぬ、要るのは脊髄。

脳髄反射ではなく脊髄反射。
経験と本能による、高速を越えた超高速の感覚処理。
神経の死滅していく速度が倍となり、しかし対処の速度も倍となる。

それはいわゆる早回し。
挙動速度が上がると同時、己の終焉への速度も上がる諸刃の剣。

しかし、何を迷うことがあろうか。
ここで負ければ秩序の敗北と同義になる。

それはつまり、ワカッテマスの存在意義が砕け散ることに等しい――

( <○><○>)「――っあ――――!!」

切り替えはアッサリと。
まるで待ち構えたかのように、まるでスイッチ一つカチリと押すかのように。

ワカッテマスの意思は理性を捨て、そして滾る本能へとシフトした。



89: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:19:59.87 ID:jpces/WK0
ル(i|゚ ー゚ノリ「む?」

メ(リ゚ ー゚ノリ「お?」

从ξ゚ -゚ノリ「?」

それぞれの声で、それぞれの疑問を発する異獣。
目の前で限界を迎えていたはずの男が、更に速度を上げたことによる声だ。

ル(i|゚ ー゚ノリ「ほぅ、まだ上を残していたか」

メ(リ゚ ー゚ノリ「はン! ならこっちも上げてくぜぇ!?」

単純な話だった。
いくら無限を扱えようとも、扱う身が有限であっただけ。
それを知りつつ、尚もここまで抵抗したワカッテマスは確かに賞賛に値するだろう。

しかし、それだけなのだ。

ここに無限は敗北する。
単独であったが故に。
自己の力に圧倒的な自信を持っていたが故に。

『彼ら』のように、力を認めて手を取り合うことをしなかったが故に。

( <○><○>)「わた――し、は――秩、じょを――!!」

ル(i|゚ ー゚ノリ「悪いが貴様には負けを知ってもらう。
      せいぜいよく噛み締めろ」



92: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:21:33.60 ID:jpces/WK0
今までのが嘘だったかのように速度が跳ね上がる。
その急激なまでの変化に、ワカッテマスの本能は皮肉にも反射的に思ってしまった。

――これは、もう駄目だ、と。

打撃が来る。
斬撃が来る。
刀雨が降る。

過負荷によって視力が潰れ、聴力が麻痺に陥る。
神経のほとんどが焼き落ちて尚、酷使される苦痛に悲鳴を挙げる。

無限の名を持つ最堅の鉄壁が、今ここに崩れ――

ル(i|゚ ー゚ノリ「ッ!?」

それこそが急激な変化だった。
在り得ぬモノが、有り得ぬタイミングで出現する。

ワカッテマスの直下の地面を砕き、巨大な立方体のような何かが押し上がったのだ。

当然、周囲にいた異獣が弾き飛ばされることになる。
三匹の異獣は、そのまま身を捻らせて着地。
自分達の邪魔をした何かを見据え、

メ(リ゚ ー゚ノリ「……わぉ」

と、感嘆ともいえる息を吐いた。



99: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:23:19.87 ID:jpces/WK0
目の前に出現したのは店舗だった。
看板に『Daddy Cafe』という文字を刻んだ、古臭い石造りの家屋。
この場において、まったく無意味で無価値な存在だ。

ル(i|゚ ー゚ノリ「これは……」

どう判断して良いものか、と青髪の女が唸り声を挙げた。

( <○><●>)「……だ、でぃ」

|(●),  、(●)、|「何とか間に合いましたね」

家屋の天井に倒れるワカッテマスの傍に、一人の男が出現する。
それは三人目の秩序守護者、ダディだった。

|(●),  、(●)、|「ダイオードさんには間に合いませんでしたが、貴方は助けてみせます」

( <○><●>)「しかし、私は――」

|(●),  、(●)、|「必要とするのは力ではなく貴方自身ですから」

メ(リ゚ ー゚ノリ「ちょっと待てよ、俺達の獲物持ち逃げする気かぁ?
      そんならテメェが戦ってくれるのかよ?」

|(●),  、(●)、|「いえいえ、私など相手にもなりませんよ。
         ただのしがない喫茶店の店長ですから」



104: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:25:04.72 ID:jpces/WK0
苦笑という表情に、ミリアが口端を吊り上げる。

ル(i|゚ ー゚ノリ「……よく言う」

|(●),  、(●)、|「もう一度言いますが、私は『Daddy Cafe』の店長です。
         貴女が何を知っているのか知りませんがね」

ル(i|゚ ー゚ノリ「そうか、私などに経緯を知る術はないが、失礼した。
      ではダディ殿。 ワカッテマスをどうするつもりかな?」

|(●),  、(●)、|「無論、助けさせて頂きます」

ル(i|゚ ー゚ノリ「その心は?」

|(●),  、(●)、|「簡単です。 仲間だからですよ」

放たれた言葉に目を見開いたのはワカッテマスだった。
既に神経の半分以上が死滅し、動かすことさえも苦痛を伴う身を微かに震わせた。

沈黙が発せられる。
ミリアは面白そうに目を弓にし、ダディはその大きな瞳で彼女を射抜く。
長い時間のように思えた無音は、しかしミリアの溜息によって上書きされた。

ル(i|゚ ー゚ノリ「仲間を謡うか……かの秩序守護者が、意外というか拍子抜けというか。
      まぁいい、行け」

|(●),  、(●)、|「どうも」



108: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:26:40.84 ID:jpces/WK0
メ(リ゚ ー゚ノリ「おい、姉貴、いいのかよ?」

ル(i|゚ ー゚ノリ「流石に興が殺がれたよ。
      いやまぁ、無限に勝てたという事実も出来上がったことだし、
      これ以上アレを相手するのはもはやイジメだろう?」

と、ミリアがワカッテマスへと鋭い視線を向ける。
既に満身創痍の彼は、視線を受け切れるほどの力さえ残っていなかった。

ル(i|゚ ー゚ノリ「皮肉にも使う身の方が耐え切れなんだ。
      やはり身の丈にあった力が相応だということさ」

メ(リ゚ ー゚ノリ「まぁ……姉貴が言うなら」

ル(i|゚ ー゚ノリ「気を落とすな、兄上。
      それに祭りはこれからだ」

くつくつと笑うミリア。
意味を悟ったのか、キリバも可笑しそうに笑う。

|(●),  、(●)、|「……では、また会う日まで」

ル(i|゚ ー゚ノリ「うむ」

ワカッテマスを脇に抱えたダディが店内へと入っていく。
ドアに付けられた鈴が、場違いな涼しい音を奏でた。

続いて轟音と共に店が沈む。
ある意味で、最も派手な撤退の仕方だった。



112: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:28:11.62 ID:jpces/WK0
メ(リ゚ ー゚ノリ「さぁて、これでやっと邪魔者がいなくなったか」

从ξ゚ -゚ノリ「…………」

ル(i|゚ ー゚ノリ「いや、アレは邪魔にすらならんよ」

(; ̄ー ̄)「…………」

秩序守護者に取り残された者がいる。
哀れ、存在さえも希薄だった世界の統治者は、最も頼りにしていた存在に捨てられたのだ。
額から大量の汗を流し、イクヨリは部屋の隅で怯えるように異獣を見ている。

メ(リ゚ ー゚ノリ「どーすんの?」

ル(i|゚ ー゚ノリ「立ち塞がるのならば殺すしかないだろう。
      が、何もしないというのであれば、こちらも何かをする必要はあるまい」

どうせ結果は同じだ、と誰にも聞こえない声で呟いた。

声の色は『無関心』。
例え、この場にイクヨリがいようとも構わない。
たかが人間が、異獣――しかも『種』を取り込んだ突然変異体――には勝てるわけがないのだ。


自分達には天敵などいない。


異獣は、それを知っているが故に自信に充ち溢れていた。



119: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:30:04.08 ID:jpces/WK0
ル(i|゚ ー゚ノリ「さて、時間を無駄にするわけにもいかないし、早速始めようか」

視線の先には、世界交差を発動させるための大型機械。
渡辺が作り上げた疑似魔力『歪』を利用した、四世界を混合させるための装置だ。

メ(リ゚ ー゚ノリ「って、そういやアイツがまだ来てねぇぞ」

从ξ゚ -゚ノリ「…………」

メ(リ゚ ー゚ノリ「まだ戦ってんの? え? ニダー?
      ったく、足止めは結構だが遅刻はよくねぇよなぁ」

ル(i|゚ ー゚ノリ「まぁ、かつての仲間を前にすれば奴にも思うところがあるのさ。
      例え記憶を失っていても、残滓くらいは残っているのだろう」

放っておけ、と言わんばかりのスルー。
そのままミリアは、世界交差装置へと歩を進める。



124: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:31:49.52 ID:jpces/WK0
(; ̄ー ̄)「…………」

イクヨリは思考していた。
己は何をすべきか、と。

異常な状況である。
いつ殺されてもおかしくないというのに、異獣はこちらを無視している。
屈辱的ではあるが、ここで掴み掛かるほど彼は愚かでない。

どう考えても気まぐれで生かされている。
逆を言えば、いつ気まぐれで殺されても仕方無い状況だ。

どうするか。

このまま黙っていても、本当に無視され続けられそうな気がした。
いや、絶対にそうだろう。
事実、三匹の異獣はこちらを一瞥さえせず何やら話し合っていた。

どうすべきか。

(; ̄ー ̄)(ここでの私の行動が、人類の命運を握るわけですね……)

何せ自分は世界運営政府のトップだ。
吐く言葉は全て人類の総意だと見られるだろう。
しかし逆を言えば、対話の持っていき方次第では世界が助かるかもしれない。

――もし、ここに秩序守護者がいれば速攻で止めただろうが。

イクヨリは気付いていないのだ。
ここで彼が何をしようとも、今後の未来に何ら影響がないことに。



126: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:33:11.24 ID:jpces/WK0
(; ̄ー ̄)「……ッ」

ごくり、と喉を震わせて硬い唾を飲み込む。
その音が聞こえてしまったのか違うのか、しかし合図としたかのようにミリアが動いた。

ル(i|゚ ー゚ノリ「さて、そろそろか」

話が決まったのだろう。
頷いたキリバと銀髪の女をその場に置き、世界交差装置の前に来る。
白い右手をコンソールの直上にかざした。

メ(リ゚ ー゚ノリ「姉貴ー俺がやってやろうかー?」

ル(i|゚ ー゚ノリ「いや、手助けされてばかりでは面目が立たん。
      立場的にここは私が任されるべきだ」

輝かしい光。
コンソールから出る光が手に吸い取られていく。
微かに目を瞑って、ミリアはその奔流を読み取っていった。

ル(i|゚ ー゚ノリ「成程、意外と簡単な仕組みなのだな」

一人ごち、ピアノを弾くかのような流麗さでコンソールを叩く。
数々のダミーやトラップを軽々と回避し、ものの数分で全システムの稼働を成功させた。



132: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:35:15.05 ID:jpces/WK0
轟、と周囲のカプセルが音を発する。

紫色の光が次々と生まれ、それは白い部屋を淡く照らし
機械本体が地の底から響くような唸りを挙げ、メインウインドウに高速で文字を流し始める。
そして


【The Cross World】


一際大きな英文字が記された瞬間だった。

(; ̄ー ̄)「!?」

大地震かと間違うような震動が建物を襲う。
機械とカプセルが強烈な光に包まれ、その間にも更に震動が大きくなった。

ル(i|゚ ー゚ノリ「ようやくだ。 ようやく私達の仕事も終わりを告げよう」

メ(リ゚ ー゚ノリ「あとは遊ぶだけか。 乗ってくるかねぇ」

ル(i|゚ ー゚ノリ「乗らざるを得ないだろう。
      何せ諦めれば死が待っているのだから」

メ(リ゚ ー゚ノリ「人間、生き残るためにかける力はすげぇもんがあるしなぁ……楽しみっちゃー楽しみだわ」



137: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:36:35.68 ID:jpces/WK0
(; ̄ー ̄)(ここが交渉チャンスですか――!)

世界が交わっても、相手にやる気がなければ助かるかもしれない。
そんな0%の可能性に賭け、イクヨリが震える足に鞭打って立ち上がった時。

た、という着地の音が傍で聞こえた。

(; ̄ー ̄)「!?」

「――――」

そこにいたのは人間ではなく、白い狼だった。
紅目が不気味な光を発しながらもこちらを睨み、鋭利な爪は在るだけで床を削っている。

これは、違う。

直感した。
この獣は、ただの獣ではない。

どうすべきか、逃げるべきか、興奮させないようにべきか――



143: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:37:37.58 ID:jpces/WK0
( ̄ー  「え」

顔面に衝撃が走り、左の視界が赤に染まる。
既に白狼の姿はなく、少し遠くから何が滴る音と獰猛な吐息が聞こえる。



つまり、今、自分は、食われt、ぇ、  あ       n ?



メ(リ゚ ー゚ノリ「あーあーあー、もう勝手に食い始めてやがる」

ル(i|゚ ー゚ノリ「先に、この世界の人間の味を知っておくのもいいだろう。
      どちらにしろ律するのは私達の役目さ」

そう言う姉兄の周囲にも、白狼の群れが姿を見せ始める。
久々に自由に動けるのを楽しむかのように、伸びをしたり欠伸をしたりと大忙しだ。

そのどれもに共通しているのは、赤に染まった瞳と鋭利な爪。

堂々と『最強』を名乗れる、戦闘に特化した生物。

獲物を前にした獣は腹を空かせて牙を磨き、今か今かと食事の時を待つ。



151: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:39:24.69 ID:jpces/WK0
メ(リ゚ ー゚ノリ「よっしゃー! やったるぜぃー!」

从ξ゚ -゚ノリ「…………」

揺れが更に大きくなる。
段々と世界が繋がっていく。
徐々に秩序が剥がれていく。

ここに世界交差が完成された。
皮肉にも、交差によって倒さねばならぬ相手によって、だ。

ル(i|゚ ー゚ノリ「――さぁ、宴の始まりさ」


世界が壊れていく。


せかいがこわれていく。



セ カイ ガ コワ レ テ イク



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