( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです
- 86: ◆BYUt189CYA :2007/10/29(月) 21:49:41.15 ID:zqCws+gV0
Case2: 戦いへの誘い
古城の居住エリア。
ショボンとジョルジュは一つの部屋を訪れていた。
通路のど真ん中で寝ているFC兵を跨ぎ、目的の部屋の前へと辿り着く。
周囲は静寂に包まれていた。
ほぼ全員が多忙に追われている現状、このエリアは仮眠にしか使われない。
つまり無人か就寝中かどちらかであるため、音が無いのは必然だった。
(´・ω・`)「ドクオ、入っていいかい?」
通路にて、ショボンの声が響いた。
しかし扉の向こうから返事はない。
(´・ω・`)「ドクオ?」
( ゚∀゚)「寝てんじゃねーの? っていうか何でドクオなんか気にすんだよ?」
(´・ω・`)「会議でも一言も発さなかったのが気になってね。
それを抜きにしてもドクオは大事な友達だ。 気に掛けて何が悪い」
- 91: ◆BYUt189CYA :2007/10/29(月) 21:51:29.13 ID:zqCws+gV0
- それと、と付け加え
(´・ω・`)「僕としては、わざわざ君がついて来てる方が疑問なんだけど」
( ゚∀゚)「うっせうっせ暇なんだよ」
(´・ω・`)「暇ならミルナさんやギコさんのトコにでも行けばいいのに。
手頃なサンドバッグ探してたよ」
(;゚∀゚)「それ遠回しに死ねって言ってんのかよ、お前……」
ともあれ、ドクオからの返事が無ければどうしようもない。
一応食事を持ってきたのだが、果たしてどうすべきかとショボンは考える。
このまま通路に置きっ放しにすると、訓練や整備で腹を空かせた他者が勝手に食べる可能性が高いのだ。
ちなみに、こういうものに手を出すのはFC兵と決まっていたりする。
他の世界の住人――特に英雄――は、誇りが高いのか生真面目なのか、それを絶対にしない。
最近、魔法世界の住人辺りがFC兵に汚染されている(FC病だとかいう名称が勝手についている)
という話があったりするが、今はあまり関係ないだろう。
(´・ω・`)「さて、どうしたものか」
( ゚∀゚)「いいじゃん、扉パッと開けてパッと置いてパッと閉めりゃいいじゃん」
(´・ω・`)「何かそれ新手のテロみたいだね。 っていうか、鍵かかってるだろうし」
- 98: ◆BYUt189CYA :2007/10/29(月) 21:53:36.54 ID:zqCws+gV0
- しかし、あっさりと開く扉。
(´・ω・`)「……防犯意識がなってないなぁ」
( ゚∀゚)「おーい、ドクドクドクオー」
部屋の中には明かりがついていなかった。
まだ昼間にも関わらず薄暗いのは、カーテンを閉め切っているためだろう。
( ゚∀゚)「やっぱり寝てんのか?」
(´・ω・`)「仕方ない。 それじゃあここに食事を置いて――って、起きてるじゃないか」
室内に少し身を入れたショボンは、左に見える二段ベッドの下部で人影を確認する。
縁に腰掛けてうな垂れているのは正真正銘ドクオ本人だった。
(´・ω・`)「大丈夫? 気分悪い?」
('A`)「…………」
( ゚∀゚)「んだよ、心配させんなっつーの」
(´・ω・`)(一応、心配はしてたんだ)
と、そこで様子がおかしいことに気付く。
いくら調子が悪かろうが、挨拶くらいは返してくるのがドクオだ。
そして心配されようものなら、慌てて気張ったりするのもドクオだ。
しかし今の彼は、ただ俯いているだけ。
寝ているようにも見える姿勢は、しかし微かに動く指先で起きているのだと判断出来る。
- 101: ◆BYUt189CYA :2007/10/29(月) 21:55:14.37 ID:zqCws+gV0
- (´・ω・`)「ドクオ、どうしたんだい?
身体の調子が悪いなら、医務室に連れて行こうか?」
( ゚∀゚)「大方、異獣に挑むのを怖がってんじゃねぇの? こいつヘタレだし」
(´・ω・`)(ありえるから困る)
かと言って、自分に覚悟が決まっているかと問われれば『NO』としか言えないだろう。
いくら戦いに慣れたとはいえ、今度の相手は別格だ。
元々はバーボンハウスの店長である彼に、異獣を相手にする覚悟などありはしない。
だが、戦おうとは思っている。
負ければ死に、退けば死ぬ。
ならば生き残るために武器をとるのは当然だろう。
世界の平和だとか、そういうモノにはさほど興味はない。
ショボンが見据える先は『生存』である。
生きてさえいれば何とでもなる、が彼の考えであるからだ。
しかし、ベッドに腰掛ける友人はどうだろうか。
此度の戦いで、一番戦いから遠い位置に存在するはずの彼が
今の今まで一緒について来れた事実こそ奇跡に等しいのかもしれない。
本来ならばウェポンを誰かに預けて、日常へと戻っても良かったのだ。
それをしなかったのはジョルジュが言う通り、ドクオ自身の心に問題があったからに他ならない。
詰まるところ、彼は病的なまでに臆病なのである。
- 106: ◆BYUt189CYA :2007/10/29(月) 21:57:13.79 ID:zqCws+gV0
- 日常で彼を支えていたのはブーンやツンといった学友。
そして何より、陸上部のエースという一時的なポジション。
しかし非日常という現象は、その全てをドクオから剥がしてしまう。
同じ世界の人間だと思っていたブーンやツン。
一方は戦いに身を染めていき、一方は規格外の金持ちだと判明した。
自慢の脚に至っては、ヒート達に比べれば鈍足も良いところである。
故にドクオは恐れている。
戦うのが怖い、逃げるのも怖い、見捨てるのも怖い、関係ないフリをするのも怖い、と。
皆が戦っているのに、自分だけ逃げるのが酷く情けなくて怖い、と。
前を見て戦っているのではない。
ドクオは、常に後ろを見て戦っていたのだ。
(´・ω・`)「…………」
遂にリタイアか、とショボンは直感的に感じた。
確かにこれからの戦いは、今までの戦いに比べて桁違いに厳しいものとなるだろう。
ならばここで縁を切り、元の生活に戻した方が良いのかもしれない、と。
それはそれで良い判断だ、とショボンは思う。
果たしてその予想は――
('A`)「――ショボン」
ドクオが顔を上げた。
そのままゆらりと立ち上がり、こちらを見据える。
- 110: ◆BYUt189CYA :2007/10/29(月) 21:59:03.82 ID:zqCws+gV0
- ('A`)「……これ、誰かに使って欲しいんだ」
右手が上がる。
上向きに広げられた手の平の中には、茶の色を発する指輪が一つ。
ドクオが愛用してきた7th−W『ガロン』だ。
(´・ω・`)「ドクオ……」
('A`)「俺は、もう駄目だから」
駄目、という言葉の意味を知るのは本人だけだ。
しかし何より尊重させるべきは、彼自身の意思。
ドクオが駄目だと言うならば、きっとドクオは駄目なのだろう。
( ゚∀゚)「いいのかよ」
しかし動きを止めたのは、意外な男だった。
( ゚∀゚)「それでテメェはいいのかよ? 本当にテメェでテメェの考えを出したのか?」
('A`)「……俺達の中で一番弱ぇのって俺だろ。
どうせ役立たねぇし、何より俺には戦う理由がなくなった」
(´・ω・`)「理由?」
('A`)「ツンがよ、死んだんだよ。 あの都市ニューソクでの一件で。
結局助けるだの何だの言っててさ、なぁんにも出来なかったんだ」
- 114: ◆BYUt189CYA :2007/10/29(月) 22:01:35.92 ID:zqCws+gV0
- (´・ω・`)「…………」
('A`)「俺は卑怯で卑屈で嫌な奴だ。
ツンがさらわれて、フサギコさんが大怪我をした時……思っちまったんだ。
『今の内にツンを助けることが出来れば、きっとツンはフサギコさんよりも俺を』――ってさ」
はは、と苦笑し
('A`)「ツンがフサギコさんのことを好きだって思ってるって、何となく気付いちまってたんだ。
でもそれを信じようともせず、現状以下の何かにすがってたんだ。 今更それに気付いたよ。
それでよく考えたら、今までの俺の行動っておかしいところだらけだった」
(´・ω・`)「ドクオ……」
('A`)「そんな奴がお前らの仲間やってていいわけねぇよ。
だから、俺はもう戦いを止める……助けたい人も倒したい奴もいないしな」
(´・ω・`)「……異獣は放っておくのかい?」
('A`)「俺なんかがいなくてもお前らがやっつけてくれるだろ?
むしろ俺じゃ足手まといさ。 ガロンだって、戦いが上手い奴に使ってもらった方が嬉しいだろうし」
- 122: ◆BYUt189CYA :2007/10/29(月) 22:03:44.82 ID:zqCws+gV0
- (#゚∀゚)「テメェ……!!」
弾かれるように飛び出したジョルジュが、ドクオの胸倉を掴む。
慌てて止めようとしたショボンよりも、ジョルジュの言葉の方が早かった。
(#゚∀゚)「今更逃げんのか!?」
('A`)「…………」
(#゚∀゚)「護りてぇ奴がいなくなったからって、俺達からも逃げんのか!?
ここまで来といて、全部から逃げんのかよ!?」
(´・ω・`)「ジョルジュ、これはドクオ自身の――」
(#'A`)「解るのかよ!?」
ドクオが、ジョルジュを突き飛ばす。
今にも殴り掛かりそうな姿勢で
(#'A`)「お前に護りてぇ奴なんているのかよ!? それが無くなった悲しみが解るのかよ!?
戦うために作られたジョルジュは良いよな!? 戦うこと自体が理由なんだもんな!」
(#゚∀゚)「……ッテメェ、地雷踏んだぜ……!?」
(#'A`)「ふざけるな! 目的も何もないのに、どうやって命張って戦えってんだよ!
俺はお前らとは違うんだよ!!」
- 127: ◆BYUt189CYA :2007/10/29(月) 22:05:34.40 ID:zqCws+gV0
- 「――ありますよ」
反する声は、思いがけない方角から飛んでくる。
部屋の中にいた三人が、一斉に出入り口へと視線を向けた。
(´・ω・`)「……フサギコ、さん?」
ミ,,"Д゚彡「命を張ってまで戦う理由ならあります。
私とドクオさんの気持ちが一緒ならば、ですが」
一息。
ミ,,"Д゚彡「ツン御嬢様は、生きておられます」
(;'A`)「なっ――」
ミ,,"Д゚彡「都市ニューソクの一件時、彼女と3rd−Wは異獣によって回収されているのです。
この写真にもある通り、彼女は何故か異獣の仲間として我々に刃を向けている」
(;゚∀゚)「んな馬鹿な……だって、それって――」
(´・ω・`)「ジョルジュ、黙って」
- 133: ◆BYUt189CYA :2007/10/29(月) 22:07:47.40 ID:zqCws+gV0
- ミ,,"Д゚彡「私は御嬢様を助けるため、戦いに臨もうと思っています」
(;'A`)「……フサギコさん、怪我はまだ完治してないんでしょう?
どうしてそこまでして戦おうとするんスか? それは死ぬよりも大切なことなんスか?」
ミ,,"Д゚彡「私にとっては御嬢様こそが全てなのです。
皆は世界のために戦うのかもしれませんが、私は彼女のために武器をとります。
ツン御嬢様がいない世界など、何の価値も見出すことが出来ませんから」
ドクオは暗い表情を浮かべるばかりだ。
自分などでは敵わないと解っている故に。
しかし、フサギコは言葉を止めない。
ミ,,"Д゚彡「貴方がどちらを選ぼうとも構いません。
ただ、一緒に戦ってくれるのであれば、そこまでツン御嬢様を想って下さるのならば――」
壁に寄りかかっていた身を剥がす。
潰れていない方の目で、ドクオをしっかりと見つめ
ミ,,"Д゚彡「私は歓迎します。 貴方も護ります。
御嬢様を助けることにも、そして助け出そうとする貴方にも、命を掛けさせてもらいます」
('A`)「……俺は」
ミ,,"Д゚彡「まだ時間はあります。 でも、それまでに答えを出しておいてください」
浅い辞儀を残し、部屋を後にするフサギコ。
その靴音に微塵の乱れもない。
まるで覚悟の証明だと言わんばかりに、規則的な音は段々と消えていった。
- 137: ◆BYUt189CYA :2007/10/29(月) 22:09:19.55 ID:zqCws+gV0
- (´・ω・`)「……僕達も行こうか。 食事はここに置いておくね」
(#゚∀゚)「チッ」
('A`)「…………」
茶色の指輪を握って俯くドクオに、ジョルジュは露骨な舌打ちをぶつける。
部屋の出入り口をくぐる直前、彼はふと振り向き
(#゚∀゚)「戦え、とは俺も言わねぇ。
戦闘なんてのはドクオが言った通り、お前向きじゃねくて俺向きの仕事だ。
向き不向きのジャンルが違うってーのは解ったよ。
もし陸上の大会に出ろなんて言われても、そりゃあ俺だって断るさ。 面倒だし」
(´・ω・`)(それ微妙に例えになってないような)
(#゚∀゚)「でも後悔だけはすんなよ。
コイツはジャンルが変わろうが、絶対についてまわる嫌らしい野郎だからな。
気ィつけな」
へ、と鼻を鳴らしつつ部屋を出て行くジョルジュ。
入れ替わるように、ショボンが顔だけ覗かせ
(´・ω・`)「あれでも君のことを心配しているみたいだ。
僕も彼と同じような言葉を君に贈るよ。 強制はしないけど、よく考えてね」
- 140: ◆BYUt189CYA :2007/10/29(月) 22:10:52.99 ID:zqCws+gV0
- 「おい、ショボン行くぞ! 腹減った!」
「はいはい。
いや、しかし君が人の心配をするとは……今年最大の大発見だね」
「うるせぇ。 ただヘタレが苛ついただけだっつの」
「本当に? それ本心から言ってる?」
「うーるーせーぇー!! 今後一切この話はすんなよ! 絶対だかんな!?」
「解った。 するよ」
「氏ね!!」
騒がしい声が遠ざかっていく。
暗い部屋、一人取り残されたドクオは身動きすらしない。
('A`)「…………」
ただ手に握る指輪を、虚ろな目で見つめるのみであった。
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