( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです
- 11 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 20:16:06.02 ID:5yr5SZ550
- 第一話 『彼女』
「行ってきますお!」
朝。
眩しい光を発する太陽が、その顔を完全に出し終わった時間。
日に照らされた道路に少年の声が木霊した。
J( 'ー`)し「気をつけるんだよ」
( ^ω^)「おっおっ、大丈夫だおー」
優しい母親の見送りを受け、彼――内藤ホライゾン――は元気良く家を飛び出した。
続いて出てくるのは
川 ゚ -゚)「内藤、あまりハシャぐと転ぶぞ」
クー。
そして
从;゚∀从「待って下さいよー!」
ハインリッヒだ。
二人は先に歩き出すブーンの元へと小走りで駆け寄っていく。
- 14 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 20:17:58.19 ID:5yr5SZ550
- 二〇五八年三月中旬。
あの戦いから一年四ヶ月。
それだけの月日が経っていた。
現在、ブーンは高校を卒業してもうすぐ一ヶ月。
たまにアルバイトをする以外は、ドクオ達と遊び呆けている生活だ。
クーも同じく。
アルバイトが無い日はハインリッヒの面倒を見たり、ブーン達と遊んだりと
それなりに充実した毎日を送っている。
一番変化があったのはハインリッヒだ。
今や彼女に車椅子は必要なく、ブーンやクーのサポートも要らない。
自分の力で歩き、自分の声で感情を表すことが出来るようになっている。
ただクーの厳しい教育の賜物なのか、誰に対しても敬語で話すようになってしまっていた。
最近はブーンに教えてもらう少林寺拳法に夢中らしい。
今日、三人は揃ってバーボンハウスへと行く予定だ。
理由は暇だから。
何とも平和に日常を満喫しているようである。
- 15 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 20:19:46.98 ID:5yr5SZ550
- 暖かくなってきた風を身に浴びながら、しばらく並木道を歩いていると
( ^ω^)「おっ、ドクオー!」
('A`)「うーっす」
ドクオが前方をのんびりと歩いてるのが見えた。
茶に染めた少々長めの髪、そして黒く光るサングラス。
以前と比べてだいぶ様子が変わった彼だが、中身は相変わらずだ。
( ^ω^)「今日もツンと一緒じゃないのかお?」
(;'A`)「うっせぇ馬鹿……俺の心の傷を抉るんじゃねぇ」
あれから一年以上。
ドクオのヘタレが災いしているのか、ツンの性格に問題があるのか――
驚くべきことに、彼とツンの関係はほとんど変わっていなかった。
ドクオ的には必死にアプローチを仕掛けているのだが、なかなかツンの心に響くことは無い。
川 ゚ -゚)「君は変わらないな」
(#'A`)「うるせぇうるせぇ!
お前らみたいなバカップルに言われると尚更ムカつくんだよ!」
- 19 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 20:21:00.95 ID:5yr5SZ550
- 从;゚∀从「お、落ち着きましょうドクオさん!
きっと将来的にはハッピーになれるはずです! ハッピーに!」
(*'A`)「ハインリッヒは優しいよなぁ……どう? 俺と付き合う気ない?」
从 ゚∀从「ないです」
体育座りで泣き始めたドクオを置いて三人は歩く。
途中から裏道に入ってそのまま真っ直ぐ。
すると、暗い道に一際目立つ建物が見えてきた。
白色の壁と扉が美しい『バーボンハウス』。
新しくなったその扉を開き、遅れてきたドクオと共に三人は店内へと足を進める。
- 20 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 20:22:09.17 ID:5yr5SZ550
- ( ゚∀゚)「うぃ、いらっしゃい――って内藤達か」
従業員用の服を着ているジョルジュが出迎える。
金髪にピアスと、その雰囲気は不良そのものだが
半年前から、大人になったのを自覚したのか本格的に働くようになったのだ。
しかし相変わらずショボンとの相性は悪いらしい。
(´・ω・`)「やぁ、いらっしゃい」
( ^ω^)「久しぶりだおー」
( ゚∀゚)「おい、とっとと座れよ。 注文はどうするんだ?」
ジョルジュが乱暴な口調で促がした。
三人は小さなテーブルに座り、それぞれ好きなジュースを頼む。
( ゚∀゚)「コーヒー、オレンジそれぞれ一つと……えー、アップル二つだってよー」
(´・ω・`)「言葉遣いがよくなれば言うことないんだけどね」
( ^ω^)「まぁまぁ、自分から働くようになっただけでも良しとするお」
- 21 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 20:23:27.74 ID:5yr5SZ550
- ( ゚∀゚)「俺様ももう二十一だしなぁ……そろそろ身の振り方っつーのも考えなきゃと思ってよ」
頭をポリポリと掻きながら言う。
それに対して驚きの表情を見せたのはドクオだ。
(;'A`)「二十一歳……全然そう見えないぞ」
( ゚∀゚)「そうだろ? 何せ大人すぎるしな」
('A`)「ひょっとしてギャグで(ry」
从 ゚∀从「おかわりです!」
川;゚ -゚)「早いな」
( ^ω^)「おかわり自由だからいいんだけど……ショボンはそれで大丈夫なんだお?」
(´・ω・`)「夜は兄者さん達が稼いでくれてるしね。
まぁ、今のところは問題ないよ」
しばらく前から『バーボンハウス』は営業方針を変えている。
朝〜夕方にかけてはショボンとジョルジュが、夜〜朝にかけては兄者と弟者が
それぞれ交代に店を動かすようになったのだ。
- 22 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 20:24:46.94 ID:5yr5SZ550
- 前者は喫茶店。
後者はバー。
『バーボンハウス』は二つの顔を持つようになったのである。
現在時刻は午前十時過ぎなので喫茶店モードだ。
穏やかな性格のショボンが主を受け持つ、癒しの空間。
ちなみに飲み物に限り飲み放題で
あまり自由に使える金を持っていないブーン達にとっては、格好の雑談場所であった。
そこでブーンが気付く。
( ^ω^)「あれ? 兄者さんと弟者さんがいないお?」
奥のテーブルを見ながら言う。
いつもなら、あの場所で二人揃ってPCをイジっているか寝るかしているはずなのだが
今日はその姿が見えないのだ。
(´・ω・`)「あぁ、彼らはちょっと出かけてるんだ」
('A`)「あの引き篭もり兄弟が?」
(´・ω・`)「うん、モララーさんの会社に行ってるはずだけど……」
( ^ω^)「モララーさんの……?」
从 ゚∀从「おかわりです!」
川;゚ -゚)「早いな」
- 23 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 20:26:25.92 ID:5yr5SZ550
- そこは広い部屋だった。
あまり物が置かれていない故に余計に広く感じてしまう空間。
最奥に大きなデスク。
中央には応接用のソファ。
天井には小型のシャンデリア。
壁には数点の絵画。
( ・∀・)「……わざわざ来てくれるとは御苦労なことだ」
社長用の椅子に座り、デスクに肘を立てて座っているのはモララー。
オールバックに藍色のスーツ姿。
その傍らには女性用スーツを着たジェイルが直立不動で立っている。
モララーの視線の先には二人の男。
服装を除けば、両者は鏡合わせのようにそっくりであった。
(´<_` )「流石は武力会社といったところか……セキュリティが半端ないな」
と感嘆の声を漏らす弟、そして隣にいる兄が
(;´_ゝ`)「何故に俺だけずっと銃を突きつけるんだ、あの黒服の男は?」
背後の大きな扉を睨みながら言う。
( ・∀・)「さぁ? 不審者には最大限の警戒を、としか言ってないのでね」
座れ、と顎で促がす。
二人は少し緊張した様子で応接用のソファへ腰掛けた。
モララーはそれを確認した後に立ち上がり、流石兄弟の正面にあるソファに座る。
- 24 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 20:27:51.03 ID:5yr5SZ550
- ( ・∀・)「ジェイル君、適当にコーヒーか何かを」
爪゚ -゚)「解りました」
ジェイルは何も聞くことなく部屋から出て行った。
沈黙が訪れる。
しばらくして、モララーは静かに口を開いた。
( ・∀・)「……で? 何の用でここまで?」
(´<_` )「やっと、報告出来るほどの情報を集められた」
弟者がバッグからノートPCを取り出しながら言う。
対して兄者はテーブルの上にある菓子に手を伸ばした。
二人は確かに見分け辛いが、その行動と思考はまったくの逆だ。
故に顔が同じでも何となく違いが解ったりする。
(´<_` )「この一年と半年……俺はクルト博士について徹底的に調べ上げた」
( ´_ゝ`)「ねぇ、俺は? 俺は何もしてないの?」
PCの電源を入れながら話を始める。
(´<_` )「重要だと思われていた日記に出てくる『彼女』。
この女性については特に入念に、な」
( ・∀・)「なるほど」
- 27 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 20:29:15.35 ID:5yr5SZ550
- クルト博士の日記。
前回の戦いにて入手した、彼の本心が記されていた書物だ。
そこには、名として出ないものの『彼女』という単語が後半に頻出していた。
クルト博士の仲間か助手にして、彼とは違う行動を起こそうとしていたらしいが――
(´<_` )「幾つか危ない橋を渡ったよ……それだけガードが硬い情報だった」
( ´_ゝ`)「その橋を渡る度に俺のPCがぶっ壊れかけたり、殺されかけたりしたけどな」
( ・∀・)「その口調から察するに手に入れたわけだね? 彼女に関しての情報を」
(´<_` )「こればかりはネットや電話でやり取りするわけにはいかなかったからな。
突然の訪問で悪いとは思うが……少々の時間を俺達に割いてくれ」
( ・∀・)「構わんよ。 どうせ今日は暇だったしね」
(´<_`;)「前から思っていたんだが、アンタ仕事はないのか?」
( ・∀・)「ははははははは」
どうやら聞いてはいけない話題らしい。
不気味に声だけ笑っている男を前に、弟者はノートPCを操作する。
画面に映し出されるのは小さな画像。
それをモララーに見えるように動かす。
- 28 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 20:30:35.56 ID:5yr5SZ550
从'ー'从
( ・∀・)「ふむ……この女性が?」
(´<_` )「あの日記に出てきた『彼女』だ」
( ´_ゝ`)「白黒でしかも不鮮明なのは勘弁してくれ。
これで一番綺麗な画像だったんだ」
( ・∀・)「で? まさかこの画像を見せるためだけに来たわけではないだろう?」
(´<_` )「あぁ、もちろんだ。
俺が手に入れた情報は三つ」
弟者が指を三本上げる。
まず一本を折った。
(´<_` )「まず彼女は……存在が妙なんだ」
( ・∀・)「妙、かね?」
(´<_` )「あらゆる手を使って彼女の経歴を調べたんだが――とりあえず見てくれ」
弟者は再びノートPCを操作する。
次にモララーに見せた画面には、既に画像は消え失せており
代わりに表のようなウインドウが表示されていた。
- 30 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 20:32:10.46 ID:5yr5SZ550
- 二〇四七年 二月
クルト=リルロンド設立『VIP研究所』の研究員として採用される。
二〇四七年 三月
その驚異的な技術と発想を認められ、クルト博士直属の助手となる。
クルト、リトガーに並んで研究所の最大権力者として君臨。
二〇四八年 五月〜八月
最強生物開発案Wが認められる。
クルト博士の研究は一気に躍進する。
尚、この頃から不審な動きが報告されるようになる。
????年 ?月
突如として行方をくらませる。
直後、研究内容の概要が世間に暴露される。
クルト博士は拳銃自殺。
リトガーは逃走後、行方不明。
- 32 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 20:33:32.65 ID:5yr5SZ550
- それは経歴を簡単な表にしたものだった。
彼女がクルト博士の計画に携わった時期から行方不明になるまでの、簡単な出来事が記されている。
(´<_` )「これ以降は言わずとも、あの戦いに繋がるわけだ。
で……この経歴表を見て思うことはあるか?」
( ・∀・)「ふむ……簡潔過ぎて内容に関しては文句を言い様がないが
一つだけ問いかけるよ?」
彼は顎に手をやり、言った。
( ・∀・)「これ以前の経歴は無いのか、と」
(´<_` )「無い」
即答。
まるで問いかけられることが解っていたかのような反応だ。
それを聞いたモララーは口に笑みを浮かべる。
( ・∀・)「成程、ね……」
(´<_` )「考えられる限りの方法で調べたのだが、これ以前の情報はまったく入ってこなかった。
情報隠蔽レベルが高ければ仕方の無いことかもしれないが、俺はその線は無いと思っている」
- 34 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 20:34:56.42 ID:5yr5SZ550
- ( ・∀・)「では君は、彼女が何者だと予想している?」
(´<_` )「この世界の人間ではない、と予想した」
普通の思考を持つ人間ならばこの言葉は思いもしないだろう。
しかしこの場に集った者達は生憎、常識という枠組みを超えられる体験をしていた。
( ´_ゝ`)「突然、二〇四八年に出現したことを考えて
彼女は何らかの方法・理由でこちらの世界に飛んできた、と思ったんだ」
(´<_` )「ここで気になるのが
『最強生物開発案Wが認められる。
クルト博士の研究は一気に躍進する』という項目。
これは『彼女』が発案したものだが――」
( ・∀・)「それほどの発想を得られる根本としての技術を持っている、という証拠に繋がるね」
( ´_ゝ`)「そゆこと。
つまり『彼女』のいる世界は、この世界よりも技術発達してるっぽいんだ」
( ・∀・)「ふむ……何が目的なのだろうね」
(´<_` )「それが一番の疑問なんだ。
何故、『彼女』がいた世界よりも劣っているこの世界に来たのか」
( ´_ゝ`)「そして何故、クルト博士の研究に携わったのか」
- 37 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 20:36:23.35 ID:5yr5SZ550
- ( ・∀・)「あぁ、それなら解るよ」
(;´_ゝ`)「まことかっ!」
兄者の『Really?』に対し、モララーは笑みをこぼす。
( ・∀・)「簡単な話だよ。
まず、彼女が何故クルト博士と接触したか。
ヒントはこれだ」
片腕を掲げる。
その細い指の先には黄色の指輪が輝いていた。
(´<_` )「……ルイル?」
ルイル。
名前しか判明していない、謎の物質だ。
モララーや流石兄弟の指に装着されている指輪も、それで構成されているらしい。
『らしい』と言ったのは理由がある。
この指輪を作った人間は、既にこの世にいないのだ。
作った者の名はクルト=リルロンド。
彼がこの指輪の開発者であり、そしてクー、ジョルジュ、ハインリッヒの生みの親。
そして前回の戦いの発端を作った人物。
- 41 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 20:37:55.70 ID:5yr5SZ550
- ( ・∀・)「このルイル……軽く調べてみたが、やはりこの世界には存在しない物質だったよ」
( ´_ゝ`)「ん? おかしくないか?
『彼女』はわざわざルイルが無いこの世界に来ながら、すぐにルイルの研究に携わった。
それはつまり、その存在を最初から知っているということだろう?」
(´<_` )「何故、在る世界から無い世界へ……?」
( ・∀・)「思考のベクトルを逆にしたまえ。
『何故、彼女はルイルの無いこの世界へと来ることとなったのか?』
そう考えれば答えは明確だ」
その言葉で弟者は気付いた。
(´<_`;)「『彼女』は自分の意思でこの世界に来たんじゃないのか……?」
( ・∀・)「そう考えるのが自然だと思うよ。
『彼女』はおそらく、事故か何かでこちらの世界に渡ってきたのだよ……不本意にね」
( ´_ゝ`)「じゃあ、ルイルを研究してるってことは――」
( ・∀・)「そこまでは解らない。
いや、予想なら幾らでも出来るが……それを言うには時期尚早だ」
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