( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

  
83 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:09:20.80 ID:5yr5SZ550
  
第二話 『襲撃 Ver/Dusk』

五時三十四分。
そろそろバーボンハウス『昼バージョン』が終わりになろうという時間。
カランカラン、と音を立てて喫茶店の扉が開かれた。

(´・ω・`)「ようこs――あ、お帰り」

(´<_` )「ただいま」

入ってきたのは客ではなく、黒いショルダーバッグを持った双子の兄弟だった。

( ゚∀゚)「おいおい、時間ギリギリじゃねぇか。
     何処で油売ってたんだ?」

(*´_ゝ`)「うふふ、それは秘密」

( ゚∀゚)「キメェwwwww」

帰ってきた弟者は、すぐに店の奥にある専用のテーブルを陣取る。
ノートPCを開き、ケーブルを接続。
そのまま作業に没頭し始める。

対して兄者は、手を離せないであろう弟のために
バーボンハウス『夜バージョン』のための準備を始めた。



  
86 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:10:11.51 ID:5yr5SZ550
  
(´・ω・`)「何か作業があるんなら、今日は休んでもいいんじゃない?」

( ´_ゝ`)「そういうわけにもなぁ……店をフル活動させても四人分の生活費ギリギリだし」

( ゚∀゚)「テメェが人一倍食うからじゃねぇか?」

(´・ω・`)「それは君だよ」

蝶ネクタイを緩めながら

(´・ω・`)「さて、後は流石兄弟さんに任せて……僕は寝るとするよ」

( ゚∀゚)「メシはどうすんだ?」

(´・ω・`)「とにかく眠い。 食事は朝にするよ」

欠伸を一つしながら、ショボンは店の奥へと消えていった。



  
89 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:11:03.23 ID:5yr5SZ550
  
欠伸を一つしながら、ショボンは店の奥へと消えていった。

( ´_ゝ`)「随分疲れてそうだな……お前、ちゃんと手伝ってる?」

( ゚∀゚)「確かにアイツはいけ好かねぇが、メシのためなんだからシッカリ働いてるぞ」

( ´_ゝ`)「お前のシッカリってのはどの程度だ」

( ゚∀゚)「適当に」

( ´_ゝ`)「お前最悪だな」

( ゚∀゚)「テメェに言われたかねぇよ」

(´<_` )「どっちもどっちだろ」

( ´_ゝ`)「「…………」」(゚∀゚ )

ガシリ、と肩を抱き合う二人。
こうしてバーボンハウスは、その表情を変えていく。
昼の喫茶店から、夜のバーへ。



  
91 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:12:14.54 ID:5yr5SZ550
  
「あ、社長」

『都市観察課』という札が掛かった大きな部屋。
デスクが並び、様々な服装の人間が忙しそうに仕事をしていた。

モララーがその部屋に入って丁度五秒。
やはり忙しそうに資料を持って歩いてきた部下に、ようやく気付かれた。

( ・∀・)「やぁ、頑張っているかね?」

「え、えぇ……見ての通りですが」

( ・∀・)「それは良かった。
      良かったついでに、一つ頼まれ事を受けて欲しいのだが……」

「解りました。 では総括長を呼んできます」

慌しく駆けていく社員。
その後姿を見るモララーが『転べ転べ』などと思っているとは露知らず。



  
92 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:13:30.21 ID:5yr5SZ550
  
しばらくして、髭を生やした総括長がやってきた。

|;;;;;|:: (へ) ,(へ) |シ「おや社長、騒がしい部屋ですがどうぞどうぞ」

( ・∀・)「やぁ、ポリフェノール。
      相変わらず顔が大きいね」

|;;;;;|:: (へ) ,(へ) |シ「ほほほ、社長こそ相変わらず偉そうですな」

二人は起業当初からの仲であった。
他の者ならば恐れて言えぬことを、お互いに言い合えるほど。
部下の働き振りを目に入れながら応接エリアへと先導される。

|;;;;;|:: (へ) ,(へ) |シ「さて、社長自らの頼みとなると……相当に大きな仕事ですかな?」

( ・∀・)「いや、別に。
      これはまだ確証を得ていない――というか、得てもらうための仕事だ」

|;;;;;|:: (へ) ,(へ) |シ「成程。 まだ部下達には知らせられない情報、と」

( ・∀・)「物分りが良くて助かるよ。
      では、適当にコレを探してきて欲しい」

懐から一枚の紙。
そこには渡辺の顔が写っていた。



  
93 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:14:35.30 ID:5yr5SZ550
  
|;;;;;|:: (へ) ,(へ) |シ「ふむ……社長の好みでは無さそうですが?」

( ・∀・)「ははは、それも問題だね。
      いや、別に好みじゃなくて面倒だから君に頼むわけじゃないよ?」

|;;;;;|:: (へ) ,(へ) |シ「ほほ、解ってますって」

渡辺の顔部分をモララーの方へ向けながら

|;;;;;|:: (へ) ,(へ) |シ「では、この女性の居所を探すということでよろしいですね?」

( ・∀・)「出来れば行動パターンや何をしているのか、も解れば尚良い。
      だが決して無茶はしないでほしい。
      この会社の業務に見合うような人材をスカウトするのも大変なのでね」

|;;;;;|:: (へ) ,(へ) |シ「では慎重に、かつ確実な調査を」

( ・∀・)「方法などはそちらに任せるよ。
      だが憶えておきたまえ。
      私は良い報告しか待っていないことを、ね」

|;;;;;|:: (へ) ,(へ) |シ「了解しました」



  
94 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:16:05.64 ID:5yr5SZ550
  
写真を渡して部屋を出たモララー。
その出入り口の傍らで待機していたのは

爪゚ -゚)「御主人様、今日の御仕事です」

女性用スーツを着ているジェイルだ。
その華奢な両手に抱えているのは大量の紙束。
モララーはそれを一瞥し

( ・∀・)「ふむ、私は忙しいのでジェイル君に任せる」

爪゚ -゚)「解りました」

言葉と共に胸部が展開。
開いた暗闇の中に紙束を詰め込んだ。
明らかに容量オーバーに見えるも、紙束は闇へと流れるように消えていった。

( ・∀・)「……中は空洞なのかね? それとも四次元?」

爪゚ -゚)「秘密です」

( ・∀・)「ふふふ、いつか胸部をじっくりと見てみたいものだね。
      胸部だよ胸部……ついでにサイズも……ふふふふふ」

ジェイルは無視をした。

( ・∀・)「いつの間にスルーなどという高等テクニックを……出来れば夜の方のテクも――」

ジェイルは更に無視をして、更には主人を置いて歩いて行ってしまった。



  
95 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:17:40.45 ID:5yr5SZ550
  
「兄者さーん、こーんばーんはー」

( ´_ゝ`)「おーう、らっしゃーい」

ここはバーボンハウス『夜バージョン』だ。
昼に比べ明かりを削っており(ただ単に電気代節約のため)
怪しい雰囲気を醸し出している。

来る客のほとんどは兄者目当てだ。
何故なら実はこの間抜けに見える兄者、意外と頭の回転が速い。

カウンターに居座り、愚痴や相談を持ちかける相手を
なんと三人ほどまで同時に相手をすることが可能なのだ!

(´<_` )(まぁ、元々が俺より頭良いしなぁ)

「聞いてくれよ兄者さん。 俺の上司ったらさー」

( ´_ゝ`)「辞めたらよくね?」

「鬼才現る!」

(´<_`;)(むしろ客が馬鹿過ぎて兄者の頭が良く見えるだけか……?)



  
96 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:18:45.74 ID:5yr5SZ550
  
いつもなら、そのとんでも発言に突っ込むのが弟者の仕事だ。

兄者の奇抜な案と、弟者の普通な案。
それらを聞いた客は自分が構ってもらえたと思い、満足そうに帰っていくわけだ。

しかし今日の弟者は、いつものテーブル席を陣取ってPCを操っている。
クルト博士の情報を探るために。

(´<_` )「ふーむ……」

顎に手をやり考える。
ネットを駆使して出てくる情報は、やはり外面的なものばかりだ。
今知りたいのは内面情報。

彼がブログなどをやっていればヒントくらいは得られただろうが
残念ながら、それは存在しない(当たり前だが)。

(´<_` )「やはり研究所をちゃんと調査しないと駄目、か」

前回の戦いの後、あの白い巨塔は取り壊されていた。
銃弾などで傷だらけの上、『神の裁き』による衝撃、そして対ハインリッヒ戦での傷跡。
内部こそは無事なものの、いつ倒壊してもおかしくなかったらしい。

今、あの塔付近は立ち入り禁止になっているはずだ。
研究所部分はそのまま残っているらしいが――



  
97 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:20:03.34 ID:5yr5SZ550
  
そこで、テーブルにコーヒーのカップが置かれた。

( ´_ゝ`)「あんまり煮詰めるとアレになるぞ、アレ」

(´<_` )「どれだよ」

( ´_ゝ`)「……飴?」

(´<_` )「真面目に問い返したのが馬鹿だった」

( ´_ゝ`)「まぁまぁ……で、何をしているんだ?」

問いかけに、弟者はPCの画面を見せる。

(´<_` )「見ての通り、やはりネットじゃ限界がある」

( ´_ゝ`)「んじゃ、やっぱり研究所?」

兄者も同じ考えを持っていたようだ。
というか、こちらの思考さえも読んでいたような。

(´<_` )「んー……明日にでもモララーさんに許可もらって行ってみよう」

( ´_ゝ`)「おk、把握した」



  
98 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:20:56.84 ID:5yr5SZ550
  
だがな、と兄者は付け加える。

( ´_ゝ`)「善は急げって言葉知ってる?」

懐から取り出したのは携帯電話だ。
何故かストラップとして人参が付いているが、弟者は敢えて無視を決め込む。

( ´_ゝ`)「ぽちっとな」

耳に当てる。
そのまま数秒。

( ´_ゝ`)「…………」

彼は一言も話すことなく通話を切った。
折りたたみ、出した時と同じように懐へ入れる。

(´<_` )「どうした?」

( ´_ゝ`)「そういえば通話料払ってない」

(´<_` )「……流石だな」

彼を一瞬でも尊敬しかけた弟者は自分を恥じた。



  
99 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:22:17.19 ID:5yr5SZ550
  
( ´_ゝ`)「あ、そうだ。
      バーボンハウスの電話を使えばいいじゃん」

(´<_` )「確か一ヶ月前から止められてなかったか?」

( ´_ゝ`)「あー……ショボンが『どうせ使わないし』とか言ってたっけ。
      最悪だな、あの野郎は」

(´<_` )「その台詞を吐くアンタが最悪だろ」

「兄者さーん」

( ´_ゝ`)「おk、把握した。 悩みなら俺に全部ぶちまけやがれ」

カウンターに戻る兄者の後姿を見ながら、弟者は溜息を吐く。

この一年と半年。
随分と見違えた。
ただの迷惑男だった彼が、今では比較的真面目に業務をこなしている。
責任感も垣間見えるし、先ほどのように鋭い思考も見せる。

(´<_` )「ただ問題なのは……クルト博士絡みの時だけなんだよなぁ」

他の話。
例えば政治や天気の話などの世間話になると、彼の人格は今とはまったく違ったものとなる。
魔法少女や珍妙などと呼ばれるアレだ。



  
100 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:23:12.56 ID:5yr5SZ550
  
(´<_` )(…………)

弟者は兄者の過去をあまり知らない。

生まれてからしばらくし、離れ離れになり、自分は良い育て親と巡り合えた。
だから礼儀と言うモノを多少なりとも知っているし、常識も得ている。
だが兄者は、聞いた話によると孤児院にいたらしい。

そこで何を思い、何を得たのかは解らない。
もしかしたらその時点であの性格だったかもしれないし、違うかもしれない。

ただ一つ言えるのは、彼がクルト博士を心底尊敬しているという点だ。
PCの知識なども博士から得たのだろう。

だからこそ兄者は博士に感謝しているし、博士のことになると本気で取り組もうとする。

思い、弟者は苦笑した。

(´<_` )(俺は兄者と違ってのうのうと平和に暮らしてきた……。
       だからせめて、本気の兄者を支えるくらいはしないとな)



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