( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

  
101 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:24:15.30 ID:5yr5SZ550
  
新たな決心。
背伸びをし、気分を入れ替えるために兄者が淹れてくれたコーヒーを一口。

(´<_`;)「ぶはっ!?」

( ´_ゝ`)「御覧下さい、アレが砂糖たっぷりコーヒーを飲んだ弟の反応です」

(´<_`#)「…………」

(;´_ゝ`)「……ごめんなさい」

(´<_` )「……はは、せっかく人が色々と考えてたのに、この兄は」

(;´_ゝ`)「?」

(´<_` )「いや、これくらいの悪戯ならいいさ……俺もそろそろ店の方を手伝うよ」

( ´_ゝ`)「情報捜索の方はいいのか?」

(´<_` )「とりあえず研究所に行くまではPCも役立ちそうにない」

( ´_ゝ`)「ふーん……把握した」

カウンターに入り、飲み物などの準備をする弟者。
椅子に座り、客の愚痴を聞く兄者。
こうしてバーボンハウスの夜は更けていった。



  
103 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:25:33.65 ID:5yr5SZ550
  
翌日。
朝日が昇り、人々が活動を開始しようかという時間。

FC社の最上階に位置する社長室の扉が開かれた。
入ってきたのは二人。

( ・∀・)「ふぅ、会議というのも存外つまらないものだね。
      ジェイル君、御茶を頼むよ」

爪゚ -゚)「解りました」

( ・∀・)「さて、次の予定は……と」

懐からメモ帳を取り出す。
黒いカバーのそれは、一目見ただけで使い込んでいることが解った。

( ・∀・)「ん?」

携帯を見る。
画面には『着信あり』の表記。
会議中に掛かってきたものだった。
見れば、それはショボンの携帯番号。

( ・∀・)「これは珍しい……彼が私に何の用なのだろう?」



  
104 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:26:35.84 ID:5yr5SZ550
  
ボタンをプッシュし、耳へと当てる。
プルル、という音がしばらく鳴り続けた。

(´・ω・`)『あ、モララーさん?』

( ・∀・)「やぁ、ショボン君、久しぶりだね。
      去年行ったスキー旅行以来ではないかね?」

(´・ω・`)『えぇ、そうですね……御久しぶりです』

( ・∀・)「さて、先ほど電話を掛けてきたようだが私に何か用かな?」

(´・ω・`)『あ、僕じゃなくて流石兄弟さんが貴方に用があるらしくて。
       ちなみに僕の携帯を使ったのは、兄者さんの携帯使えないからです』

( ・∀・)「どうせ通話料不払いとかだろう?」

(´・ω・`)『当たりです。 では代わりますね』



  
105 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:27:40.14 ID:5yr5SZ550
  
少しの沈黙。

( ´_ゝ`)『やっほー、モララー? 俺俺、俺だよ』

( ・∀・)「むむ、その声は……タケシかな?」

( ´_ゝ`)『そそ、息子のタケシだよー。
      突然なんだけど今から言う口座にお金振り込んで――』

直後、打撃音が響いた。
続いて床に誰かが倒れる音と、『馬鹿じゃねぇの?』というジョルジュの声。

( ・∀・)「おぉ、ナイスパンチ」

(´<_` )『いや、キックだ』

弟者の声。
どうやら兄者は強制退去させられたらしい。

(´<_` )『で、突然で悪いんだが……研究所へ入るための許可が欲しい』

( ・∀・)「何か手掛かりでも?」

(´<_` )『それを見つけに行くんだ』



  
118 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:41:52.42 ID:5yr5SZ550
  
( ・∀・)「成程……解った、許可を出そう。
      その代わり、私も一緒に行って良いかね?」

(´<_` )『アンタも来るのか? ってか、社長が自分の城である会社を簡単に空けても――』

( ・∀・)「はははははは」

(´<_` )『……OK、把握した。
      じゃあ、現地集合で良いか?』

( ・∀・)「何、遠慮する必要は無い。
      私が車を出すから、一緒に行こうではないかね」

(´<_` )『太っ腹だな。 解ったよ』

通話を切る。
片手で携帯を折りたたんで懐へ。
一連の流れるような動作の後、彼はジェイルの方を向きながら

( ・∀・)「ジェイル君、急用が出来た。 もうお茶は――」

爪゚ -゚)「…………」

視線の先には、湯気が立ち上る湯飲みを盆に乗せたジェイルの姿。
その目はモララーの方をじっと見ている。



  
120 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:43:47.91 ID:5yr5SZ550
  



( ・∀・)「…………」

爪゚ -゚)「…………」



( ・∀・)「……頂こうか」

爪゚ -゚)「美味しさには自信があります」

手渡された湯飲みを持ち

( ・∀・)「私は良い秘書を持って幸せだよ」

と頷くのであった。



  
121 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:45:33.41 ID:5yr5SZ550
  
都市ニューソクから離れた地域。
人里離れた山の中。
この一角にクルト博士の研究所があった。

真一文字に切り裂かれた黒いゲートの前に、幾つかの車両が止まる。
扉が開き、数人の人影が出てきた。

星と橙色が重なっている空が見える。

(´<_` )「いつかの時と、あまり変わってないな」

( ・∀・)「状況を保存しておきたかった、というのが大きいね。
      ここは存在自体が大きな資料だよ」

( ´_ゝ`)「よくワカンネ。 とりあえず研究所に行こう」

歩き出す兄弟。
追いながら、モララーは背後の部下達に待機命令を出した。
その傍らにはリュックを背負ったジェイル。



  
122 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:46:54.58 ID:5yr5SZ550
  
( ・∀・)「……その中身は?」

爪゚ -゚)「お弁当です。
     私には空腹という概念を理解することは出来ませんが、必要かと思いまして」

( ・∀・)b「流石ジェイル君だ。 これで作業中にお腹が空いても安心だね」

爪゚ -゚)「冗談ですが何か」

ジェイルが身を動かす。
背後のリュックから、何故か金属が動き擦れる音が響いた。

( ・∀・)「……最近、私は君に嫌われているような気がするのは何故かと問おう」

爪゚ -゚)「それは思い過ごしでしょう。
     私、様々な媒介を通じてより人間らしくなれるよう情報を常に収集しておりますので。
     おそらくはそれから来る勘違いではないかと思いますが」

( ・∀・)「うーむ……」

爪゚ -゚)「さて、行きましょうか。
     弟者様と兄者は既に先へ行っていますよ」

( ´_ゝ`)「今、呼び捨てにしなかった?」

爪゚ -゚)「いえ、別に」



  
123 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:48:04.93 ID:5yr5SZ550
  
一キロメートルほどの滑走路のような道を歩く。
かつてここには、機械の兵士がひしめいていた。
残骸は全て撤去されているも、その地には戦闘の傷跡が残されていた。

( ・∀・)「約一年半、か……懐かしいね」

(´<_` )「あぁ、そうだな」

( ・∀・)「ここでジェイル君と運命的な出会いを果たしたのだよ?」

爪゚ -゚)「あまり記憶にありませんが……酷く屈辱的な敗北をした、と記憶素子に残されております」

( ・∀・)「その敗北の味を覚えておきたまえ」

言いながら懐を探る。
内ポケットから取り出したのは、タバコの箱だった。

(´<_` )「ん? タバコなんて吸ってたか?」

( ・∀・)「昔は吸っていたが、今はまったくだよ」

一本だけ取り出す。
口にくわえ、そのまま火をつけずに歩き出す。

( ´_ゝ`)「?」



  
126 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:49:30.56 ID:5yr5SZ550
  
( ・∀・)「感傷的になった時は、こういう風にくわえていないと……ちょっとね」

(´<_` )「感傷的?」

( ・∀・)「私は直接、クルト博士との面識はない。
      が、その心情や決意などは資料からある程度は解っている。
      人間、必要以上に踏み込むと感情移入してしまうものなのだよ」

(´<_` )「アンタが感情移入? そりゃ想像出来ないな」

( ・∀・)「はは、私だって人だよ……そして彼も、ね」

足を止める。
彼らの目の前にあるのは、廃屋と化した研究所。
おそらくは全ての始まりとなった場所。

過去に一度、兄者とクーが精査しているが
今の知識と照らし合わせれば、きっと何か手掛かりが見付かるだろう。
それを期待しての行動だった。

(´<_` )「ま、今回は内部のコンピュータにも触れられそうだしな。
      色々と情報を得られると良いんだが……」

脇にノートPCを抱えた弟者が、廃材の欠片を踏み潰しながら内部へと身を進める。
内部は外の暗さも相まって深い暗闇。
モララーがスイッチを入れると、研究所内部に明かりが付いた。
目の前に広がった景色は、研究所というよりも美術館を髣髴とさせる。


127 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:50:43.61 ID:5yr5SZ550   
( ・∀・)「こういう時もあるかと思い、研究所にあった発電装置を修理しておいた」

( ´_ゝ`)「流石社長さん」

明かりが照らす内部を歩いていく。
そこは、十年前の残滓が残る空間だった。
破れ汚れた紙が散らばり、用途不明の小さな機械
ペンや、壊れ歪な形をした机、ファイルや割れたカップなども落ちている。

( ・∀・)「約五十の人間が、この研究所で活動していたらしい」

(´<_` )「それらは今何処に?」

( ・∀・)「不明だ。 その分の資料も処理されているらしく、何も残されていない」

(´<_` )「ん? おかしくないか?
      処理出来る時間があったんなら、何でこの研究所にまだ資料が残ってるんだ?」

( ・∀・)「人事資料の処理時間しかなかったか、もしくはその他の資料は処理不要だった。
      あと考えられるのは――」

( ´_ゝ`)「わざと残した、か」

( ・∀・)「そういうことだよ。
      それを指示したのがクルト博士か、リトガーかは解らぬがね」



  
129 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:52:15.19 ID:5yr5SZ550
  
研究所内の作りは簡単なものだった。
正面玄関から長く広い廊下が真っ直ぐに伸び、各部屋が枝状に広がっている。
二階建てで、一階が食料庫や資料室、二階は作業室や研究室だ。

縦よりも横に広いところを判断するに、おそらくは木々に隠れるように設計しているらしかった。

( ・∀・)「まぁ、当たり前と言えば当たり前だ。
      研究内容が道徳に反しているが故に、発見を恐れていたのだろうから」

しかし疑問は尽きない。
これほどの施設を、果たして何処の誰がどうやって作ったのか。

(´<_` )「まず普通の建設会社ってのはありえないな。
      だが、これほどまでにシッカリと作られていることを考えれば――」

( ・∀・)「何か証拠でもあれば良いのだがね」

そこで兄者が手を上げた。

( ´_ゝ`)「研究資金提供者の、ミーディ=アストクルフじゃないかと俺は思ってるんだが」

( ・∀・)「あのツン君の父親かね? 確かに彼の名前も日記に出てはいるが……」

(´<_` )「確かに、あの財力と人手があれば……命じれば外へ情報が漏れる、ということも考えにくい。
      あの家は特に結束力が固そうだしな」

思い浮かべるのは、フサギコの顔だ。
彼ほどの男が尊敬しているミーディという、ツンの父親。
人望が高いことは想像に難しくない。



  
130 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:53:50.51 ID:5yr5SZ550
  
( ・∀・)「まぁ、まずは手掛かりを見つけなければね」

(´<_` )「とりあえずメインコンピュータか、それに値する機械にアクセスしたい」

( ´_ゝ`)「じゃあ二階にあるメイン研究エリアに行こう」

( ・∀・)「私は一階にいるよ。 まともに探索するのは初めてなので色々と見て回りたい」

(´<_` )「ん、解った」

双子の兄弟は二階を目指して去っていった。
静寂が場を支配し始める。

( ・∀・)「ふーむ……」

そのまま資料室へ足を伸ばそうとした瞬間。

爪゚ -゚)「――御主人様」

ジェイルが呼び止める。
その視線はモララーではなく、天井へと向けられていた。

爪゚ -゚)「私達と流石兄弟様以外に、人の気配があります」

( ・∀・)「私の部下は外に待機させてある……となると、招かざる客人というわけだね」

爪゚ -゚)「おそらくは屋上にいるかと思われますが」

( ・∀・)「行こうか。 こんな場所にいるということは、博士に関係している人物の可能性が高い」



  
132 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 21:55:17.02 ID:5yr5SZ550
  
二階部分。
研究エリアなどが中心になっているここは、様々な機械が点在していた。

( ´_ゝ`)「メインはこれだっけか」

(´<_` )「把握した。 とりあえず接続してみる」

ノートPCからコードを伸ばし、大きな機械に接続。
しばらくすると、画面上に様々な情報が出現し始める。

( ´_ゝ`)「やっぱり膨大な量だな……それにダミーや壊れたデータが多い」

(´<_` )「うむ……選別して持ち帰るとなると、結構な時間が必要かもしれん」

( ´_ゝ`)「とりあえずやるしかないぞ。 俺は他に持って帰れそうな資料とか見てくる」

(´<_` )「任せた、兄者」

兄者が部屋を出る。
PCの稼動音のみが響く空間で、弟者は作業を始めた。

(´<_` )(ダミーがあるということは、調べられる前提だったというわけか……。
      やはり何か重要なデータが隠されているらしいな)

その背後に、人がいるとも知らずに。



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