( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです
- 137 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 22:03:42.07 ID:5yr5SZ550
- 屋上は比較的広かった。
周囲は木々に覆われているものの、見える空は突き抜けるような広さを持つ。
夕日が落ちかけていた。
段々と暗くなっていく景色の中、鉄製の扉が開く音がする。
( ・∀・)「……ふむ」
二人の視線の先。
屋上の最奥で、こちらに背を向けている人影。
白衣、茶のセミロング……それは女性だった。
確認したモララーは、懐から指輪を取り出す。
続いてジェイルもナイフとハンドガンを手に持った。
爪゚ -゚)「もしもの場合は、私ごと破壊して下さい」
( ・∀・)「言われなくともそのつもりだ」
堂々と、しかし慎重に距離を削っていき、それが二十メートルを切った時。
( ・∀・)「君は、誰かね?」
問いかける。
その声を耳に入れた女性は、こちらを振り向きながら
从'ー'从「――初めまして」
と、丁寧に頭を下げた。
- 141 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 22:06:19.66 ID:5yr5SZ550
- 兄者が、鼻歌を鳴らしながら資料室の扉を開く。
ここは既にFCによって調べ尽くされている場所だった。
本棚の一角。
分厚い書物が列を成しているはずなのだが
( ´_ゝ`)「……無い?」
本来あるべき場所に、一冊だけ本が抜き取られていた。
( ´_ゝ`)「おかしいな……あの場所は確か……」
覗き込む。
本が一冊無いことにより、奥の壁が見えた。
兄者が下部分を押し込むと、上部分が相反するように開く。
内部からコンソールが出現した。
( ´_ゝ`)「5692648173421187、と……」
素早い動作で数字を打ち込む。
決定キーを押した直後、カタンという小さな音が響いた。
( ´_ゝ`)「十年前の記憶、まだ衰えてなかった俺の脳って凄くない?」
ちなみに番号は、ここで博士の世話になっていた当時
資料室でかくれんぼをしていた時に盗み見たものだった。
振り返る。
そこには本棚があったはずなのだが、今は一つの黒い柱が伸びていた。
- 145 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 22:08:12.36 ID:5yr5SZ550
- ( ´_ゝ`)「変わりはない、よな……?」
この黒い柱は、クルト博士専用の隠し本棚。
前回、クーと共に調べた時にもココはチェックしていた。
しかし何も入っていなかったはずなのだが――
( ´_ゝ`)「?」
内部は、ほとんど空洞に近い。
資料用ケースが新たに追加されていた。
取り出だす。
( ´_ゝ`)(前には無かったはずなのだが……誰かが追加した?)
適当にめくる。
だが、目ぼしい情報は残っていなかった。
( ´_ゝ`)(妙だな……一体、誰がこんなことを――ん?)
最後の紙。
一旦、クシャクシャに丸められた跡があるそれに、興味深い文章が載っているのを発見した。
( ´_ゝ`)(読み辛いな……何だ?)
――――
『■世■の■■ある『フェ■■■』。
私は機■世■から■■■で■在■■り、戦■■ての完■■■■り、■■こと■■た』
- 146 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 22:09:30.70 ID:5yr5SZ550
- 千切れていたり、焼け焦げていたりと読めない部分が多い。
( ´_ゝ`)「フェ……?」
呟いた直後。
(;´_ゝ`)「!?」
爆音。
何か金属的な物がひしゃげる音と共に、大きな音が響いてきた。
この資料室からではない。
(;´_ゝ`)(まさか弟者――!?)
資料を懐に入れ、駆け出す。
この音が事故にせよ、故意に為されたものにせよ
(;´_ゝ`)(くそっ!)
嫌な予感が拭えない。
クルト博士の研究所で、情報収集していた弟者が襲われる。
あまりにも最悪の方向へ向かわせる材料が多く、兄者の頭の中では様々なマイナスの憶測が流れた。
- 150 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 22:10:59.91 ID:5yr5SZ550
- (;´_ゝ`)「弟者!!」
扉を開き、先ほどまでいた部屋へ飛び込む。
そこにいたのは
川 -川「…………」
不気味なほど長く伸ばした前髪を持つ女。
そして、壁に背を預けながら力無く倒れている弟者。
(;´_ゝ`)「お、お前は誰だ!」
ポケットから指輪を取り出しながら問いかける。
声を背中に受けた彼女は、不気味に首だけをこちらに向けながら
川 -川「――ターゲットβ確認」
と呟いた。
- 151 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 22:12:39.32 ID:5yr5SZ550
- 屋上。
夕日が落ちかけ、夜の闇が目の前まで迫っている。
自然に流れる風を身に受けながら
( ・∀・)「今の音は……?」
爪゚ -゚)「階下から発生した模様です。
おそらくB3地区……メイン研究エリアでしょう」
从'ー'从「大丈夫だよ、殺さないように言ってるから」
楽しそうに言う女性。
( ・∀・)「そういうことを望んでいるのではないよ。
貴様は誰か、と私は聞いている……まぁ、大体解るがね」
それは
( ・∀・)「――『渡辺』。
クルト博士の元助手にして、裏切った女……違うかな?」
从'ー'从「うん、そっち側の認識としては間違ってないね」
( ・∀・)「そっち側? つまり別の認識があるということかね?」
从'ー'从「まだ気にしなくていいよ。
どうせ今日は顔合わせみたいなものなんだし」
- 153 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 22:14:12.02 ID:5yr5SZ550
- そこでジェイルが一歩踏み出す。
キリキリと微かな音を立てながら、いつでも跳びかかれるような姿勢を作った。
爪゚ -゚)「逃がすと思っているのですか」
从'ー'从「えぇ〜……あまり乱暴なことはしてほしくないなぁ」
( ・∀・)「では大人しく捕まったらどうかね? 今なら優しい拷問で済ませてあげるよ」
从'ー'从「うーん、それも困るなぁ」
言いながら懐へ手を入れる。
白衣の中から取り出したのは、一つの銃。
( ・∀・)「選んだのは抵抗か……愚かな女だよ、君は」
爪゚ -゚)「お気をつけ下さい、御主人様。
あの銃は私のデータベースに無く、しかも従来のモノとは大きく異なります」
从'ー'从「優秀だね」
( ・∀・)「私の部下だから当然だ」
彼女の持つ銃は白を基調としていた。
銃、というよりも大型ナイフを髣髴とさせる形だ。
- 154 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 22:16:03.07 ID:5yr5SZ550
- 爪゚ -゚)「危険と判断。 兵装の変更を希望します」
( ・∀・)「構わん」
爪゚ -゚)「了解です」
声と共に、背負ったリュックを下ろした。
想像以上に重い音が響き、金属が擦れ合う音が響く。
内部から出てきたのは、数枚の金属片・銀の長い槍身・甲冑を構成するパーツだった。
それらは一瞬で組み上がる。
瞬間という時を以って、ジェイルの各部に装着された。
从'ー'从「へぇ……」
爪゚ -゚)「FC製機械人形専用・接近戦型特殊兵装『BF(ブラストフォース)−ナイト』」
それは銀の甲冑に似た兵装だった。
身体前面は装甲で覆われ、背中からは銀の細長いアンテナのようなモノが八本展開されている。
右腕には長身極太の巨槍。
左腕には大型の盾。
どれも銀の色を放っており、過去のジェイルを思い出させる格好だった。
しかしその重厚さや迫力は段違いである。
- 156 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 22:17:40.52 ID:5yr5SZ550
- ( ・∀・)「開発主任のゼンラン君が勝手に作っていた
最新試作品のEF(エターナルフォース)じゃないのかね?」
爪゚ -゚)「まだ実用出来る段階ではないそうです。
ちなみに相手は死ぬようですが」
( ・∀・)「おや、それは困るね」
从'ー'从「あはは、私一人に大袈裟な装備だと思うんだけど」
( ・∀・)「ならば焦ったらどうなのかね?
先ほどから、我々は隙だらけだというのに何もしないとは」
从'ー'从「フェアじゃないでしょ?」
( ・∀・)「ふぅむ……確かに」
だが、と続ける。
( ・∀・)「フェアをとって負けたりしても、それはそれで損だと思わないかね?」
声と共にジェイルが飛び出す。
走るのではなく、一足飛びの挙動だ。
片腕で巨槍を構えながら振りかぶり
从'ー'从「んふ♪」
渡辺の笑みに激突した。
場に金属音が響き渡る。
- 160 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 22:19:12.35 ID:5yr5SZ550
- ( ・∀・)「金属、音……?」
視線の先、渡辺が先ほどの銃を構えて巨槍を防いでいた。
从'ー'从「凄いでしょ、コレ。
レシーバー(機関部)下部が刃になってるんだ。
ストック上部を持って剣のように扱う事も出来るってわけ」
爪゚ -゚)「それだけでは説明がつきません」
縦に構えられた渡辺の銃を睨みながら
爪゚ -゚)「私の一撃は身体ごと吹き飛ばしてもおかしくない威力のはずです。
それが何故、貴女は未だこの場に存在しているのですか」
从'ー'从「当ててみて?」
爪゚ -゚)「貴女の周囲空間が異常歪曲していると推測します。
つまり私の攻撃のベクトルが歪められ、威力が半分以下になった、と」
从'ー'从「では、それに対して貴女はどうする?」
爪゚ -゚)「歪曲を吹き飛ばす一撃を。
または歪曲しない攻撃をぶつければ良いかと」
- 161 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 22:20:41.09 ID:5yr5SZ550
- 从'ー'从「出来るの?」
爪゚ -゚)「私には出来ませんが――」
渡辺の目を無表情に見つめながら
爪゚ -゚)「――御主人様なら可能かと」
ジェイルとは逆方向から気配。
直後、激震という衝撃が渡辺を襲った。
( ・∀・)「おや、やってみれば出来るものなのだね」
モララーが、高速接近後に2nd−W『ロステック』の一撃を叩き込んでいた。
しかしその鉄頭は渡辺には触れずに空中で停止している。
まるで見えない壁に阻まれているかのようだ。
从'ー'从「これは……」
言葉と同時にピシ、という音が発生する。
それは渡辺の周囲からだ。
その音を合図としたかのように、ひび割れの音色が連鎖を始めた。
破砕。
渡辺の周囲に展開されていた見えぬ壁が、粉々に割れ爆ぜた。
- 163 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 22:22:13.61 ID:5yr5SZ550
- 从'ー'从「あちゃ〜、やられちゃった」
( ・∀・)「私の粉砕力が上回ったようだね。
いや、まさか歪曲空間自体を叩けるとは思っていなかったのだが……」
爪゚ -゚)「流石は御主人様。
私の現在の兵装である『BF−ナイト』の槍に、超震動装置を付けるのを忘れていたために
活躍を取られてしまいました」
( ・∀・)「その説明口調は私に対する嫌味かね?
ちなみに超震動があっても、実存しない空間を砕けるとは思えないよ」
从'ー'从「モララーさん正解! 10P!」
( ・∀・)「ははは、これで私のリードだよジェイル君」
爪゚ -゚)「まだまだこれからです」
从'ー'从(誰も突っ込んでくれないのは寂しいね……)
一人心の中で呟く。
その間に、渡辺から距離をとる二人。
未だに正体が知れない相手を前に足を止めるなど愚の骨頂だ。
捕らえるのが目的といえど、それに執着してやられてしまっては本末転倒。
- 170 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 22:27:33.29 ID:5yr5SZ550
- ( ・∀・)「さて、次は何を見せてくれるのかね?」
言葉通り、相手の手の内を知ることから始める。
从'ー'从「言ったでしょ? 今日はただの顔合わせだって。
続きはまた今度ーってことでよろしいかな?」
( ・∀・)「あまりよろしくないね」
从'ー'从「言うと思ったよ……んじゃ、捕まらない内に逃げちゃおう」
ポケットから素早く取り出したのはトランシーバーのような通信機だ。
ジェイルが逸早く反応し、構えた直後に
从'ー'从「貞子、もういいよ」
声と同時。
渡辺とモララーとの間の床が、下部から突き破られた。
轟音と共にコンクリートの破片が宙を舞う。
川 -川「…………」
現われたのは先ほどの女性だった。
黒髪によって表情は見えないが、おそらくは無表情なのだろう。
そしてその腕に抱えられているのは
(;´_ゝ`)「弟者!」
屋上への扉が開かれる。
額から血を流している兄者が、慌てて飛び込んできた。
- 171 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 22:29:21.64 ID:5yr5SZ550
- ( ・∀・)「どうなっているのだね?」
(;´_ゝ`)「い、いきなりソイツが弟者を!
んでもって俺も襲われて……突然逃げやがった!」
川 -川「任務途中ですが」
从'ー'从「うん、もう帰るからいいよ。
その人も離してあげて」
黒髪の女性が無言で、脇に抱えた弟者を投げ捨てる。
地面に身体を打ちつけた彼に反応は無い。
ただ額と鼻から血を流しながらぐったりとしていた。
(#´_ゝ`)「お前――!」
怒りに任せて、解放した4th−W『アーウィン』を持つ。
それを見た渡辺は
从'ー'从「怖い怖い……貞子、御願いね」
川 -川「イェス、マスター」
声と共に轟音。
巨大な地震のような感覚が全員を襲った。
あまりの震動に、モララーやジェイルが膝をつく。
- 175 : ◆BYUt189CYA :2007/02/28(水) 22:31:05.97 ID:5yr5SZ550
- ( ・∀・)「これ、は……!」
从'ー'从「早く逃げないと大変なことになるよー。
じゃ、ばいばーい」
震動している床を蹴り飛ばし、空中へと身を投げる。
爪゚ -゚)「……っ」
それを追おうとするも、足元からの震動がそれを許さない。
( ・∀・)「ジェイル君、私はいいから流石兄弟を――」
言葉は途切れる。
床が全壊し、上にあったものが全て落下を始めたからだ。
落ちる視界で見る。
もはや安全な場所へ退避している渡辺が、こちらを見つつ笑みを浮かべていることに。
距離から考えて、そう判断出来ることはありえないはずなのだが。
モララーは全身で感じたことを元に推測し、判断した。
彼女は最大の悪意を持ってこちらに接触してきたのだ、と。
あの笑みの裏には、何が隠されているのか。
あの笑みの影には、一体何があったのか。
解らぬが、確実に言えることがあった。
それは
――奴は、我々にとっての、『敵』だ。
戻る/第三話